一般社団法人 日本民間放送連盟

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第53回民間放送全国大会(大阪)を開催/日枝会長あいさつ

 本日ここに、第53回民間放送全国大会を開催するにあたり、日本民間放送連盟を代表いたしまして、ご挨拶申しあげます。
 初めに、竹中総務大臣に代わってご出席くださいました平井総務審議官、太田大阪府知事に代わってご出席くださいました三輪大阪府副知事、そして橋本NHK会長ほか、ご来賓の皆様に心より厚く御礼申しあげます。

 改めて申し上げるまでもなく、放送界は今、50年余りの歴史のなかで経験したことのない激変する環境の真只中にあります。皆様ご承知の通り、2003年に三大都市圏で始まった地上デジタル放送は、いよいよ来年には全国に拡がろうとしています。BSデジタル放送の受信機の普及は1000万を超え、携帯受信の「ワンセグ」も来年春にスタートいたします。
 またブロードバンドの普及により、テレビやラジオに近い形のサービスが次々と登場し、放送と通信が渾然一体となりつつあるように見えます。
 一方で、民間放送の経営を根底から揺るがすような激しい資本の波が押し寄せ、我々がこれまで果たしてきた放送の役割とは何なのかが改めて問い直されています。そこで、放送をめぐる環境が激動している今日、我々放送事業者が果たすべき責任と役割について、また当面の諸課題について、所信の一端を申し述べたいと存じます。

 昨今、「放送と通信の融合」という言葉がさかんに言われ、中には、「放送が通信に飲み込まれる」という声まで聞かれます。しかし本当にそうでしょうか。放送には放送の、通信には通信の役割があるのではないでしょうか。
 歴史を顧みれば、無線技術による通信から、メディアとしての役割を得て放送という分野が生まれ、日常の生活に最も密着しながら発展して参りました。通信は情報の伝送手段であります。しかし放送は、単なる伝送路ではありません。放送によって、情報に価値と倫理が生まれるのであります。ジャーナリズムとエンターテイメントという二本の大きな柱のもと、放送事業者自らが重い責任を持ち、ハードとソフトが一体となって全ての国民・視聴者に向けて番組を提供するメディアなのであります。今後、通信分野の技術・インフラがいかに発達しても、文化としての、またライフラインとしての放送本来の役割や存在意義が変わることは決してないはずであります。
 昨今の動きを見ますと、あたかも放送と通信が対立している構図のようにも見えますが、私は、放送と通信が互いの特長を活かし、連携しながら、新しいサービスを創出していくことが、国民・視聴者にとって最も望ましく、情報化社会の発展につながるものと考えております。それが、放送と通信の融合の姿であろうと思います。むろん、放送の秩序・枠組みもまた、時代と共に変わっていかなければなりません。科学技術の進歩に背を向けた産業は必ず衰退するというのは、歴史が証明するところであります。デジタル化をキーワードに、多様化するこの厳しい環境の変化を乗り越えるためには、視聴者の利益を第一に情報通信技術の進歩を取り入れ、新たな発想で新しい時代にふさわしい放送サービス、ビジネスモデルを作り上げ、経営を革新する覚悟が求められています。
 今日までの50年以上、放送は国民の知る権利に応え、放送文化を発展させ、広告活動によって経済発展を支援し、多くの視聴者の支持を得て参りました。次の時代にも、我々が先頭に立って新たな放送事業の形を提案していかなければ、先人たちが築いてきた実績を一夜にして失う恐れすらあることを肝に銘ずるべきだと思うのであります。
 この激変の中だからこそ、今、改めて「放送の公共性」「放送が果たすべき役割」を真剣に考えなければなりません。我々は、株式会社である以上、利益を出すことが求められているのは当然であります。しかし、10年前の阪神・淡路大震災を思い起こすまでもなく、国民の生命・財産を守るためには、利益を度外視してでも放送しなければならないことも多々あります。これは、ライフラインとしての放送が持つ公共性以外の何ものでもありません。昨日の「特別シンポジウム」でも熱心な議論がありましたように、公共性とは報道番組だけのことだけではなく、様々な性格を持っています。良質で健全な娯楽や、スポーツも、放送の大きな使命であり、公共性でもあります。
 さらに申せば、どのような番組であっても、放送すること自体が社会に少なからぬインパクトを与えているのであり、放送は、その存在自体が公共性を帯びているということだと思います。
 政治や経済、社会の分野で一般の大きな関心を集めた出来事では、時に、集中的な報道によって「劇場型」とも言うべき状況を、メディア自身が作り出していった事例があったことは記憶に新しいところであります。我々は自らが、その強力な情報の発信者であることを認識し、重い責任を自覚しなければなりません。もし、我々が努力を怠り、放送が国民と乖離して信頼を失うことになれば、公権力や様々な権力による介入や規制を招き、放送の独立性を自ら否定することにもなりかねません。そのためにも、放送番組のあり方に対して社会から寄せられている厳しいご批判やご意見には、謙虚に耳を傾け、決して傲慢になることなく、自らを戒め続けていかなければならないと思います。
 ところで、皆様ご承知の通り、視聴率のあり方をめぐって大きな議論がおこり、民放連としても検討を重ねてまいりましたが、有識者を中心にした「視聴率等のあり方に関する調査研究会」から、番組内容の向上によって視聴質を高めることが肝要であり、そのために番組の顕彰制度を充実させるべきである、との提言をいただきました。そのご提言を受けて本年の民放大会から「日本放送文化大賞」を新たに設けることになり、このあと表彰式が行われます。これが一つの契機となって、番組の質的向上につながることになれば何よりの喜びであります。

 次に、放送のデジタル化について申しあげます。
 各方面の皆様方のご努力の結果、冒頭に申しあげましたとおり放送のデジタル化が着々と進み、移動体、双方向など「いつでも・どこでも・誰でも」がデジタルテレビ放送を享受できるユビキタス社会が、一歩ずつ近づいて来ております。
 アナログ放送が停止し、従来の受信機では見られなくなる2011年7月までの短い期間に、デジタルへの完全移行という国として定めた大目標を達成するためには、まず、民放事業者自らがすべての力を出し協力していかなければなりません。我々放送事業者には、国民・視聴者にあまねく放送を行き届かせる使命が課せられているからであります。そのためには、莫大な設備投資に耐え得るよう経営体質を改善し、関係各位の協力も得ながら中継局の建設を積極的に進めていかねばなりません。地上放送のデジタル化は、行政、地方自治体、受信機メーカー、家電販売店など、幅広い関係者のご協力を得て初めて成し得る遠大な計画であります。特に行政、地方自治体に対しては、民放各社の自助努力を超える部分について、有効な支援策を要請しているところであります。また、受信機メーカーをはじめとする皆様には、より一層低廉な価格でデジタル対応機器をお出しいただけるよう改めてお願いしたいと思います。
 BSデジタル放送も、関係者のご努力により1000万を超える普及となりました。今後、地上デジタル放送とBSデジタル放送が、相互に補完し合いながら発展していくためには、番組の有効利用などが課題であり、行政にも十分ご理解をいただきたいと思っております。
 一方、2003年から実用化試験放送が始まっているデジタルラジオも、来年、全国ネットの放送がスタートすることになり、これを契機に音声放送のあり方が大きく変わろうとしています。ラジオ各社におかれましては、今や、「第二の草創期」を迎えているとの時代認識のもと、努力を重ねておられるところでありますが、将来のローカルでのデジタルラジオ放送に向けて、新たなビジネスモデルを構築できますよう、関係者の皆様のご努力に期待するところであります。

 さて、NHKとの関係についてであります。
 NHKの不祥事を契機に、その在り方に関する議論が高まっておりますが、我が国の放送は、財源と制度を異にする民放とNHKの二元体制によって成り立ち、放送文化を発展させてまいりました。民放とNHKは番組内容を通じて大いに切磋琢磨し、互いの役割を尊重し合い、その結果として共存共栄していくことが、何よりも国民の利益に叶うことであると考えております。NHKには、今こそ公共放送の原点に立ち返り、一刻も早く国民の信頼を取り戻し、経営基盤を安定させることを期待したいと思います。

 以上、我々を取り巻く状況と今後の課題について所信を述べさせていただきました。放送は、それがデジタル化されたとしても、単に産業論によってのみ語られるべきものではないということは、申すまでもありません。常に時代と環境の変化に対応しながら、ハードとソフトが一体となって変革を重ねていくところに、今後の放送の発展があるものと確信いたしております。我々は、放送の社会的責任の大きさと公共性の高さを常に自覚しつつ、国民の信頼に応えていかなければメディアとしての力を失うということを、改めてこの場で皆さんと確認したいと思います。

 終わりに、10年ぶりに大阪での開催となりました本大会のために、ご尽力いただきました出馬民放大会委員長をはじめ、早くから大会の準備を進められ、成功に導かれた在阪幹事各社の役職員の皆様に心から感謝を申しあげ、私の挨拶とさせていただきます。

   平成17年11月2日

社団法人 日本民間放送連盟
会 長   日  枝   久