表彰番組・事績
日本民間放送連盟賞/2014年(平成26年)入選・事績
番組部門
〔ラジオ報道番組〕
最優秀 ダウン症は不幸ですか?新型出生前診断スタートから1年 ダウン症への思い
朝日放送
プロデューサー 藤井武夫、ディレクター 石原正也、西池大樹、構成作家 姫路まさのり
2013年4月に「新型出生前診断」が開始された。妊婦の血液から胎児の染色体の異常の有無を判別する検査である。しかし、クローズアップして伝えられるのは“ダウン症の子どもを産まないための検査”という情報ばかりである。スタジオでダウン症である女性ゲストの意見を聞くとともに、取材したダウン症の子どもを持つ家族や関係者が今の風潮をどう思っているのか、また、知っているようで知らないダウン症について、それぞれの現実を伝えている。聴取後の意識を変える力を持った作品である。
優 秀 海よ光れ~山田町大沢で輝く子どもたち~
IBC岩手放送
プロデューサー 若槻 修、ディレクター 千葉佳史、取材 大野 浩、ナレーター 甲斐谷 望
岩手県山田町の町立大沢小学校では、伝統の全校表現劇「海よ光れ」がかけがえのない宝物となっている。しかし、東日本大震災が発生した年、劇は上演されなかった。避難所となった学校が徐々に「学び舎」として復興していく姿とともに、表現劇を通して心を通わせる子どもたちと先生、地域にスポットを当てている。それぞれが抱く「海よ光れ」や故郷への思い、そして震災当時3年生だった子どもたちの成長が伝わってくる作品である。
優 秀 ニッポン放送報道スペシャル「救えた命、救えなかった命~幼稚園バスを襲った津波」
ニッポン放送
プロデューサー 上村貢聖、ディレクター 森田耕次、ナレーション 上柳昌彦、構成 桜林美佐
東日本大震災から3年。肉親が犠牲となり、残された家族は、その空白をいかに埋めてきたのか。幼稚園バスに乗っていた6歳の娘を亡くした両親の3年間にスポットを当て、娘の死を無駄にしないためにも、なぜ亡くなったのか、家族が真実に迫ろうと懸命に生きてきた姿を紹介している。被災者の「心のケア」が求められる中、両親の体調や心の機微を描くことで、被災者にとって震災は終わっていないことを実感させられる。
優 秀 YBSラジオスペシャル 水腫脹満茶碗のかけら~地方病100年の闘い
山梨放送
プロデューサー 有泉裕人、ディレクター 石川 治、ナレーター 塩澤未佳子、出演者 林 正高
かつて山梨県内で大流行した不治の「地方病」。現在は「日本住血吸虫症」として知られる寄生虫病は当初、原因不明で治療法なども確立されておらず、県民に恐れられていた。何十年にもわたる医師や研究者、住民の努力で原因を解明し、終息に至った歴史と現在を描いている。国内で新たな患者が発生しないとは言い切れないなか、この病気と闘った先人たちの思いを引き継ぐために、次世代の医療関係者にも聴いてほしい作品である。
優 秀 ひとりぼっち ~えん罪被害者の今~
北日本放送
制作統括 桐谷真吾、ナレーター 上野 通、構成 大野慶介、取材 数家直樹
12年前、無実を訴えながら強姦事件などの犯人として富山県警に逮捕され、懲役3年の刑が確定した柳原浩さん。えん罪が判明したのは、刑務所を出てから2年後であった。捜査報告書や供述調書を独自に入手、警察によって証拠がでっち上げられた経緯を克明に再現する。警察関係者の証言と獄中から届いた真犯人の手紙を検証し、警察が無実に気づきながら刑務所に送った可能性と真相を追及。丁寧な取材と構成で、警察に対する被害者の憤りが伝わってくる。
優 秀 消えない雨
南海放送
チーフプロデューサー 小倉健嗣、プロデューサー 日野 聡、ディレクター 伊東英朗、語り 保持卓一郎
1946年から56年まで、中部太平洋における核実験で放射性物質が広範囲を汚染した。29年間にわたり事件を調べ続ける元高校教師の活動を追い、当時の沖縄に焦点を当てた。1954年に一度も被ばくマグロを水揚げした記録がない背景を生存者に当たり、米軍施政下の特別な状況を伝え、1950年代に日本本土と比較し多量に記録された放射能雨が降った仕組みと土壌の汚染も明らかにした。継続取材の厚みを感じさせる作品である。
優 秀 黒煙が消えた後に~福岡市医院火災 悩める町医者~
九州朝日放送
プロデューサー 岡本郡治、ディレクター 井尻 崇、制作 松延健次、編集 富山孝洋
平成25年10月、福岡市で医院火災が発生、入院患者ら10人の命が失われた。そこはベッド数19床以下の、いわゆる有床診療所。経営者の高齢化と後継者不足が進む一方で、低く抑えられた診療報酬が有床診療所の経営を苦しめている。命を預かる医療の現場で長年にわたって放置されてきたひずみが、この火災であぶりだされた。有床診療所の歴史をひも解きつつ、患者や次世代の地域医療を担う医師の声と国の動きなどをもとに、有床診療所の現状と課題に迫る力作である。
〔ラジオ教養番組〕
最優秀 看取りのカタチ
CBCラジオ
プロデューサー 森合康行、ディレクター 菅野光太郎、音響効果 舘 一孝、ナレーション 阪 脩
自分と事務員の二人だけの小さなクリニックを開業する女性医師の在宅医療への取り組みと、その患者家族たちの看取りへの思いを取材し、医師、患者、その家族のそれぞれの「看取りのカタチ」を描く。
よそよそしい言葉ではない真実の言葉が吐露された強いメッセージを、音で伝えるだけで聴き手に感動を覚えさせるラジオならではの番組である。
優 秀 YBCラジオスペシャル 花は咲けども ~ある農村フォークグループの40年~
山形放送
プロデューサー 伊藤清隆、ディレクター 伊藤和幸、ナレーター 松下香織
山形県長井市に拠点を置くアマチュアフォークグループ「影法師」は、“おやじ”4人のグループ。結成以来40年間で約100曲の歌を発表し、一貫して「東北対中央の理不尽な関係」を訴え続けてきた。「花は咲く」ならぬ「花は咲けども」に込めた思いを伝える。時代や社会の変化を超えてアンチメッセージを歌い続けてきたグループの、震災後の苦悩を見事に描いている。歌の力、言葉の力、ラジオの力、地域の力が強く伝わり、聴く者に被災地への寄り添い方そのものを問いかけてくる。
優 秀 ピート・シーガー追悼特別番組「野に咲く花は、少女の胸に」
エフエム東京
出演者 小室 等、ロバート・キャンベル、企画・構成・演出・取材 延江 浩、浮田周男
今年94歳で亡くなったフォークの神様、ピート・シーガーの追悼番組。ゲストとともにその肉声と歌詞、メッセージを検証しながら、当時の音風景とともに、かつて音楽が若者たちと一緒に平和を求めた時代を振り返り、今の日本を見つめる。ピート・シーガーの言葉が、音楽に限らない普遍的な真理であることを伝えている。音楽を通じて平和を考えさせられるエフエムラジオならではの骨太な番組である。
優 秀 SBCラジオスペシャル「My place~川中島の保健室」
信越放送
プロデューサー 西沢 透、ディレクター 笠原公彦、ナレーション 三島さやか
公立の小中学校の元養護教諭が退職後に自宅に保健室を開いたのは2009年10月。3歳から81歳まで年間600人以上が利用し、開室から4年半で利用者はのべ3,000人に上るという。一人の女性教諭の生き方と街の保健室の歩みを、元教え子に寄りそう姿とともに描く。「My place」は元教え子の自作の歌のタイトルでもある。保健室に養護教諭が駐在するのが日本のユニークな制度であることや、保健室を訪れる子供たちの病気の変遷が時代の鏡であることなど、興味深い情報を紹介しながら、保健室の社会的な意味を上手く表現している。
優 秀 宇宙の音が聞こえる!おかえり大野さん。~音響デザイナー 大野松雄84年目の挑戦~
京都放送
ディレクター 小林秀野
日本の音響デザインの祖ともいわれる大野松雄さんは、アニメーション「鉄腕アトム」のあの足音を作った人物である。今は京都に在住。1968年以来、滋賀県の知的障害者施設の演劇活動にも協力してきた。この3年間に氏の身の周りにあった出来事を、縁のある人の話を織り交ぜながら綴り、まだまだ自分のやり遂げたいことに思いを馳せる84歳の姿を描く。アトムが上昇する音やエネルギーを注入する音が大野さんの行動に沿って流れるのが、大野さんの面白い話とともに楽しい。
優 秀 きれいを探して~認知症の妻と暮らす
西日本放送
プロデューサー 難波正人、ディレクター 熊谷富由美、出演者 森 寛昭、森やす子
若年性認知症の妻を自宅で介護する夫。語彙が少なくなった妻は、美味しいことや気持ちいいことはすべて「きれい」という。「きれい」を二人で探そうと暮らしている夫婦の姿を追いながら、家族が認知症になったときに、どのような状況や問題に直面するのかや、介護に取り組むうえで大切なこと、地域とのつながりの重要性などを考える。マンションの住民に病状を説明し理解を求めた手紙の朗読など、ラジオならではの番組に仕上がっている。
優 秀 慰霊の日特別番組 伝えたい寄言
琉球放送
プロデューサー 比嘉京子、ディレクター 相良 武、真壁貴子、出演 島袋千恵美
沖縄「慰霊の日」に合わせて毎年放送している特別番組。戦後68年のこの日は「戦争体験談」「ある民謡に込められた思い」「絵本の朗読」「うちなーぐち版 日本国憲法第9条の朗読」の4部構成。寄言(ゆしぐとぅ)は「教訓話」「親の教え」などの意味である。戦時中だけではなく今に至る沖縄の悲劇がうちなーぐちから伝わってくる。沖縄の人だけではなく全国の人に聞いてほしい番組である。
〔ラジオエンターテインメント番組〕
最優秀 風の男 BUZAEMON
南海放送
ディレクター 乗松佳洲彦、ディレクター(音楽)津野紗也佳、主演 桝形浩人、ナレーション 戒田節子
寛政5年に吉田伊達藩で起こった「武左衛門一揆」。約1万人が加わり、突き付けた要求を無血で全て藩に認めさせた、当時としては珍しく農民側が完全勝利した一揆である。この一揆の首謀者で、「ちょんがり唄」という歌で人心を集めたという「武左衛門」の正体をラジオドラマの形で探る。民衆の不満をラップにしてユーモアにつなげた点が、ヒップホップの原点を感じさせる。台本、ナレーション、演出がともに優れており、リズムに乗って時間の経過を忘れさせる。
優 秀 新幹線がくる海峡の町 ~十日市秀悦と今別の旅~
青森放送
プロデューサー 渡辺英彦、ディレクター 山本鷹賀春、ナレーター 秋山博子、出演 十日市秀悦
北海道新幹線の駅が建設されている青森県今別町は、全国でも有数の過疎地だが、近年は都会から生まれ育ったこの町に戻ってくる若者もいる。今別町を訪れた喜劇役者の十日市秀悦氏の、地元の若者たちとのふれあいを通じた今別の青春群像を描いた作品。足音や農機具の音、「トンネル巻き」という巻き寿司を食べる音など、丹念に拾った音により、今別の風景が見えるようで心地が良い。過疎の一言では括れないその土地の事情や、様々な生き方があることを知らされる。
優 秀 前略、倉本聰様 ~小山薫堂からの贈りもの
エフエム東京
プロデューサー 松任谷玉子、ディレクター 勝島康一、構成 北阪昌人
脚本家の小山薫堂氏が、敬愛する倉本聰氏を、自らのふるさと天草への旅に誘う。天草の風景や人々に触れながら、倉本氏が五感を研ぎ澄ませながら、物語の種を見つけていく過程を描いた。流れるギターの音楽や、倉本氏の街の人に対する洞察力の深さが、リスナーにも天草の涼しい風景を感じさせる。2人の会話が爽やかで温かく、小山氏の倉本氏を敬愛する気持ちがよく伝わってくる。
優 秀 山梨放送開局60周年記念ラジオドラマ「山梨交通 presents 婚活バスは、ふるさとへ」
山梨放送
制作統括 有泉裕人、プロデューサー 石川 治、企画・演出 若尾佳那、脚本 内藤みか
婚活バスに乗車した男女4人が山梨の観光名所を巡りながら、結婚や仕事、将来を考えるラジオドラマ。それぞれの人生を歩んできた4人が、それぞれの視点から山梨でどう生きるかという問題に向き合っていく。婚活を取り入れ、若いリスナーの関心を引き付けようとする制作者の意気込みが伝わり、「普通の幸せ」とは何かを考えさせられる。果物など山梨の名産や名所と山梨にまつわる多くのデータが随所に散りばめられており、山梨の様々な姿を知ることができる。
優 秀 西村雅彦監督ラジオドラマ 立山に想ふ 遠き日の約束
北日本放送
制作統括 土肥尚彦、ディレクター・編集 柴田明夫、企画 武道優美子、監督・出演 西村雅彦
故郷富山に貢献したいという俳優・西村雅彦氏の思いを、県民参加型ラジオドラマの形で結実した。戦争で生き別れた幼馴染の男女が交わした約束を、現代に生きる2人の孫が果たそうと計画する物語。一般の県民が俳優となって西村氏とともに作り上げ、ぎこちないセリフの中にもリアリティを感じさせる。物語と史実のバランスが良く、ハイテクな現代と戦争の重さとのギャップも丁寧に描いている。富山大空襲を伝える点でも意義深い。
優 秀 さようなら 交通科学博物館
朝日放送
プロデューサー 藤井武夫、ディレクター 石原正也、西池大樹、作家 姫路まさのり
近代交通機関に焦点をあて、鉄道ファンをはじめ多くの人に愛された大阪環状線弁天町駅高架下の「交通科学博物館」が、2014年に営業を終了した。52年にわたり実物車両をはじめとする多くの資料を次世代に継承していくという使命を果たし、来館者へ乗り物の魅力を届けた博物館への感謝を込めた番組。ラジオの形で博物館を永久保存した記念碑として残る作品である。インタビューが丁寧に編集されており、制作者や出演者の博物館への思いが心を揺さぶる。
優 秀 ラジオドラマ「鉄の河童」
エフエム福岡
プロデューサー 首藤 裕、作・演出 美和哲三、編集・作曲 大塚和彦、監修 阿久根知昭
日本の近代化に大きな役割を果たした、福岡県北九州市と岩手県釜石市に残る製鉄業に関する施設などが、ユネスコの世界遺産の候補に推薦されることが決定した。鉄づくりのDNAは、今もなお人々の心の中に生き続けている。鉄と深く関わり、鉄に魅せられた人々の物語をラジオドラマの形でたどる。鉄でできた河童の家族が目に浮かぶようで、まるで映像を見ているような感覚で楽しめる。東日本大震災の被災地との共通点にも着目した脚本が、聞くものを物語に引き込んでいく。
〔ラジオ生ワイド番組〕
優 秀 銀太君が行く 札幌観光幌馬車実況生中継
北海道放送
プロデューサー 角田拡樹、ディレクター 氏家誠一
月~金/9時~11時の放送の「山ちゃん美香の朝ドキッ!」内で毎週水曜日放送されている「美香のなんでも90分」。今回は今年37年目を迎えた札幌観光幌馬車にスポットをあてた。パーソナリティの田村美香さんが、馬の「銀太君」がひく観光幌馬車に乗り込んで札幌の街を巡りながら、馬と人との37年間のドラマ、そして北海道に根付く馬文化を紹介した。蹄や街の音などの自然音を巧みに取り入れることで、番組の厚みや深みが増し、リスナーの想像力をより一層高める番組となっている。
優 秀 宮藤官九郎のオールナイトニッポンGOLD
ニッポン放送
演出 小川勇樹、構成 細川 徹、出演者 宮藤官九郎
月~金/22時~24時の放送。毎週火曜日は、オールナイトニッポンが現在の仕事のきっかけになったという“リスナー出身”の宮藤官九郎さんがパーソナリティを務める。面白がること、面白くさせることにかけては当代きっての「クリエイター・宮藤官九郎」が、くだらないことを真面目に取り組んでいく、思いが詰まった今回の放送。生ワイド番組ならではの、スタジオ全体の空気やリスナーの反応が手にとるように分かる番組となった。
優 秀 はみだし しゃべくり ラジオ キックス
山梨放送
プロデューサー 平井 勉、ディレクター 飯野泰央、パーソナリティ マキタスポーツ、依田智子
月~金/13時~16時29分の放送。今回はパーソナリティのマキタスポーツさんが、番組を卒業するリポーターへのはなむけの歌を、生放送中に完成させる企画。歌詞はリスナーから募集し、マキタスポーツさんがJ-POPのヒット曲に共通するコード進行や頻出ワードなどを解説しつつ、曲を完成に近づけていく様子をリアルタイムで紹介していった。パーソナリティの話の引き出しの多さと話題の展開力、制作スタッフの企画と構成力がうまくマッチした番組である。
優 秀 とれたてワイド朝生!スペシャル どんとこい!更年期!
北日本放送
制作統括 土肥尚彦、ディレクター 宮腰昌隆、アナウンサー 陸田陽子、木下一哉
月~金/9時~11時50分の放送。今回は女性専門クリニックを運営する種部恭子医師をメインゲストに迎え更年期の正しい知識について解説したスペシャル版。更年期に悩むリスナーや更年期を卒業したリスナーからの生の声を放送することで、女性だけでなく男性も更年期について知識や理解を深められる構成となっている。2人のパーソナリティの息もぴったりで、リスナーの更年期に対する関心を更に高めている。
優 秀 ヤマヒロのぴかいちラジオ
毎日放送
プロデューサー 川中恵一、ディレクター 藤原大輔、構成 野口 勉、出演者 山本浩之
金曜日/22時~23時30分の放送。硬軟自在なトークで活躍する山本浩之さんをメインパーソナリティに据え、深夜バラエティ色を濃く打ち出した番組。リスナーが日常生活で共感できるテーマを中心に、企画を構成。ラジオの面白さや魅力を、あらためて感じることができる点が巧みである。メインパーソナリティと2人のパートナー、計3人の調和のとれた進行が、リスナーを更に番組へと惹きつけている。
優 秀 やのひろみ with 山本清文「うぃず」スペシャル『道後はどう?~百年先のその向こう~』
南海放送
プロデューサー 小倉健嗣、ディレクター 中井 哲、プレゼンター やのひろみ、山本清文
月~金/13時15分~16時40分の放送。日替わりで、個性豊かなプレゼンターが送る生ワイド番組。この日は、国の重要文化財にも指定されている道後温泉の本館改築120周年を契機に、道後温泉の史実や裏話、訪れた人々の声や、リスナーからのメッセージなどを紹介していく。道後温泉の過去を振り返るだけでなく、未来に向けての取り組みについても取材、放送されている点を評価したい。
優 秀 花キューピット Presents ゴールデンアワー母の日スペシャル
エフエム沖縄
プロデューサー 山川悦史、ディレクター・出演者 西向幸三、出演者 糸数美樹、ニッキー
月~金/14時~15時50分の放送。母の日の直前に企画されたレギュラー番組のスペシャル版。母をテーマにしたメッセージをリスナーから募集し、さらに母をテーマにした選曲や生ライブ演奏と共に紹介、放送した。寄せられたメッセージはどれも内容が深く、母への感謝の気持ちがこめられている。母の日直前にふさわしい、心あたたまる構成となっている。
〔テレビ報道番組〕
最優秀 戦場のうた 元“慰安婦”の胸痛む現実と歴史
琉球放送
プロデューサー 砂川 裕、ディレクター 原 義和
戦時中140ヵ所の慰安所があったとされる沖縄。慰安婦に関する大阪市長の発言も伝えながら、「慰安婦」問題の背景、沖縄に慰安所を設置した日本軍の実態を、多くの証言や資料で明らかにした。被害女性の貴重な証言や、宮古島で「慰安婦」を見た住民、慰安婦と交流のあった住民の記憶などを丁寧に集め、「慰安婦」や住民、日本兵が当時何を思っていたのかを「うた」を手掛かりに探った。「慰安婦」という難しいテーマを正面から取り上げた意欲が高く評価される。
優 秀 福島と原発の50年~原発に身を削られる町・大熊町からの報告
福島テレビ
プロデューサー 千田淳一、ディレクター 井上 明、石山美奈子、平岩 岳
福島第一原発がある大熊町は今も放射線量が高く、検問ゲートによって立ち入りが制限されている。大熊町の元役場職員で、将来の住民帰還のために清掃やパトロールを続ける自称「じじい部隊」や、原発に建設段階から関わった東京電力元社員が故郷に寄せる思いを聴いた。また、併せて原発が福島に建設された経緯を、関係者への取材で明らかにした。現在の福島が抱える問題を浮き彫りにしながら、住民が戻ることのできる故郷を取り戻すためには何が必要なのかを重く問いかける。
優 秀 ザ・スクープスペシャル「原発と原爆 ~日本の原子力とアメリカの影~」
テレビ朝日
プロデューサー 原 一郎、ディレクター 後藤那穂子、キャスター 鳥越俊太郎、村上祐子
福島第一原発事故で空中放水を敢行した自衛隊ヘリ。その背後には、日本政府の対応へのアメリカの疑念と、アメリカの圧力を受けて迷走する官邸の姿があった。戦後から現在まで続く原子力をめぐる日米関係を、原爆の残留放射能による健康被害を否定する日米両政府や、ソ連との核開発競争の中で「原子力の平和利用」を打ち出すアメリカ、ビキニ水爆実験と第五福竜丸、日米原子力協定など過去の節目を振り返り、一本の糸でつないだ。公文書や関係者の証言を積み重ねながら、戦後68年にわたる日米の知られざる関係と構造を徹底的に検証している。
優 秀 小さな新聞社 社長は11才
新潟総合テレビ
プロデューサー 酒井昌彦、ディレクター 杉本一機、構成 石井 彰、撮影・編集 中島茂雄
新潟県十日町市に住む11才の少年、別府倫太郎君は不思議な魅力に溢れるインターネット新聞「別府新聞」の社長兼記者兼カメラマン。小児ネフローゼ症候群と全身性の円形脱毛症という2つの重い病気に罹り、いじめを受けて、学校に行かないという選択をした別府君が、そうした状況を「病気の僕も不登校の僕も、僕そのもの」と受け入れ、新聞づくりに励む日々を追いかけた。病気との向き合い方、教育とは何かについて、あらためて考えさせる番組である。
優 秀 シカとスズ ~勝者なき原発の町~
テレビ金沢
プロデューサー 金本進一、ディレクター 岡本達生、撮影・編集 谷本英祐、ナレーター 中里雅子
能登半島先端の珠洲市は、かつて原発の誘致をめぐり推進派と反対派が対立し、電力会社が計画を断念した後も住民の間に深い溝が残った。一方、能登で唯一の原発がある志賀町は、長年、原発の交付金に依存してきたが、福島第一原発の事故を契機に運転停止が長期化し、住民の意識に変化が生じている。原発に向き合ってきた2つの町の過去と現在を対比することにより、原発計画が地域に何をもたらしたのかが鮮明に描き出されている。
優 秀 NNNドキュメント’13 死刑囚の子 殺された母と、殺した父へ
読売テレビ放送
ナレーター 高川裕也、ディレクター 宇佐美彰、撮影 稲津 勝、編集 苧玉和也
小学6年生の時、父によって母を殺害された大山寛人さん。父の犯した罪を背負い、父への憎しみと母への罪悪感に苛まれて生きていくが、死刑判決を契機に父との絆を取り戻す。そして父が生きて罪を償うことを望み、死刑制度と遺族の現実を世に問うことを決意する。「加害者の家族」と「被害者の遺族」という2つの立場を持つ人間の葛藤が伝わってくる。これまでほとんど伝えられてこなかった「加害者の家族」に迫った力作である。
優 秀 人間 中沢啓治 ~そして、「はだしのゲン」は生まれた~
中国放送
プロデューサー 畑 和行、ディレクター 藤原大介、編集 正路周子、撮影 山口晃弘
平成24年に亡くなった漫画家・中沢啓治さんの人生の軌跡を辿った。広島で原爆に遭った中沢さんは、被爆者として差別や偏見を受け、一度は自らの被爆体験を封印するが、理解ある編集者や新聞記者との出会いによって、やがて漫画「はだしのゲン」を執筆。原爆や戦争の恐ろしさを伝え続けてきた。本人へのインタビューや関係者への丹念な取材に、過去の映像を織り交ぜて、中沢さんの実像に迫った良質のドキュメンタリーである。
〔テレビ教養番組〕
最優秀 SBCスペシャル「刻印~不都合な史実を語り継ぐ~」
信越放送
ディレクター 手塚孝典、ナレーター 三島さやか、撮影 米山博昭、編集 和田秀一
終戦70年を目前に控えた2013年、長野県阿智村に、満州移民をテーマにした平和記念館が開館した。ここには、満州移民となった元開拓団員や元教師など、地元・長野の人々による証言記録が収められている。国策に翻弄されて過酷な環境を生き延びた証人たちのインタビューと、当時の資料を軸に、戦争の愚かさとリアリティーを、ブレのない構成で丹念に描いている。「知るべきでありながら、知らなかったこと」を知らせてくれる、これぞ教養番組というべき作品である。
優 秀 僕らの居酒屋プロジェクト ~孤立する若者を救え!~
山形放送
プロデューサー 伊藤清隆、ディレクター 齊藤 正、ナレーター 川口満里奈
山形県内でフリースクールを運営する白石祥和さんは、スクールを巣立ってもうまく社会になじめない若者のために、就労支援の場としての“会員制居酒屋”を始めた。そこで働くのは、発達障がいやひきこもりなどの事情を抱える若者達。持病や対人関係などの様々な困難を抱えながら、自立に向けて奮闘する彼らの姿と、それを支える白石さんの活動を、真正面から臆することなく映し出している。取材対象者の成長物語が、群像ドラマとしても成功している点が高く評価される。
優 秀 東北の鉄路2014
BSフジ
プロデューサー 宗像 孝、プロデューサー・ディレクター 堀内雄一郎、ナレーター 村田好夫、藤田千代美
東日本大震災以降、東北地方の鉄道の復旧を願って企画されてきた「甦れ!東北の鉄路」シリーズ。全線復旧に向けて前に進む町がある一方で、BRT(バス高速輸送システム)による代替が進むものの、鉄路による復旧を望む声が根強い町もある。震災から3年を経た今、地域住民の鉄道に寄せる思いや、復旧に力を尽くす鉄道会社、自治体などの苦労の歩みを多方面にわたって取材。震災に負けずに地方の再生にかける人々の力強い勇姿を描ききっている。
優 秀 熱中コマ大戦 ~全国町工場奮闘記~
東海テレビ放送
ディレクター 鈴木辰明、撮影 森恒次郎、ナレーション 天野鎮雄、音楽 夏目一朗
元気を失いつつある日本の町工場を盛り立てるべく、全国の中小製造業者が形、素材、仕掛けも様々なアイデア勝負の自作のコマを持ち寄り、土俵上でぶつけ合う「全日本製造業コマ大戦」。本業の合間にコマ作りに取り組む職人や技術者たちの真剣さ、熱さを、東海地区の製造業者を通じて、大会の熱気とともにいきいきと伝える。コマに熱中する個性的な技術者たちの群像劇を描きながら、創意工夫に満ちた日本のモノ作りの原点と今を浮かび上がらせた、テレビらしい面白さを備えた番組である。
優 秀 読売テレビ開局55年記念番組 ミヤネと学ぶ!南海トラフ超巨大地震 極限の選択マグニチュード9.1を生き延びろ!
読売テレビ放送
チーフプロデューサー 山本一宗、プロデューサー 森本泰輔、ディレクター 長谷川敬典、高田純一
必ず起きるといわれている南海トラフ地震。番組では、その想定される広大かつ甚大な被害を、各方面への取材に基づき、CGやドラマ、体験取材も交えて詳細なシミュレーションとして提示した。情報としてはある程度知られている事柄でも、分かりやすく可視化することによって、関心の薄い人々にも伝えようとする地元局の姿勢に大きな意義がある。誰でも笑いながら防災意識を高められるという新しい表現へのチャレンジも評価された。
優 秀 ヒノキは僕らの宝物 若い力が森林を再生する日
岡山放送
プロデューサー 塚下一男、ディレクター 白井大輔、撮影・編集 平井大典、ナレーター 益岡 徹
過疎化・高齢化とともに、安い輸入材に押され、林業の衰退が進む岡山県、西粟倉村。手入れが行き届かず荒廃する森林に対し、2009年から「百年の森林(もり)構想」が動きだした。移住してきた若者達が工房を開き、試行錯誤の末、ヒノキの間伐材を活用した家具を製作。ヒノキの有効活用によって、森と村を甦らせようとしている。ヒノキを愛する様々な人の姿から、日本の地方自治体が抱える問題と希望を浮き彫りにしている。ローカル局が掘り下げるべき課題に挑んだ意義のある作品である。
優 秀 日向灘サンゴ白書~MRT水中取材班の47年~
宮崎放送
プロデューサー 紫安伸一、ディレクター 武田隆裕
宮崎放送は、1966年に水中取材班を発足させて以来、海中公園のサンゴの大群落や、その壊滅的な破壊、さらには再生に向けた活動などを追い続けてきた。番組は、47年間の映像記録の蓄積をもとに、サンゴの保護に積極的に取り組んできた宮崎放送の取り組みや、それに触発された研究者の活動も織り交ぜ、環境保護の重要性を訴える。ローカル局の長期にわたる蓄積、現実を動かす行動力、技ありの構成など、魅力あふれる作品である。
〔テレビエンターテインメント番組〕
最優秀 人間神様
長崎放送
プロデューサー 大田壽満夫、ディレクター 古川恵子、撮影・編集 井川裕喜、ナレーター 平松誠四郎
長崎県雲仙市瑞穂町にある伊福八幡神社では、毎年秋に、抽選で選ばれた氏子を「人間神様」として崇める祭りがある。番組は、8月に行われた抽選から、10月の祭り当日、そして、神様から人間に戻る11月までの模様を丹念に追った。神様に選ばれた人々の、戸惑いも含んだ表情や辛口の本音も捉えるなど、現代的な要素を散りばめた構成からは批評的な視点がうかがえる。過度な演出のないさりげない映像作りや、それを裏付ける丁寧な取材が見事な作品である。
優 秀 北海道まるごといただきま~す!わんぱく保育園の食育日記
北海道放送
プロデューサー 田中 敦、ディレクター 石田一郎、出演 尾木直樹、田中直樹
北海道の「小樽かもめ保育園」では、食育を通じて子どもたちを成長させたいとの願いから、自分たちでとった食材を給食に使い、調理にも参加させている。夏の2か月間は海辺の園舎に移り、海や砂浜で元気に遊んで過ごすなど、型にはまらない教育方針に、親も楽しんで参加している。環境を用意さえすれば、子どもの可能性はどんどん伸びる。そして、子育ては楽しいものだ――小さな保育園の実践を通じて、ポジティブなメッセージを番組は伝えている。
優 秀 KAZEOKE チャンピオン大会スペシャル
W O W O W
プロデューサー 遠藤 裕、秋葉英行、演出 西方健保、構成 加藤正人
「風が吹けば桶屋が儲かる」。この「風が吹く」と「桶屋が儲かる」からなる“前後ストーリー”をお題に、間に挟まる“間ストーリー”を、第一線で活躍する映画監督や漫画家といったクリエーターたちが作り、その優劣を競い合うというコンセプト。作家それぞれの物語作りの過程も描くことで、創作作業の面白さを伝えると同時に、仕上がりに対する想像力をかき立てる構成になっている。番組の企画自体のオリジナリティも高い。
優 秀 最後まであきらめない ~大月高校8人の野球部~
テレビ山梨
プロデューサー 平岡 豊、ディレクター 古屋孝樹
少子化により2014年3月に閉校した大月短期大学附属高校。同校最後の年の野球部は、部員数がわずか8名。部員たちと、24年間野球部を指導してきた永島良幸監督の最後の夏の挑戦に密着した。8人だけの野球部という着眼点の良さが秀逸で、抑制的で落ち着いた演出と練られた構成が、97分間の番組を飽きずに見せる。チームに密着した取材の粘りが賞賛に値する。
優 秀 究曲 ~新幹線を支える曲げガラス~
チューリップテレビ
プロデューサー 馬場宏治、ディレクター 槙谷茂博
2015年春の開業を控えた北陸新幹線。番組は、この新型車両のフロントガラスを製造する地元富山の企業に密着。緻密な温度管理のもと、複数層のガラスを同時に、歪みや気泡なしに流線型に曲げるという、未経験の課題に挑戦する職人の姿を追った。職人の心情や意気込みをきちんと捉えると同時に、匠の技ともいえる製造工程をじっくりと映し、地域に根付く技術も紹介。モノ作りや職人魂の真剣さをしっかりと伝えている。
優 秀 孫をたずねて三千里
関西テレビ放送
プロデューサー 島本元信、ディレクター 高原礼子
長い間孫に会えていない祖父母が、遠くに住む孫に会いに行く――。番組は、その手助けをするとのコンセプトで、孫との久しぶりの対面をサポートする。冒険のような初めての海外旅行をスリルたっぷりに伝えながら、感動の再会、そして祖父母と孫との水入らずの時間にも丁寧に寄り添う。高齢化社会でこれから主役となる祖父母世代のアクティブさを促す、アイデアの勝利ともいえる好企画である。
優 秀 メロディーの向こうに
山口放送
プロデューサー 渡部雅史、ディレクター 佐々木聰、撮影 山本健二、音声 綿野光士
古き良き唱歌や童謡の素晴らしさを広める活動に勤しむ、萩市にある至誠館大学の山田真治さん。山田さんは、メロディーだけでなく歌詞に注目することで、そこに込められた作者の思いを大切にしようとしている。番組は、山田さんの活動を適度な距離感をもって描くことで、人生の悲哀を秘めた歌詞の奥に、次世代に伝えるべき大事なものが確かにあることを伝えている。知的エンターテインメントとして大きな意義を持つ作品。
〔テレビドラマ番組〕
最優秀 Woman
日本テレビ放送網
プロデューサー 次屋 尚、千葉行利、大塚英治、演出 水田伸生、脚本 坂元裕二
シングルマザーの小春は、生活が苦しいこともあり、自分を捨てて家を出た絶縁中の母・紗千の家に居候することになるが、紗千や父親違いの妹・栞との仲はうまくいかない。そうした中、小春は夫・信の死の原因や、紗千が小春を捨てた理由を知ることになる。とまどう小春は心に秘めた思いを洗いざらい紗千にぶつける。その矢先、小春は病魔に倒れた。
現代のシングルマザーが抱える問題や苦しみが忠実に描かれたドラマである。登場人物の揺れ動く心境を、巧妙なライティング技術などによって鮮明に描写している点も素晴らしい。
優 秀 半沢直樹
TBSテレビ
ディレクター 福澤克雄、プロデューサー 伊與田英徳、飯田和孝、脚本 八津弘幸
確固たる信念を持ち、腐敗した組織に喝を入れる銀行マン・半沢直樹。彼が立ち向かっていく不正融資事件や企業再生など、銀行ならではのシリアスな問題を、さまざまな人間模様と共に、時にはユーモアもまじえてわかりやすく描いている。
幾多の窮地を持ち前のバイタリティと人脈、そして強運で乗り越えていく半沢の姿は、痛快そのものである。題材として取り上げ方の難しい銀行という組織を、誰もが理解できるよう、表現や単語などを平易にしたことで、老若男女問わず幅広い世代で楽しめる。
優 秀 テレビ朝日開局55周年記念 山田太一ドラマスペシャル「時は立ちどまらない」
テレビ朝日
脚本 山田太一、監督 堀川とんこう、チーフプロデューサー 五十嵐文郎、ゼネラルプロデューサー 内山聖子、プロデューサー 飯田 爽
舞台は、東北の海沿いのとある街。東日本大震災の被害を、高台に家があったことで免れた西郷家、津波で家族や自宅、船などを失った浜口家、両家の震災前後3年間の交流を通し、それぞれの家族の崩壊と再生を描いた。
被災した人々の生の声を実際に聞き、作中全体に取り入れることで、多くの人の目に見えなかった震災の現実も描かれている。現実に真正面から向き合う中で描かれた愛情や友情、絆の深まりを通し、多くの人の心に希望の灯をともす作品になっている。
優 秀 ドラマW チキンレース
WOWOW
プロデューサー 岡野真紀子、渡辺良介、脚本 岡田惠和、監督 若松節朗、出演 寺尾 聰
交通事故による後遺症から、45年も病院で深い眠りについていた飛田譲が、突然目を覚ました。飛田を担当する不器用な新人看護師の神谷猛は、心は19才、見た目は64才の患者に四苦八苦するが、飛田と神谷は患者と看護師という枠を超えて交流を深めていく。そして、飛田が事故を起こすきっかけとなった初恋の真理に再会するため、2人は北海道へ向かった。
年齢も境遇もまるで違う飛田と神谷の不思議な交流を通し、幅広い世代に対し今を生きる楽しさや、青春に年齢は関係ないことなどを伝えている。
優 秀 名古屋行き最終列車
名古屋テレビ放送
プロデューサー 大池雅光、ディレクター 神道俊浩、脚本 菊原共基、カメラ 恒川正次
最終列車に乗るさまざまな人々を描いた、30分のショートストーリー。各回個性的な登場人物により、誰にも起こり得る何気ない日常を、実在する名古屋行き最終列車を通し描いた。
普段、あまり気が付くことがない生きていることの意義や価値、人を愛することの意味などを、30分という短い時間の中であらためて教えてくれる。さまざまな喜怒哀楽と共に人間の本質を分かりやすく描いた作品になっている。
優 秀 めんたいぴりり
テレビ西日本
プロデューサー 瀬戸島正治、本田克哉、脚本 東 憲司、監督 江口カン
日韓併合後の釜山で生まれた海野俊之と千代子夫妻は、2人の子宝にも恵まれ幸せな日々を過ごしていたが、第二次世界大戦によって生活は大きく変わる。戦後奇跡的に再会を果たした夫妻は、生きがいを見出すため明太子づくりに奔走、試行錯誤の末に完成した明太子は大きな評判を呼び、やがて福岡名物となった。
普段、多くの人が口にしているポピュラーな食材、明太子を通し、終戦前後の激動の時代や、家族や仲間といった人間同士の絆の大切さ、努力することの重要性が描かれている。見る人に勇気や希望を与えてくれる内容である。
CM部門
〔ラジオCM 第1種(20秒以内)〕
最優秀 彫刻の森芸術文化財団 美ヶ原高原美術館/子供心篇(20秒)
ニッポン放送
プロデューサー 高橋晶子、林 尚司(電通)、ディレクター 松田哲雄(サウンドマン)、コピー 渡邊千佳(電通)
このまえ親に美術館へ連れて行かれたと言う子どもに、「うわ~子ども心わかってない!退屈だったろ」と話す友だち。あまり楽しくなかったという反応を予想していると、美術館に連れて行かれた彼は「それがさ、美術館の方が子ども心わかってたんだよ」と驚きの一言を発するのだった。家族連れで訪れるのにぴったりな施設であることを子どもの自然な語りで巧みに表現している。さらに、美ヶ原高原美術館がどんな工夫をしているのか、実際に観てみたいという気持ちにさせるCMに仕上がっている点も高く評価された。
優 秀 アイホン インターホン/星に願いを(20秒)
文化放送
プロデューサー・ディレクター 見目幸伸、ミキサー 上原裕司、アカウント・エグゼクティブ 杁山恭弘
帰ってきた父親は、なぜか自分で“ピンポ~ン”と声に出す。「あ、父ちゃんお帰り。またインターホンの真似?」と尋ねる息子に「ああ」と答える父親。いつか本物のアイホンのインターホンを使ってみたいと星に願いながら、二人は今日もこの公園で寝るのであった……。チャイムが鳴って家族が帰ってくる、そんな日常が実は幸せであることを伝える。ナンセンスな設定で笑ってしまうが、何かせつない気持ちにさせる演出に心が引かれる。
優 秀 自社媒体PRスポット/ラジオ3万円劇場「お賽銭」 篇(20秒)
エフエムラジオ新潟
プロデューサー 田代邦宏、ディレクター 榎本高顯(リミックス)、コピー 倉元英之(エングラフ)
貧乏ながらもお金に無頓着なタカシと、彼女の会話。何をお祈りしたのか尋ねる彼女に「お金が貯まりますようにって」と答えるタカシ。彼女がお賽銭を出すと言うと、タカシは「もう3万円入れた」と明るく答えるのだった。さまざまなお金の使い道を取り上げながら、ラジオCMは手軽な金額(3万円)で出稿できることをアピールするシリーズCMのひとつ。親しみやすいラジオ局であるというイメージ作りにも貢献している。
優 秀 しずてつジャストライン 「アンケート」篇(20秒)
静岡放送
プロデューサー 鈴木通代、ディレクター 牧野真美、出演 山口弘三、佐藤剛史
ある事務所で社員が“お客様の声”を社長に報告している。社員が「何もなかった」「普通だった」「途中で寝てしまった」という“声”を紹介すると、社長は満足そうに「ふむ、今月もその調子で」と答えるのだった。リスナーがいったい何のCMなのかと思ったところで「しずてつジャストライン」というナレーションで締める。安全に目的地へ届けるという交通機関としての使命を“なにごともない”というキーワードで印象的に表現している。
優 秀 大王製紙 エリエール ティシュー/おっさん 篇(20秒)
朝日放送
プロデューサー 野本友恵、ディレクター 村上正道(ビー・ジー・エム・サービス)、コピーライター・クリエイティブディレクター 森田一成(ビッグフェイス)、プランナー 川元寛之
おっさんが「そのティシュー、ひょっとしてエリエールちゃうん?一回鼻かませて~や」とやってくる。チーンという音の後、「やっぱちゃうなぁ~。エリエール、やわらかいわぁ~」と言って去ってゆく。そんな“いっちょかみ”(何にでも口をはさむ人)を登場させた後で「いっちょじゃなくて、何度かんでもいい感じ」とのナレーションが入る。具体的な商品説明をしなくても、エリエールの心地よさを十分に伝えている点が評価された。
優 秀 自社媒体PRスポット/radiko.jp プレミアム「母からの手紙」(20秒)
エフエム大阪
プロデューサー 福田一夫、ディレクター 小田切武史、森田一成(ビッグフェイス)、出演 内田法子(NAC)
大阪から東京に移り住んだ息子に母から手紙が届く。「元気ですか?東京には慣れましたか?少しやけどお金送ります」。その手紙には『radiko.jp プレミアム』の月額料金である378円ちょうどが同封されていた。エリアフリーという媒体特性を、放送エリアから離れてしまった人でも地元のラジオを聴くことができるという視点で取り上げた。とつとつとした語り中心の演出ながらも、リスナーを拡大するための方策をしっかりと訴えている。
優 秀 マルホりんご園 焼きたて完熟りんごパイ/CM企画会議(20秒)
山口放送
プロデューサー 赤瀨洋司、ディレクター 谷本啓之、ミキサー 寺岡岳男、企画構成 高橋謙司
マルホりんご園の完熟りんごパイをPRするために“ミスりんご娘”を募集してはというスタッフに、募集するのは“ミス完熟りんご娘”じゃないかと社長は言う。スタッフが“完熟”なのに”娘”はおかしいと指摘すると「じゃ、“ミス完熟奥さん”はどうだ?」と社長。「“りんご”はどこに行ったんですか……」とスタッフ。社長とスタッフの掛け合いが楽しく、かつ商品名をしっかりPRする構成のうまさが光った。
〔ラジオCM 第2種(21秒以上)〕
最優秀 自社媒体PRスポット/radiko.jp プレミアム「Tokyo Style」(120秒)
エフエム大阪
プロデューサー 福田一夫、ディレクター 小田切武史、コピー・出演 森田一成(ビッグフェイス)、出演 木内義一(ライターズカンパニー)
radiko.jpが放送サービスエリア外でも聴取できる有料サービスを開始したことをアピールするCM。大阪以外のリスナーを意識するあまり、仕事場内でも関西弁を禁止してCM作りを進める制作スタッフをドラマ仕立てで描く。標準語を喋ることに疲れて、みんなが堰を切ったように関西弁でしゃべり始め、「大阪バンザーーイ!」となった瞬間、ナレーションで「あほくさ」と締める。エリアフリーというサービスの特長が伝わると同時に、最後の突っ込みが秀逸な楽しいCMに仕上がっている。
優 秀 北海道品質(Gモール) かんたんまぜるだけ プレミアムごはんの素 根曲り筍/「北海道品質 ごはんの素」中継編(60秒)
エフエム北海道
プロデューサー 油谷昭雄、ディレクター 春潮楼哉子、ミキサー 山田英行、コピー 東井崇(フリー)
DJが「ごはんの素」を発売している社長に美味しさの秘密を聞くために電話すると、留守電が応対。「ごはんの素のために、筍を山奥に採りに行っております。もし2、3日帰ってこないようでしたら、捜索をお願いします」。社長自らが本当に山奥に入って採取した筍を使っているというセールスポイントを上手にPRする。コメディタッチの作品だが、留守電の声を社長本人が担当し、リアルさを感じさせる演出となっている。
優 秀 東芝 東芝4Kレグザ/見せたいもの篇(60秒)
ニッポン放送
プロデューサー 森岡大祐、ディレクター 松田哲雄(サウンドマン)、コピー 森田一成(ビッグフェイス)
録画したスポーツニュースを見ているカップル。男がホームランシーンで録画を止める。そこに映っているのは、親友の加藤といっしょに観戦している彼女の姿。男は「スタンドにいるの。きみだよね」「よく似た人とかじゃないよね」「手つないでいるね」「このつなぎ方はかなり親密だよね」「僕の前ではしていない指輪しているよね」と追及する。これに対して彼女は淡々と事実を認めていき、最後は開き直ってしまう。東芝4Kレグザがいかに高精細かがやりとりをとおして浮かび上がる優れたCMである。
優 秀 東京農業大学 企業/息子からの贈り物(40秒)
エフエム東京
ディレクター 栗原学志、コピー 渡辺桂(東京農業大学)、出演 陰山泰(ヘリンボーン)、九里みほ(同)
東京に行った息子から、田舎に住む母にあて、彼が育てたお米が宅配便で送られてくる。よくある話の逆を行くストーリー展開が、東京で農業を学ぶという大学の性格をうまく伝えている。コピーを書いたのは東京農業大学に在籍する現役の学生で、彼の出身地・新潟長岡の方言がリアルな雰囲気を醸し出す。いそいそと夕飯を作りはじめる母の姿がほほえましい、温かみのあるCMに仕上がっている。
優 秀 味の素 企業/生きるコツ(60秒)
エフエム東京
ディレクター 林屋創一、コピー 細川万理(アサツー ディ・ケイ)、出演 鈴木アメリ(ヘリンボーン)、クリエイティブディレクター 早乙女治(アサツー ディ・ケイ)
合コンで出会った男性にアプローチしようとする女性の心の声と、調理のプロセスを説明するナレーションを交互に重ねあわせて、リスナーのイメージを膨らませていくCM。「女性:化粧もばっちし。NA:盛り付ける」「女性:勝負下着も念のため。NA:隠し味も忘れずに」といった展開で、「人生のコツとお料理のコツは似ている」と結ぶ。より多くの人に食への関心をもってもらおうという意図が、巧みな演出で表現されている。
優 秀 自社媒体PRスポット/大切な声(120秒)
エフエム富士
プロデューサー 桜井忠弘、ディレクター・コピー 佐藤和秀(貘制作事務所)、ナレーター 沢井美和(mimmit)
ケンカ別れした親友からの10年ぶりの電話は、結婚式に出てほしいという知らせだった。親友の声がとてもうれしかった彼女は、電話を切ったあとに10年分の想いが込み上げ涙を流す。「声には、その人とだけの、大切な時間が宿っている」。SNSやメールにはない声の力をアピールすることで、音声のメディアであるラジオの魅力を改めて気づかせてくれる。開局25周年を記念して制作されたCMである。
優 秀 公共キャンペーン・スポット/守ろう地球環境~ふるさとの美しい里山を~(120秒)
山口放送
プロデューサー 藤田史博、ディレクター 大谷陽子、ナレーター 小野口奈々、ミキサー 寺岡岳男
85歳の佐伯清美さんは、山口市の市街地にほど近い山を里山として子どもたちに開放している。雑木林のゆるやかな斜面にはターザンロープ、ブランコ、シーソーなど手作りの遊具が置かれ、子どもたちの遊び場となっている。佐伯さんは「風にしても水にしてもね。人に優しいですから」と語る。佐伯さんへのインタビューと、里山で遊ぶ子どもたちの生き生きとした声で構成されたCMは、自然と共生していくことの大切さを伝える内容となっている。
〔テレビCM〕
最優秀 公共キャンペーン・スポット/RBCおきなわ健康長寿プロジェクト「歩くーぽん フォアボール篇」(30秒)
琉球放送
プロデューサー 真栄喜啓介、前迫篤男(博報堂DYメディアパートナーズ)、CD・企画・コピー 河西智彦(博報堂)、演出・編集 原田 塁(RBCビジョン)
琉球放送が「RBCおきなわ健康長寿プロジェクト」の企画で制作した、歩いた分のポイントが貯まるアプリ「歩くーぽん」の告知CM。野球の試合で、フォアボールを与えられたバッターの男性。すると突然グラウンドにタクシーがあらわれ、男性はそれに乗って一塁へ。「たまには歩けウチナーンチュ(沖縄県民)」とナレーションが入る。肥満率が高い沖縄県では、県民は近くへ行くのも車で移動するという。ありえない状況により、いかに県民が歩かないかを面白おかしく表現しながら、アプリの宣伝を行う発想が秀逸である。
優 秀 大和家 特製 りんご「けの汁」/津軽の短い言葉「け」(60秒)
青森放送
プロデューサー 森内真人、ディレクター 我満義孝(RAB映像)、カメラマン 藤林国仁(RAB映像)、音声 脇坂幸司(RAB映像)
津軽地方の家庭で日常使う便利な言葉「け」。「ちょうだい」「かゆい」などの意味をたった一文字の言葉で表現できるという。「け」を使ってコミュニケーションをとる家族の様子とともに、郷土料理「けの汁」(粥〈かゆ〉の汁)を紹介する。方言を使った家族のやり取りに感じられるあたたかみを商品紹介にうまく利用している。
優 秀 公共キャンペーン・スポット/つづけよう 復興ハート! 風の電話(120秒)
テレビ岩手
プロデューサー 佐々木款、ディレクター 淵澤行則、撮影 照井 聡(東北映像)、ナレーター 小田加代子(フリー)
岩手県大槌町の佐々木格さんは「震災で亡くなった人への想いを伝えてほしい」と海を見下ろす高台に「風の電話」を設置した。電話線は繋がれていないが、“心がつなぐ電話”として多くの人が訪れる。CMは電話をかける被災者の様子を紹介している。ある女性は、亡くなった家族へ向けて「そっちでいっぱい笑っているといいな」などと語りかける。被災地での具体的な活動を取りあげて、被災者の想いをよく伝えている。
優 秀 自社媒体PRスポット/サッカー中継 パス篇(30秒)
テレビ埼玉
プロデューサー 平野正美、戸田和也(東北新社)、ディレクター 和泉大介(ディレクターズギルド)、プランナー 山田慶太(ビルドクリエイティブハウス)
中年男性がサッカーをしながら、「パス、パス」と叫ぶ。しかし、パスは一向にもらえずふてくされてしまう。コミカルな男性の動きに注目していると、突然「JUST WATCH IT」の文字があらわれ、彼が「パス、パス」とつぶやきテレビでサッカーを観戦している場面に変わる。意表を突く展開で、プレイするよりも見るほうが楽しいというメッセージを伝えている。サッカー人気が高い埼玉ならではのCMづくりで、媒体PRに成功している。
優 秀 公共キャンペーン・スポット/震災から3年~伝えつづける~(270秒)
東海テレビ放送
プロデューサー 土方宏史、取材 鈴木祐司(東海テレビプロダクション)、クリエイティブディレクター 都築 徹(電通中部支社)、ディレクター 清水淳之介(シースリーフィルム)
震災を取材する記者たちが被災地で人や光景とどう向き合うのかを、別の取材クルーが同行し記録した。荒れ果てた無人のスーパーや道路をはさんで補助金が異なり分断された被災者などに直面する記者。「どう表現すればよいか」「被災者に十分配慮できているか」と頭を悩ます。報道機関としての姿勢や記者らの葛藤を映し出し、メディアが抱える課題を自問自答している。伝え続ける重要性をあらためて考えさせる点が高く評価された。
優 秀 中部国際空港 職人の町の玄関口~中部国際空港~(120秒)
東海テレビ放送
プロデューサー 伊藤芳人、ディレクター 鈴木拓洋(オーシャンアンドリバー)、カメラ 山崎浩一(フリー)、効果 久保田吉根(東海サウンド)
東海地方の玄関口「中部国際空港」をPRするCM。伝統の技を守る職人たちがモノを作る様子を紹介する。その際に出る鉄を打つ音や木を削る音などを組み合わせ、編集するとリズミカルな音楽に変わる。「ものづくりの音」が残る東海地方に中部国際空港を利用し訪れてほしいと企画した。職人の姿や音楽に力を感じられる完成度の高い作品である。
優 秀 公共キャンペーン・スポット/SHARE~分かち合う~(90秒)
中京テレビ放送
プロデューサー 深谷浩規、ディレクター 笠井知己、ナレーション 立木文彦(大沢事務所)、構成作家 塩沢 航(N35)
インドネシアのチェンドラワシ湾では海上に設置した「バガン」と呼ばれる小屋で、漁師たちが3~4年も漁を続ける。その漁場にやってくるジンベエザメは元々は邪魔ものだったが、小魚を分け与えたところ、不思議なことに漁獲高が増えたという。今では漁師たちの心を癒す存在になった。現地で撮影したジンベエザメの迫力ある姿が目を引き、「分かちあうことの大切さ」というキャンペーン意図が的確に伝わるストーリーとなっている。
技術部門
最優秀 動きベクトルを応用した地震発生時の映像を自動切り出しする24時間地震収録システムの開発
関西テレビ放送
研究・開発担当者 小池 中、野上隆司、片野正徳
情報カメラに収録される地震発生時の映像を迅速に取り出して放送するため、緊急地震速報をもとに算出した揺れ始めの時刻よりも10秒前から、動きベクトルを応用した映像の揺れ検知処理を行い、所要の映像ファイルを自動生成するシステムを開発・実用化した。
これにより、実務作業の負担を大幅に軽減しつつ、複数地点の揺れの映像を速やかに放送することが可能となり、テレビ報道の速報性向上と効率化に大きく貢献した。
優 秀 SLAMベースのエンジンを用いた放送用ARソフト「QUU」の開発
テレビ朝日
研究・開発担当者 加藤 喬、小野真介
自己位置と3Dマッピングの同時推定を行う認証技術「SLAM」により、センサー等によるカメラ位置情報を用いることなく、画像認識技術のみでカメラ映像とCGとの位置合わせを行う機能を新たに組み込んだ放送用ARソフト「QUU」を開発・実用化した。
これにより、生放送における空撮映像へのCG合成など新たな映像表現・演出が可能となり、テレビ制作技術の高度化に貢献した。
優 秀 IP網を用いてフルメッシュ接続とサイトダイバーシティを実現したFNSネットインカムの開発と構築
フジテレビジョン
研究・開発担当者 金森健彦、青木良太、天本光一、米岡充宏
テレビ系列局間の連絡線をIP方式に移行し、フルメッシュ接続で系列局間の同時複数通話を可能としたほか、回線の異キャリア二重化や東阪2局に基幹設備を置くサイトダイバーシティによりBCP対策を強化した全国システムを開発・実用化した。
これにより、回線コストを大幅に削減しつつ、ネットインカムの用途拡大と利便性向上を達成し、テレビ放送業務の効率化に貢献した。
優 秀 大型スタジオ対応LEDホリゾントシステムの開発
毎日放送
研究・開発担当者 岸本 紳、吉田和之、永間淳也
新スタジオの建設にあたり、省電力対策に資する照明のLED化に取り組み、灯体内部のミラー改良で配光ムラをなくすなど独自の工夫を重ね、ホリゾント高8.5m級のスタジオでは日本初となるLEDホリゾントシステムを開発・実用化した。
これにより、電力消費量を大幅に削減するとともに調色の操作性を向上させ、テレビ照明技術の効率化に貢献した。
優 秀 ラジオSTLシームレス自動切替と遅延時間管理の実現
朝日放送
研究・開発担当者 津高仁志
中波ラジオSTL設備の更新においてデジタル非圧縮伝送を採用し、同期放送している親局・中継局での高精度な送信タイミングの管理と、エラー検知による回線の無瞬断自動切替を実現するシステムを開発・実用化した。
これにより、ラジオの音質改善を図るとともに放送設備の安全・信頼性を向上させ、ラジオ送信技術の高度化に貢献した。
優 秀 可搬型非常用UHF帯伝送・放送装置とアンテナの開発
関西テレビ放送
研究・開発担当者 片山武史、濱 英樹
テレビ中継局の放送設備が被災した場合を想定し、UHF帯の空きチャンネルを利用したTTL伝送機能と、テレビ放送の送信機能とを一体化した可搬型の伝送・放送装置とアンテナを開発・実用化した。
これにより、非常災害時に少人数で設置し、迅速に電波発射して放送機能を復旧させる汎用的な設備を具現化し、テレビ送信技術の高度化に貢献した。
優 秀 クラウドコンピューティングによる系列共通システム基盤「FNS情報システムセンターCL@OWN(くらうん)」の構築と「FNS標準営放システムV2」の開発
テレビ西日本/フジテレビジョン/テレビ新広島
研究・開発担当者 冨田良彦(テレビ西日本)、安達芳則(フジテレビジョン)、佐々木輝彦(テレビ新広島)
テレビ系列各社の情報システムを集約統合する情報システムセンターをクラウドコンピューティングによって構築し、そのメインサービスとなる第2段階の標準営放システムを開発・実用化した。
これにより、安定稼働や強靭化、関連コスト削減など様々な観点から情報システムの共通化・共同利用の有効性を実証し、放送局の情報インフラ構築の高度化に貢献した。
特別表彰部門
〔青少年向け番組〕
最優秀 目撃者f 震災のこと、忘れない
福岡放送
プロデューサー 田中俊憲、ディレクター 尼崎拓朗、撮影 大谷浩平、編集 金沢利之
福岡県田川市立中央中学校の放送部員とともに制作した、東日本大震災をテーマにしたドキュメンタリー。放送部員たちは、被災地の中学生や仮設住宅で暮らす人たちを取材し、震災や被災地とどう向き合うべきか悩み、取材や放送の難しさに気付いていく。番組は、放送部員が撮影した映像やインタビューも使って構成され、中学生の視点で見た震災の姿を視聴者に教えてくれる。中学生が「自分たちのできること」を探していく姿は、同世代の共感を呼ぶ。
優 秀 どさんこワイド179 ~みる・みる・みらい スペシャルウィーク~
札幌テレビ放送
プロデューサー 宮野 聡、ディレクター 谷口友弥子、レポーター・ナレーション 八木菜摘、撮影 吉田 篤
どさんこワイド179が追い続けてきた「北海道の未来を創る人々」を1週間にわたり特集した「みる・みる・みらい スペシャルウィーク」。今回は、帯広農業高校酪農科学科養豚班3年生の半年間に密着した。生徒たちは、自らが世話をする豚の出産に立ち会い、育て、出荷し、最後は食べることによって命と向き合い、農業の意味を見つけ、やがてそれぞれの夢に向かって歩んでいく。生徒を支える大人と、大人の営みを引き継ごうと決意する生徒の姿が見る者の胸を打つ。地域の未来を担う若者たちを見つめる温かい眼差しが伝わってくる。
優 秀 ノンフィクションW 君のことを忘れない~女優・渡辺美佐子の戦争と初恋~
W O W O W
プロデューサー 片桐大輔、正岡裕之、ディレクター 松倉大夏、出演 渡辺美佐子
女優の渡辺美佐子さんは、28年間にわたり、広島と長崎の原爆で亡くなった子どもたちの手記を語る朗読劇を続けてきた。始めたきっかけの一つには、自身の小学生時代に広島に転校して行った初恋の同級生の存在があった。なぜ戦争の記憶を伝えようと決意したのか、その理由が彼女の口から語られる。「原爆の惨劇を語り継ぐのは使命」と語る彼女が、子どもたちとともに朗読劇のステージに立つ姿は、戦争や原爆の悲劇を世代を超えて伝えていくことの大切さを突きつける。親子で戦争を考えるきっかけにもなる内容である。
優 秀 YBSふるさとスペシャル 歩け105km、心のかぎり~復活!甲府一高強行遠足~
山梨放送
プロデューサー 浅川俊介、ディレクター 古田茂仁、ナレーション 三浦実夏、撮影 窪田昌也
105kmを24時間かけて歩く山梨県立甲府第一高校の「強行遠足」は、大正時代から続く伝統行事。平成14年に生徒の死亡事故が発生して以来、距離を短縮して実施してきたが、平成25年に伝統の105kmが復活した。強行遠足に参加した祖父と父を持つ生徒や、大学推薦試験を蹴ってでも挑戦しようとする生徒など、強行遠足に参加する高校生たちを追いかけた。疲れた足を引きずり、遠足の意味を自問しながら、やがてそれぞれの答えを見つけて行く姿は、同世代の子どもたちに大きな刺激を与えてくれる。
優 秀 ウッティ発!最後まで全力プレー ~大月高校8人の野球部~
テレビ山梨
プロデューサー 平岡 豊、ディレクター 古屋孝樹
閉校を翌年に控えた大月短期大学附属高校。生徒は3年生しかおらず、野球部は8人しかいない。そんな野球部の最後の戦いに密着した。選手たちは最後の夏に向けて「全力プレー」を誓うが、実行できず、監督から厳しく叱咤される日が続く。最後の夏、陸上部から助っ人を得て試合に臨む野球部。そこには全力でプレーする選手たちの姿があった。最後まで全力で取り組むことの難しさと尊さを伝えてくれるだけでなく、監督の叱咤激励を受けて成長していく野球部員の姿は、大人と子どもの関わり合い方についても貴重な示唆を与えてくれる。
〔放送と公共性〕
最優秀 ドキュメンタリー映画とテレビの未来
東海テレビ放送
実施責任者 伏原健之
東海テレビ放送は、平成23年から7本のドキュメンタリー映画を全国の劇場で順次公開した。「平成ジレンマ」「青空どろぼう」「死刑弁護人」「約束 名張毒ぶどう酒事件死刑囚の生涯」など、いずれもテレビドキュメンタリーを再編集したもので、劇場だけでなく各地で自主上映会を重ねてきた。映画化により地方局の番組を全国に発信するだけでなく、繰り返し上映することで埋もれていた問題を顕在化することができた。
賛否あるテーマに挑戦し続けていることや、観客のリアルな反応を感じ、テレビの表現が抱える閉塞感を認識するなど、映画化で得たものを生かしてテレビの可能性を広げようとする点が高く評価された。
優 秀 HTB詐欺撲滅キャンペーン「今そこにある詐欺」
北海道テレビ放送
実施責任者 坂本英樹
北海道テレビ放送は、平成25年5月27日から平日夕方の情報番組「イチオシ!」のニュース企画で「今そこにある詐欺」と題して詐欺撲滅キャンペーンを開始。毎日欠かさず情報を伝え続けて放送回数は1年で250回を超えた。被害者の多くが高齢者であることから、細かい詐欺の手口や被害防止のポイント解説を重視し、最新かつ独自の情報を伝えている。理不尽な犯罪を撲滅するという意識を社内で共有するため、特別チームを編成せずに、記者が日々交代で取材にあたる。
“毎日詐欺情報を扱うこと”を自ら課していることが番組作りのエネルギーになっている。常に新しい情報をわかりやすく伝え、地域の視聴者を犯罪から守ろうとする姿勢が評価された。
優 秀 「未来へ伝える~私の3.11」手記募集
IBC岩手放送
実施責任者 姉帯俊之
IBC岩手放送は平成24年から、東日本大震災にかかわる忘れられない体験や伝えたい想いを県民から募集し、ラジオ番組「大塚富夫のTOWN」で朗読している。前身番組から約30年同じスタイルを貫き、リスナーからの葉書やFAXの紹介などフリートークが中心。届いた手記は全て番組で紹介し、平成25年8月には、一部の手記を朗読CD付き書籍にまとめ出版した。
普段からの地域密着の姿勢に加え、ベテランアナウンサーの人柄が多くの投稿に結びついている。活字に残すことで被災した県民の思いを末永く語り継ぎ、未来への道標に役立てたいという取り組みが評価された。
優 秀 ヒューマニズムに訴え続けた20年~日中韓共同制作による相互理解~
福井テレビジョン放送
実施責任者 豊岡 猛
福井テレビジョン放送は、中国・杭州文化広播電視集団と韓国・春川文化放送との3社間で、平成6年に友好親善協約を結んだ。以来、幹事局持ち回りで毎年1本ずつ共同番組を制作し、それぞれの国で放送している。内容はヒューマニズムに訴えるテーマとし、相互理解を深めることに主眼を置いた。政治情勢の異なる3国での共同作業は決して平たんな道のりではなかったが、長年の社員交流で培った固い絆で乗り越えてきた。
政情不安定な時期だからこそ、各国の視聴者に届ける共同番組の意義は大きい。単なる交流ではなく、多くの課題がある中で共同制作を20年間続けてきたことが評価された。
優 秀 報道キャンペーン「暮らしの防災」と、防災・減災を伝える放送外活動
名古屋テレビ放送
実施責任者 五十嵐信裕、大川敦子
名古屋テレビ放送は、南海トラフ地震や台風などによる大災害に備えるため、「暮らしの防災」をニュース情報番組内の週1回レギュラー企画とし、この2年間に約70回放送した。地域住民が日々の暮らしの中に「防災・減災活動」を取り込むことや、普段から非常時の対応を練習しておくことをテーマに制作・放送している。また、番組スタッフが防災に関する啓発活動や人材育成を目的とした講義を行ったり、アナウンサーが災害体験の伝承を目的とした「防災絵本」朗読などを行っている。
放送局が“巨大地震は起きる”という前提に立ち、住民による防災の必要性を具体的に訴え続けていること、多岐にわたる地域に密着した放送外活動が評価された。