一般社団法人 日本民間放送連盟

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第58回民間放送全国大会を開催/広瀬会長あいさつ

 第58回民間放送全国大会の開催にあたりまして、一言ご挨拶申し上げます。
 最初に、残すところ8ヵ月になりました地上波テレビの完全デジタル化とアナログ停波について、その準備状況をご報告いたします。
 結論を申しますならば、あまねく全国にデジタル波を届ける送信側の工事と、受信側の環境整備と、双方きわめて順調に進んでおります。経済的な理由から受信機の買い替えを控えているご家庭につきましても、政府・与党、および野党の間で、国の支援を強化し、なによりもこの支援を活用しやすくする方向で論議が進んでいます。この使いやすさが重要なポイントになりそうです。
 放送事業者が自信と責任を持って、この8ヵ月、取り組むことを前提にしてではありますが、来年7月24日正午をもって、民放、NHK全局がきれいにアナログを停波し、電波の帯域を空き地にして政府にお返しできるものと確信しています。
 やや詳しくご説明いたします。まず、デジタル中継局の整備です。民放とNHKは合わせて1万1188局の建設を計画しました。9月現在、工事終了は9017局です。残りも完成間近で本年12月末日をもって全部そろいます。
 民放1局当たりにしますと、新設した中継局の数は55局になります。鉄塔を建て送信機を敷設するわけですが、途中、米国発の世界大不況によりたいへん収支が悪化した中で、全局足並みを揃えて計画を実現したことを、私たちは誇ってよいと思います。
 中継局でカバーできるはずだったのに、実際には電波が届かなかった地区、いわゆる「新たな難視地区」ですが、山間の一世帯、二世帯のところも含めますと、全国で1万1276地区にもなります。世帯にして24万世帯におよびます。NHKと民放は自治体とともにその対応を進めておりますが、9月現在で72%、17万世帯についてはすでに解決し、または解決の目途がたっております。予期しなかった仕事をみなさんにお願いしたことになります。
 都市部の「ビル陰難視」と集合住宅の共聴施設の二つは当初から難題中の難題とされたテーマでありました。昨年2月、総務省の「テレビ受信者支援センター(デジサポ)」が全国展開し、必要な人員を大量動員することが可能になりました。それ以来、この難問にもなんとか解決の目途がたちました。
 ときに、こんな発言を耳にします。「デジタル難民を出さないために、来年7月にこだわらず、アナログ停波を延ばすべきではないか。外国でも多くの国が実際にそうしてきた」「停波をこのまま強行すると、テレビ離れが起きるのではないか」などです。
 テレビ離れの心配はありがたいのですが、こうした見方には大きな誤解があります。多くの国では、受信側の環境整備や経済的弱者対策に日本ほど力を入れたわけではありません。お店で販売するテレビ受信機をデジタル一本に絞って、人々の買い替えによる普及を待つというところもありました。
 いまわが国では、支援センターの専従職員が全国で360人、ここで業務委託している要員が2万3000人、経済的な弱者支援のための専従職員が900人、電話相談を受けるコールセンターが440人、合計2万5000人が、日夜、全国各地で動いています。このほかにも、市町村のデジタル相談の職員がいらっしゃいます。
 延期論が、かりにこうした陣容もいったん解散して、後は自然な買い替えを待つ、というのであれば普及の数字は当分動きません。そうではなく、2万5000人体制を維持したまま、延期すべきだというのであれば、その負担をまた覚悟しなければなりません。今こそ勝負どころであり、この8ヵ月にできないことは将来もできないと思います。
 10年に及ぶ今回の日本のデジタル・プロジェクトは、政府、与野党だけでなく、自治体、放送事業者、メーカーも加えて具体案を練り、最後には町の電気屋さんや各種の福祉団体も巻き込んで推進してまいりました。みんなが協力して勝ち取った貴重な成功体験、サクセス・ストーリーとして落着したいし、実際にそうなると思います。
 さて、デジタル時代を規定する放送法改正案は、先の通常国会で廃案となりましたが、今の臨時国会に再提出されております。この改正案に盛り込まれておりますマスメディア集中排除原則の緩和や、割り当てられた電波の柔軟な活用などの諸施策は、デジタル投資や世界不況で収支が悪化した放送局の経営に資するものです。テレビの完全デジタル化の前に成立・施行されるべきものと私たちは考え、強く期待しております。
 総務省の主催で「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」が開催されてまいりました。その中でもメディア、中でもテレビ番組による人権侵害があった場合、国や社会はどう対応すべきかが論議されてまいりました。この年末には、報告書が提出される見通しです。
 もともと民主党は在野の時期に、放送や通信の行政全般についてこれを総務省から切り離し、米国のFCCのように独自の職員を擁する中立の委員会に移すべきだという政策提言をしてきました。放送による人権侵害も、その委員会が判断し、対応を決めるというのが提言の延長線上にあったのではないかと思われます。
 テレビ放送によって、名誉や信用が損なわれた、あるいは経済上の損失を受けた等の苦情が寄せられた場合、私たちはBPOの検証と判断に従って対応を行っています。これに対してフォーラムでは多くの委員から現行のBPO方式に厳しい意見が出ました。
 「取材不足から起きる事実誤認の報道が後を絶たない。BPOの放送局に対する見解や勧告が甘いのではないか」「BPOの内部での作業や議論が不透明で、国民がBPOを信頼するに至っていない」「放送局による訂正放送が丁寧さを欠き、名誉や信頼の回復に不十分なケースが多い」などの指摘です。
 自民党政権のときには、バラエティ番組の捏造問題を契機に総務大臣の指導権限を拡大する放送法改正案が国会に提出され、私たちはこれに強く反対しました。日本国憲法と放送法に定める表現の自由を守るという一点で、私たち放送事業者の姿勢が変わることはありません。
 おりしも、大阪地検特捜部による証拠捏造が一新聞社の取材によって暴かれました。これを契機に、各方面から捜査の透明性を求める声が噴出し、検察当局もまた、その方向に動き出そうとしております。
 ここで見るように、メディアにおける表現の自由は国民の知る権利に直結しております。まさに民主主義を守る社会全体のインフラであって、テレビやラジオ、新聞等の表現者自身も表現の自由の制限に同意することは許されないと考えます。
 私たちは、間違った、あるいは不完全な番組で人を傷つけた場合、できるだけ早く、そして丁寧に訂正し、真摯に対応すべきだと考えています。重大な間違いについては、なぜ間違ったか、検証番組を作ってお詫びすべきだと考えています。
 ただし、番組が不当かどうか、国民の知る権利とのかね合いからも許されないかどうか、その判断を政府や政府が人選をする行政委員会に委ねるのは、憲法の精神に反すると考えています。
 とはいえ、番組のトラブルが多発する現状を、軽く見過ごすことは許されません。昨日は、飽戸BPO理事長から厳しいお言葉をいただきました。放送事業者の真髄は、報道にしろ、ドラマにしろ、バラエティにしろ、あるいはスポーツ中継にしろ、優れた番組、信頼され親しまれる番組を世間に提供することにあります。フォーラムでのさまざまなテレビ批判も「番組制作者のみなさん、しっかり頼むよ」という切なるメッセージであったと受けとめるべきかもしれません。
 アナログ終了後のテレビ事業について一言申し上げます。携帯電話がインターネットと繋がり、インターネット上の音声・画像コンテンツを簡単かつ鮮明に手元に呼び出せるようになってから、素晴らしい携帯端末が次々に登場しております。iPadもそのひとつです。メディア間の競争はまた新しい局面を迎えたといっていいでしょう。
 その中で、いつものことではありますが、メディア界におけるテレビの優位性が相対的に低下するのではないか、という見方が主として評論家の皆さんから出されています。実際にはどうでしょうか。
 かつて放送事業者は、インターネットとの融合や提携を警戒してきました。しかし、今回、キー局をはじめ多くの放送局が、新しい機器の普及を放送事業の領域拡大の好機と見ています。放送番組を新しいデバイスに配信するマルチユースの手法や、さらには放送局の制作力を生かして放送番組とは違う新しいデバイス向けのコンテンツ制作に乗り出すことも模索しています。
 こうした放送局の積極姿勢の背景には、放送、通信の共通語であるデジタルに対して、放送局の人たちが習熟してきたこと、あるいは地上波テレビのデジタル化によって、テレビの画面や音質が大幅に改善されテレビ本体のメディア力が格段にアップしたことがあります。
 さらに、放送局の経営者たちは、2008年の世界不況を体験し、テレビ局の高コスト体質を改善するなど、その克服に苦労し、成果を上げてまいりました。その自信を反映しているようにも見えます。
 私たちは毎日、20時間を越える放送時間と向き合って番組を制作し、あるいは選択しつつ、他から調達しています。視聴者の獲得をめぐる放送局間の競争にもまことに厳しいものがあります。私たちのコンテンツ制作力は、日々のこの試練に負うところが多いと思います。ニューメディアに遅れをとることはないだろうと思います。
 テレビ受像機の機能も次々と発展してきました。機能に負けないように、番組の中身を充実させていくのは、私たちの役目であります。
 気になることが一つあります。最近発売された録画機能内蔵のテレビで、CMを自動的に飛ばして再生する機能を宣伝しているものがあります。これは、本編とCMを一つのものと考える私たちのビジネスモデルと対立します。社団法人電波産業会(ARIB)での、テレビ受信機の技術に関する申し合わせにも反する疑いがあります。
 さて、民放連にとりましては、テレビのデジタル化が完成したら、いよいよラジオの番です。ラジオはこのところ不振を続けていますが、今年はラジオ番組を同時にインターネット上に流す大きな実験を実施し、多くの放送局がこれに参加しました。
 結果は上々で、計画を延長し、今も実験を続けています。ラジオの将来を探る皆さんの真摯な姿勢を見るたびに、デジタル化によって新たに豊かな分野を探り出していくに違いないと感じました。
 民放連はもともと、ラジオ16局でスタートしたと聞いております。民放連を挙げてラジオを後押ししてまいりたいと思います。
 大会の準備をしていただいた地元放送局の皆さんに改めて感謝いたします。
 長くなって恐縮です。ありがとうございます。

 平成22年11月5日

 
社団法人 日本民間放送連盟
会 長  広 瀬 道 貞