一般社団法人 日本民間放送連盟

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第55回民間放送全国大会を開催/広瀬会長あいさつ

 第55回民間放送全国大会の開催にあたり、日本民間放送連盟を代表いたしまして、ご挨拶申しあげます。
 本日は、私たちが日頃ご指導、ご支援いただいております各界の方々に、ご多忙の中、多数ご臨席いただいております。壇上と会場の、ご来賓の皆様に心より御礼申しあげます。

 放送の現状を一言で申しますならば、やはり、「正念場」という言葉が最も相応しいのではないかと思います。私たちが今向き合っている課題には、まことに厳しいものがございます。私たちが真摯な努力でここを乗り切るならば、民放事業に新しい明るい未来が約束されます。万一失敗しますと、この先長いイバラの道を歩かねばなりません。

 具体的には、私たちは2つの分野において、基幹メディアとしての真価を問われております。一つは、アナログからデジタルへの円滑な切り替えの実現でございます。そして、もう一つは日頃放送しておりますテレビ・ラジオ番組の品質管理についてです。すなわち『デジタル化』と『放送倫理』であります。いずれにおいても、失敗すれば、経済的な損害は極めて大きく、信頼の失墜はそれ以上に大きなものとなると思います。

 まず『デジタル化』です。世界的に見ますと、我が国のデジタル化計画は、スタートから今日まで、一分の狂いもなく、きわめて順調に推移していると言えます。現在のデジタル波の世帯カバー率は、全国5,000万世帯の85%であります。この年末には90%を超える勢いです。これは、NHKと全国の民放の放送事業者が、一局の遅れが全体の足を引っ張る結果になることを自覚しつつ、協力して作業を進めてまいった成果だと思います。誠に、すばらしい成果といってよいと思います。

 カバー率が拡大するなか、2011年アナログ停波についての視聴者の認知度は、現在70%に達しています。私たちよりも先にデジタル化に取り掛かったアメリカでの認知度が、未だに30%前後といいますから、70%という数字はまずまずの成績ではないかと思います。

 デジタル波のカバー率とアナログ停波の認知度が拡大するのに伴いまして、デジタル受像機も着実に普及しております。今年3月の総務省の調査では、世帯普及率で約28%という数字が出ています。また、8月に信頼できる民間調査会社が行った調査によれば、関西・名古屋地区で、すでに30%に達しているという結果が出ております。全国で一番デジタル受像機が普及しているのは、目下のところ富山県で、ここではデジタルテレビを見ている家庭が40%をすでに超えていると言われます。なぜ富山か。大変に興味のあるところですが、ここでは放送局とメーカー、販売店が一緒になって機器の展示会や、どうすればデジタルが見えるかの相談会を頻繁に開いているとお聞きしています。

 とはいえ、エリアの拡大にしましても、また受像機の普及にしましても、まだまだ楽観できる状況ではございません。これから中継局建設に取り掛かる、いわゆる難視聴地域は、50世帯、100世帯といった山間や海辺の小集落が多く、労多く功少ない投資になります。ラスト1%の普及には、国や市町村のご協力が欠かせません。デジタル受像機の価格は、メーカーの皆さんのご努力もあって大幅に安くなってきましたが、買い替えに慎重な世帯がまだまだ少なくありません。
 どうすればデジタルテレビが見えるのか、視聴者の方々の質問に答え、キメ細かくお世話をすることが必要で、そのためには、全国の市町村にデジタル相談窓口を設けることが不可欠だと痛感しております。実現するためには、政府はじめ全国の自治体の皆さんたちとの共同作業が必要になります。また全国の福祉施設や経済的弱者に対しては、機器の設置について政府が直接に支援する姿勢を明確に示すべき時期が、そろそろ来たのではないかと考えます。関係方面の方々のご理解を切にお願いします。

 多くの国がデジタル化に取り組んでおりますけれども、アナログ放送の停波に至った国は、今のところ、人口500万人のフィンランドのみでございます。アメリカにしても韓国にしても、官民の対応が十分でなかったりして、計画の延長を余儀なくされております。

 我が国の場合、2011年のアナログ停波が、仮に、先延ばしとなるとどうなるか。放送各社にサイマル放送の継続のための追加のコストや投資を強いることとなります。果実を生まない極めて空しい投資です。また国のu-Japan計画にも大きな齟齬が生じます。
 一方、デジタル受像機の普及が十分でないまま、予定通り2011年7月にアナログを停止するとどうなるか。大きな混乱が起こり、そうした混乱の中でテレビ離れが進む心配もあります。いずれにしましても大変深刻な事態であり、「正念場」というのもそのためでございます。逆に2011年に、すべての世帯でデジタルを楽しむことができるようになれば、テレビは諸々の他の競合するメディアに対して、大変有利な立場を不動なものにすることになると信じております。

 さて、もう一つの問題です。2007年は、テレビの『放送倫理』を改めて考えさせられる年になりました。近年、一部の放送番組について演出が過剰ではないか、あるいは情報を歪曲して伝えているのではないか、といった指摘を行政から受けるケースが増えております。おそらく各局の視聴者センターにも、その種の声が少なからず届いていたのではないかと想像します。

 そのような中、年明けに関西テレビ放送による、いわゆる『ねつ造番組』が発覚いたしました。新聞、週刊誌に連日大きく取り上げられ、それを追い風とするように総務省は与党の支持を得て、先の通常国会に、放送局に対する行政処分を盛り込んだ放送法の改正案を提出しました。通常国会では、法案は継続審議となり、判断は今の国会に委ねられております。

 これまでも、テレビ番組が政党や政府の非難を受けることがなかったわけではありませんが、行政処分導入の論議は慎重に避けられてきました。民主主義のインフラともいうべき表現の自由が、より大きな価値として尊重されたためでありましょう。関西テレビ放送の事件に至って政府は、「再発防止を放送局の手に任せておくわけにはいかない」と判断したのだと思います。与党の中でも、野党の中でも、行政処分の導入について賛否の意見は分かれております。一方、「放送局経営者は日常の番組制作に、もっと真剣に取り組んでもらいたい」と注文をつける気持ちにおいて、与野党を問わず一致しているように見受けられます。私たちは厳しい反省を迫られた次第です。

 実際に番組の中身に政府の目が光ることになりますと、ことは民主主義の根幹に触れます。私たちは、改正案に対して反対を表明しました。しかし反対を叫ぶだけでは、世間の理解は得られません。私たちは、虚偽やねつ造の再発防止策を政府に委ねるのではなく、自分たちの手でキチンとやっていこうと決心いたしました。

 その手段として、放送倫理・番組向上機構(BPO)の中に『放送倫理検証委員会』を新設いたしました。この検証委員会は、問題の番組が放送されました場合、その番組の制作過程に立ち入って調査することができます。また、当該の放送局に再発防止策の提出を求め、その中身が不十分なら、改善を求めることができます。さらに、防止策の実行状況について報告を求めることができます。

 一口で言うならば、政府の案よりも数倍強い権限を持つ監視機関を作ったことになります。軍事政権や一党支配の国では、依然、政府が直接に放送を監視します。米国や英国では、独立行政委員会を設け、ここが監視の任務に当たっております。独立の委員会とはいえ、時の政権との距離にはやはり微妙なものがあります。私たちは、自分で自分たちの監視機構をつくるという第三の道を選びました。これは、いまだ世界に例がありません。大いなる実験、価値ある挑戦だと思っております。
 第三の道が成功するかどうか。成否の鍵を握るのは、もちろん放送事業者自身です。放送事業者にとって最も大切な商品である放送番組制作にあたって、経営陣から現場まで、ひたすら真摯でなければなりません。実績を重ねることで公権力の介入が不要であることを、国民の皆さまの前に証明していきたいと思います。

 BPOの内部機構としては、この「放送倫理検証委員会」のほかに、「放送と人権等権利に関する委員会」、「放送と青少年に関する委員会」があります。三つの委員会の委員の方々は、この国の放送文化を向上させるという大きな志のもと、私たちに厳しい注文、提言をしていただいております。この場をお借りして敬意と感謝の意をお伝えいたします。

 本大会のために、シンポジウムや講演でご協力いただく方々、大会の準備をしていただいた君和田民放大会委員長はじめ幹事社、関係者の皆さんにお礼を申しあげます。
 そして本日、栄えある表彰を受ける皆さんには心よりお祝いを申しあげます。

 放送局にとって一番嬉しいことは何か。テレビを見、ラジオを聴いて良かったと、視聴者からお褒めの電話をいただくことであります。キー局ですと、毎日数百件の電話をいただきます。問い合わせを除けば、苦情が半分、お褒めが半分というところでしょうか。「数日、暗い気分に沈んでいたが、あのドラマを見ているうちに明るい自分を取り戻しました」。こんな電話の記録を読みますと、こちらも元気が出てまいります。詩人は、社会に新しい言葉を提供いたします。小説家は、世界を読む透徹した目を提供してくれます。それでは放送局は、何を社会に提供するか。若い社員と話しておりましたところ、「人が良い行いをするとき、背中を後押しする風を提供しているのではないでしょうか」と言いました。そうかも知れません。昨年の民放大会以来、放送事業者にとって厳しい1年でした。これから1年、残念ながら厳しさが緩むことはないだろうと思います。私たちは視聴者との交歓を通じて元気をもらい、新たな勇気を持って試練に立ち向かっていきましょう。それを誓って挨拶とさせていただきます。
 ありがとうございました。

平成19年10月31日
 
社団法人 日本民間放送連盟
会 長  広 瀬 道 貞