一般社団法人 日本民間放送連盟

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表彰番組・事績

日本民間放送連盟賞/2004年(平成16年)入選・事績

平成16年日本民間放送連盟賞 ”NAB Awards 2004” 入選・事績

日本民間放送連盟賞は12年度から次のように変更されています。

  1. 番組部門の種目中、ラジオ・テレビとも「娯楽番組」を「エンターテインメント番組」と改称しました。
  2. CM部門のテレビについて、第1種・第2種を併せて一本化しました。

番組部門

ラジオ報道番組

最優秀 <茨城放送> 報道スペシャル あなたをこの家でみとりたい~在宅医療の現場から~

プロデューサー 鈴木由則  取材・構成・ディレクター 斎藤佳子  ナレーター 大和田憲子  ミキサー 大竹義雄

寝たきり状態や末期がんなどで病院に通えない患者を自宅で計画的に診療する「在宅医療」。医師の訪問診療や看護士による訪問看護に支えられ、入院・外来に次ぐ"第三の医療"と呼ばれている。この在宅医療に積極的に取り組むつくば市の医師を追いながら、患者の家族をはじめ医療関係者のインタビューも織りまぜて、その現状と課題を探った。聴取者の関心が高いテーマを日常的なスタンスで取り上げた姿勢、システムを支えるためのバックアップ体制への提言も明確で、地域に立脚したラジオらしい番組である。

優 秀 <札幌テレビ放送> 告発者~声なき声のために

プロデューサー 山谷 博  ディレクター 拝野憲男  ナレーター 森中慎也

全国的な社会問題として注目を集める警察の報奨費疑惑。その発端は、北海道警察の元釧路方面本部長・原田宏二さんの実名による告発会見だった。番組は、原田さんが告発に至るまでの葛藤を丹念に拾いながら、警察組織の矛盾を浮き彫りにする。原田さんの人柄にも支えられ、30分という枠で問題点を整理した構成が秀逸。警察権力にメディアが正面から斬り込むことの困難さに向き合い、警察刷新に期待を込めた姿勢も明快だ。

優 秀 <文化放送> 文化放送報道スペシャル きょうだいの死が私を変えた~犯罪被害者の現実

ディレクター・取材 嶺岸宏枝  ナレーター 野村邦丸  構成 石井 彰  出演 大谷昭宏ほか

1999年12月、遺体で発見された海上自衛官。徳島県警による「自殺」「事件性なし」との判断に疑問をもった妹の三笠貴子さんは「真相を知りたい」と、現場検証や目撃者探しなど独自の調査を開始し、再三にわたり再捜査を申し入れる。地域で起きた事件に着目し、綿密な取材で警察の初動捜査のあり方や法制度への疑問を投げかけ、メディアによる犯罪被害者の報道被害にも目配せした姿勢に好感がもてる。

優 秀 <福井放送> ホワイトアウトからの生還~大長山で遭難した14人に何が起きたのか~

チーフプロデューサー 工藤順雄  プロデューサー 黒原繁夫  ディレクター 町 雄介  構成 岩下直浩 

2004年2月、福井県の大長山(1,671m)で関西学院大学ワンダーフォーゲル部の14人が遭難した。メンバーを待ち受けていたのは、吹雪や霧で視界が真っ白となるホワイトアウトの世界。警察や自治体、山岳警備隊による必死の救出活動によって全員が無事生還を果たした。天気予報や地元の助言を無視し、彼らはなぜ入山し、どのように救助が成されたのか?ワンゲル部リーダーの証言、救助無線の生々しい交信テープ、冬山の厳しい自然を豊富な音素材を駆使して伝え、迫真の検証となった。

優 秀 <毎日放送> ラジオドキュメンタリー「語り継ぐ歌声」 

ディレクター 今道 彰  ナレーター 水野晶子、中西 安  監修 安達日出男

「竹田の子守唄」。この有名な子守唄が、かつて放送メディアから一斉に姿を消した時期があった。それは、京都市の被差別部落にルーツがあったからだ。いま、この地区に住む30歳代から70歳代の女性たちがこの子守唄を歌い、若い世代に伝えるための活動を始めた。彼女たちの姿を通じて、被差別部落の生活史や親子関係が明らかになる。部落差別問題という難しいテーマを正面から見据えながら、情緒に流されることなく、ラジオならではの音の訴求力で伝える姿勢を高く評価したい。

優 秀 <中国放送> 変えなくては 変わらなくては がん治療~がん相談室の現場~

プロデューサー 大原健嗣  ディレクター・構成 増井威司  ナレーター 本名正憲 

抗がん剤治療に積極的に取り組む医師が開設した「がん相談室」。ここには、医療機関の対応への不満や国内では未承認の抗がん剤治療への要望など、さまざまな悩みが寄せられる。がん告知が進む一方で、完治の見込みのない患者は切り捨てられていく現在の医療をめぐる矛盾が浮き彫りになる。悩みを抱える患者や家族らと"患者主体の医療""がんとともに生きる"道を模索する医師の姿を生き生きと伝えている。

優 秀 <九州朝日放送> 裏金作りが仕事だった~福岡県警元警部の告発~

プロデューサー 臼井賢一郎  ディレクター 大迫順平  ナレーター 沢田幸二  編集 中島千恵

福岡県警の元警部が1995年から5年にわたり年間1,500万円近い裏金を架空に請求し、それを幹部が私的に流用していたと告白した。だが、県警側はこれを真っ向から否定する。しかし、住民監査では返還の勧告が県警サイドに申し渡された。警察OBや現職警官が次々と裏付け証言をするなか、"鉄のピラミッド"といわれる警察組織の闇に挑み、情報公開のあり方にも言及した力作。さらなる追求が望まれる。

ラジオ教養番組

最優秀 <長崎放送> マザー~詩人・藤川幸之助が綴った母との瞬間~

プロデューサー 大田由紀  取材・構成 早田健介  ナレーター 塚田恵子  朗読 林田繁和 

長崎市在住の詩人・藤川幸之助さんの母キヨ子さんは、15年ほど前、アルツハイマー型痴呆症の診断を受ける。父清人さんはキヨ子さんを献身的に介護するが無理がたたり他界。介護をすべて父に任せ、死期を早めたという罪悪感から、藤川幸之助さんは自分にできる最大限の介護を行っていく。当初、罪悪感や義務感から行っていた母の介護も、時が経つにつれ、母の世話をすることに喜びや感謝の気持ちを抱くようになっていった。きれいごとだけではない介護の実態や、せつないまでの母への思いを"詩"で表現することで、リスナーそれぞれが自分の問題として考えることができる作品となっている。

優 秀 <青森放送> オホーツクからの伝言~津軽藩警備隊の記録

ディレクター・構成 藤田晴央  ナレーター 西川洋子  出演 福士賢治  音響調整 白瀬公二

今から200年前、北海道沿岸に現れては略奪行為を行うロシアの軍艦に対する警備として、津軽藩は100人の兵士を派兵した。しかし、厳しい寒さと栄養失調のため一冬で100人中72人が死亡するという事態となった。津軽藩はこの事件を秘匿し明治時代になっても世間に知られることはなかったが、戦後、東京の古書店で越冬警備隊の足軽が記した日記が発見され、事件の諸事情が解明されるに至った。埋もれた民衆史を発掘し、江戸時代の1人の名もなき人間が後世に伝えたかった思いをリアルに浮かび上がらせている。

優 秀 <文化放送> ラジオCMコピー大会20周年 アニバーサリースペシャル

ディレクター 五井千鶴子  出演 吉田照美、小俣雅子  コメンテーター 天野祐吉  

文化放送と雑誌「広告批評」が共同で実施している「ラジオCMコピー大会」は2004年で20周年を迎える。1985年の第1回以降、毎回2万通近くの応募が集り、数多くの秀作・話題作が誕生した。20世紀から21世紀へ、バブル経済から崩壊まで激動の19年間を振り返りつつ、さまざまな角度から歴代グランプリを紹介する。音声だけで伝えるラジオCMが持つ喚起力や、時代の風を伝える"チカラ"をあらためて認識させてくれる。

優 秀 <静岡放送> SBSラジオスペシャル「下田奉行が聞いた草競馬」~ペリー下田来航150年 近代洋楽事始め~

プロデューサー・脚本 鷹森 泉  ディレクター・構成 菊池 勝  ナレーター・出演 阿藤 快

二度にわたるペリー来航は、先進的な科学技術の流入にとどまらず、音楽の面でも大きな影響を与え、近代音楽の幕開けになったともいわれている。ペリー一行が演奏する西洋音楽を人一倍気に入り、"陽気で面白い男"とアメリカ人にも好かれたといわれる下田奉行・伊澤美作守(阿藤快)が案内役という設定で、「星条旗」「ヤンキードゥードゥル」などの名曲が演奏されていた史実を紹介する。また、当時のスタイルでの再現演奏も試みる。ラジオだからこそできる音の歴史物語を、巧みな構成で聴かせてくれる。

優 秀 <北日本放送> ラジオで夢を語ろう ぼくの夢 わたしの夢

プロデューサー 鍛冶優吉  ディレクター・構成 柴田明夫  出演 伊藤敏博、中島真紀子

富山県内の小学生に「夢」をテーマに作文を募集したところ2千を超える応募作品が寄せられた。集った作文の中から、具体的な将来の夢が語られているものを選び番組で紹介。いずれも子どもたち自身が自分の作文を朗読する。さらに子どもが描く夢のきっかけとなった周囲の人々の声も紹介する。ラジオを通して語られる夢を聴いて、リスナーも自分の夢に思いをめぐらせることができる番組となっている。

優 秀 <朝日放送> 大フィル新監督の夢-"小さな巨人"大植英次の挑戦

プロデューサー 道勇嘉彦  ディレクター 鈴木崇司  出演 堀江政生  技術 山辺 明

世界屈指のクラシック指揮者といわれる大植英次さんは、2003年春に大阪フィルハーモニー交響楽団(大フィル)の音楽監督に就任した。世界中を飛び回り多忙を極める大植さんだが、その一方で、大阪の視覚障害者支援団体のチャリティーコンサートを引き受け、時間を見つけては大阪府内の中学校などを回り、音楽指導など精力的な活動を続ける。大植さんが大阪に、ひいては日本全体にクラシック音楽を広めるという夢に向かって取り組む姿を、マーラーの交響曲第1番「巨人」の音色とともにダイナミックに描いている。

優 秀 <西日本放送> 詩人・塔和子さんに会いに行く~大島青松園にて~

プロデューサー 片岡三佐子  ディレクター・出演 熊谷富由美  出演 笑福亭学光

笑福亭学光さんが香川県木田郡庵治町大島の「国立ハンセン病療養所・大島青松園」を訪問し、詩人の塔和子さんにインタビューを行う。塔和子さんが詩を書くことになったきっかけや、第1詩集「はだか木」を出版するまでのいきさつなどを語ってもらう。また、塔さんが自ら詩を懸命に朗読してくれる。ハンセン病を患いながら、詩で自分の思いを伝えようとする塔和子さんの生き方がストレートに伝わってくる作品。

ラジオエンターテインメント番組

最優秀 <北日本放送> Thanks a lot, to Yutaka Ozaki ~音楽プロデューサー須藤晃 13年目の告白~

プロデューサー・ディレクター・構成・脚本 上原 誠  ナレーター 工藤佳泳、小林淳子

1992年4月25日に亡くなった尾崎豊の歌をトップアーティストがカバーするトリビュートアルバムが今春、リリースされた。このアルバムをプロデュースした須藤晃氏は、尾崎のデビュー当時からのプロデューサーである。番組では、須藤氏が尾崎とともに作り上げてきた音楽の世界、尾崎の人生と苦悩を語る。音楽プロデューサーがどうやってミュージシャンから音楽を引き出し、世の中に広めていくのかが、須藤の言葉と織り込まれる尾崎の音楽や生前の肉声から浮かび上がる。構成や演出もしっかりしており、よくまとまった力作である。

優 秀 <東北放送> ドラマ「バスはまだですか?」

演出 鈴木俊樹  技術 鵜野清仁  効果 長田英之 脚本 菊池 豊

17歳の少年多加志は、暴力事件を起こして試験観察となり、その条件として老人ホームでの奉仕活動が課せられた。痴呆を病む老人たちは夕暮れになると、来るはずのないバスを待ちながら、「帰りたい」とつぶやく。多加志はそれを見て、自身が幼い頃、妹から言われた「帰ろうよ」という言葉を思い出す。人が帰りたいと思うところはどこなのか? ローカル局が難しい素材に挑戦してつくりあげたラジオドラマで、暗くなりがちなテーマにもかかわらず、全体的に温かい感じがただよう秀作である。

優 秀 <ニッポン放送> 松井昌雄・松井秀喜 父子で語る ~N.Y.ヤンキース松井秀喜・海を越えたキャッチボール~

ディレクター・構成 柴田 篤  脚本 松下茂典  出演 松井秀喜、松井昌雄 

松井親子の飾らない話し振りの中から、家族の愛情が伝わってくる好感度の高い作品。メジャーリーグで活躍を続けるスーパースター松井秀喜と、彼を育てあげた父・昌雄がメディア上で初めて対談した。父はジャイアンツ時代から、秀喜に178通のファックスやメールを送り、ヤンキースに秀喜が移ってからもメールで励ましやアドバイスを送り続けている。二人の対談に、メジャーでの活躍の節目節目で送られたメッセージや、試合の実況素材を交えて、父と子、家族のあり方を聴取者に考えさせる作品に仕上がった。

優 秀 <山梨放送> しびれて土曜日「歌謡曲探偵団スペシャル」

プロデューサー 児玉久男  ディレクター 小沢睦美  出演 鈴木智草、杉山明美

ワイド番組の1コーナーを1時間に拡大したスペシャルバージョン。タイトルも誰が歌っているかも覚えていないが、気にかかって心に残っている歌をリスナーからの依頼に応じて、パーソナリティーのエド山口とスタッフが探し出してオンエアする。24時間受付の留守番電話に自分が覚えているメロディーや歌詞を吹き込むこともでき、探してもわからない曲が他のリスナーからの情報で判明することもある。リスナーと一緒に作るという、これぞラジオエンターテインメントと呼ぶに相応しい番組である。

優 秀 <FM802> BINTANG GARDEN~10年目の復活春一番

プロデューサー 古賀正恭 ディレクター 北秋めぐみ  ナレーター 土井コマキ

大阪で5月に開かれる野外コンサート「春一番」は1971年に始まり、79年に1度終了し、95年に復活した。ゲストに、このコンサートをプロデュースしている福岡風太と関西在住のバンド rallypapa & carnegiemamaを迎えて、利益を考えずに多くのミュージシャンが集まってくる「春一番」がもつ魅力を伝える。ウッドストック・コンサートに刺激を受け、平和を求めて始まったコンサートの精神が、今も生きていることがわかる爽やかな作品。

優 秀 <山口放送> 詩を読んでみた・・・10才の君と

プロデューサー 清水のり子  ディレクター 高田知太郎  ナレーター 勝津正男  出演 中谷隆宏

全盲の少年・原陵太くんと山口放送の中谷アナウンサーの2人が一つの詩の朗読を一緒にするまでを描く、心温まる作品。陵太くんがもつ豊かな感性に刺激を受けながら、詩の読み方を深めていく中谷アナウンサーの真摯な姿勢もよく、清々とした明るさが感じられる。陵太くんのみならず、番組中で詩を朗読する脳性まひの方の声にも強いインパクトがあり、障害者の方々のもつ世界の素晴らしさが感動的だ。

優 秀 <エフエム沖縄> ラジオドキュメンタリー もうひとつの涙(なだ)そうそう-

プロデューサー 垣花勝也 ディレクター・構成・脚本 山川悦史 ナレーター 桜井幸子  出演 BEGIN

夏川りみの歌でミリオンセラーとなった『涙そうそう』(作曲:BEGIN、作詞:森山良子)をめぐるエピソードをつづった音楽ドキュメンタリー。作曲したBEGINの3人のメンバーにとって、この曲は若くして亡くなった親友への鎮魂の歌でもあることを描いた。同じ八重山出身である3人の音楽への思いがあふれてくる美しい作品である。

ラジオ生ワイド番組

優 秀 <北海道放送> 「一平・直子のほっとスマイル!」~生きるということ がん告知・あなたはどう思いますか?

プロデューサー・構成・脚本 熊谷貴史  ディレクター 氏家誠一、加藤丈晴

火曜の午前9時から2時間の放送。すい臓がんと診断されながら、告知を積極的に受け入れ、家族とともに正面から病気と闘う農学博士・相馬暁氏の生き方を取り上げた。一緒に闘う家族の本音、医療機関の告知に関する意識と考え方も紹介しながら、リスナーからの体験談やメッセージをラジオならではの双方向性を駆使して伝える。重くなりがちなテーマを、希望を持ってリスナーに伝えるインタビューの手法や演出が素晴らしい。

優 秀 <文化放送> 志の輔ラジオ 土曜がいい

プロデューサー 奥山拓也  ディレクター 塚本 茂  出演 立川志の輔、吉田涙子

土曜の午前11時~午後1時放送。週末の昼間はのんびり過ごしたい―そんな気分を演出するため噺家の立川志の輔と落語通の吉田涙子が落語や音楽、さまざまな情報をゆったりとしたペースで伝える。生ワイドらしいまとまり感と、ラジオでは取り上げられなくなった落語のパートにひきつけられる。特に、立川志の輔の豊かな知性と、人としての興味の持ち方に感心させられる。

優 秀 <新潟放送> かぎとみ徹の熱烈ラジオSHOW

プロデューサー 高橋京子  ディレクター 平澤 正  出演 かぎとみ徹

月~金曜の午後1時~3時20分放送。日替わり企画でリスナーからメッセージを募集し、電話を使ってコメントを紹介する。タイトルの「熱烈」はリスナー参加を熱烈に歓迎するという思いを込めたもの。この日は「新潟のガソリンスタンドは、店員が勝手にクルマのドアを開けて失礼だ」との投稿に基づき、ガソリンスタンドのサービスを通じて県民性を浮き彫りにした。何気ないリスナーの疑問を社会的な広がりをもった企画に昇華させるパーソナリティーの話術も秀逸である。

優 秀 <北日本放送> とれたてワイド朝生! 再生~新井満の世界~

プロデューサー 鍛冶優吉  ディレクター・構成 松本芽久美  パーソナリティー 岩井克行、高野知香子

月~金曜の午前8時38分~11時放送。ゆったりと、ひと手間かけた「スローラジオ」がコンセプト。この日は「死ぬ事、生きる事」「死と再生」をテーマに、高校2年の娘を失った母親が「千の風になって」という歌で救われたとの投稿をもとに、この歌を訳詞した芥川賞作家・新井満氏をゲストに招き、死生観を紹介する。朝ワイドでこれだけのテーマを正面から取り上げた勇気を評価する。

優 秀 <Kiss-FM KOBE> KOBE TEEN'S COMMUNITY "HO'VID PARK"

プロデューサー 山本 索  ディレクター 安政英幸  出演 森 夏子  ゲスト かしわ哲

日曜の午後10時~11時放送。1999年からスタートした、10代(ティーンズ)と正面から向き合うワイド番組で、リスナーから寄せられるメッセージを中心に、"ティーンが気軽に立ち寄ることのできる広場"が番組作りのモットー。この日は、ゲストに知的障害者の方々とロックバンドを立ち上げたミュージシャンのかしわ哲氏を招いた。パーソナリティーの包容力で感傷的なテーマを巧みにリードしていく手法に好感が持てる。

優 秀 <南海放送> やのひろみの「まいど!」~Gomix(ゴミックス)宇和島~

プロデューサー 田中和彦  ディレクター 玉井昌子  出演 やのひろみ  ゲスト 菊池俊彦

月~木曜の午後1時35分~4時50分放送。毎月第一木曜日は「Gomix」として、県内の町からパーソナリティーがゴミ拾いをしながら生放送する。この日は宇和島市からの放送。不法投棄されたストーブや布団、放置された軽トラック、さらには海辺のさまざまなゴミとの遭遇に、ストレートに喜怒哀楽を表現するパーソナリティー。生ワイドのなかにも社会性を失わず、その場に行って見たいと思わせる表現力と継続性が評価できる。

優 秀 <南日本放送> 土曜ワイド うねうねWeekend~鹿児島弁話 PART2~

ディレクター 米盛由紀子、永野志郎  出演 采野吉洋、笹田美樹 

土曜の午前11時~午後4時48分放送。番組も5周年を迎え、この日は南日本放送の年間テーマでもある「かごしま〔life〕」(鹿児島に住むことの豊かさ、素晴らしさを再認識しよう)を番組独自の切り口で取り上げ、鹿児島弁にスポットを当てた。地域によって異なる言葉を電話や中継を交えながら紹介、鹿児島弁の豊かさや面白さを再認識させた。ユーモアにあふれたエピソードをはじめ、日常性・地域性を番組全体で表現している。

テレビ報道番組

最優秀 <静岡放送> SBSスペシャル 宣告の果て~確定死刑囚袴田巖の38年~

プロデューサー 伊藤充宏  ディレクター・構成 笠井千晶  ナレーター 照井忠文、山口弘三

1966年、清水市で味噌会社の専務一家が殺害された。事件の犯人として死刑判決を受けた元ボクサーの袴田巖は、獄中から無罪を訴え続ける。捜査に対する疑惑が指摘されるものの、再審請求が地裁で却下される。彼は死への恐怖との狭間で人格を失いはじめ、家族との面会も拒否しだす。獄中で綴られた彼の日記と、彼を支援する家族、ジャーナリストなどの証言から、世の中から隔離された人間の心の葛藤に迫ると同時に、司法制度の問題点をも鋭く突きつける。事件に対する制作者の主張が明確な説得力のある作品。

優 秀 <青森放送> 彼らは「金の卵」と呼ばれた 

プロデューサー 黒滝久可  ディレクター 藤田恵美子  構成 坂本宇吉

昭和30~40年代、日本経済の底辺を支えた中卒集団就職者「金の卵」。農村部から夢と希望を持って都会に出たものの、就職先は町工場や零細企業で、単純作業や過酷な労働が待っていた。その中で努力を続けた者、挫折した者、帰郷した者・・・。転職を繰り返しながら、自らの進む道を見つけ出した男性など青森出身者8人の証言に当時の貴重な映像を交え、歴史に記録されることの少なかった集団就職者たちの軌跡を丹念に描いた。

優 秀 <ビーエス・アイ> 原爆の夏 遠い日の少年 ~元米軍カメラマンが心奪われた一瞬の出会い~

プロデューサー 田口和博、門脇利枝

ジョー・オダネル氏(82歳)は、米軍カメラマンとして戦後、原爆投下後の長崎、広島を中心とした、当時の日本と日本人の惨状を撮影した。彼は、自身が撮影した数多くの写真の中で、少年が頭をたれた弟を背負って直立不動で立っている写真を今でもリビングに飾っている。少年は死んだ弟を荼毘に付すために順番を待っていたのだ。この少年の行方を捜す彼の日本への旅を通じて、「原爆」「戦争」というテーマを新たな切り口で描いた。

優 秀 <中部日本放送> わかんない~学校へ行けない理由(わけ)

プロデューサー 後藤克幸  ディレクター・構成・撮影 宇佐美浩伯  出演 大石邦彦

大石アナウンサーが取材中に偶然に出会った不登校児の由衣香は、「わかんない」が口癖の小学6年生。学校へ行けない理由がわからない。母親も学校に行きなさいと娘に強く言うことができない。由衣香は、強く言えない母親の気持ちを察している。もつれた彼女の心の糸を、大石アナが時間をかけて、かつ深くは立ち入らずにそっと接しながら一緒に解きほぐしていく。新しいドキュメンタリーのあり方を示唆する優れた作品である。

優 秀 <朝日放送> 僕って?~教育の新たな課題、軽度発達障害~

プロデューサー 石高健次  ディレクター 大津容子  カメラマン 吉岡哲大  ナレーター 中嶋洋子

軽度発達障害児は、ある特定の学習ができない、集中力が持続せず落ち着きがないなどの障害を持っている。文部科学省が発表した調査結果では、クラスに1人か2人いる勘定となるという。彼らは知的障害ではないため、自らの障害を受け入れたくない気持ちと受け入れざるを得ない気持ちの狭間で戸惑い苦しむ。「高校進学」「大学卒業後の経済的自立」という問題をかかえる2人の障害者を、約1年にわたる丹念な取材で追い、彼らに対する地域社会や国の支援のあり方を提示した秀逸のドキュメンタリー。

優 秀 <高知放送> 満足死~医師 疋田善平の実践~

プロデューサー 佐竹慶生  ディレクター 田中正史  ナレーター 長谷川恵子

高知県の過疎の町に30年前に赴任した疋田医師は、末期医療で患者の意思を最大限尊重する「満足死」を長年提唱している。家庭を病室、診療所をナースステーションととらえ町全体を病院に見立て、家庭で天寿を全うさせることを基本理念としている。長年の活動が実り、町民の大半は自宅での死を希望するまでになった。日々の医療活動を丹念に取材し、疋田医師の生きざまを描くことで、誰もが必ず迎える死のあり方を考えるとともに、延命治療など本人の意思と乖離した現代医療に疑問を投げかけた。

優 秀 <九州朝日放送> 裏金作りが仕事だった~福岡県警元警部の告発~

プロデューサー 臼井賢一郎  ディレクター 大迫順平  ナレーター 沢田幸二  編集 中島千恵

法を守るはずの警察が裏金を作り、私的に流用していた。福岡県警の庶務係として架空請求書を作成、裏金作りを行っていた元警部の告発をもとに、県警幹部や現職警察官たちに徹底した裏づけ取材をかける。曖昧な言葉で逃げる県警幹部に対し、現職警察官やOBたちが次々とインタビューに答え、元警部の告発内容を裏付けていく。各地の警察で裏金作り問題が噴出しつつ、徹底的な証拠がなく真相が暴かれない中、証言と事実の積み重ねによって、警察の組織的な裏金作りの実態に迫った力作。

テレビ教養番組

最優秀 <広島テレビ放送> チンチン電車と女学生 2003・夏・ヒロシマ 

プロデューサー 望月公正  ディレクター・構成・脚本 堀川恵子  ナレーター 吉永小百合  撮影 日野知行

戦時中、出兵した男たちに代わってチンチン電車を運転する「少女運転士」を養成するための学校があった。当時の資料は戦災でほとんどなくなり"幻の女学校"となっていたが、取材班が資料を発見し、元女学生たちへの取材を実施。少女運転士として広島で過ごした頃のまばゆい青春の記憶、そして、原爆で一瞬にして全てを奪われた悲しみを描き出した。今も広島を走るチンチン電車に隠された秘話を発掘し、現在に伝えることで、戦争がもたらす悲しみ、平和な時代に生きる喜びを訴える。放送をきっかけに、廃車予定だった当時の車両が保存されるなど、社会的にも大きな反響を呼び起こした。

優 秀 <岩手朝日テレビ> もう一度、風に~車イスのレーサー・横澤高徳~

プロデューサー 浅田英利  ディレクター 阿部卓司  ナレーター 三橋泰介  構成 加藤宗博

モトクロス練習中の事故で脊髄を損傷した横澤高徳さんは、下半身不随となってしまった。失意の中、そのスピードから「最も危険な障害者スポーツ」と言われるチェアスキーと出会い、パラリンピック出場を目指していく。仕事、父親、そしてレーサーの3役をこなしながら、自らの限界に挑む横澤さんの人間的魅力を正攻法のインタビューで見事に引き出すことに成功したヒューマンドキュメンタリー。

優 秀 <フジテレビジョン> フジテレビ開局45周年記念番組 悠久の感動スペシャル「地球45億年の奇跡」(全4話中1、2、4話)

プロデューサー 堤 康一、渡辺和弘、加藤義人  ディレクター 高橋才也

地球が生命あふれる星になるまでには、"水の星誕生や生命の奇跡""恐竜の奇跡""人類の奇跡"など数多くの奇跡が存在する。これら地球45億年の歩みに秘められた奇跡を4夜連続で描き出した。最新の研究成果を、効果的なCGと演出で子どもたちにもわかりやすく表現し、かつ大人の好奇心をも満足させる内容にした構成力は見事であり、その完成度の高さは特筆に価する。

優 秀 <新潟放送> 人形さまのまちおこし~村上市の活性化への挑戦~

プロデューサー 南加乃子  ディレクター・構成・脚本 櫻井雅也  ナレーター 石塚かおり  サブディレクター 斉藤正紀

城下町・鮭文化の町として知られる村上市。落ち込みの激しい、古くからの中心商業地域の活性化を目的に、道路拡張計画が持ち上がった。鮭加工業を営む吉川真嗣さんはこの計画に疑問を持ち、村上独自の住まい「町屋」や各家々に伝わる人形を公開するなど、古くからの町の魅力を利用した活性化に取り組んでいく。その活動は次第に周囲を巻き込み、村上を訪れる観光客が大幅に増加するなど大きな成果を生んだ。一つの町での個人の活動を通じて、全国の地方社会が抱える問題をも浮き彫りにする、示唆に富んだ作品。

優 秀 <石川テレビ放送> 奥能登 女たちの海

プロデューサー・ディレクター 赤井朱美  ナレーター 田中好子  構成 岩井田洋光  出演 磯野シズ 

能登半島の輪島市海士町は350年前から続く海女の町。現在でも10代から80代までの海女220人が活躍している。心臓病の手術を受け、医者から潜るのを諦めるように言われながらも海に挑み続ける70代、大学進学よりも海女の道を選んだ10代など個性豊かな人々に独特の距離感で迫り、その人物像を見事に浮かび上がらせている。閉鎖的と言われる伝統的な社会に飛び込み、ありのままの生活を捉えた映像は社会学的にも意義深い。

優 秀 <関西テレビ放送> ドキュメンタリー「僕の生きる道」をたどって

プロデューサー 杉本真一  ディレクター 吉國ぴあ  撮影 田中秀尚  編集 寺村淳子

昨年放送されたドラマ「僕の生きる道」のホームページに届いた膨大なメールの中に、ドラマの主人公と同じく"がん"を宣告された人々からのものもあった。ドラマに感応したメールを送ってきた、がん再発と闘う小学校教師や、余命を懸命に生きる末期がんの患者などを取材し、その人生の真実に迫った。ドラマとドキュメンタリーを高次元で昇華させることに成功した画期的な企画力が光る。

優 秀 <福岡放送> いのち輝く時~最新不妊治療の現場から~

プロデューサー 藤井隆行  演出 鎌倉由和  取材 山田圭吾、古田 進

日本で1年間に生まれる赤ちゃん117万人のうち、100人に1人は体外受精である。また10組に1組の夫婦が不妊症に悩んでいると言われており、不妊治療への注目が高まっている。番組では2組の夫婦が不妊治療の末、妊娠にたどりつくまでを追いながら、夫婦の絆、家族の絆とは何かを問いかける。最新の医療技術の紹介に加え、多胎妊娠や流産率の増加、保険が利かない治療費など、不妊治療が抱える多くの問題にも鋭く迫る。

テレビエンターテインメント番組

最優秀 <関西テレビ放送> さらば征平!最後の挑戦

プロデューサー 武藤良博 ディレクター 東田 元  ナレーター 豊田康雄  構成 萩原芳樹

関西弁しか話せない局アナウンサー桑原征平。彼はその35年間のアナウンサー生活をほぼニュース原稿と無縁に過ごし、水球で鍛えぬいた肉体のみを武器に、関西一いや東洋一の"挑戦アナウンサー"として永くお茶の間に愛されてきた。そんな征平アナもついに定年退職を迎える。今ならおよそ認められないであろう体を張ったチャレンジを振り返りながら、南米ペルーでの最後の挑戦に臨む。貴重な映像に収められたリポートの数々に圧倒されるとともに、笑いあり、涙ありの"民放テレビ"らしい優れたエンターテインメントに仕上がっている。

優 秀 <青森放送> じいちゃん ばあちゃんと夏休み

プロデューサー 黒滝久可 ディレクター 本宮修司  ナレーター 田村啓美  構成 橋本康成

埼玉県に暮らす2人の兄弟、筒井貴史くん(9歳)と裕己くん(7歳)は、夏休みを利用して母親の実家へ行くことになった。祖父母は青森県の日本海に面した町で漁業を営んでいる。言葉や食べ物、環境など普段と違うその暮らしに最初はなかなか馴染めない。お互いに試行錯誤の毎日が過ぎていく。兄弟が遭遇する、ちょっと笑ってしまう小さな出来事を温かい視点で取り上げ、祖父母の喜びと戸惑いもうまく表現されている。

優 秀 <ビーエス日本> 大海球紀行スペシャル「バハ・カリフォルニア 奇跡の半島1500キロ縦断の旅」

プロデューサー 遠藤雅充  柏井信二  尾崎正浩  構成・演出 永田雅一  

アメリカ大陸の西海岸にツララのように伸びる全長1,500kmのカリフォルニア半島、バハ・カリフォルニア。海洋ジャーナリストの永田雅一さんがバハ・カリフォルニアを南から北へと縦断し、海に生息する貴重な海洋生物をハイビジョン映像に収めた。さらに漁師だけが住む孤島に上陸し、大自然の魅力とその神秘的な世界を記録する。海の中の世界を圧倒的な映像で余すことなく伝えている。

優 秀 <静岡放送> SBSスペシャル アゲイン~SL復活に挑んだ760日~

プロデューサー 村松良道  ディレクター 原木雅雄  ナレーター 青森 伸  構成 大池重貴

日本で唯一1年を通してSL列車を定期的に走らせている静岡県の大井川鐵道。山間のこの鉄道会社は、過疎化による経営難を脱するため、昭和50年代に入り鉄道自体を観光資源にしようとSLの動態保存を始めた。その大井川鐵道で解体寸前のSLを復活させようという話が持ち上がる。会社始まって以来といえるこの挑戦には、様々な困難が待ち受けていたが、それらをひとつひとつ乗り越えSLに新しい命を吹き込む。SL修復のため、まるで人間と接するかのように奮闘するスタッフの思いが伝わってくる。

優 秀 <中部日本放送> 山小屋カレー

プロデューサー 藤井 稔  ディレクター・ナレーター 大園康志  ナレーター 加藤由香  構成 松永英隆

三重県御在所岳(標高1,212m)の中腹にある山小屋「御在所山の家」。小屋を経営する94歳になる佐々木正一さんと、92歳になる春江さん。老夫婦2人きりの山小屋とあって、食事の準備、片付けなどは、お客の協力で成り立っている。人里離れた山小屋での老人二人の暮らし。しかし、現実のそこには、想像以上に元気で明るく、たくましい「老い」の日々があった。2人の会話が見る者に「元気」を与えてくれる。また、映像、構成など番組としての完成度も高い。

プロデューサー 藤井 稔  ディレクター・ナレーター 大園康志  ナレーター 加藤由香  構成 松永英隆

三重県御在所岳(標高1,212m)の中腹にある山小屋「御在所山の家」。小屋を経営する94歳になる佐々木正一さんと、92歳になる春江さん。老夫婦2人きりの山小屋とあって、食事の準備、片付けなどは、お客の協力で成り立っている。人里離れた山小屋での老人二人の暮らし。しかし、現実のそこには、想像以上に元気で明るく、たくましい「老い」の日々があった。2人の会話が見る者に「元気」を与えてくれる。また、映像、構成など番組としての完成度も高い。

優 秀 <山口放送> ふたりの桃源郷 

プロデューサー 赤瀬洋司  ディレクター 佐々木 聰  ナレーター 槇 大輔

山口県美和町に暮らす田中寅夫さん(90歳)とフサ子さん(85歳)が、戦後の貧しい時代に切り開いた山。そこはいまだに電気も水道も電話も通っていない。14年の歳月が過ぎた頃、生活のため家族は山を捨て大阪に移った。子どもたちが自立し、手が離れた時、2人はあえて都会での生活を捨て、夫婦の原点である思い出の山へと戻るのだった。家族の温かい関係が、13年にわたる取材によってきめ細やかに描き出されており、優れたドキュメンタリー番組となっている。

優 秀 <福岡放送> 路上が我らのヒノキ舞台 九州チンドン屋烈伝

プロデューサー 藤井隆行  ディレクター 逢坂淳之  取材 高原慶典  編集 渡辺幸太郎

福岡市のアダチ宣伝社を率いるのが熊本出身の安達ひでやさん(40歳)。路上で始めたピアニカ演奏がきっかけでチンドン屋に転身して10年。いまや九州のチンドン屋5業者のリーダー的存在である。時代遅れといわれながらも、路上での芸に情熱を傾ける奮闘ぶりを、日本一を争う全日本チンドンコンクールを通して追いかける。芸に対する彼らの誇りをうまく引き出しており、多くの若者がチンドン屋を目指しているという事実も興味深い。

テレビドラマ番組

最優秀 <東京放送> さとうきび畑の唄 

プロデューサー 八木康夫  ディレクター 福澤克雄 脚本 遊川和彦  出演 明石家さんま

第二次大戦下の日本で唯一、一般市民を巻き込んだ沖縄の地上戦。そのむごたらしさを伝え、いまなお多くの人に愛されている「さとうきび畑の唄」。この曲をモチーフに、沖縄で小さな写真館を営む主人公とその家族たちが悲しい運命の波にもてあそばれる姿を描く。イラク派兵問題や北朝鮮をめぐる情勢が緊迫感を帯びるなか、戦争の悲惨さを正面から見つめ、平和への祈りを次世代に伝えようとの気概に満ちた姿勢を評価したい。特に、地上戦シーンの粘り強い描写による迫力、綿密な時代考証に裏打ちされたリアリティーが出色。明石家さんまをはじめとする出演者らの、俳優としてというより、それぞれの庶民性を生かしたキャラクターが、明るさのなかにメッセージ性を鮮烈に浮かび上がらせた。

優 秀 <北海道テレビ放送> そして明日から

プロデューサー 四宮康雅  ディレクター 多田 健  脚本 岩松 了  音楽 増本直樹

10年以上も会っていない父親に、息子が自分の結婚式の招待状を出したことから日常に広がる小さな波紋。そこから、家族における「父性の意味」をあらためて問い直そうとした作品。北海道テレビが1996年以来、地元を舞台に年1本のペースで制作している単発ドラマもすっかり定着し、気持ちよく楽しめる。紳士服の仕立屋という職人気質の世界も興味深く、地元・函館も"ご当地もの"的なお仕着せではなく、地に足の着いた日常的光景として描写されていて好感が持てる。今後、さらに高水準の作品が期待できる。

優 秀 <テレビ朝日> テレビ朝日開局45周年記念ドラマスペシャル「それからの日々」

チーフプロデューサー 五十嵐文郎  プロデューサー 内山聖子  作 山田太一  監督 深町幸男

テレビ史の記憶に残る名作「岸辺のアルバム」から四半世紀。その作家・山田太一がリストラ、老後への不安、主婦の自立、定職を持たないフリーター現象など今日的な素材を散りばめながら、改めて現代家族のあり方を問う。派手で華やかな描写やドラマティックな展開とは無縁だが、ささやかな日常に起こる家庭内の小さな出来事を細やかに描く姿勢には、小津安二郎の世界にも通じる日本のホームドラマならではの安定感がある。

優 秀 <フジテレビジョン> フジテレビ開局45周年記念ドラマ「白い巨塔」

企画 和田 行  ディレクター 西谷 弘  原作 山崎豊子 脚本 井上由美子

権力欲や名誉欲に振り回され、最終的には非業の死を遂げる天才外科医・財前五郎。一方、真摯に人の生と向き合い、無欲で人命を救い続ける内科医・里見脩二。対照的な二人の生き様と、彼らを取り巻く人間模様を通じて現代医療が抱える矛盾や組織と個人の相克を描く連続ドラマの第11話。緊張感と起伏に満ちた物語の分岐点となるエピソードで、効果的なアウシュビッツ元収容所ロケは、人間をモノとして扱いがちでモラルの欠如した現代への警鐘にもなった。社会派的な骨太さと良質なエンターテインメントが両立した、目の離せない展開である。

優 秀 <WOWOW> 恋愛小説

プロデューサー 松橋真三、守屋圭一郎  ディレクター 森 淳一  脚本 坂東賢治

愛に希薄といわれて久しい現代、あえて「人を愛するということはどういうことか?」というテーマに正面から向き合った作品。金城一紀の同名の短編小説をベースに、オリジナルの登場人物やエピソードをふくらませ「愛すれば愛するほど、多くのものを失う」とのメッセージを深く掘り下げた。電話やメールを一切使わず、他人とかかわらない主人公の姿からは、若者たちの恋愛感の変容も垣間見られ興味深い。映画的な陰影や光の表現で、ファンタジーを現代に蘇らせようとの映像的冒険も意欲的だ。

CM部門

ラジオCM第1種(20秒以内)

最優秀 <山口放送> 高山石油ガス "LPガス、住宅設備機器の販売及びリフォーム事業/ 「あ~~」篇"(20秒)

プロデューサー 藤田史博  ディレクター 佐々木忠義  構成・コピー 若木 信(フリー)  音楽・サウンドエフェクト 澄田真美

風呂に入る音に続き、女性の気持ち良さそうな「あ~~~」と言う声。「お風呂の気持ち良さは、あ~の長さで決まる 高山石油ガス」という男性のナレーション以外は、「あ~~~」という声だけで構成されたCMである。それでいて、お風呂の気持ちよさが十分に伝わる作品に仕上がっている。一声を聞かせる演技力と短尺を活かした演出が秀逸である。

優 秀 <文化放送> 吉野家ディー・アンド・シー "牛丼/そば屋にて"(20秒)

ディレクター 五井千鶴子  音楽・サウンドエフェクト 玉井和雄(フリー)  録音技術 久保田正三

蕎麦屋の店内と思われるSE、勢いよくそばをすすり、汁を飲み干した後に、「ハァ~ 牛丼喰いて」と一言。男性の実感溢れる一言が、リスナーの共感を呼ぶ。牛丼は音で表現しにくい食べ物だが、蕎麦屋での様子をリアルに表現することでリスナーを引き付け、最後に牛丼のCMと分らせる演出によって、強く印象に残る作品となった。

優 秀 <エフエム東京> 味の素 “CookDo Korea/本場の味コリア篇”(20秒)

プロデューサー 林屋創一  ディレクター・構成・コピー 木村暁彦(アサツーディ・ケイ)  録音技術 入江幸生(エアーサウンド)

20秒という短い時間を最大限に活用し、細部まで作り込まれた作品である。夫婦の会話に韓国の代表的な料理の名前が織り込まれ、テンポ良くまとめられている。巧みな演出で駄洒落もすんなり聞かせる。本格的な味付けを家庭で手軽に味わえる合わせ調味料のCMであるが、おいしさ、食べる楽しさが十分に表現されている。

優 秀 <毎日放送> 龍角散 "龍角散/カスミガセキ"(20秒)

ディレクター 奥林秀晃(関西録音)  出演者 野村啓司、柏木宏之、関岡 香

短尺CMは、ストーリー展開により説得力を持たせることは難しい。しかし、この作品は密室でよからぬヒソヒソ話をする役人を描いて、秒数以上の強い印象を与えることに成功している。密室会談のタバコとホコリで出る咳を"カスミガセキ"と名づける風刺的なCMは、異彩を放っていてインパクトがある。

優 秀 <毎日放送> 太田油脂 "ナメクジ逃げ~逃げ~/スタコラスタコラ!"(20秒)

ディレクター 奥林秀晃(関西録音)  出演者 松井 愛

「ナメクジ逃げ~逃げ~」は、なめくじを寄せ付けないよう畑や花壇に撒く天然有機剤である。一般的には馴染みの薄いこの商品を、ラップ調のリズミカルな台詞回しで的確に説明している。一歩誤ると垢抜けない印象になりがちなラップ調も、この作品では一風変わった個性となって魅力のひとつとなっている。

ラジオCM第2種(21秒以上)

最優秀 <ニッポン放送> 日本音楽著作権協会 "企業PR/フォスターの夢"(120秒)

プロデューサー 藤井正博、梅津 裕(日本音楽著作権協会)  ディレクター・構成・コピー 中山佐知子(ランダムハウス)構成・コピー 藤本ヨシカズ(ランダムハウス)

フォスターは、数多くのヒット曲を生み出しながらも、収入に恵まれず37歳でこの世を去った。彼の時代には劇場で何万回曲が流れても作曲家のポケットには一銭も入らず、唯一の収入源である楽譜の印税も、無断出版が横行し相応の対価を得ることはできなかったという。フォスターの曲を効果的に使いながら、彼の人生を描き、リスナーに著作権管理の重要性を伝える秀逸な作品である。

優 秀 <札幌テレビ放送> 札幌テレビ放送 "アナウンサー募集/アナウンサー募集 人事部長より"(40秒)

ディレクター 岡崎みどり  出演者 大西賢英、谷口裕子  録音技術 大針三治

アナウンサーが見事な「早口ことば」を披露、続いてアナウンサー募集責任者である人事部長が「早口ことば」に挑戦している。プロとアマチュアを対比して面白さを引き出す一方、プロの力量を示すことにより"技術を身に着けしっかり仕事をする意欲のある人"を望む放送局のメッセージがはっきり伝わるCMとなった。

優 秀 <福井放送> 福井県警察本部・福井放送"おれおれ詐欺被害防止啓発キャンペーン/ おれおれ詐欺 替え歌で撃退"(60秒)

プロデューサー 福本 実  ディレクター 谷戸礼子

福井県織田駐在所の山内所長は、「おれおれ詐欺被害防止」のための啓発活動を続けている。お年寄りにも人気のある演歌の替え歌を作り、集会場等を訪ねて一緒に楽しく歌いながら注意を呼びかけているのだ。CMの作りはいたってシンプルだが、山内所長という得がたいキャラクターが、住民と密着した活動を上手くアピールしていて好感が持てる。

優 秀 <エフエム大阪> 大阪スクールオブミュージック専門学校"企業PR/だんだん自信がでてくるソング篇"(90秒)

プロデューサー 石田洋一  ディレクター 桂ケイタ(ビッグフェイス)  アイディア・企画 たけお秀幸(ビッグフェイス) 出演者 矢野藍子(フリー)

ミュージシャンを目指して専門学校に通う女性がCMの主人公。彼女がクラスの仲間とのバンド活動を通じて、夢を目指して進む決意に至るまでの変化が生き生きと描かれている。初めは自信なさそうに小さな声で語っていたのが、どんどん自信を深めて、最後は溌剌とした歌に変わっていく様子から、学校で学ぶ楽しさがストレートに伝わる作品である。

テレビCM

最優秀 <北海道放送> 網走市観光協会 "道東・オホーツク観光PR/無人駅のレストラン"(90秒)

ディレクター 泉 雄貴  音楽・サウンドエフェクト 依本慎也(セントラルオフィス)  撮影 稲沢英俊(HBCメディアクリエート) ナレーション 岩尾 亮(オフィスティンブル)

じっくり煮込んだビーフシチューと毎朝焼かれるケーキが自慢のレストラン、父の味を守る評判のラーメン店、オホーツクの海を見ながら本格的なコース料理をいただける洋食店。これらはいずれもかつての駅舎を利用し営業されている。雰囲気のある映像とゆったりした語り口が、旅への誘いとなり高い評価を得た。

優 秀 <中京テレビ放送> 中京テレビ放送 "自社PR/チュウキョ~くんショートストーリー 第11話「美しき世界」の巻"(60秒)

プロデューサー 池岡亮治  ディレクター 小島英幸(中京ビデオセンター)  音楽・サウンドエフェクト 服部孝也(フリー) CG制作 塩見英里子(中京ビデオセンター)

中京テレビのイメージキャラクター"チュウキョ~くん"は、人の手を借りないと何にもできないダメな子という設定である。白くて丸い不思議な生き物"チュウキョ~くん"を通じて、身近にある自然の美しさを感じ取ってもらいたいという意図で作られたCM。CGアニメの精緻な描写により、独自の世界観を表現することに成功している。

優 秀 <山陽放送> 味の素 "うまいシリーズ/うまいさぬき風うどんの作り方、教えます 「麺通団 商売人泣かせやな!」篇"(60秒)

プロデューサー 山田伸二  ディレクター 石原正裕  アイディア・企画 根橋 敬(電通) 構成・コピー 鈴木泰二郎(四国電通)

「麺通団」は、讃岐うどんの通であり、ファン、研究者でもある面々のことである。この「麺通団」のメンバーと讃岐うどん店の店主を出演者に起用し、さぬき風うどんつゆの素をPRしている。出演者の素人っぽさが味わいとなり、説得力のあるCMに仕上がっている。小細工のないストレートな表現が、好感度を高めている。

技術部門

最優秀 <フジテレビジョン> ミュージック・イレーサーの開発

研究・開発担当者 岡村智之、松永英一、中田安優

音楽やセリフ、効果音等が混合された放送番組の音声から、セリフや効果音等は残し、特定の音楽だけを消去する装置を、オリジナルの音楽から番組制作時のミキシング作業を推測して、位相に依存せずに減算処理する方法で開発・実用化した。これにより、放送番組中の著作権処理が困難な外国音楽を別の音楽に差し替える編集作業を短時間に行うことが可能となり、放送番組の二次利用の推進に大きく貢献した。

優 秀 <札幌テレビ放送> コンテンツマネジメントシステムの開発

研究・開発担当者 島 昌弘、五十嵐一志

テキストや静止画、音声、動画等のデジタルコンテンツをデータベース化して統合管理を行うことで、放送局が運営するWebサイトや携帯電話向けサイト等のコンテンツの自動作成や運用管理を支援するコンテンツマネジメントシステムを開発・実用化した。これにより、即時性・正確性が求められる放送番組連動Webサイト等のコンテンツ作成・更新が容易となり、コンテンツ配信・管理技術の発展に貢献した。

優 秀 <東京放送> 地上デジタル放送用高圧縮エンコーダの開発

研究・開発担当者 宮澤俊二、安田英史、本間康文

テスト映像を用いた主観評価や客観評価等を繰り返し実施しながら符号化手法の改善や符号化パラメータの最適化を図り、HDTV映像の画質を落とさずに従来の約3分の2以下に情報量を圧縮可能な地上デジタル放送用高圧縮エンコーダを開発・実用化した。これにより、限られた情報量の中で、BSデジタル放送と同等画質のHDTV放送が可能となり、地上デジタルテレビ放送技術の発展に貢献した。

優 秀 <文化放送> FOMA高品位音声中継システムの開発

研究・開発担当者 中村敏明、木誠利、田坂淳一、津茂谷行弘

番組中継や報道取材などの局外からの中継手段として、第3世代携帯電話(FOMA)網の回線交換データ通信を利用し、放送品質のデジタル音声信号を伝送する小型・軽量の音声中継システムを開発・実用化した。これにより、中継場所の制約が少なくなり、かつ機動性の高い局外中継が少人数で可能となり、ラジオ中継技術の発展に貢献した。

優 秀 <日本テレビ放送網> CCD光学ブロック回転機能付きHDハンディカメラの開発

研究・開発担当者 鎌倉 和由、甲斐 創、佐久間丈貴、片柳幸夫

歌番組やドラマ、バラエティ番組等で演出効果を高めるために使用される画面の回転効果を、カメラ内部のCCD光学ブロック自体を回転させることで実現するとともに、画面の水平追従機能も搭載したHDTVハンディカメラを開発・実用化した。これにより、画面の回転効果の撮影が極めて容易になるとともに、歩行撮影時等の画面の水平安定性が向上し、ハンディカメラを用いた制作技術の発展に貢献した。

優 秀 <テレビ朝日> 新本社バーチャル・リアルタイムCGシステムの開発と制作

研究・開発担当者 坂田敏治、島田了一、矢野 修、高梨賢一

過去の番組運用で得られた技術やノウハウ等を活かし、経済効率に優れた国産3Dグラフィクス・プロセッサーを中核としたハードウェアと最新のソフトウェアを組み合わせ、HDTV対応のバーチャル・リアルタイムCGシステムを開発・実用化した。これにより、高度なCG技術を駆使した新たなバーチャル映像効果が可能となり、実写映像と組み合わせた映像表現技術の発展に貢献した。

優 秀 <フジテレビジョン> 蛍光灯スポットライト(エフエルキュービックライト)の開発

研究・開発担当者 山際邦康、須藤直宏

灯体に半球面ミラータイプのリフレクターを採用して光を効率よく集光するとともに、灯体の先に4分割曲面型ミラータイプのバンドアーを取り付けて、さらに集光度を向上させた小型・軽量の蛍光灯スポットライトを開発・実用化した。これにより、スポットライトの発熱量・消費電力量の大幅な低減が可能となり、テレビ放送における照明技術の発展に貢献した。

放送活動部門

ラジオ

入 選 <ラジオ福島> チャリティーミュージックソンとリヤカーサンタ

実施責任者 大和田新 

目や体の不自由な方に、音の出る信号機や教育機器・福祉機器などを贈る募金活動「通りゃんせ基金」キャンペーンのメインイベントとして、12月24日正午から25日正午までの24時間生放送「ラジオ・チャリティー・ミュージックソン」を実施。イベントに合わせて、県内8チーム120人のボランティアがサンタクロースの衣装でリヤカーを引きながら、募金を呼びかけた。放送による聴取者への呼びかけだけではなく、実際にリヤカーで聴取エリアを回ることで、地域の人々がより参画しやすい活動となっている。

入 選 <TBSラジオ&コミュニケーションズ> 防災ラジオ954 TBSラジオリフレッシュキャンペーン

実施責任者 相田康夫

生活に密着した「楽しむためのラジオ」は、「災害時に必要不可欠な情報ツール」でもある。このことを再認識してもらうべく、各自治体の防災イベントなどに出向き、万一のときに「防災ラジオ」としてきちんと活用できるよう、無料でラジオの修理と電池の交換を行なった。また、ラジオの上手な聞き方のレクチャーや防災ラジオのプレゼント、防災ワンポイントメモを配布するなど、防災意識の啓発にも寄与した社会性の高い活動である。

入 選 <静岡放送> おひさまのたねキャンペーン

実施責任者 佐野勝美

歌手・西島三重子さんが歌う「おひさまのたね」は、子どもの健やかな成長を願う親の気持ちを歌う曲。彼女はこの歌を「親と子」「先生とこどもたち」の架け橋にしてもらおうと、幼稚園などに譜面を送る活動を続けていた。静岡放送では、この活動をバックアップ。新たに小学校へ入学する園児を応援するテーマソングとして使用するとともに、ラジオを通じて園児たちの歌声を紹介するキャンペーンを実施。歌声の輪は広がり続けている。

入 選 <福井放送> 時報スポットの一般聴取者への開放 時報の時は耳がダンボになる~老若男女がラジオで○時です~

実施責任者 私市秀子 

時報スポットに一般聴取者のメッセージを盛り込んだ企画。これまで、3歳の幼児から50代、60代の熟年世代まで80人を超える聴取者が出演し、「○時です」と元気に時を告げている。時報前に聴取者が自由に語る20秒のメッセージもバラエティーに富んでおり、単調になりがちな時報が「人気スポット」となった。アイデア一つで地域住民にラジオをより身近に感じてもらうことに成功した、斬新な活動といえる。

入 選 <ラジオ関西> ラジオ関西における 高齢者応援放送への取り組み

実施責任者 今林清志

日本の総人口の約18.5%を65歳以上の高齢者が占めている。この超高齢社会を明るく活力ある社会としていくために、「60歳からげんきKOBE」など「高齢者応援放送」4番組を通じて、健康・福祉・経済生活・生きがいなど、高齢者の日常生活に即した多様な課題の解決に資する情報を提供している。個別番組だけではなく、放送局全体で高齢者の現実をとらえ、放送を通じて支援しようとする理念は高く評価される。

入 選 <高知放送> 園芸相談

実施責任者 浜田恵秀 

高度成長を続ける日本の中で、あらためて身の周りの自然に目を向けてもらおうと、1973年に園芸に関するリスナーからの電話相談を受け付ける番組を開始した。質問は生放送中に受け付け、親子2代にわたり相談員を務める園芸研究所の武井道夫氏が答える。リスナーからは質問だけでなく、その後の報告が寄せられるなど、番組を通じたコミュニケーションが広がっている。リスナーの求める情報に真摯に応えていく、ラジオ放送の原点とも言える活動。

入 選 <宮崎放送> 「開局50周年記念 ひむか神話街道を行く」の放送

実施責任者 湯浅和憲

古事記や日本書紀の舞台として知られる日向(ひむか)の国・宮崎には、数多くの神話や伝説が残されている。「ひむか神話街道」は、これらの神話や伝説の地を結ぶ高千穂町―高原町間の観光ルート。この街道に沿って、ラジオカーに乗ったリポーターが各市町村に伝わる神話や伝説をひとつひとつ紹介していく。地域の遺産を活かした独自性の高い取り組みであり、新たな観光資源の開発にも繋がるなど、地域の発展にも大きく貢献した。

テレビ

入 選 <東北放送> 地域により親切な天気予報を!TBC気象台

実施責任者 阿相健一

全国有数の稲作地帯を抱えるとともに、有数の漁業水産県でもある宮城県。細かな気象情報へのニーズが非常に高い。東北放送は「より細かな情報発信」「より身近な生活気象情報の確立」「防災情報の充実」を柱に、2人の気象予報士が18地点の独自ピンポイント予報など、生活にじかに役立つ情報提供を目指す。番組情報にとどまらず、ホームページや携帯電話なども利用し、地域情報を発信する成功例といえる。

入 選 <テレビ朝日> ドラえもん募金イラン大地震被災者支援

実施責任者 吉田俊徳

1995年の阪神・淡路大震災を機に、テレビ朝日は主体的な募金活動を通じて社会福祉活動に貢献していくことを目的に「ドラえもん募金」を立ち上げた。ダイヤルQ2を使い、1コールで100円を寄付できる。今年1月に実施した「イラン大地震被災者支援」のための募金には、121,885コール、総額12,188,500円の寄付が集った。専用の電話回線を常時準備するなど、万一の際にも迅速に対応できるシステムを作り上げている点が評価できる。

入 選 <静岡第一テレビ> D・Iエコキャンペーン 朗読会

実施責任者 渡邉 淨

開局20周年を機に、1999年から静岡県の環境保護につながる社会貢献活動をスタート。森をテーマとした絵本を県内のすべての小学校へ配布し、さらにアナウンサーがその絵本を朗読する「出張朗読会」を実施している。このほか、啓発CMや番組の放送にも積極的に取り組んでいる。放送局が地道に「森林保護・森作り」のためのキャンペーンに取り組むことが地域に根ざした活動へと広がりをみせている。

入 選 <東海テレビ放送> シリーズ「よみがえる堀川」

実施責任者 野瀬義仁

1610年に名古屋城とその城下町(現在の名古屋)を造った際に水上交通の動脈として掘られた運河「堀川」。以来300年近く、人々の暮らしとともにあった堀川は、高度成長期に大量の産業排水や生活排水が流れ込み、ヘドロまみれの「どぶ川」と呼ばれる状況となった。東海テレビ放送は1999年から堀川の再生を訴え始め、今回、堀川の浄化と賑わいの復活を呼びかける「よみがえる堀川」を展開。市民の関心も徐々に高まり、川の再生に向けた動きが確実に前進していることが伝わってくる。

入 選 <関西テレビ放送> FNNスーパーニュースほっとカンサイ シリーズ「クルマ社会の歪み」

実施責任者 青瀧博文

モータリゼーションは快適な生活と経済発展をもたらしたが、その一方で交通事故はあまりに日常的となり、ニュースにすらならない状況である。2年半にわたり放送した「クルマ社会の歪み」シリーズで、飲酒運転の厳罰化など道路交通法の改正や、過労トラック運転の実態など様々な角度から「クルマ社会」の問題点をあぶり出す。日常生活で見落としがちな問題にスポットを当て、視聴者からも多くの反響が寄せられており、今後のさらなる取り組みが期待される。

入 選 <山陽放送> テレビ・ラジオ統一キャンペーン「岡山からのメッセージ『救え!戦場のこどもたち』」

実施責任者 石野常久

次代を担う子どもたちが、イラクをはじめ世界中で起きている戦争やテロの犠牲になって苦しんでいる。子どもたちは一刻も早い救済を待っている。AMDA(アジア医師連絡協議会)や国際医療ボランティア団体を通じた活動をはじめ、テレビ・ラジオで関連番組を放送し、学校、職場などでそれぞれが「平和」について考え、実践してもらうキャンペーンを展開した。山陽放送の歴代中東支局長が取材を通じて目の当たりにした戦争のむなしさが、キャンペーンを通じて伝わり、視聴者・聴取者の共感を呼んでいる。

入 選 <熊本放送> 「熱血ジャゴ一座 只今参上!」

実施責任者 村上雅通

「熱血ジャゴ一座 只今参上!」は、熊本県内を巡回公演する公開収録番組。月に一度のペースで収録し、2001年の旗揚げ以来、29の市町村を訪れた。劇団のコンセプトは、地域の人が「忘れ去った(去ろうとしている)」地元の文化の発掘で、収録地にまつわる話題や歴史、伝統芸能をもとにオリジナルのストーリーを作っている。方言をベースとした公演で地域文化を発掘しようという試みを、限られたスタッフながらも精力的に展開しており、まさに"地域に根ざした活動"といえる。

統一キャンペーンスポット部門 テーマ:「守ろう地球環境」

ラジオ

最優秀 <ニッポン放送> 空中鬼(60秒)

制作責任者 高橋 晶子 

「空中鬼」とは中国語で酸性雨のことである。近年、酸性雨により、神奈川県丹沢の山ではブナの森が枯れ、雨粒を落とす葉の音が聞こえないという。また日本三景の一つ、天橋立では松の木の葉が落ちて、風のざわめきが聞こえなくなっている。こうした被害を防ぐには、酸性雨の原因の一つである自動車の排気ガスを減らす必要がある。本作品は、空中の鬼に奪われつつある日本の音の風景を取り戻すために、身近なところから行動を開始することの大切さを、「あなたにできる鬼退治」という言葉で、聴取者に強く喚起するものとなっている。

優 秀 <札幌テレビ放送> 鳴き雪が聞こえる(60秒)

制作責任者 岡崎 みどり

作品冒頭でキュッキュッという心地よい、雪を踏みしめる音が聞こえる。これは北海道大学・前野名誉教授が「鳴き雪」と名づけたものである。マイナス10℃以下になると聞こえてくる「鳴き雪」は、かつて北海道では当たり前であったが、近年はあまり聞くことができない。本作品は、その原因の一つが、周囲の環境変化で、車や携帯電話など、様々な音が交錯するようになったためであることを指摘し、また、「鳴き雪」のような小さな音にも耳を傾ける、人の「心」が失われつつあると訴える。

優 秀 <青森放送> コウモリは訴える(60秒)

制作責任者 渡辺 英彦

青森県内には17種類のコウモリが棲息し、うち13種類が絶滅を危惧されている。森林伐採による人間の乱開発で、コウモリが棲める穴を持つ古木、大木が急減したからである。全国でコウモリの生態調査に取り組む、作品中に登場するNPO法人「コウモリの保護を考える会」の向山理事長は、多くのコウモリがいることは自然に多様性があり人間にとっても良い環境である、と指摘する。作品中、コウモリの超音波の声を特殊な装置で人間が聞こえる音に変換して聞かせ、コウモリの声に耳を傾ける姿勢が必要であることを訴える秀作である。

優 秀 <TBSラジオ&コミュニケーションズ> 鎮守の森(60秒)

制作責任者 大手 ひろみ

靖国神社(千代田区)で394台分、大國魂神社(府中市)で3385台分…、のナレーションは、都内の神社境内の森林がこれまで吸収した二酸化炭素を、車が1年間に排出する排気ガスの量に換算した数字である。世話の行き届いた「鎮守の森」は、二酸化炭素を普通の山林の約5倍吸収するという。しかし道路拡幅などで神社境内地は年々縮小している。本作品は、いつまでも環境保護を「神頼み」にしてはならないと、身近な具体的データを用いて訴求する、説得力の高いスポットとなっている。

優 秀 <ニッポン放送> お天気のことわざ(60秒)

制作責任者 高橋 晶子

「ツバメが低く飛ぶと雨が降る」「ネコが顔を洗うと雨が降る」といったことわざは昔の人が自然をよく観察していたことを如実に示し、自然が一つに繋がっていることを教えてくれる。本作品は、先人の英知が込められたことわざが、自然を大切にする心を教えてくれることを、老人と孫のほのぼのとした会話を通して訴える。「雨の前は膝が痛くてなぁ」という老人の言葉は、人も自然の一部であり、環境が破壊されたときには生きていくことができないと確認させてくれる。

優 秀 <中部日本放送> 時はリサイクルできません(60秒)

制作責任者 吉田 直子

名古屋市で時計修理店を営む修理名人は、100年以上経つ古時計が今でも元気に時を刻んでいるのは「持ち主が、その家の宝物として大事にしているから」だという。古時計が刻んだ100年の間に地球の環境は随分と変わってしまった。時計はリサイクルできても、時はリサイクルできない。本作品は、私たちの宝物である地球が100年後も元気であるためには「次の一秒を地球のために」使わねばならないと、古時計の音とともに警鐘を鳴らす。

優 秀 <朝日放送> その煙がみえますか(60秒)

制作責任者 大西 寿典

フィリピン・マニラ近郊パヤタスのゴミ処分場は、首都マニラからのゴミが巨大な山となり、メタンガスの自然発火で煙に覆われるため、スモーキーバレー(煙の谷)と呼ばれている。この谷の煙は、未来へ発するSOSの狼煙である。煙がやがて地球の上空を覆い、雲となり雨となり子供達の未来へと降りしきるからである。本作品は、ゴミを大量に排出する我々のライフスタイル自体を見直す必要があるとラディカルに問題提起している。

テレビ

最優秀 <中京テレビ放送> 「見えた!ゆらゆら帯の不思議」(60秒)

制作責任者 織田 忠士、安川 克己

三重県海山町を流れる銚子川には、生活排水が流れ込まず、高い透明度を保っているため、河口では、海水と川の境目がわずかに溶け合ってユラユラと揺らめいて見える「ゆらゆら帯」を見ることができる。春先には鮎をはじめとしたたくさんの魚が、この「ゆらゆら帯」に守られながら、暖かい海水の中を遡上し、徐々に体を慣らして川へ戻っていく様子を見ることができる。本作品は、かつてはどこの河口でも見ることのできた幻想的ともいえる「ゆらゆら帯」の映像を見せることで、本来の自然現象の大切さから環境保護を訴求する秀作である。

優 秀 <札幌テレビ放送> 「エゾモモンガの橋」改訂(60秒)

制作責任者 佐藤伸一(ディレクター;札幌映像プロダクション)

十勝平野の帯広に棲息するエゾモモンガは、高速道路の敷設で生活圏を狭められ、絶滅の危機に晒されつつある。この危機を救うべく帯広畜産大学の柳川教授は、高速道路の脚部に丸太を添えて、エゾモモンガが往来できるようにした。「人間の生活が便利になることで生活が不便になる動物がいたら、その不便を解消してやるのも人間の責任」という柳川教授の言葉から滲み出る自然との共存による環境づくりへの切なる思いと努力を伝え、地球環境保護を訴えている。

優 秀 <信越放送> 諏訪御柱~山の神からの授かりもの~(60秒)

制作責任者 麻山 智晃

7年に一度行われる信州・諏訪大社の「御柱大祭」では、樹齢200年を超え、7~8トンあるもみの木を、氏子たちが人の力だけで、山から諏訪大社までのおよそ25キロの距離を運ぶ。祭りは神である自然と一つになった喜びで終わり、その後、山の神に感謝して、山にもみの若木を植える。こうすることで平安時代より途切れることなく祭りが続いてきたという。祭りに対する思いと次世代に豊かな自然を残すために環境を大切にする思いは同じであるとのメッセージを伝える作品である。

優 秀 <福井テレビジョン放送> おじいちゃんが教えてくれたこと(60秒)

制作責任者 山崎 長武

福井県美山町に住む96歳の老画家は、59年間、ひたすら美山町の景色だけを描き続けている。作品中の「ふるさとは世界中でここしかない。今の人たちはこのふるさとを預かっているだけで、今よりもより良いふるさとにして次の世代に送る責任がある」というこの画家の言葉は、故郷に対する強烈な愛着が感じられると同時に、私達が負うべき次の世代への責任について気づかせてくれる。美山町の美しい景色を背景にした本作品は、ふるさとを今のまま残すだけでなく、今よりも美しくするという環境保護を訴えている。

優 秀 <読売テレビ放送> BLACK RAIN(60秒)

制作責任者 吉川 秀和・小俵 靖之

昨年3月に始まったイラク戦争により立ち昇った黒煙は、偏西風に乗って8,000km離れた日本上空にも到達し、「黒い雨」として降り注いでいるという。この雨からは大量の煤に加えて通常の600倍もの硫黄や窒素の酸化物が検出されており、松の立ち枯れなど樹木を蝕み、コンクリートなどの建造物さえ溶かすという。本作品は、実際にコンクリートが溶ける映像も交えながら、地球規模の環境破壊の深刻さをなまなましく伝える秀作である。

優 秀 <熊本県民テレビ> 水は今、人が守り育てるもの(60秒)

制作担当者 雄 孝昭

熊本県は、水道水のおよそ80%を地下水で賄っている。しかし近年、急速な都市化の影響で、雨水が地下にしみ込みにくくなり、地下水量の減少が深刻化してきている。こうした中、同県の大津町、菊陽町では、水田や畑の休作期間に水を張るという取り組みを始めている。地下に水がしみ込んで実際に使用できる状態になるまでには畑の作物と同じように長い年月がかかる。そのことを本作品は「水を収穫する畑」という印象的な言葉で表現し、水をはじめとする自然環境も、時間をかけて育てるものであることを教えてくれる。

優 秀 <南日本放送> 千鳥の家族(60秒)

制作責任者 有迫 貴史

近年の乱開発による埋立てで日本の干潟は急速に減少し、干潟に繁殖する海鳥の6割は絶滅の危機にある。本作品は、鹿児島県阿久根市のかつて干潟であった埋立地のジャリの上で、交代で卵を温める二羽の千鳥の姿を追う。厳しい環境の中、産卵から26日目についにヒナが誕生する様子には深い感動を覚える。かつての環境を失った中でも懸命に命のリレーを続ける千鳥の姿は、人が利便を追求するための環境破壊によって、多くの生物がリレーできなくなっていることを伝え、自然環境の大切さを切実に訴える。