一般社団法人 日本民間放送連盟

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表彰番組・事績

日本民間放送連盟賞/2013年(平成25年)入選・事績

番組部門

ラジオ報道番組

ラジオ教養番組

ラジオエンターテインメント番組

ラジオ生ワイド番組

テレビ報道番組

テレビ教養番組

テレビエンターテインメント番組

テレビドラマ番組

CM部門

ラジオCM 第1種(20秒以内)

ラジオCM 第2種(21秒以上)

テレビCM

技術部門

特別表彰部門

青少年向け番組

放送と公共性 

 

 


 

番組部門

〔ラジオ報道番組〕

 

最優秀 報道特別番組「原発作業員が語る2年」

毎日放送

 プロデューサー・ディレクター  森﨑俊雄、出演者 水野晶子、上田崇順

JPG 福島第一原発の事故を目の当たりにした原発作業員。劣悪な労働環境下で、これからも果てしない時間をかけて収束のために命を削る人たちでもある。この2年間、何を見て何を感じたのかという作業員の証言は、福島第一原発の生の姿を映し出す。50人を超える丹念な取材により拾い集めた、なかなか口を開くことのない作業員の生の声は、雇用問題のみならず原発の安全性の問題までも浮きあがらせ、説得力があり大変貴重である。原発事故後の日本の社会をどう考えていけばよいのかを示唆するうえでも意義深い作品である。

 

優 秀 ‘視界ゼロ’猛吹雪の脅威 ~届かなかった危険信号~

STVラジオ

 プロデューサー 前田久充、長坂信行、ディレクター 蛯子裕介、構成 新谷政太朗

 今年3月、北海道東部を記録的な暴風雪が襲い9人が犠牲となった。気象警報が出され、自治体も事前に警戒を促していたにもかかわらず、多くの住民が外出して暴風雪に遭遇した。なぜ、それらの「危険信号」は伝わらなかったのかを関係者の証言を通じて検証した。放送局の責任についても自己検証するなど問題点を的確に提起し、二度と不幸な被害者を出さないという姿勢が強く伝わってくる。

 

優 秀 4つの空白~拉致事件から35年

文化放送

 プロデューサー兼記者 鈴木敏夫、記者 山本カオリ、嶺岸宏枝、ミキサー 上原裕司

 拉致事件が発生してから35年以上が経過しており、その間、いくつかの進展などはあったが、それぞれの出来事の間には空白期間が長く存在する。番組では、「なぜ空白が生まれたのか?」をテーマに取材を進めた。長年にわたる拉致問題という複雑な問題を丁寧に追いかけ、事件発生当時からの動きが大変わかりやすく整理されている。国家対応の問題や報道機関のあり方について鋭く切り込んだ作品である。

 

優 秀 報道特別番組 原子力50年 ある村長の決意

茨城放送

 プロデューサー 斎藤佳子、ディレクター 高木圭二郎、ナレーター 田中里実、ミキサー 椎名公一

 今から半世紀以上前に日本で最初に原子の火がともった地、茨城県東海村の村長、村上達也氏(当時)は、いま脱原発を唱えている。JCO臨界事故や福島第一原発事故などを受け、村がどう変化し、村長の心境がどのように移り変わったのかに迫った。村長のインタビューを中心に、過去の原子力関連の記録音声や楽曲も散りばめられ、時代を長く辿る構成に緻密な工夫が感じられる。東海村の現状や村長の掲げる将来像を通じて、国のエネルギー政策問題も浮きあがらせている。

 

優 秀 汚れた足跡 ~前科12犯、ある男の記録~

北日本放送

 プロデューサー 桐谷真吾、構成 神林賢範、取材 土井あゆみ、岡田亮平

 平成24年3月、高岡市でタクシー運転手が殺害される事件が起きた。犯人は前科12犯、人生の多くを刑務所で過ごし、出所しては犯行を繰り返していた人物だった。男からの手紙や家族などのインタビューから犯人が歩んだ人生を辿り、犯罪の原点と更生を阻んだものを探った。一人の犯罪者を通じて、「再犯者率」が年々上昇しているという司法や雇用、福祉など多岐に及ぶ現代社会の問題に警鐘を鳴らした。

 

優 秀 さようなら!専攻科

山陰放送

 ディレクター・ナレーション 桑本充悦

 昭和30年代半ばに誕生した県立高校の専攻科は、いわば“公立の予備校”。都会のような予備校のなかった鳥取県の浪人生にとって貴重な学びの場であったが、時代の移り変わりにより50年以上の歴史に幕を下ろすことになった。聴取者から募った、教えた側、教わった側それぞれの思い出の紹介を中心とした構成は、シンプルだが教育の本質までもが感じとれる。地域社会の身近な出来事を記録し、時代の節目を描く姿勢は、ラジオの重要な役割を果たしている。

 

優 秀 RBCiラジオスペシャル「車いすで華やかに」

琉球放送

 プロデューサー 比嘉京子、ディレクター 照屋信之

 沖縄県うるま市の障害者就労支援施設が、新たな取り組みとして「ユニバーサルファッション事業」を始めた。施設の代表者は「障害者にはおしゃれが必要」と話し、ファスナーやマジックテープで随所に工夫したウエディングドレスや晴れ着などを製作している。音声だけのラジオで、車いす利用者をモデルとしたウエディングショーの模様を表現するなど意欲的な作品でもある。服の作り手と着る側の思いを通して、誰もがありのままに生きられる「服のバリアフリー」という重要なメッセージが十分に伝わってくる。

 

 

〔ラジオ教養番組〕

 

最優秀 調律師という芸術家~最高の音楽を作る究極のピアノ調律~

朝日放送

 プロデューサー 道勇嘉彦、ディレクター 鈴木崇司、企画・キャスター 堀江政生、エンジニア 加藤緑里

JPG 「調律師」というピアノなどの鍵盤楽器だけに存在する特別な職業にスポットを当て、その基本技術や歴史、プロの目指す「究極の調律」までを描き出そうと試みた番組。世界的なピアニストも信頼する菊池和明氏に密着し、「ピアノ」という楽器の成立と調律師との密接な関係、ベートーベンが感じたピアノに対する不満や音楽家に必要とされる「絶対音感」の実態を浮き彫りにしていく。ラジオらしく音をテーマに向き合った意欲的な番組で、調律師と演奏家の関係に関心をひきながら、音楽に関する知識を啓蒙する。

 

優 秀 YBCラジオスペシャル「戦場から届いた童謡」

山形放送

 プロデューサー 伊藤清隆、ディレクター 伊藤和幸、ナレーター 小坂憲央

 大正9年に現在の山形県南陽市で生まれた結城よしをは、第2次世界大戦で24歳の若さで戦病死するまで、「ないしょ話」をはじめとする多くの童謡を作詞し、招集され陸軍に入隊してからも、戦場から父親あてに童謡を送り続けた。よしをの短い生涯を、妹たちの証言や戦場から届いた童謡や手記で辿りながら、彼の童謡集、大正期から始まる童謡の歴史などを散りばめてつづる。懐かしい音楽をたくさん聞かせながら、丁寧な取材により、戦争で豊かな才能を発揮できなかったよしをの短い生涯をよく表現している。

 

優 秀 ザ・ボイス そこまで言うか!

ニッポン放送

 チーフディレクター 桐畑行良、演出 木下智隆、出演 飯田浩司、青山繁晴

 毎週月曜から木曜の夕方に生放送するワイド番組。毎日のニュースをピックアップし、日替わりのコメンテーターがあらゆるテーマについて、鋭く自分の意見を述べる。単なるニュース番組でもニュース解説番組でもなく、ニュースに対して様々な見方、考え方があることを提示するスタイルを守り、リスナーからもツイッターやメールで質問を集める。論考する材料を提供し、リスナーからの質問にコメンテーターが答えるスタイルがラジオならではであり、今後のラジオの方向性を示している。

 

優 秀 SBCラジオスペシャル「壁の向こうの希望たち~松本蟻ケ崎高校演劇部」

信越放送

 プロデューサー 西沢 透、ディレクター 小森康夫、アナウンサー 犛山美耶子

 松本市のNPO法人「日本チェルノブイリ連帯基金」のメモリアルイベントに、松本蟻ヶ崎高校演劇部が出演し、事故によって苦難の人生を歩むこととなった人々の姿を演劇で表現した。大舞台に臨む部員たちの思いと観客たちが感じたメッセージを取材した。演劇をラジオで伝えるという難しい取り組みにチャレンジした作品である。生徒たちの演劇に向き合う姿や先生の厳しくも温かく指導する姿が、優れたヒューマンドラマとしてもリスナーに伝わってくる。

 

優 秀 認知症、元気です~「グループホームなも」の日々

CBCラジオ

 プロデューサー 森合康行、取材・構成・ディレクター 菅野光太郎、音響効果 舘 一孝、ナレーター つボイノリオ

 名古屋市内にある「グループホームなも」では、アルツハイマー型認知症のお年寄り8人が自分たちで炊事、洗濯、掃除などを行い共同生活している。「なも」での取り組みやここで暮らすお年寄りの日常を通して、アルツハイマー認知症とはどのような病気で、どのように接すればよいかを探っていく。認知症にも様々なケースがあることを伝え、関わる人がどう向き合い付き合っていくかを、希望を持って考えさせる番組である。

 

優 秀 見えないから見えたもの 盲目の教師 竹内昌彦のメッセージ

山陽放送

 プロデューサー 秋政孝一、ディレクター 石原正裕、ナレーション 谷本佳子、アシスタント 有馬夏海

 岡山県立盲学校であん摩鍼灸を教えていた竹内昌彦先生は、小学校のころに視力をなくし、学校では「いじめ」も受けてきたが、彼が生きた半生には、有形無形に支えてくれる人たちもいた。目の不自由な人たちと目が見える人たちの思いの違いを埋めようと、定年退職後に自らの経験や活動を題材に本格的に始めた講演活動は2000回になろうとしている。目の見えない世界に生きた誇りやいじめの対処法などがリスナーの心に響く。

 

優 秀 特別番組 アバヨイ~ 島うたで紡ぐ十五の春

琉球放送

 プロデューサー 比嘉京子、ディレクター 森根尚美、出演 ボロジノ娘、内里美香

 沖縄の離島に住む子どもたちは、進学などのために15歳で親元を離れなければならない。南大東島もその一つで、島の民謡研究所からうまれた少女民謡グループ「ボロジノ娘」の中学を卒業するメンバーには代々、毎年3月にさよならの意味を持つ島の民謡「アバヨーイ」を歌うならわしがある。島を離れた少女、来年の中学卒業と同時に島を離れる少女、そして送り出す親の思いや家族の絆を、「アバヨーイ」の唄とともに伝える。じっくりと彼女たちに話を聞くことで、家族や故郷への思いが、島の魅力とともに伝わってくる。

 

 

〔ラジオエンターテインメント番組〕

 

最優秀 In My Life ~介護の仕事と ビートルズと~

北日本放送

 制作統括 土肥尚彦、構成・演出・ナレーション 佐伯和歌子、出演 川手照子、朗読 陸田陽子

JPG 富山県在住の介護福祉士で、アマチュア歌手の川手照子さんが歌うビートルズのカバーCDを聴いた人は、「心に沁みてくるような深み」を感じるという。幸せの絶頂で夫を亡くし、毎日死にたいと思っていた彼女が、家族のある出来事から人生を見つめ直し、介護の仕事と出会い、ビートルズを歌うようになる。その軌跡を彼女が歌うビートルズの名曲にのせて振り返る。彼女が語る人生と低く包み込むような優しい歌声が溶け合い、聴く人に深い感動を与える。川手さんをもっと知りたいと願う制作者の思いがよく伝わってくる。

 

優 秀 エフエム青森開局25周年記念 ラジオドラマ「祝いの響き」

エフエム青森

 プロデューサー 平山早苗、脚本 田辺典忠、出演 木村 幸ほか、技術 葛西 保

 東京から青森の老人ホームに手伝いにやってきたフリーターが主人公のラジオドラマ。お年寄りと接するのが得意とはいえない主人公が、施設の利用者と触れ合ううちに、いつしか仕事に本気で向き合い、自分の居場所を見つけていく姿が描かれる。お年寄りの津軽弁や次々と登場する青森の旬の食材に、制作者の青森らしさへのこだわりがうかがえる。ドラマの展開に合わせて流れる青森ねぶたの囃子が、いつまでも余韻を残す。

 

優 秀 小沢昭一さん追悼特別番組~あしたのこころだ…小沢昭一について考える

TBSラジオ&コミュニケーションズ

 プロデューサー 宮澤日出海、構成演出 坂本正勝、制作 永井洋満、刈屋瑛子

芸能の世界に大きな業績を残して亡くなった小沢昭一の追悼番組。昭和48年から亡くなるまでの約40年間に1万回以上放送されたTBSラジオの「小沢昭一の小沢昭一的こころ」。この番組で小沢が行ってきた「口演」という話芸を、過去の放送をもとに振り返るとともに、生前に親交の深かった人たちのメッセージを交えて、その原点に迫った。膨大な録音から、その実像を浮き彫りにした構成力は見事というほかない。小沢を知らない世代の人にも楽しんでもらえる番組である。

 

優 秀 SBCラジオスペシャル「郡って本当に必要なの?」

信越放送

 プロデューサー 西沢 透、ディレクター 笠原公彦、ナレーション 坂橋克明

 SBCラジオに届くハガキを調べてみると、郡の名前が書かれていないものが少なくない。長野県77市町村のうち58町村が属しているにもかかわらず、住民の知名度が低い「郡」。郡は本当に必要なのか。その答えを求めて、郡の歴史をひもとき、直面する課題を明らかにし、さらに郡を失った人たちと全国一の構成町村数を誇る郡に取材を重ね、住民の心をつなぐ郡の本質に迫った。軽快なナレーションで様々な角度から「郡」に迫り、リスナーに考えるきっかけを与えてくれる。面白くてためになるエンターテインメント番組である。

 

優 秀 永遠のザ・フォーククルセダーズ~若い加藤和彦のように~

FM802

 プロデューサー 古賀正恭、ディレクター 堀 英樹、DJ 田家秀樹、ゲスト きたやまおさむ

 平成21年に加藤和彦の不慮の死によって歴史を閉じたフォークグループ「ザ・フォーククルセダーズ」。その歴史を加藤和彦を中心に掘り下げた全13回(+エクストラ1回)の番組の第2回目。DJは「フォークル」と同時代に音楽評論を始めた田家秀樹。ゲストには、この回は加藤の盟友でメンバーの1人、きたやまおさむを迎える。音楽を満載した構成がFM局らしく、ファンには堪えられない内容となっている。

 

優 秀 南海放送開局60周年記念特別番組「思い出に針を落として」

南海放送

 プロデューサー 松本直幸、ディレクター 中井 哲、真田嘉雄、プレゼンター やのひろみ

 リスナーに思い出のレコードを持参してもらい、レコードを聞きながら、リスナーと当時の思い出を語り合う、まるでレコードコンサートのような公開生放送。さらに番組にはレコードの歴史、100年前に発売された国産蓄音機第1号「ニッポノホン」から流れる100年前のレコードの音、今も活躍するレコード針職人へのインタビューなども盛り込まれ、日本のレコード文化がよくわかる。数多くの要素が上手に構成された、これぞラジオエンターテインメントという番組である。

 

優 秀 まだら狼 上田馬之助 ~妻と闘った5760日~

大分放送

 プロデューサー 砂原哲也、ディレクター 富田浩史、ナレーション 村津孝仁、技術 宮本武典

 かつて悪役レスラーとして、トレードマークの髪型から「まだら狼」と呼ばれたプロレスラー・上田馬之助。平成8年に巡業中の交通事故で半身不随になり、妻の故郷である大分県臼杵市に移り、平成23年12月にこの世を去った。その1年半後に実現した妻・恵美子さんへのインタビューをもとに、2人の出会いと、5760日にわたる闘病生活を綴った。懸命に生きる上田と半身不随の夫を支えた妻の深い愛情と絆が、聴く者の胸を打つ。

 

 

〔ラジオ生ワイド番組〕

 

優 秀 月曜Monday(もんだい)夜はこれから!~請戸小学校の奇跡~

ラジオ福島

 プロデューサー 大和田新、ディレクター 菅野左千男、アナウンサー 大和田新、八木志保

月曜日/19時~20時50分の放送。福島県の復旧、復興に頑張っている人やグループに出演してもらい、個人や地域が抱える課題を深く探る。この日は、学校のとっさの判断と住民の善意で全校児童が助かった浪江町の請戸小学校の全校避難を通して、震災の記憶と防災や地域力の大切さを伝えた。引率した教師たちの具体的な話を丹念に積み上げることで、その場に居合わせたように現場の状況が想像でき、ラジオの力を感じさせる。まだまだ伝えなければならないことがたくさんある被災地の、大事なラジオ番組である。

 

優 秀 玉川美沙ハピリー

文化放送

 プロデューサー 扇 一平、ディレクター 末永直樹、パーソナリティ 玉川美沙、出演者 宮川彬良

土曜日/7時~10時の放送。週末の楽しさや幸せを感じるリスナーの気持ちとシンクロするワイド番組。「ハピリーくらしっく」という、作曲家の宮川彬良さんが生で演奏するコーナーがあり、この日は特集回として、180分の放送のなかで3回行った。パーソナリティの声が心地よく、何の変哲もないコメントがしっくりと入ってくる。レギュラーの生ワイド番組ながら、楽しいものをより楽しくするために、出演者・スタッフ全員が一緒になって手間暇を惜しまず制作している。

 

優 秀 近藤丈靖の独占ごきげんアワー ホリデイスペシャル~新潟県古今東西グーパーじゃんけん事情徹底調査

新潟放送

 ディレクター 高橋紀子、パーソナリティ 近藤丈靖、アシスタント 和田朋子、リポーター 山田かおり

 月~木/9時~12時50分の放送。この日はこどもの日の振替休日。「グーパーじゃんけん」の言い方が新潟県内でも地方によって違うらしい、ということで、リスナーの地域ではどうやるかを番組で問いかけ、メールを募集した。南北に長い新潟県の、ラジオの4時間の生ワイド番組ならではの企画である。テーマ設定が休日らしく、聞いていて共感でき、全リスナーを捉えている。リポーターの中継が良く、音のシズル感もよく伝わってくる。

 

優 秀 とれたてワイド朝生!~あなたは最期をどのようにむかえたいですか?~

北日本放送

 ディレクター 柴田明夫、パーソナリティ 陸田陽子、木下一哉、ゲスト 惣万佳代子

 月~金/第1部 6時50分~8時40分、第2部 8時40分~11時30分の放送。この日の第2部では、高齢者、障害者、子どもが一つ屋根の下でデイサービスを受ける「富山型デイサービス」を始めた3人の元看護師のうちの一人、惣万佳代子さんをスタジオに招き、入居者の終末期から看取りの様子、県内のほかの取り組みなどを聞いた。パーソナリティの二人がよく勉強しており、人の死である「最期」をどう捉えるかをリスナーにも問題提起する。完成度が高く、メッセージ性、影響力がある。

 

優 秀 ありがとう浜村淳です 土曜日です

毎日放送

 プロデューサー 山田和年、ディレクター 中田陽子、出演者 浜村淳、大内真紀

 土曜日/8時~11時30分の放送。平日の8時~10時30分に放送されている「ありがとう浜村淳です」の姉妹番組。芸能情報や競馬予想、映画解説など、週末にふさわしくやわらかい内容で構成する。生ワイド番組に必要な日常性と地域性を具現化したような番組である。パーソナリティの安定感は伝統芸能の域にある。年月をかけて変化してきた声と語りに、リスナー自身が自らの生きてきた歳月を投影できる、大阪人と一体化した番組である。

 

優 秀 日々感謝。ヒビカン

中国放送

 プロデューサー 増井威司、ディレクター 岡本 幸、出演 青山高治、田口麻衣

 月~金/12時~15時の放送。広島原爆忌にあたるこの日は、「核」の核心を捉えヒロシマから発信しているアメリカ人の日本語詩人アーサー・ビナードさんをゲストに迎え、戦後世代のパーソナリティが広島平和記念公園から生放送した。「原爆の子の像」や「広島市高等女学校原爆慰霊碑」などの慰霊碑を巡りながら、原爆と被爆体験、さらには原子力発電のリスクにも向き合った。ゲストの起用やスタジオの外からの放送が、鋭く、やわらかく、しかも決して湿っぽくすることなく核の本質を伝えている。

 

優 秀 あべちゃんトシ坊!こりない二人 ~がんばれ!星野村!~

RKB毎日放送

 プロデューサー 寺井 到、ディレクター 三輪 肇、パーソナリティ あべやすみ、仲谷一志

 土曜日/13時05分~16時29分の放送。痛快コンビのあったかトークで送る音楽ワイド番組。この日は、2012年7月の九州北部豪雨で甚大な被害を受けた星野村に仲谷が出向き、スタジオのあべとともに、災害から1カ月たった現状報告と励ましを目的に番組を展開した。被災者が少し冷静に話せる時期に、通常の生ワイド番組を生かした構成に感心させられる。同情と悲壮感から番組のトーンが抑えられがちだが、ベテランの二人を中心に自然な番組づくりがなされ、被災者に聞くべきところも聞いている。ローカル局ならではの住民へのアプローチに好感が持てる。

 

 

〔テレビ報道番組〕

 

最優秀 ヒロシマの山 ~葬られた内部被ばく調査~

中国放送

 プロデューサー 城 雅治、ディレクター 藤原大介、編集 正路周子、撮影 砂山 浩

JPG 1946年の設立以来、放射線の人体への影響を調査し続けている放射線影響研究所。「山」は、比治山にあるその広島研究所を指す隠語である。番組では、大久保理事長の講演活動や、内部被ばくを心配する福島在住の母親らの生活を横軸、そして、放影研とその前身である米国原爆傷害調査委員会(ABCC)による残留放射能の調査打ち切りの歴史を縦軸に、当事者の証言などを交えながら、放射能汚染にまつわる複雑な現実を丹念に描く。“分かりにくさ”をありのままに伝えようとする制作者の姿勢と本気さが高く評価される。

 

 

優 秀 震災の記憶 未来の命を守るために ~大川小 遺族の2年~

東北放送

 プロデューサー 熊谷公幸、ディレクター 佐々木雄祐、カメラマン 今野貴章、編集 長崎純也

 東日本大震災で発生した津波により、宮城県石巻市立大川小学校では、児童74人、教職員10人の命が奪われた。6年生の娘を失った中学教師の佐藤敏郎さんは、学校側の避難対応が適切だったのかなどを検証するよう教育委員会に求めるとともに、一人の教員として学校防災教育の充実のため奔走している。大災害と向き合い、未来を見据えた活動に取り組む被災者の2年間を丁寧にすくい上げることで、悲劇の構図を克明に描いている。

 

優 秀 戦いが聴こえた ~ラジオが伝えた太平洋戦争~

BS朝日

 プロデューサー 江野夏平、石原正札、田中政文、ディレクター 島 岳志

 太平洋戦争当時、最先端のメディアとして、開戦前の和平工作や特攻隊員の「遺言」の放送、そして終戦の詔勅(玉音放送)まで、陰に陽に歴史的な役割を担うことになったラジオ。番組は、こうしたラジオの功罪を、発掘された音源資料などをもとに詳細に検証する。100分という長さを感じさせない構成は、同時に、戦時のラジオと短波放送、現代のマスメディアとインターネットの対比など、メディアのあり方をも連想させる作りになっている。

 

優 秀 死の棘 ~じん肺と闘い続ける医師~

静岡放送

 プロデューサー 鈴木宏典、ディレクター 濱田彩華、カメラマン 中井 秀、編集 芳賀康俊

 静岡放送はかつて、多数の銅山労働者を擁する浜松市天竜区佐久間町のドキュメンタリーを制作し、粉塵による「塵肺」に苦しむ労働者と、彼らの治療に取り組む海老原勇医師の姿を追った。それから30年余、同番組を土台に、現在は東京と佐久間町で診療を続ける海老原医師と、今も塵肺と戦う患者の苦難を描きながら、かつての鉱山労働が抱えていた問題が、阪神・淡路大震災や更には東日本大震災の復興現場でもアスベスト禍として繰り返されていることに警鐘を鳴らす。労働と命の意味を、あらためて考えさせる番組である。

 

優 秀 KNB報道スペシャル RASEN 封印された男の記録

北日本放送

 プロデューサー・構成 桐谷真吾、取材 神林賢範、岡田亮平、撮影 濱谷一郎

 刑務所を満期出所したわずか6日後に、再び殺人を犯した老人。人生の約半分を刑務所の中で過ごした男は、裁判の中で「金も仕事もなく、盗んでは捕まるの繰り返しだった」と語った。取材にあたった神林記者は男の半生に迫る一方で、刑期を終えて社会復帰を目指す人々と、彼らを受け入れる更生保護施設の実態、そして国の更生プログラムの問題を提起する。安易に「国は速やかに対策を」といった結論とせず、視聴者一人一人に突きつける構成が光る。制作陣のチームワークがうかがえる番組である。

 

優 秀 ザ・ドキュメント みんなの学校

関西テレビ放送

  プロデューサー 加藤康治、ディレクター 真鍋俊永、撮影 大窪秋弘、編集 北山 晃

 「みんなが作るみんなの学校」として、健常児も発達障害を抱える子も、皆が同じ教室で学び合う大阪市立南住吉大空小学校。「すべての子どもに居場所がある学校を作りたい」という木村校長のもと、教職員や地域の人々もが一丸となって教育に取り組んでいる。毎日のように子どもたちが起こす様々な問題と、それに全力でぶつかり、時には悩む教員たちの姿は、学校教育への希望を感じさせる。モザイクを一切使わずに被写体の自然な姿を捉えているところからは、取材陣との確かな信頼関係が見て取れる。

 

優 秀 標的の村 ~国に訴えられた東村・高江の住民たち~

琉球朝日放送

 プロデューサー 謝花 尚、ディレクター 三上智恵、編集 寺田俊樹、構成 松石 泉

 米軍の新型輸送機オスプレイの配備に絡み、沖縄県東村高江のヘリパッドの建設予定地周辺では、近隣住民などが反対運動を展開している。そのうちの一人、安次嶺現達さんは、座り込みをしたところ、国に通行妨害で訴えられた。沖縄の米軍基地問題を反対運動の渦中から切り取った番組で、地域メディアの役割を遺憾なく果たし、問題の根深さを深く理解させる迫力がある。住民や制作者の存在感が強く心に残る作品である。

 

 

〔テレビ教養番組〕

 

最優秀 キ・ボ・ウ ~全村避難 福島県飯舘村二年の記録~

福島テレビ

 ディレクター 鈴木知加子、撮影 渡邉 哲、編集 白木くにはる、構成 水落恵子

JPG 突然降りかかった災難で村を追われた美しい村の住民が、離散生活に苦しみ、除染や村のあり方を巡って対立しながらも、帰村に向けたキ・ボ・ウを模索し続ける2年を追った。

 2年で帰村すると宣言した村長と、除染が進まない村に帰るのをためらう酪農家の盟友が対立せざるをえず、引きちぎられていく残酷さが丁寧に映像化されている。震災と原発事故を伝え続けるために全国放送もされた意義のある教養番組である。

 

 

 

 

優 秀 初音ミクのかたち

東京メトロポリタンテレビジョン

 プロデューサー 齋川光行、ディレクター 勝俣幸多、プロデューサー 乾 弘明、編成責任者 柴田陽一郎

 世界的な人気を誇る「初音ミク」は、女性の歌声を合成するソフトウェアの名称であり、女性バーチャルアイドルのキャラクターの名称でもある。ソフトウェア、楽器、バーチャルシンガー、キャラクターと多種多様化する初音ミクのかたちを、ファン、関係者らへのインタビューで綴った。

 初音ミクの世界的な広がりや高い評価が、現代社会の風潮や傾向とどのような関係を持つのかを、こうした世界に日ごろ無縁な視聴者にも興味深く解き明かしている。

 

優 秀 SBCスペシャル 遼太郎のひまわり~日中友好の明日へ~

信越放送

 ディレクター 手塚孝典、ナレーション 久保田祥江、撮影 米山博昭、編集 和田秀一

 日中国交正常化から40周年の2012年の夏。中国残留日本人孤児の父と中国人の母を持つ中国帰国者二世の小学校教諭が、残留孤児の孫世代となる一人息子の遼太郎くんと中国の生まれ故郷や戦跡を訪ねた。帰国者の戦後史をたどりながら、日中友好の未来を考える。

 自らのアイデンティティーを求めて二つの祖国の間で揺れ動く表情や心のひだを、ほどよい距離感のカメラワークと抑制のきいた演出・構成で見事に映し出している。

 

優 秀 ニッポンの性教育 セックスをどこまで教えるか

中京テレビ放送

 プロデューサー 中保 謙、ディレクター 安川克巳、編集 大津一剛、ナレーター 毬谷友子

 小中学校の学習指導要領が「受精や妊娠に至る過程には触れない」ことを明示するなか、岐阜県各務原市に子どもたちに積極的な性教育を行っているNPOのグループがある。「性教育は生教育」とする母親たちの「いのちの授業」をつうじて、日本の性教育のこれからを考える。

 学校でもテレビでも取り上げにくいデリケートなテーマに、周辺取材を積み上げた構成で切り込んでいる。

 

優 秀 花在ればこそ吾も在り~世界的植物学者を支えた神戸人~

サンテレビジョン

 プロデューサー 永谷和雄、ディレクター 井田和秀、撮影 花田充弘、編集 野田隆司

 牧野富太郎が植物調査を行っている戦前の映像がサンテレビジョンの倉庫から見つかった。撮影したのは、発明王・エジソンの助手も務めた神戸出身の岡部芳郎。牧野は神戸の資産家、池長 孟の援助を受けながら、岡部の暮らす神戸市兵庫区に植物研究施設を構えていた。世界的植物学者とゆかりの男たちを地元・神戸の視点から追った。

 地元の偉人たちの個性や秘史をインタビューでうまく引き出している。地元以外の人々にも興味深い内容で、味わい深い、清々しい作品である。

 

優 秀 田舎からニッポンを変える! ~棚田村の挑戦者たち~

山陽放送

 プロデューサー 横田 章、ナレーション 石田好伸、ディレクター 岡 佳範、カメラマン 花坂匡浩

 岡山県の中山間地、美作市上山(旧、英田郡(あいだぐん)英田町(あいだちょう)上山)はかつては8,300枚の規模を誇る美しい棚田の村だった。この田舎でかつての風景を復活させようと取り組む若者たちがいる。NPO法人「英田上山棚田団」と、美作市地域おこし協力隊の若者たちだ。棚田村の挑戦者たちの1年に密着した。

 「憧れの田舎暮らし」にうわつかず、時代の振り子が変化している様子を明快に伝えている。四季の移り変わりにも見ごたえがある。

 

優 秀 最終章を奏でる家

宮崎放送

 プロデューサー 平沼邦子、ディレクター 中本奈緒、撮影・編集 小宮賢二、MA 平原秀明

「かあさんの家」は、自宅で介護が受けられない高齢者たちに人生の最後の時間を心穏やかに過ごしてもらおうというホームホスピス。宮崎市内のNPOが市内の空き家を再利用して運営、全国的に注目を集めている。看取りだけではなく、高齢者の生活や家庭環境に合わせた介護が続くその日常を追った。

 施設の紹介に終わらず、「最期」について多くのメッセージを発している。人の尊厳に寄り添うことが命の再生につながることを、理論ではなく映像で描ききっている。

 

 

〔テレビエンターテインメント番組〕

 

最優秀 あの名曲を方言で熱唱!新春全日本なまりうたトーナメント

テレビ朝日

 プロデューサー 奥田創史、須藤 勝、司会 桂文枝、構成 中野俊成

JPG 誰もが知る名曲を視聴者がそれぞれの方言に自ら訳し、「なまりうた」として熱唱する大会。12府県の代表者がトーナメント形式で対戦し、優勝を争う。審査員は東京近郊出身の芸能人5名で、歌のうまさだけでなく、どれだけ方言を使いこなしているかという点も重視した。桂文枝の軽妙な司会が出演者と審査員を引き立たせ、爆笑を誘う。斬新な企画で、今後の発展性にも期待が持てる。方言が持つ暖かさや力強さがうまく表現されており、笑いの中にも今までにない感動を味わうことができる。

 

 

優 秀 一輪車はとまらない!

青森放送

 プロデューサー 橋本康成、ディレクター 小山田文泰、カメラマン 棟方直樹、ナレーター 秋山博子

 弘前市の豊田児童センター一輪車クラブは世界大会で4回の団体優勝を果たした名門クラブである。児童センターの木村館長は、一輪車の指導にあたり、「実力を発揮することに意味がある」「団体の中で演技する意味は」など、成績よりも子どもたちの心に向けて言葉を繰り返す。素晴らしい一輪車の演技に加え、自分と向き合う子どもたちの汗と涙と成長を丹念に追いかけている。取材対象をよく理解したうえで適正な距離感を保った構成で、完成度が高い作品である。

 

優 秀 SBSスペシャル  正義咲く!青春ラプソディー  ~バンカラ高校応援団~

静岡放送

 プロデューサー 阿部朋也、ディレクター 中村 潔、取材撮影 佐野達郎、ナレーター 新橋耐子

 「静岡県高等学校応援団フェスティバル」で、13校の応援団が伝統の精神と演技を披露した。応援団は伝統を受け継ぎながらも形を変えており、部員全員が女子生徒の高校もあった。愚直に伝統を守り一切の妥協も許さない団長。片や長髪にビーチサンダル姿で練習中に団員と談笑をする人気者の団長。相対する2校の団長を中心に、練習風景や家庭内での姿などを追いかけた。人を応援するという無償の行為に熱中する高校生の内面まで丁寧に描かれており、青春の輝きを感じさせる爽やかな作品である。

 

優 秀 土からのごほうび  ~NO!合併と言った町~

福井放送

 プロデューサー 井上寿美枝、ディレクター 岩本千尋、撮影・編集 西田元樹、語り 矢野泰子

 福井県池田町は超少子高齢化で過疎の町だが、平成の大合併の際も合併を選ばず、自立の道を進むことを決めた。県内では心配する声が圧倒的だが、当の町民たちは「なんとかなるさ」の風体。この町の強さは、お年寄りたちが働き者であることと、住民同士のつながりが強いこと。正直に手間を惜しまず土を耕し米や野菜を作り続ける生き生きとしたお年寄りたちの姿を魅力的に描いた作品で、高齢化や農業政策へのヒントも伝わってくる。

 

優 秀 和風総本家

テレビ大阪

 プロデューサー 庄田真人、演出 内山慶祐、ディレクター 冨田英男、構成作家 伊藤正宏

 日本のことをほとんど知らないウガンダ共和国のテレビ局クルーが、日本を訪れ日本紹介番組を制作する様子に密着。相撲や神前結婚式、祭りなど、彼らの目線で日本の伝統を取材、撮影する様子を追いながら、“日本人が気づかない日本”を再発見する。帰国後、放送された番組に対する現地の人の感想を紹介することで、ウガンダ共和国のことについても知ることができる。着眼点がとてもよく、知的好奇心をそそる興味深い作品である。

 

優 秀 さくら さくら

南海放送

 プロデューサー 松下和明、ディレクター 寺尾 隆、撮影 三本靖二、安庭慎也

 過疎の町、愛媛県内子町立石相野の山の上の集落に残っているのは、竹崎さん老夫婦が暮らす1軒だけ。夫婦はしっかりと足もとを見つめ、働き、笑いながら山で生きてきた。60年近くかけて大切に育ててきた1本のしだれ桜が、毎春、苦労した二人へのご褒美のように見事な花を咲かせ、その桜を見るために多くの人々が集まる。普段は二人きりの家が、ちょっとしたアミューズメントパークに早変わりする。美しい映像と音声で四季折々の自然が表現されるとともに、夫婦の人柄がしみじみと伝わってくる。

 

優 秀 職業 自給自足人~年収20万円お金に頼らない暮らしがしたい~

鹿児島テレビ放送

 プロデューサー 下本地章人、ディレクター 徳留孝一、構成 佐野晶子、ナレーター 生野文治

 世界自然遺産の島・屋久島の東側の山中に住む陶芸家・菊池亨さんは、34年間、この地でほとんど自給自足の生活を送っている。年収は作品の売り上げ20万円のみで、米や肉などは月に1回スーパーで買うが2,000円以内と決めており、野菜はすべて自給している。ティッシュ代わりに半乾燥のフキの葉を使用することや、カレーや豆腐の作り方などを丁寧に映しており、サバイバル生活に関する視聴者の興味にキッチリと応えている。この生活を苦とせず、むしろ楽しんでいる菊池さんの奔放な生き方を魅力的に描いている。

 

 

〔テレビドラマ番組〕

 

最優秀 最高の離婚

フジテレビジョン

 プロデュース 清水一幸ほか、ディレクター 宮本理江子ほか、脚本 坂元裕二、出演者 瑛太ほか

JPG 濱崎光生と妻の結夏は、東日本大震災発生時の帰宅困難な状況下、互いに不安な気持ちを抱える中で意気投合したことがきっかけで結婚に至る。しかしそれから2年後、神経質で几帳面な光生と、大雑把でおおらかな結夏の生活習慣は全くかみ合わず、些細なことがきっかけで二人は離婚届を書き始める。

 現代の複雑な結婚事情を背景に、アラサー世代の未熟な結婚観を通して、結婚のあり方や家族について描く。主人公二人だけでなく、親や家族など登場人物の描き方やセリフが緻密に練られており、特に孤独の描写が胸に迫る。脚本、演出ともにリアリティーを感じさせながら現代を批評している作品である。

 

優 秀 悪夢ちゃん

日本テレビ放送網

 脚本 大森寿美男、チーフプロデューサー 大平 太、プロデューサー 戸田一也、演出 佐久間紀佳、主演 北川景子

 表向きは明るくて児童想いの姿を見せるが、実は他人には心を開かず児童にも愛情を持たない女性教師・武戸井彩未のもとに、未来を見通せる不幸な能力「予知夢」を持つ古藤結衣子が転入してくる。悪夢を見た結衣子から助けを求められる彩未は、面倒くさいと思いつつも、絶望的な運命を二人で協力して希望ある未来に変えようと奮闘する。

 何が起こるかわからない展開で、子どもも大人も楽しめる人間ドラマである。緻密な脚本でメッセージを巧みに引き出しており見ごたえがある。無意識の領域に切り込み、自分自身の危うさや自身に潜む恐怖をひしひしと感じさせる点がドラマに深みを与えている。

 

優 秀 ドラマ24 まほろ駅前番外地

テレビ東京

 チーフプロデューサー 岡部紳二、企画 孫家邦、菊地美世志、脚本・演出 大根 仁

 東京のはずれ、まほろ駅前にある便利屋「多田便利軒」。店主の多田啓介は、雇ったわけではないのにいつの間にか住み込むようになった行天春彦と便利屋の仕事をこなしている。二人は正反対の性格ながらも、切っても切れない関係。舞い込んでくるどこか奇妙できな臭い依頼に関わっていくうちに、互いの友情や依頼人の背景が浮かび上がってくる。

 ノスタルジーとファンタジーの世界に引き込まれるテレビドラマの魅力を感じさせ、主人公のセリフがじんわりと響いてくる。選曲も巧みで、登場人物が次に何をするのか期待感を持たせてくれる。

 

優 秀 ダブルフェイス 偽装警察編

WOWOW

 プロデューサー 井上 衛、渡辺信也、監督 羽住英一郎、脚本 羽原大介、音楽 菅野祐悟

 少年時代に織田組組長の織田大成に拾われた高山亮介は、織田の命を受け警察官となり、幹部になった今も内部機密を織田に流し続けているが、奔放に生きる政治家の娘、万里との出会いをきっかけに織田との関係を解消したいと願うようになった。一方、森屋純は長年、織田組に潜入してきた警察官だが、警察と組の銃撃戦以降行き詰まりを感じていた。二つの顔を持つ二人の男の、自らの存在意義と人生をかけた戦いを描く。

 スピーディーな展開と登場人物の心情表現の深みが見るものを引き込んでいく。音楽や効果音がいずれも巧みであり、俳優の演技を一層際立たせている。 

 

優 秀 希望の翼~あの時、ぼくらは13歳だった~

テレビ神奈川

 プロデューサー 関 佳史、ディレクター 大山勝美、福本義人、脚本 海野春雄、出演者 国広富之ほか

 朝鮮半島が日本統治下の時代、ともに現在の北朝鮮の金策市に生まれ、地元の中学校に通っていた寒河江正と羅逸星は、戦争終結で引き離されて、寒河江は日本に引き揚げ、羅は韓国に逃れる。羅は、当時学校では禁止されていた朝鮮語を話してしまい、いじめられていたところを「朝鮮人が朝鮮語をしゃべって何が悪い」と止めに入ってくれた寒河江との再会を望む。41年ぶりの再会をきっかけに、友好の輪が大きく広がっていく。

 個人史を通して日韓の歴史を見直すことで、国と国だけではなく、個人と個人の付き合いがあるのだという普遍的なメッセージが伝わる。テレビ神奈川のOBである寒河江と羅が対談形式での本を出版したが、これを原作とし実話に基づくドラマである。こうした事実をもっと多くの人に知らせたいと感じさせる作品である。

 

優 秀 泣いたらアカンで通天閣

読売テレビ放送

 チーフプロデューサー 堀口良則、プロデューサー 福田浩之、脚本 霜田一寿、監督 位部将人、出演者 木南晴夏ほか 

 通天閣が見下ろす大阪・新世界。下町商店街にあるラーメン屋「味よし」の一人娘でOLの千子は、母親が亡くなってから店を引き継いだ父親と祖母の3人で暮らしている。父の作るラーメンはまずく、閑古鳥が鳴く店を、千子は陰ながら支えているが、その千子も会社の上司との不倫関係に悩んでいた。そんな中、向かいの質屋の一人息子で、幼馴染のカメヤが10年ぶりに東京から帰ってくる。それぞれに悩みを抱えつつも、たくましく笑顔で生きる関西人の奮闘を描く。

 登場人物の一人一人、せりふの一つ一つに魅力がある。人間の優しさと悲しさが、大阪の楽しい雰囲気とともに心に深く残るどこか懐かしい家族の物語である。

 

 

 CM部門

〔ラジオCM 第1種(20秒以内)〕

 

最優秀 関西大学 関西大学篇(20秒)

エフエム大阪

 プロデューサー 福田一夫、ディレクター 小田切武史、コピー 前田奈美(関西大学)、ナレーター 畑中ふう(フリー)

JPG 関西大学出身の「会社員」がいる――という、ごくありふれたナレーションでCMは始まる。そこから、関大出身者には「フィギュアスケート選手」や「肝っ玉母さん」、はたまた「国会議員」までいると続く。そしてリスナーに向かって「さぁ、関西大学で何しよう」と問いかけて、CMが終わる。学生たちに広がる可能性と、それを後押ししたいという、大学の“思い”がさわやかに表現されている。現役の関大生が書いた等身大のCMコピーが、大学のイメージアップに大いに貢献している。

 

 

 

 

優 秀 赤坂ボクシングジム 赤坂ジムイメージ編(20秒)

北海道放送

 プロデューサー 澤田健也、ディレクター 氏家誠一(HBCメディアクリエート)

 ボクシングジムのラジオCM。ほぼ全編、練習生がトレーニングに打ち込む“音”で構成される。縄跳び、ミット打ち、スパーリング、そして練習生の息遣い――これらがカメラのシャッター音を間に挟みながら、鮮やかに再現される。CMを聞いているだけで、汗をかきながら練習に取り組んでいる姿が目に浮かぶ。リアルで迫力のある効果音を用いることによって、ボクシングジムに対して興味を持ってもらうことに成功している。

 

優 秀 エステー 消臭力 優しい森/前ふり篇(20秒)

ニッポン放送

 クリエイティブディレクター 鹿毛康司(エステー)、出演 T.M.Revolution 西川貴教、プロデューサー 河野信濃、コピー 佐藤延夫(ロケットペンシル)

 T.M.Revolution 西川貴教さんがぼそぼそと語っている。「なに、いやだからもう、歌おうと思ってんじゃん。ほらいろいろあるでしょ、気持ちの問題とか……」。いったい、何のCMなのかとリスナーが感じ始めたところで、おなじみの「♪消臭力(しょぉ~しゅぅ~りきぃ~)」という力強い歌声がこだまする。アーティストとしての姿とは一味違う魅力をうまく引き出すとともに、商品をPRするというCM本来の目的も達成している。

 

優 秀 公共キャンペーン・スポット/守ろう地球環境 ホタル篇(20秒)

ニッポン放送

 プロデューサー 高橋晶子、林 尚司(電通)、ディレクター 松田哲雄(サウンドマン)、コピー 富 剛(電通東日本)

 「最近、ホタルを見ましたか」という問いで始まるCM。実は、都会のホタルは深夜オフィスで見つけられるという。都会のホタルとは、パソコンやプリンターなどさまざまなOA機器の電源がオンになっていて、小さな明かりがついている状態のこと。OA機器の消し忘れを“絶滅”させ、電気の無駄遣いの削減を訴える。誰もが実感できる題材を見出し、自分の問題として考えることができるようにした点が、高く評価された。

 

優 秀 自社媒体PRスポット/効果あるの? 篇(20秒)

エフエムラジオ新潟

 プロデューサー 田代邦宏、ディレクター 榎本高顯(メディアリミックス)、コピー 倉元英之(エングラフ)

 「ラジオCMって効果あるのかなぁ。そもそも、ラジオって聞いてんのかなぁ」という問いかけに、一方が「微妙だね……」と返す。何となく怪しい雰囲気になってきたところで、「そんなことはありません。このCMを聞いているアナタが証人です」と力強いナレーションが入る。リスナー自身が“ラジオCMの効果を実感できる”という仕掛けが、秀逸である。 

 

優 秀 兼子 ノートになる前は篇(20秒)

静岡放送

 プロデューサー 原 尚弘、ディレクター 牧野真美、ナレーション 津島加代子(フリー)、コピー 橋本隼人(電通クリエーティブX)

 中学生の男子二人の会話。持っているノートが再生紙で作られたという発言に対して、もう一人が「てことはだよ? ノートになる前は、エッチな本だった可能性もあるってことだよな……」と一言。その後、二人が“ゴクッ”と生唾を飲む効果音が挿入される。リサイクル事業の一面を、ユーモアを交えて表現しており、明るい企業イメージ作りに成功している。 

 

 

〔ラジオCM  第2種(21秒以上)〕

 

最優秀 自社媒体PRスポット/世界3万円紀行 篇(60秒)

エフエムラジオ新潟

 プロデューサー 田代邦宏、ディレクター 榎本高顯(メディアリミックス)、コピー 倉元英之(エングラフ)

JPG 旅番組風の音楽を背景に、3万円でできる体験が次々に紹介されていく。トルコのシマーヴでは温泉に300回入浴、ネパールのカトマンドゥでは150回象に乗れ、ジンバブエのビクトリア渓谷ではバンジージャンプに3回チャレンジ、インド洋のセーシェル諸島ではヤシの実のお酒を300杯飲めるという。そして、「ここ新潟で3万円あれば、エフエム新潟でラジオCMが流せます」と意表をつく展開で、自社のPRに結び付ける。自らCM料金を言う小気味のよさで笑いを誘い、ラジオの現状を明るく訴える構成が高く評価された。

 

 

 

 

 

優 秀 自社媒体PRスポット/ラジオ小僧の成長(120秒)

青森放送

 プロデューサー 渡辺英彦、ディレクター 山本鷹賀春、語り 岩本俊映(RAB映像)、アナウンサー 田村啓美

 複数のリスナーの体験談を基に創作した、男性会社員のエピソードを綴ったCM。父にもらったラジオは、初恋、受験、就職、結婚、仕事と、彼の人生の側にいつもあった。震災の日、震える手でスイッチを入れると、聞きなれたアナウンサーの声。その声が心の支えになった。そして、父と同じく、自分も息子にラジオをプレゼントしようと決意する。ラジオ世代の大人たちから、若い世代にラジオの価値を伝えてほしいという、制作者の思いが伝わる作品に仕上がっている。

 

優 秀 公共キャンペーン・スポット/忘れない3.11小川旅館篇(150秒)

IBC岩手放送

 プロデューサー 姉帯俊之、ディレクター 佐藤正昭(スリーエス)、ナレーション 大塚富夫、取材 千葉佳史

 東日本大震災の被害から立ちあがろうとしている人の声を伝える同社のキャンペーンCMの1つ。大槌町の旅館の女将小川京子さんは、幕末から続く老舗旅館を津波で流されてしまい、今は別の場所で再開している。CMでは、元の旅館があった場所で、母やお客さんの思い出とともに、ここで再開するという最終目標を語る。地域に密着した取材の成果が、当事者の声によって上手く表現され、困難に立ち向かう人達へのエールとなっている。

 

優 秀 サラヤ ラカントS/国会答弁篇(30秒)

ニッポン放送

 プロデューサー 高橋晶子、林 尚司(電通)、ディレクター 松田哲雄(サウンドマン)、コピー 薄 景子(電通)

 国会の議場と思われるざわめきの中、「同じ人間の、同じ命の一部に、なんで境界線問題が発生するんですか」と叫ぶ女性議員。周りから激しいヤジが飛ぶ中、「首とあご」「ほっぺとたるみ」「おばさんとおねえさん」などの“境界”に疑問を投げかける。すると「ムダな肉ほど主張がはげしい」とのナレーション。インパクトの強い女性議員のキャラクターとコピーが面白い。たたみかける答弁の様子によって、「カロリーゼロの甘味料」という商品のアピールポイントを上手く伝えている。

 

優 秀 日産自動車 愛車へのラブレター Z33へ(150秒)

エフエム東京

 プロデューサー・ディレクター 山口景子、コピー 村上大樹(村上大樹事務所)、ナレーター 増田 晋(俳協)、ミキサー 安田慎一(Weed)

 企業が公式フェイスブック上で募った「愛車へのラブレター」を、ラジオドラマの人気出演者が朗読したCM。岩手県釜石市の男性が綴ったのは、お金を貯めて20歳で買ったフェアレディZ33への“愛”を語るもの。あの日、その車は目の前で想像以上の津波にのまれてしまう。新たにZ33を購入した男性は、初代に「あなたと走った2万キロを、僕は一生忘れません」と約束し、2代目を「徹底的に乗り潰す」と誓う。すっと耳に届くナレーションで、映像が頭に浮かんでくる。SNSとラジオドラマを連動させた点も評価された。

 

優 秀 日本航空 JAL×東京スカイツリージェット/イメージ 篇(80秒)

朝日放送

 プロデューサー 野本友恵、プランナー 川元寛之、ディレクター 村上正道(ビー・ジー・エム・サービス)、

 コピー 森田一成(ビッグフェイス)

 男女が少し違和感のある標準語で話している。東京スカイツリーの展望デッキでロマンチックに永遠の愛を誓う二人。しかし、突然「みたいなこと言うてるんちがうの、東京の人は」「一回でええからそんなキザなセリフ言うてみたいわー」と関西弁でしゃべり出す。実は関西の“おっさん”と“おばさん”の想像だったのだ。東京の人や名所を小馬鹿にしつつも、憧れがにじみ出ていて憎めない。言葉のギャップを巧みに利用したCMで、スカイツリーを見たい関西の人に飛行機で東京へ来てほしいという企業の願いが伝わってくる。

 

優 秀 公共キャンペーン・スポット/守ろう地球環境~天ぷら油をエネルギーに~(120秒)

山口放送

 プロデューサー 藤田史博、ディレクター 大谷陽子、ナレーター 庄野数馬、ミキサー 寺岡岳男

 環境を守るために頑張るおばあさんの純粋な声を通じて、多くの人に社会問題を気づかせてくれる作品。萩市の岩武敦子さんは、飲食店などから出る使用済み天ぷら油をリサイクルしてバイオディーゼル燃料を作り、販売している。68歳の時に自宅倉庫を改装して、新たな挑戦を始めた岩武さんは「まだ使えるのに捨てるのはもったいない」と語る。身近な活動を話題にし、自分にも何かできるかもと思わせてくれるところが評価された。

 

 

〔テレビCM〕

 

最優秀 公共キャンペーン・スポット/葛巻町のクリーンエネルギー(60秒)

テレビ岩手

 プロデューサー 淵沢行則、ディレクター 佐々木 款、撮影 藤森 充(東北映像)、出演 葛巻の子供たち(森と風のがっこう)

JPG クリーンエネルギーの取り組みを進めている岩手県葛巻町を取り上げたキャンペーンCM。町の図書館で見つかった映像フィルムには、50年前に上外川地区の分校に匿名でテレビが贈られ、電気がなかったため小さな水力発電所を作った様子が記録されていた。葛巻町は、今では風力、太陽光、木質ペレット、バイオマスガス等の発電システムにより電力自給率が約160%を超えており、当時の校舎はエコスクールに活用されている。福島第一原発事故後の現在、原点に立ち返って電気とのかかわり方を考えさせる優れた作品である。

 

 

優 秀 公共キャンペーン・スポット/忘れない3.11わたしの一言(60秒)

IBC岩手放送

 総合プロデューサー 角舘郁也、プロデューサー 中村好子、ディレクター 千葉佳史、楽曲 佐々木裕文

 親戚10人が津波の犠牲になった男性や仮設住宅で暮らす女性など5人の被災者が、いまの日常を語りながら、「安全安心」「感謝」「金になる漁業、魅力ある漁業」「負けない」「ありがとう」といった「わたしの一言」を訴える。東日本大震災で被災した人たちの思いを、放送を通して伝えていくキャンペーンCMである。シンプルな構成ながら、登場する方々の前向きに考える姿勢が視聴者の明日を励ます仕上がりとなっている。

 

優 秀 自社媒体PRスポット/あなたにも選ばれたい(60秒)

中部日本放送

 プロデューサー 宇佐美浩伯、ディレクター 大野勝己、撮影 安田耕治(CBCクリエイション)、出演 丸山真一

 カードマジシャン丸山真一さんの華麗な手さばきで魅了しながら、自社の放送を見てほしいとの思いを伝える媒体PRスポット。白紙のカードの束から彼が選ぶカードは、マジックによりなぜかすべて「CBC」と書かれたカードになってしまう。ナレーションで「このカードのようにスケジュールが白紙の日には」「理由なんてなくたっていいのです」と注意を引き付け、「あなたに選ばれたいCBC」と結ぶ。ユーモアあふれる丸山さんの演技が笑いを誘うおしゃれな作品である。

 

優 秀 公共キャンペーン・スポット テーマ「防災」/その時 尾鷲に奇跡を(120秒)

名古屋テレビ放送

 プロデューサー 五十嵐信裕、ディレクター 柴田正登志、カメラ 鈴木崇義(東通)、取材 高木豪将

 三重県尾鷲市宮之上小学校の中村先生は、南海トラフ巨大地震に備えて作った「てんでんこ」の歌を1年生の子どもたちと歌って、津波からの避難の大切さを伝えている。つなみてんでんこは、三陸地方に伝わる避難の心得。この教えを守った岩手県釜石市では小中学校にいた児童・生徒全員が助かったという。歌詞には、釜石市の石碑に刻まれた「100回逃げて、100回来なくても101回目も必ず逃げて!」の言葉も盛り込まれている。子どもたちの元気な歌声と避難訓練時の真剣な表情が、減災の必要性を強く訴えるCMである。

 

優 秀 公共キャンペーン・スポット テーマ「幸せ」/幸せって?(120秒)

名古屋テレビ放送

 企画 佐藤幸子、プロデューサー 大池雅光、ディレクター 竹田隆司(フリー)、カメラ 岩井伸明(名古屋テレビ映像)

  全国的に知られる故蟹江ぎんさんの4人の娘たちは、いま平均年齢93歳。4姉妹の日常は笑い声が絶えないが、一人ひとりの過去にはさまざまな苦労や悲しみがあった。浪費家の夫との日々、第二次世界大戦、伊勢湾台風で失った娘と孫など。年を重ねて明るく生きる彼女たちの日常を通して、「幸せ」のあり方を考えさせる作品となっている。ラストカットの「いまあなたは幸せですか」との問いかけが視聴者の心を打つ。

 

優 秀 公共キャンペーン・スポット/「雲の梯子」篇(90秒)

中京テレビ放送

 プロデューサー 青木繁治、通木芳之(CTV MID ENJIN)、ディレクター 小島英幸(CTV MID ENJIN)、編集 石原成幸(CTV MID ENJIN)

  自然との共生をテーマとしたキャンペーン・スポット。取り上げられるのは、“雲の梯子”と呼ばれる中国雲南省にある巨大な棚田と、それを支えるハニ族の人々の営みである。棚田の高低差は500m、1500段以上。谷底から上る霧が雨となって田を潤していく。ハニ族は水を管理する溝長(こうちょう)や護林員を置いてその自然を守り、協力して田植えをする。自然を畏れ、敬って生きていく人々の姿と壮大な風景が印象的で美しい。私たち日本人が忘れてしまった生き方を思い起こさせる優れたCMである。

 

優 秀 公共キャンペーン・スポット/風化させない戦争の記憶(120秒)

南日本放送

 プロデューサー 有迫貴史、ディレクター 青谷美穂、ナレーター 植田美千代、撮影 江夏 豊(ライコー)

 「死というものは他人に代わってもらうわけにはいかない」と語る元神風特別攻撃隊の江名武彦さん(89歳)は、昭和20年5月に出撃し、黒島の海に不時着して一命をとりとめた。67年もの間、亡き戦友たちを心の奥底に秘めて黒島で慰霊を続けている。残り少ない人生を悟り、戦争の体験談を黒島の子供たちに語り始めた。憲法や隣国との問題で揺れている今、番組だけではなく、CMとしても記録に残し伝えることが大事だと高く評価された。

 

 

技術部門

 

最優秀 ΩFINDER(オメガファインダー)の開発

TBSテレビ

 研究・開発担当者 加藤克行

JPG スマートフォンの地図上で、中継点からFPU受信基地やSNG通信衛星などの目標点への方向を一括表示するほか、AR技術を利用して、カメラ画像上に目標点の位置をリアルタイムでオーバーレイ表示し、伝送路の遮蔽の有無などを簡易判定できるアプリを開発・実用化した。

 これにより、中継準備作業の利便性や迅速性が大幅に高まるなど、テレビ中継技術の効率化・高度化に大きく貢献した。

 

 

 

優 秀 多点式タッチパネルを用いた調光卓の開発

TBSテレビ

 研究・開発担当者 近藤明人

 機械式フェーダやハードスイッチを多数配置した従来の調光卓のイメージを一新し、多点式タッチパネルを用いて入力装置と表示装置を一つにまとめ、省スペースかつ高機能な調光卓を開発・実用化した。

 これにより、スタジオフロア等でも使用できる可搬型装置としての汎用性と、付加回路制御や照明バトン操作に至る機能の拡張性を実現し、テレビ照明技術の効率化・高度化に貢献した。

 

優 秀 カメラデータの映像重畳伝送による中継バーチャルシステム「VANC」の開発と運用

テレビ朝日

 研究・開発担当者 加藤 喬、坂田敏治、小野真介

 現地ブースにシステムを組み運用していた中継バーチャルCGについて、中継現場から本社に伝送されるHD-SDI信号のアンシラリー領域にバーチャルCG用のデータを重畳し、本社のバーチャル設備をリアルタイムで連動させるシステムを開発・実用化した。

 これにより、生放送で局内設備を用いたバーチャルCG演出が可能となり、大幅なコスト削減やクオリティ向上に寄与し、テレビ番組制作の効率化・高度化に貢献した。

 

優 秀 遠隔取材支援システム「名称:LocationSupporter/ロケサポ」の開発

フジテレビジョン

 研究・開発担当者 木村好信、井上 幸、福地 洋、今井紀和

 スマートフォンを活用した取材支援システムとして、GPSを活用した中継車や記者の位置情報表示、テキストでの一斉連絡や現場同士の連絡、IP電話、スタジオ映像・音声の送り返し伝送ができる多機能アプリを開発、実用化した。

 これにより、音声通話に頼らないスタッフ間の情報共有やオンエア内容の確認が容易となるなど、取材活動における利便性が高まり、テレビ番組制作の効率化に貢献した。

 

優 秀 クレーン車を活用した移動式非常用中波空中線の開発

新潟放送

 研究・開発担当者 小林 強、鈴木紀行

 中波放送の折り返し型接地空中線として工事用クレーン車に着目し、親局(予備送信所)設備の一部として電波伝搬の実証を行い、災害発生時の臨時放送局として技術的に設置・開局が可能であることを確認した。

 これにより、短時間に調達・設置可能で設置場所の自由度が高く、高能率かつ安定した空中線の実用化に道を拓き、中波放送設備の安全・信頼性向上に貢献した。

 

優 秀 BMLコンテンツを用いたデータ放送監視環境の構築

朝日放送

 研究・開発担当者 小南英司

 BML言語による割り込み処理機能を用いて、コンテンツの更新監視に特化したデータ放送コンテンツを常時動作させることで、データ放送コンテンツの表示内容や更新状況を、テレビ受像機およびWEBブラウザから確認できる監視システムを開発・実用化した。

 これにより、社内各所のニーズに応じて、データ放送の監視環境が柔軟かつ安価に構築可能となり、テレビ送出業務の効率化に貢献した。

 

優 秀 ベストエフォート回線における映像の安定伝送を実現する「準リアルタイム方式」の開発

関西テレビ放送

 研究・開発担当者 栗山和久

 無線LANをはじめとするベストエフォート回線を用いた素材伝送において、一時的な通信速度の低下やパケットロスが発生しても受信映像が乱れないよう、映像を10秒ごとにファイル化して転送し、一定時間蓄積した後に連続再生する伝送方式を開発・実用化した。

 これにより、無線LANスポット等を活用して、コンパクトな機材で取材映像を安定して伝送することが可能となり、テレビ報道の速報性向上と効率化に貢献した。

 

 

特別表彰部門

〔青少年向け番組〕

 

最優秀 HTBノンフィクション「ありがとう いのち ~みんな きみが大事~」

北海道テレビ放送

 プロデューサー 阿久津友紀、ディレクター 浅野早也香、ナレーター 藤尾仁志、大野 恵

JPG 学校でのいじめや不登校などに解決策がない中、いのちを大切にする「こころ」を子どもたちに伝えることで、風穴をあけようと奮闘している女性たちがいる。人はどのように生まれ、成長するのかという誕生の話を、わかりやすく優しい言葉で伝える「いのちの授業」を行う女性の一人、菊池咲十子さんの活動を追いながら、いのちの教育のあるべき姿を求めて、自己肯定感の熟成を訴える医師や教育現場の悩みを取材し、こどもの日に放送した。

 誕生という難しいテーマに正面から真摯に向き合い、家族が子どもたちと一緒に“いのち”について考えるきっかけを提供してくれる番組である。

 

優 秀 NBS月曜スペシャル みんなの夢を教えて下さい ~パティシエ清水慎一・菓子創りは夢創り~

長野放送

 プロデューサー 春原晴久、ディレクター 黒岩祐治、カメラマン 旗本 豊、ナレーター 唐澤昌子

 長野県伊那市の菓子店「菓匠Shimizu」のオーナーパティシエである清水慎一さんは、子どもたちが描いた「将来なりたい自分の夢」をケーキにして、無料でプレゼントする「夢ケーキ」という活動を行っている。昨年開催したイベントには親子200組が参加、子どもたちが描いたデザインそのままの夢ケーキをパティシエたちと一緒に作った。

 「家族で子どもたちとともに夢を語り合うことで、夢は実現する」と語り、ケーキを通じて幸せを提供しようとする清水さんの情熱が、余すところなく描かれている。夢を語る子どもたちの清々しく幸せに溢れた表情が、夢を持つことの素晴らしさを気づかせてくれる。

 

優 秀 ウッティ発! アンニョンハセヨ!ワタシ桑ノ再生請負人

テレビ山梨

 プロデューサー 平岡 豊、ディレクター 岩崎 亮

 山梨県市川三郷町山保は少子高齢化の進む小さな集落である。市川三郷町は全国に普及し日本の養蚕業を支えた「一瀬桑」発祥の地。そこにやって来た韓国人ハン・ソンミンさんと妻の楠三貴さんが、桑の再生に向けて奮闘する日々を追いかけた。養蚕の衰退とともに売れなくなった一瀬桑を住民から譲り受けて「桑の葉茶」を作り、売りはじめる二人。初めは疑心暗鬼で桑の葉を譲る住民たちだが、ハンさんが生産者に教えを乞い、収穫作業を手伝い、村の行事に積極的に参加し溶け込もうとする姿を見て、次第に心を通わせていく。

 ハンさんが懸命に努力する姿は、新しいことに挑戦することの素晴らしさと難しさ、情熱を持つことの大切さを若者に教えてくれる。

 

優 秀 FBCスペシャル 最後のタクト~魂がゆれた!合唱団の30年~

福井放送

 プロデューサー 井上寿美枝、岩本千尋、ディレクター 髙原みゆき、撮影・編集 八木義純

 「福井ソアーベ児童合唱団」は、指揮者の坪口純朗さんと妻・晴美さんが、“ほめて伸ばすをモットー”に、「子どもたちに居場所を」との思いから築いた合唱団。合唱団が結成30周年を迎えたある日、坪口さんに末期がんが宣告される。合唱団の解散を決めた坪口さんは、最後の演奏会に向けて懸命にタクトを振る。

 坪口さんが子どもたちに寄せる深い愛情と、坪口さんの遺志を引き継いで歌に想いを寄せ、演奏会にのぞむ子どもたちのひたむきな姿が胸を熱くする。合唱団に自分の居場所を見つけた子どもたちの姿が、子どもに寄り添う大人の存在や、一緒に頑張る仲間の存在がいかに大切であるかを伝えている。

 

優 秀 熱血テレビ「高校生が挑んだ!初めてのテレビ番組作り 半年間の記録」

山口放送

 プロデューサー 渡部雅史、ディレクター 田村康夫、撮影 山本宏幸、糸賀孝雄

 山口放送が平成24年に実施した「高校生のテレビ番組制作体験『高校生ミニ放送局プロジェクト』」は、番組づくりを通じて高校生に放送について学んでもらう企画。このプロジェクトに参加した徳山高校放送部員9人の半年間にわたる挑戦を記録した。

 高校生たちが、山口放送に特設した部室を活動拠点に、番組の企画から、リサーチ、取材交渉、取材・撮影、編集、広報など番組制作のあらゆる過程を経験し、様々な苦労や喜びを分かち合いながら成長していく姿を丹念に捉えている。高校生たちが真剣に考え、意見をぶつけ合う姿には、同世代の子どもたちにも新鮮で、大きな刺激を与える力がある。

 

〔放送と公共性〕

 

最優秀 「1954年・忘れられた被ばく」の真実を伝える 『X年後』テレビ番組と自主映画上映活動

南海放送

 実施責任者 伊東英朗

JPG 1954年にアメリカが太平洋ビキニ環礁で行った水爆実験によって、当時1000隻以上のマグロ漁船が被ばくし、日本全土に放射性降下物が降り注いだ。しかし、その事実はいつの間にか「第五福竜丸」1隻の被害とされ、そのほかの被ばくは歴史から消えていった。南海放送は9年前から番組を通じて、この事実を世に問いかけてきた。東日本大震災後、一連の番組素材を再編集したドキュメンタリー映画を制作し、これまでに全国100か所以上で自主上映活動を続けている。

 視聴者が知りえない問題を掘り起こし、粘り強く報道し続けてきたことに加え、上映活動による広がりも高く評価された。

 

優 秀 タンチョウ衝突死 ~保護活動への警鐘~

札幌テレビ放送

 実施責任者 眞鍋浩史

 道民は長らくタンチョウの優美な姿を愛で、その数の増加を誇ってきたが、一方で危機に直面する現実もある。札幌テレビ放送は、列車との衝突で親を失った2羽のヒナの成長を追いながら、衝突死の増加と国の特別天然記念物・タンチョウを取り巻く「生息地の過密化」や長年続けられている「給餌」についてニュース番組の中で随時伝えてきた。その報道は、JR北海道がタンチョウ生息地の一部区間で減速運転を実施するなどの動きにつながっている。

 タンチョウを救えば過密化が進むという矛盾をはらんだ問題に、ひるまず取り組んでいることが評価された。

 

優 秀 土から未来を掘り起こす! 「おかえりマイファーム」

福井テレビジョン放送

 実施責任者 山元呂室

 住民の高齢化や地域の過疎化などで作物が作られないまま放置されている耕作放棄地。里山環境の破壊や食文化の喪失は全国に共通する問題でもある。福井テレビジョン放送では、2010年から番組スタッフ・局員自らが畑に立ち、自らの手で耕作放棄地を農地に戻す活動に取り組んできた。地域の人を巻き込み、収穫した作物で商品を企画し、新たな人とのつながりをつくり出す様子は、夕方ワイド番組のコーナーで継続して伝えている。

 視聴者を楽しませながら問題提起している点とローカル放送局の果たすべき地域応援の新しい取り組みの好例である点が評価された。

 

優 秀 Jump Over Cancer MBS がん検診啓発キャンペーン

毎日放送

 実施責任者 梅本史郎

 「関西のがん検診受診率が低い」という事実。毎日放送では、この事実を単なるニュースとして終わらせるのではなく「よりよい社会の実現という放送局の使命に照らし主体的に何かできないか」という思いからキャンペーンをスタートさせた。報道局の呼びかけに、社内の有志が手を挙げ、医療セミナー、啓発イベント、番組連動、地域連携の4つのワーキンググループとPRチーム、それを束ねる運営委員会で構成。さまざまな活動を通じて市民にがん検診を受けようと訴えている。

 「誰かの役に立ちたい」「社会を変えたい」は放送人の原点。スポンサーに頼らず社員自らの知恵と情熱で活動を続けている点が評価された。

 

優 秀 子育て応援団プロジェクト ~感染症情報の発信~

広島テレビ放送

 実施責任者 井坂雄幸

 広島テレビ放送は、子育てしやすい環境づくりを目指して番組やイベント、モバイルサイト等、クロスメディアでプロジェクトを展開している。モバイルサイトでは、現在、広島テレビ放送を含む25局が連携し、救急・医療情報を中心に子育て情報を発信。中でも、生年月日を入力すると今受けられる予防接種が一目でわかるコンテンツなどが人気。昨年度は、日本テレビ系列18局でデータ放送「子育て応援団d感染症NEWS」を実施した。今年度は、日本テレビ系列20局で実施を予定している。

 ネットやデータ放送を活用し、実際に使えて役に立つコンテンツを発信している点が評価された。