表彰番組・事績
日本民間放送連盟賞/2016年(平成28年)入選・事績
番組部門
〔ラジオ報道番組〕
最優秀 アーサー・ビナード「探しています」
文化放送
プロデューサー 鈴木敏夫、構成 本宮誉泰、ナレーション 鈴木純子、出演 アーサー・ビナード
戦争体験者の証言を記録するため、アメリカ生まれの詩人、アーサー・ビナード氏がマイクを手に「日本の戦争を探す旅」を続けた全51回の番組の中から、7回分を選んだ。市井の人々や各界の著名人の戦争体験や証言が、対話の中で語られていく。
対話によって新たな証言を引き出すという、ジャーナリズムの重要な役割を果たしていることや、聞きやすい番組構成が高く評価される。
優 秀 ~戦後70年に鳴り響く~熊谷先生の平和の鐘
秋田放送
取材・構成 利部昭勇、ナレーション 佐藤有希、朗読 賀内隆弘
秋田市の高校教師・熊谷恭孝さんは、梵鐘の研究を通して、太平洋戦争で寺の鐘が強制的に没収され、武器に造り変えられていた事実を知る。平和を祈るための鐘が、人を殺す道具の材料にされたことに怒りを覚えた熊谷さんは、今度は武器を溶かし、平和を祈る鐘を造ろうと決心する。平和の鐘を造りあげるまでの10年を辿った。
個人の取り組みが人々の共感を得て世界に広がっていく過程を、丁寧に拾い上げている。
優 秀 ふるさと新潟 祖国日本 還りついた「うつつの国」
新潟放送
企画・構成 吉井秀之、取材 長江洋子、編集 五十嵐滋章、ナレーション 田巻直子
21年前に中国人の妻とともに新潟市に帰国した中国残留孤児の清野秀俊さん(72歳)は、年金6万円と支援金13万円で生計を立てる。日本語はほとんど話せず、就労経験もないが「中国にいるよりはずっと生活は楽」と話す。番組は、2人の中国残留孤児の日々の生活を追いながら、戦争で運命を狂わされた日本人の現在を記録する。
“美談”とされた家族との再会のその後を追うなど、新たな事実を掘り起こしている。
優 秀 KNBラジオドキュメンタリー 絶望の淵から魂を語れ 辺見庸が読み解く堀田善衞の世界
北日本放送
プロデューサー 桐谷真吾、取材・構成 濱谷一郎、編集 荒山知徳、ナレーション 平島亜由美
平成27(2015)年11月に、高岡市出身の堀田善衞作の小説『時間』が復刊された。南京大虐殺をテーマに、一人の中国人の目線で日本軍による略奪や殺戮を日記形式で綴った作品である。作家の辺見庸さんが『時間』のテーマである「人間とは何か」を解説しながら、“絶望”をキーワードに現在の日本社会に対する自身の思いを語る。
戦争における日本の加害性をテーマに据えた骨太の構成が魅力の番組である。
優 秀 学生に夏休みはない 2015
毎日放送
プロデューサー 森﨑俊雄、ディレクター 亘佐和子、ナレーション 上田崇順、出演 寺田ともか
「今日、強行採決をされました。けど国会は9月27日までです。ここから2カ月間、やるしかないでしょう!今年の学生に夏休みはないっ」。平成27年7月15日、シールズ関西が大阪駅前で行ったスピーチで番組は始まる。学生はどんな思いで人前に立っているのか、あまり語られることのない当事者たちの思いや背景を探った。
“言葉”をキーワードに、思いを伝えるために悩む学生の姿を鮮やかに描き出している。彼らの肉声がラジオからしっかり伝わってくる。
優 秀 青い653号 ~未来へ駆けるヒロシマ被爆電車
中国放送
プロデューサー 増井威司、ディレクター 森下朋之、猪野竜平、出演 横山雄二
昭和20(1945)年8月6日に原子爆弾により焼け野原となったヒロシマの街で人々を勇気づけたのが、わずか3日後に再び走り始めた路面電車だった。当時の塗装を復元した広島電鉄の「被爆電車653号」の車中から生放送し、女学生で電車の乗務員だった増野幸子さん・笹口里子さんから、学生生活の思い出や、街の様子を語ってもらった。
なぜ3日後に路面電車を走らせる必要があったのかを明らかにするとともに、当時を知る人たちの貴重な体験を、飾らない言葉で伝えることに成功している。
優 秀 続 ミャンマーのゼロファイター ~戦後71年 国動かした日本兵遺骨調査~
九州朝日放送
プロデューサー 花田明男、ディレクター 荒木愛子、成井龍之祐、ナレーション 沢田幸二
インパール作戦で知られる太平洋戦争の激戦地・ミャンマーには、現在も45,000柱の旧日本兵の遺骨が残されている。福岡市出身の僧侶・井本勝幸さんは独自で遺骨の調査を続け、地元住民の協力を得て2,000柱の遺骨の埋葬地を明らかにし、その情報を厚生労働省に提供した。番組は、平成28年2月に実施した政府の調査収集に密着した。
まだ戦争は終わっていないとの関係者の強い思いが、番組を通じて伝わってくる。
〔ラジオ教養番組〕
最優秀 生きるんだっ!~1945年8月 子どもたちの“戦争”は始まった~
山形放送
取材・構成 三浦重行、編集 阿部邦彦、ナレーション 青山友紀
山形市内の会議室などにお年寄りたちが月2回集まる。県内に住む中国残留孤児とその家族だ。孤児の子どもが中心になり、親世代の居場所作りに取り組む。“日本の鬼の子”“中国人”と呼ばれてもひたすら生き抜いてきた子どもたちの“戦争”は今も続いている。
中国残留孤児を正面から丁寧に取り上げている。出演者の「敗戦の日から私たちの戦争が始まった」という言葉が、今なおこの問題が続いていることを深く印象付ける。
優 秀 J-WAVE SELECTION Hitachi Systems HEART TO HEART
J-WAVE
プロデューサー 松尾健司、森谷文晶、ディレクター 大橋 潤、松下明日香
東日本大震災直後から継続している復興支援プロジェクト「HEART TO HEART」に沿って、毎月1回放送している番組。被災地の未来を切り拓くために尽力している人物を取材し、その模様をゲストとともに語り合う。「復興のためにアートができること」など、回ごとのテーマを設定し、震災をきっかけによりよい未来のための手がかりを考える。
年間を通じたレギュラー番組において震災を定点的に見つめ、様々な課題を考えるきっかけをリスナーに継続して提起する姿勢が素晴らしい。
優 秀 東京園の中村さん
横浜エフエム放送
プロデューサー 神戸竜太、構成・演出 高橋浩二郎、ナレーション 杉村憲司
かつて“東京の奥座敷”として多くの温泉宿が存在した綱島温泉も、現在は数軒の温泉銭湯と、日帰り入浴施設の「東京園」が営業するのみ。1947年の創業以来、「中村さん」が代々経営してきた。その「東京園」が2015年5月で休園することに伴い、4代目社長の中村ゆう子さんやゆかりのある関係者、来場者のインタビューを行い、その魅力を描いた。
世代間を超えて愛されている施設のあり様から、今の時代に少なくなった“ゆとり”の大切さを感じさせる。
優 秀 役に立ってこそ役人! スーパー公務員 高野誠鮮
北陸放送
ディレクター 野村未来子、ナレーション 松村玲郎、音声技術 清水 護
31年前、高野誠鮮さんは、故郷の石川県羽咋市に戻り、実家の寺で僧侶をしながら、市役所の職員として働き始める。配属された部署でユニークな取り組みを始めようとするが、その努力を認める人は少なく、多くの反対に遭う。組織で働く厳しさ、難しさを感じながらも「地域の人の役に立つことは何か」を考え、挑戦を続ける姿を伝える。
全編が高野さんへのロングインタビュー。全国各地で試行錯誤されている町おこしの具体的な成功例の紹介であるとともに、そこにかける想いや込められた意志が伝わってくる。
優 秀 住太夫の大大阪
朝日放送
プロデューサー 戸谷公一、ディレクター 石原正也、構成 戸田 学、出演 竹本住太夫
人形浄瑠璃文楽の人間国宝、竹本住太夫さんは大正13年、堂島の生まれ。関東大震災の後、多士済々な演芸人が日々しのぎを削っていた「大大阪」時代を「情緒があり、料理も高級から大衆まで大阪らしい味があり、人間ものんびりしていた」と穏やかに語る。当時の貴重な音源を住太夫さんの思い出とともに紹介する。
豊富な資料をもとに、現在のイメージと異なる「大大阪」時代を掘り起しており、後世に伝えたい内容となっている。
優 秀 RCCラジオドラマ「赤ヘル1975」
中国放送
原作 重松 清、プロデューサー 増井威司、脚本 名切勝則、ディレクター 角 賢直
1975年は原爆投下から30年であり、カープの帽子が紺から赤に変わり、初優勝を遂げた年である。そのカープの「真っ赤な奇跡」を広島に生きる人々の思いとともに描いた小説「赤ヘル1975」を、カープのラジオ実況の音源をふんだんに使ってドラマ化し、被爆から70年を迎えた8月6日に放送した。
当時の音源で臨場感を与えつつ、広島の苦難と希望、そして復興の模様をいきいきと描き出している。
優 秀 otto & orabu ポンピドゥ!
エフエム鹿児島
企画・構成 遠山明男、取材・ナレーション ありまゆき、前畠俊二、技術 竹之下仁
「otto & orabu」は鹿児島市内の知的障害者援護施設「しょうぶ学園」の利用者と職員からなる音楽集団。団員それぞれの“ずれる”“ずれている”感性や個性が奏でるピュアで一生懸命なサウンドが聴く者を魅了する。結成のいきさつ、関係者の思い、メンバーの情熱、観客の感想などから、障害をエネルギーに変えて音楽を創造する姿を追う。
音楽を用いた知的障害者の支援というユニークなテーマを取り上げ、「音楽とは何か?」「感動とは何か?」という問いを考えさせられる作品となっている。
〔ラジオエンターテインメント番組〕
最優秀 SBCラジオスペシャル 「受話器の向こうから~026-237-0555」
信越放送
プロデューサー 西沢 透、ディレクター 笠原公彦、ナレーション 小林万利子
多くの番組がリスナーからのメッセージをメールやFAXで受け付ける中、SBCラジオでは電話でも受け付けている。その数は毎日平均50件。中には、キャリア30年を超えるベテランのオペレーターと親友になったリスナーもいるほど、親密な関係を築いている。
電話番号を入れた番組タイトルからも読み取れるように、優れた企画力と作為のないリアルなやりとりの面白さがある。「日常をいかにエンターテインメントにするか」というラジオの本質、原点を感じさせる作品である。
優 秀 あさ採りワイド秋田便元日スペシャル 「ラジオのある風景」
秋田放送
取材・構成 石﨑富士子、ナレーション 賀内隆弘
ラジオがどんな場所で、どんな人に聴かれているか、パーソナリティがリスナーを訪ねて交流する番組内企画「ラジオのある風景」の総集編。戦前から続くおでん屋さん、米や野菜、花などを作っている農園、老舗の時計店から、リスナーが歩んできた歴史や、ラジオと共にある現在の風景を伝える。
リスナーとの関係を地道に築いてきたからできた、ありそうでなかった企画である。現場の状況が見えてくるような構成で、全編からラジオへの愛があふれている。
優 秀 JAPANESE POPS REFRAIN 1945-2015 ~作詞家・松本隆の45年~
エフエム東京
プロデューサー 竹井孝一郎、ディレクター 氏家 徹、山下未央、構成 田家秀樹
数多くのヒット曲を世に送り出した松本隆さんの45年に及ぶ作詞家人生や、大瀧詠一、松田聖子、筒美京平といったトップアーティストとのエピソードを、貴重なロングインタビューを通じて綴り、松本隆の創作活動の本質を炙り出す。
松本氏が架空の都市「風街」として描く東京のラジオ局ならではの作品。同氏のキャラクターに踏み込んだインタビューもさることながら、楽曲を効果的に聴かせる構成も見事で、番組全体の完成度が極めて高い。
優 秀 ベッドの上のカメラマン
福井エフエム放送
ディレクター・番組構成・ナレーション 飴田彩子、ドラマ構成・脚本 瀬川あづさ、ドラマ音声協力 加藤喜英
ケアマネージャーとして介護老人保健施設で働く古川治子さんは、自身が勤める施設の入所者とその家族との“添い寝”写真を撮ることをライフワークにする。古川さんが撮影してきた家族の物語をラジオドラマに仕立て、記念撮影に込められた思いを綴った。
想像力を膨らませてくれるタイトルや、ラジオドラマで「写真」を題材にするという挑戦が素晴らしい。認知症や高齢者介護など、現在の医療が抱える課題を果敢に扱った作品である。
優 秀 一歩ずつ~点字楽譜がくれたもの
和歌山放送
プロデューサー 柘植義信、ディレクター 花井歩高、古城ゆかり、ナレーション 中川智美
視覚に障害のある高校1年生の菅田利佳さんの夢はピアニストになること。盲学校小学部時代に「点字楽譜」に出会って以来、本格的にピアノ演奏に取り組んできた。番組は4年間にわたって成長の過程を追った。
菅田さんの明るい歌声やピアノ演奏の素晴らしさ、落ち着いた語り口など、主人公の持つ魅力が伝わってくる。地元のメディアとして長年にわたる手間とこだわりの取材が光る。
優 秀 赤シャツの逆襲2 ~漱石はそれを我慢できない~
南海放送
脚本・構成・ドラマレイアウト 田中和彦、編集 乗松佳洲彦、河村英美、プロデューサー 小倉健嗣
「坊っちゃん」に登場する赤シャツ教頭のモデルの子孫が、夏目漱石の子孫などを相手に出版差し止めを求めた、との設定のラジオドラマ。1984年放送のドラマ「赤シャツの逆襲」を、新たな郷土研究の成果も盛り込み、漱石没後100年を機にリメイクした。
作り手が「楽しい」ではなく「愉しい」を目指した、というとおり、「坊っちゃん」を読んだことがない人にも楽しんでもらおうとする意欲と、郷土に対する熱意が伝わってくる。楽曲の使い方にも工夫がみられる力作である。
優 秀 よるめぐ
熊本放送
プロデューサー 畑中雄治、ディレクター 風呂本篤、出演 MEG(メグ)、田名網駿一
熊本弁全開のタレント、MEGと、田名網駿一アナウンサーが、ゲストを迎えて“ぶっちゃけ話”を聴くトークバラエティ。この回は、熊本草葉町教会の難波信義牧師を招き、牧師さんの普段の仕事ぶりや生活を掘り下げていく。
知っているようで知らない地域の日常を楽しく伝えてくれる番組である。ゲストの魅力を最大限に引き出そうとするMEGの話術には気迫すら感じられ、トーク番組のお手本ともいえる作品である。
〔ラジオ生ワイド番組〕
優 秀 ゲツキンラジオぱんぱかぱーん 東日本大震災から5年
山形放送
プロデューサー 堀田 孝、ディレクター 鈴木紫乃、パーソナリティ 安藤 勲、佐藤孝子
月~金/13時~16時30分の放送。曜日ごとに違う男女二人のパーソナリティがトークを繰り広げる。通常はフリーテーマでメッセージを募集している金曜日だが、この日、3月11日(金)の放送は、「東日本大震災から5年」というテーマを設けて、リスナーとともに当時を振り返った。
出演者からこの日のこの番組でしか聴けない言葉がいくつも語られている。パーソナリティの誠実な人柄と信頼感が伝わってくる。
優 秀 発信型ニュースプロジェクト 荻上チキ・Session-22
TBSラジオ
プロデューサー 長谷川裕、パーソナリティ 荻上チキ、アシスタント 南部広美、ジャーナリスト 神保哲生
月~金/22時~24時55分(金曜日は23時55分)の放送。特集コーナーで今国会での重要議論である消費税と軽減税率、憲法9条と自衛隊、表現の自由などを紹介し、国会論戦での安倍総理の説話も分析した。
現代の政治問題や社会問題を情報として伝えるだけではなく、「どういった方向性やスタンスで臨むべきなのか」というところまで垣間見せてくれる、力のこもった番組である。パーソナリティとアシスタント、制作スタッフの息がますます合ってきた。
優 秀 Smile Smile Plus i 青なじみスペシャル ~果たして喉は持つのか!?
茨城放送
プロデューサー 椎名公一、ディレクター 武井美鈴、パーソナリティ マシコタツロウ、レポーター 菊地真衣
月~金/13時~15時55分の放送。この日は人気コーナー「マシコの青なじみ」の拡大版。オープニングトークから、リポートコーナー、作文募集告知、クリーニングメーカーのCMなど、175分の放送のほぼ全編を茨城弁で放送した。
「方言」を魅力的なコンテンツとして見出している。ひたすら茨城弁で語りつづけ、茨城ナショナリズムをまっすぐに突き進んでいく圧倒的なパワーがあり、なおも聞き心地がよい。
優 秀 午後はとことん よろず屋ラジオ 思わず人に話したくなる ものづくり スペシャル
福井放送
プロデューサー 稲木 聡、ディレクター 大林甲憲、パーソナリティ 岩本和弘、阿部真由美
月~金/12時~16時30分の放送。今回は福井県の繊維、メガネ、機械など基幹産業を支える「ものづくり技術」を、ゲストを迎えて分かりやすく解説した。
タイトル通り、人に話したくなる話がいっぱいである。「安全性と切れ味」「くっつくと剥がす」「書くと消す」など、対立する概念を技術で新製品にすることをうまく情景描写し、説明していったところが見事である。福井への地域愛にあふれている。
優 秀 田辺眞人のまっこと!ラジオ
ラジオ関西
プロデューサー 三上公也、ディレクター 樫本芙美佳、構成 青木達也、出演者 田辺眞人
日曜日/10時~12時の放送。パーソナリティは地元大学の名誉教授。阪神・淡路大震災後、地域を知ることが防災に繋がるとの観点から、地域を学ぶコーナー企画を進めてきた。今回は、神戸開港150年を控え、兵庫区の和田神社からの公開生放送&イベントを放送。
出演者の地域に関する知識の豊富さと愛着がすごい。「地域を知り、防災に活かす」という企画に説得力がある。番組のアーカイブマップを市内の各所に置いている立体的な展開もすばらしい。
優 秀 大窪シゲキの9ジラジ
広島エフエム放送
プロデューサー 磯貝修也、ディレクター 竹下香織、DJ 大窪シゲキ、ゲスト 丸本莉子
月~木/21時~22時の放送。中学生・高校生がメインターゲット。この日は広島市内の大型商業施設で行った、リスナー(9ジラー)のための卒業式イベントの模様を放送した。
卒業証書の授与から、ゲストによるアトラクション、在校生代表による送辞と卒業生代表ラジオネーム団長による答辞までウキウキする内容で、10代の若者たちがラジオに振り向いてくれるヒントがある。
優 秀 FMK RADIO BUSTERS
エフエム熊本
プロデューサー 吉田直史、パーソナリティ かなぶんや、アシスタントパーソナリティ 風戸直子、ディレクター 麻生純一
月~木/16時~18時55分の放送。「熊本の夕方を音楽で熱くする番組!」がコンセプト。この日は4月16日(土)の熊本地震の本震後、最初のレギュラー番組放送回で、いつもの時間に、いつもの番組・いつもの声で、地震関連情報を伝えた。
余震が続く中で逐一地震関連情報を伝え、放送する楽曲の歌詞の内容にも留意した。パーソナリティの、日常通りに喋ろうとする口調から分かる被災者への思いに胸をうたれる。
〔テレビ報道番組〕
最優秀 枯れ葉剤を浴びた島2~ドラム缶が語る終わらない戦争~
琉球朝日放送
ディレクター 島袋夏子、撮影・編集 新垣康之
2013年、サッカー場の地中から見つかったドラム缶に、ベトナム戦争で米軍が使った「枯れ葉剤」の製造会社名があった。調査の結果、ダイオキシンが検出され、周辺土壌の夥しい汚染が発覚した。広範な取材で戦争に翻弄され続ける島の現実を描くとともに、県民にとって命に関わる問題を追及し、現在と将来にわたって続く課題を浮き彫りにした。
沖縄のテレビ局として伝えることへの強い意識が感じられる。基地問題の本質にも切り込んでおり、いま、伝えなければならない問題を扱っていることが高く評価される。
優 秀 17歳の先生~子どもの貧困を越えて~
北海道文化放送
プロデューサー 吉岡史幸、ディレクター 涌井寛之、新崎真倫
札幌の高校3年生、深堀麻菜香さんは3年前に父親が失踪し、一家は家を失った。そうした彼女は、ひとり親家庭などの子どもたちの学習支援を行うNPOで、ボランティアとして高校受験を控えた中学生の面倒を見ている。教育の前に立ちはだかる「貧困」を乗り越えようと苦闘する若者たちの姿を伝える。
主人公を通じて、貧困が教育格差を生んでいる現実を浮き彫りにしている。地域にとどまらない普遍性のある問題を捉えていることが評価される。
優 秀 NNNドキュメント’15「南京事件 兵士たちの遺言」
日本テレビ放送網
チーフディレクター 清水 潔、ディレクター 境 一敬、撮影 黒住周作、プロデューサー 有田泰紀
日本軍による加害の側面から日中戦争での南京事件を検証。虐殺の犠牲者が多かったとされる揚子江沿いを進撃した部隊の元兵士の陣中日記に着目、一次資料を目撃証言などで裏付け取材し、信憑性の高さを確認。さらに状況の詳細をCGで具現化、立体的に伝えた。
事件の実証に真正面から冷静に取り組んでおり、事実に客観的に迫ろうとする姿勢が秀逸。いま、この作品が制作されたことに意味がある。
優 秀 SBCスペシャル ボルネオ島 死の行軍~戦後70年“忘れられた悲劇”~
信越放送
プロデューサー 水野正也、取材・撮影 湯本和寛、構成 清水秀行、ナレーション 三島さやか
ボルネオ島「死の行軍」は連合国の捕虜や民間人にも犠牲を強いたが、詳細は知られていない。脱走して生き残った元捕虜の息子が、長野県出身者の手記の存在を知り、実態に迫ろうと英訳を出版。忘れられた悲劇と、どう向き合い、伝えていくのかを問いかける。
地道に資料を掘り起こし、幅広く証言を積み重ね、丹念に取材している。日本とオーストラリア、ならびに現地の受け止め方の違いを記録した功績は大きい。
優 秀 HAB特別番組「宿命と、忘却と~“たった70年前”の戦争~」
北陸朝日放送
プロデューサー・ディレクター 黒崎正己、ディレクター 中島佳昭
かほく市に住む元陸軍兵長で94歳の坂本信一さんは、中国戦線で上官命令に従い中国人を処刑。戦後は労働運動の中で再軍備に反対し、長年体験を語らずにきたが、戦後70年を機にカメラの前で初めて告白した。父の苦悩を知った息子、戦後自衛官の道を歩んだ弟、そして安保法制の動向も対比させながら、戦争の傷に苛まれる人間の姿を描いた。
戦場の“個人の加害”に関する貴重な証言を記録している。制作者の訴えたいという意思が明確で、民放の気概を感じさせる番組である。
優 秀 ytvドキュメント シベリア 凍土の記憶~91歳の抑留体験者と女子高校生~
読売テレビ
ディレクター 堀川雅子、プロデューサー 阿部裕一、撮影 綱本 直、編集 浅田邦裕
綾部市の原田二郎さんは5年前から舞鶴引揚記念館でシベリア抑留の語り部を続けている。今年5月、67年ぶりにロシアを訪れることを決意。生き延びた場所の痕跡に触れ、命ある限り悲劇を伝えようと胸に誓った。地元高校生との交流を通して記憶の継承を考える。
記念館のシベリア抑留に関する資料が「ユネスコ世界記憶遺産」登録につながった高校生の活動を通して、歴史の記憶と伝承の大切さを現代的に表現している。
優 秀 島の命を見つめて~豊島の看護師・うたさん~
山陽放送
プロデューサー 桑田 茂、ディレクター 武田博志、カメラマン 横田康成、ナレーション 石田好伸
香川県・豊島。残るのは80~90代のお年寄りばかり。その命に寄り添うのは島で唯一の診療所の看護師・小澤詠子さん。わざわざ移住し資格をとった。高齢者世帯を毎日訪問し健康状態を見ているが、出てくる言葉は「もう死にたい」「わしが先に逝きたかった」ばかり。高齢者の命を支えるジレンマを抱えるうたさんの目を通して「生と死」を追う。
僻地医療の現実を静かに訴えている。自然体で生きる主人公が魅力的で、人間ドラマとして、生死について考えさせられる作品である。
〔テレビ教養番組〕
最優秀 ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ ~カラーフィルムに残された復興への祈り~
WOWOW
プロデューサー 小野秀樹、小西 寛、企画・構成原案・取材 清水 節、ディレクター 佐々部龍太
『人情紙風船』や『姿三四郎』などの名画で知られる映画カメラマンの三村明は、1919年に渡米しハリウッドで活躍したのち、1934年に帰国。敗戦後の日本でアメリカ戦略爆撃調査団に加わり、原爆投下から半年後の広島をカラーフィルムで撮影した。三村が残した手記を手掛かりに、日米のはざまに立たされた彼の人生に迫った。
広島を撮影した三村の想いを検証するうえでヒントや分析があるものの語り過ぎず、見る者に考える余地や余韻を残している。構成の素晴らしさが印象に残る、見応えのある作品である。
優 秀 廃校はアカン!~熱血“ホンマちゃん”、北星余市高に生きる~
北海道放送
プロデューサー 原田 徹、ディレクター 河野 啓、撮影 三上幸男、編集 白木秀和
北海道の北星余市高校は、全国から高校中退者や不登校経験者を受け入れている学校。3年B組担任の「ホンマちゃん」こと本間涼子先生は、日々全力でそうした生徒たちに向き合っている。生徒の減少で廃校の危機に直面し揺れる、教師と生徒の1年間を記録した。
廃校の危機の背景にある貧困問題を丁寧に扱い、社会問題を投げかけている。画一的な学校教育には馴染めない生徒を広く受け入れる北星余市高校の必要性を感じさせる。
優 秀 SBCスペシャル 長者原騒動記
信越放送
プロデューサー 池上英樹、ディレクター 手塚孝典、ナレーター ayako_HaLo、撮影 原 隆
東京での仕事をやめて、長野県佐久市長者原のゆい自然農園にやってきたまな美は農園の跡継ぎの拓実と結婚し、二人で農園を継ぐことになった。はっきりとした物言いのまな美の登場による家族のささいな騒動や国策に巻き込まれて翻弄される騒動を記録した。
農園の世代交代や再生可能エネルギーの抱える矛盾など、さまざまな視点から考えさせる作品である。和やかな雰囲気の中に効率主義の社会への警鐘を感じ取ることができる。
優 秀 人生フルーツ ある建築家と雑木林のものがたり
東海テレビ放送
プロデューサー 阿武野勝彦、ディレクター 伏原健之、撮影 村田敦崇、ナレーション 樹木希林
建築家として自らが設計に携わった高蔵寺ニュータウンに暮らす津端修一さんと妻の英子さん。夫婦は雑木林と季節のフルーツに囲まれ、穏やかな生活を送っていた。ある日、昼寝をしたまま安らかに亡くなった修一さんには人生最後の仕事があった…。
自然の映像が美しく、物語を見ているような気持ちになる作品である。見るものに日常の中に小さなドラマがあり、人生がつくられていることを気付かさせてくれる。
優 秀 和風総本家 日本という名の惑星・パラオ編
テレビ大阪
プロデューサー 庄田真人、総合演出 内山慶祐、ディレクター 石井辰之介、アシスタントプロデューサー 羽柴康晴
初来日したパラオ共和国のテレビ局クルーが日本紹介番組を制作し、自国で放送するまでの姿に密着した。相撲道場、魚市場、秋葉原などを取材したテレビ局クルーはロケの最後に宮崎県に向かい、パラオで少年時代を過ごしパラオを愛する日本人を取材した。
外国のテレビ局に日本を取材してもらうという切り口が新鮮である。「パラオの自然に都市のテクノロジーはいらない」というパラオのキャスターのコメントに、今の私たちに本当に大事なものが何かを考えさせられる。
優 秀 じいちゃんの棚田
テレビ愛媛
プロデューサー 片上裕治、ディレクター・カメラマン 友近晶二、ナレーション 名護谷希慧
愛媛県の山間で暮らす「棚田のじいちゃん」こと上岡満栄さんは、棚田で60年以上稲作を営んできた。少子高齢化や過疎化の問題に直面する「棚田のじいちゃん」を4年にわたって取材した。
日本が取り組むべき課題を凝縮し、棚田をキーワードに語った良作である。番組内に多くのトピックが散りばめられるが、長期取材だからこそすべてがつながり、作品の焦点が明確になっている。
優 秀 いのちを伝える~元食肉解体作業員の挑戦~
熊本県民テレビ
プロデューサー 村松正哉、大木真美、ディレクター 村上美香、森 美樹
熊本市の元食肉解体作業員の坂本義喜さんは、命を持つ動物を商品化するまでの話を子どもたちに伝える講演活動を行っている。屠畜を生業とする人たちへの差別も隠さずに話す坂本さんには、時代を変えたいという決意があった。
食育だけでなく、被差別部落の問題も扱った意欲作である。いまだに差別がなくならない現代だからこそ必要な番組である。
〔テレビエンターテインメント番組〕
最優秀 SBCスペシャル 鶴と亀とオレ
信越放送
プロデューサー 池上英樹、ディレクター 上條剛正、ナレーター 萩原聖人、撮影 丸山清寿
飯山市に住むフリーカメラマン小林直博さん(24歳)が発行するフリーペーパー「鶴と亀」。載っているのは田舎のじいちゃん、ばあちゃんの写真ばかり。ネット上で話題になり、全国的な人気を得ている。ひとりの若者の取り組みから地方発信の新しい形を探る。
お年寄りの笑顔の向こうに広がる高齢化や過疎化の問題をポジティブにとらえることで、見ているものの心を和ませるエンターテインメントに仕上がっている。
優 秀 コイズミワー!~現代マタギ事情~
山形放送
プロデューサー 伊藤清隆、ディレクター 堀田 孝、ナレーター 大木瞳美、取材 松浦正登
小国町小玉川地区は数少ない「マタギの里」の一つ。マタギたちはクマを仕留めると「コイズミワー」と歓喜する。高齢化と後継者難でマタギたちの文化は存亡の危機にある。そうした中での福島第一原発事故。国は、2016年春にようやく条件付きでクマ肉の出荷を許可した。
マタギの文化や歴史の奥深さを知ることができると同時に、原発事故の影響の大きさをあらためて思い知らされる。
優 秀 世界遺産で神話を舞う~人間国宝・能楽師とギリシャ人演出家~
BS朝日
プロデューサー 森本茂樹、遠藤行泰、山本泰弘、春名雄児
人間国宝の能楽師・梅若玄祥さんのもとに、ギリシャ政府からギリシャ神話を題材にした新作能の公演依頼が舞い込む。演目は難解で誰も手を出さなかったとされる題材で、舞台は世界最古の劇場「エピダウロス古代円形劇場」。日本とギリシャの文化が融合し、新しい芸術が誕生する過程を追った。
日本人とギリシャ人とが衝突を繰り返しながら能を制作していく過程からは緊張感が伝わってくる。それだけに、番組のラストを飾る舞は感動的である。
優 秀 東京大衆歌謡楽団 歌の花束
富山テレビ放送
プロデューサー 徳中正史、ディレクター 齊藤 歩、撮影 江本正史
富山県出身の兄弟3人が結成した「東京大衆歌謡楽団」。3人は32歳から28歳の若者だが、昭和の流行歌を歌い継ぎ、街頭演奏を基本とするスタイルで、東京を中心に幅広い年齢層から支持されている。彼らがなぜ昭和歌謡を歌うようになったのかを探りながら、名曲の数々を現代によみがえらせる。
若い彼らが演奏する数々の昭和歌謡を通じて、当時の流行歌が持つ、説明しがたい「音の魅力」を伝える作品である。
優 秀 キューバが愛した日本人~向井理、最後の楽園へ~
読売テレビ
チーフプロデューサー 山本一宗、プロデューサー 田中寿一、ディレクター 小林計洋、出演者 向井 理
旅人・向井理が降り立ったのはキューバの首都ハバナ。その街並みには、スペインからの独立、アメリカによる支配、そしてキューバ革命を経たこの国の歴史が刻まれている。その歴史に名を残した、ひとりの日本人園芸家・竹内憲治の足跡をたどる。
向井理がハバナの街の素顔を伝えると同時に、再現ドラマを交えながら、竹内の人物像に80年の時を超えて迫る。エンターテインメントとドキュメンタリーを融合した誰もが楽しめる作品である。
優 秀 芸術と戦争の狭間で~大原美術館にみる戦時下の記録~
岡山放送
プロデューサー 中尾 公、室山賢司、ディレクター 金城成美、編集 田中 彰
美術館がいかにして戦時下を生き抜いてきたのか。「絵画の疎開」にまつわるエピソードを端緒として、倉敷市の大原美術館に残る「業務日誌」をもとに、関係者の証言などを通じて、美術、芸術の存在価値を見つめ直す。
戦後70年の節目にふさわしいテーマを取り上げ、丹念な取材で戦争と芸術に関する史実を掘り起こした貴重な作品である。
優 秀 槻木の里の風だより
テレビ熊本
プロデューサー 徳永幹男、ディレクター 寺田菜々海、撮影 古江智宏、編集 可児浩二
槻木集落はかつて山仕事で栄えたが、今では人口128人、高齢化率も約8割に上る「限界集落」。町が公募した「集落支援員」として福岡から移り住んだ上治英人さん一家と、山村に生きる人たちの思いを紡いだ2年間の記録。
日本中の農山村がかかえる過疎高齢化の問題に立ち向かう槻木集落の人々の姿は、「ふるさと」について考えるきっかけとなる。
〔テレビドラマ番組〕
最優秀 ドラマW この街の命に
WOWOW
プロデューサー 徳田雄久、藤田恵里香、岩下英雅、監督 緒方 明、脚本 青木研次
行政獣医として動物愛護センターに配属された牧田は、法律で定められた業務――さまざまな理由で捨てられた犬や猫を殺処分すること――に取り組む。職員の間でも「殺処分がつらい」「必要な仕事だから我慢すべき」と意見が平行線をたどる中、新たに所長となった高野は「犬猫を殺処分するのではなく、譲渡を行う施設にする」との方針を打ち出す。
あまり語られることのないテーマをあえて取り上げたことが高く評価される。ドラマという手法を選んだことで、作り手の思いを自然な形で訴えかけることに成功している。
優 秀 下町ロケット
TBSテレビ
プロデューサー 伊與田英徳、ディレクター 福澤克雄、原作 池井戸潤、脚本 八津弘幸、出演 阿部 寛
佃航平は、自身が開発したエンジンを搭載したロケットの打ち上げが失敗した責任を取らされ、宇宙科学開発機構を退職。父親が残した町工場「佃製作所」を継ぐ。社長になってから7年、会社はそこそこうまくいっていたものの、主要取引先からの突然の取引中止や、特許侵害の訴えなど、さまざまなピンチが襲い掛かる。
高い技術力と、佃や社員の熱い思いで困難を乗り越えていくさまが、視聴者を惹きつける。斬新なキャスティング、きめの細かい演出で“ドラマの王道”と言える作品である。
優 秀 金曜ナイトドラマ「民王」
テレビ朝日
チーフプロデューサー 大川武宏、プロデューサー 飯田 爽、監督 木村ひさし、原作 池井戸潤、脚本 西荻弓絵
政権交代が相次ぐ混乱の中、武藤泰山は、ついに内閣総理大臣の座を手にする。一方、“バカ息子”の翔は、家庭を顧みない父親に嫌気がさし、大学生になると家出状態になっている。そんな中、突然、親子ふたりの心と体が入れ替わってしまう。父、泰山の体と入れ替わった翔は、彼にしか言えない“正論”で数々のピンチを克服していく。
2人の主役の熱演がドラマを盛り上げつつ、日々、現実に起こっている数々の問題にも目を向けさせてくれる。
優 秀 金曜8時のドラマ 釣りバカ日誌 新入社員 浜崎伝助
テレビ東京
プロデューサー 浅野 太、監督 朝原雄三、原作 やまさき十三、北見けんいち、脚本 佐藤久美子
西田敏行のハマちゃんと三國連太郎のスーさんのコンビで、22年間にわたり日本中で愛された映画「釣りバカ日誌」初の連続ドラマ化。番組は“新入社員時代のハマちゃん”が主人公で、舞台は2015年である。大手ゼネコンに入社した“超マイペース”な新入社員・浜崎伝助が彼なりの一生懸命さで、前向きに生きていくさまをコミカルに描く。
一癖も二癖もある出演者たちをまとめ上げ、上質のエンターテインメントに仕上げている。まさにプロの仕事と言える。
優 秀 火曜スペシャル 山本周五郎人情時代劇 めおと蝶
BSジャパン
プロデューサー 瀧川治水、山本和夫、協力プロデューサー 上野境介、脚本 三國月々子
謀反の疑いで追われ、助けを求めて屋敷に来たかつての恋人・西原知也を、大目付の妻となった信乃が、夫である良平に秘して匿う。やがて、知也の疑いは晴れ、不正を働いた首謀者が良平の上役であることが明らかとなる。自身の罪も免れないと悟った良平は、信乃に離縁を告げる。知也と良平の間で気持ちが揺れる信乃だが、彼女は意外な選択をする。
主人公・信乃の心の揺らぎを繊細に描くことで、奥行きのある時代劇とすることに成功している。
優 秀 中京テレビスペシャルドラマ マザーズ2015 ~17歳の実母~
中京テレビ放送
プロデューサー 栗田美和、黒沢 淳、監督 谷口正晃、脚本 吉田紀子、出演 室井 滋
NPO『スマイルベビー』を運営する奥田貴子を、高校教師の片岡洋平と生徒の高梨麻子が訪れる。麻子は、母親の恋人から性的虐待を受け妊娠していたが、記憶にふたをした「解離性健忘」でいきさつを覚えていなかった。出産後、養子として送り出す小さな命と対面した瞬間、麻子は、前を向き生きていかなければならないと覚悟を決める。
ドラマとしての完成度の高さに加え、特別養子縁組の問題に継続して取り組む放送局の姿勢も高く評価される。
優 秀 大阪環状線 ひと駅ごとの愛物語 第3回 大正駅「新しい海の出現」
関西テレビ放送
プロデューサー 木村弥寿彦、佐野拓水、プロデューサー・演出 高山浩児、脚本 狗飼恭子
大正駅から出てきた、青いワンピースの女性が、自転車のカゴに“祝儀袋”を放り投げ、立ち去っていった。それを若い男性が追いかける。かみ合わない会話を続けるうち、女性は二股をかけられた男の結婚式に殴り込みに行った帰り道で、男性は世界一周の旅に出るため大学を中退しようとしている学生であることが明らかになる。
セットや衣装ごとに登場人物の心象を象徴する色を巧みに配し、印象的である。
CM部門
※各作品のタイトルは、「広告主名(非商業スポットは省略) 商品名/作品名(秒数)」の形で掲載。
〔ラジオCM 第1種(20秒以内)〕
最優秀 伊藤ハム 元祖あぶり焼チキン/アプリ 篇(20秒)
朝日放送
プロデューサー 野本友恵、クリエイティブディレクター・コピー・キャスティング 森田一成(ビッグフェイス)、ディレクター 村上正道(ビー・ジー・エム・サービス)、プランナー 中内純子
二人の女性の何気ない会話。流行りのレシピ検索アプリを勧める女性に対し、自分が献立に困ったときはこれ、と相手の女性が取り出したのは『元祖あぶり焼チキン』。冷蔵庫にあれば、食卓のメニューの幅が広がり、日々の献立づくりに役立つことをアピールした。「アプリより、あぶり」とインパクトのあるコピーによって、二人の女性の会話が商品名に直結するという構成が見事。
優 秀 太陽グループ行田自動車教習所 自動車教習所/挑戦(20秒)
文化放送
プロデューサー 見目幸伸、プランナー 南 理子、ミキサー 上原裕司、エクゼクティブマネージャー 小寺健一
免許を持たないため、旅先でヒッチハイクに挑戦した、と知人に語る中年女性。なかなか車に止まってもらえないことにしびれをきらした女性は、ドライバーの目を引くべく服を脱ぐ。ついに車が止まったかと思えば、それはパトカー。積極的に車を運転するイメージがあまりない中年女性層をターゲットとし、免許があればこんな体験をせずとも快適に旅行を楽しめるとユーモラスに表現した点が評価された。
優 秀 公共キャンペーン・スポット/ラジオで安心 みんなの防災 ベッドの下に篇(20秒)
ニッポン放送
プロデューサー 高橋晶子、巻島英司(電通東日本)、コピーライター 勝浦雅彦(電通東日本)、ディレクター 松田哲雄(サウンドマン)
父親と母親が小学生の息子のベッドの下から「あるもの」を見つける。「あ!これは…」「こんなの誰が教えたの?」と驚く二人。まるで何かいけないものを発見したかと思わせるが、実際に見つけたのは、防災グッズ一式。親には内緒でベッドの下に、という発想はどこか懐かしい。意外性のあるストーリー展開でリスナーの興味を引きながら防災への備えの大切さを巧みに表現している。
優 秀 有明興業 企業/おききぐるしいCM(20秒)
エフエム東京
プロデューサー 林屋創一、プランナー・ディレクター 山口景子、録音 中沢淳一(メディアコミュニケーションズ)、星 貴宏(メディアコミュニケーションズ)
産業廃棄物処理の会社、有明興業は、CMだってリサイクル。「おき きぐる しー かも しれません が」と始まるナレーション全文は、たとえば、「おききぐるしい」の「しい」を「ビタミンC」という全く別のナレーションから抜き取るなど、節ごとに収録済みのさまざまな音声素材を切り貼りしたもの。全編通して異なる音声が組み合わさることで、一度聴いたら忘れない、印象的なCMとなっている。
優 秀 静岡県トラック協会 企業PRスポット/スマートフォン篇(20秒)
静岡放送
プロデューサー 石埜雅己、ディレクター 牧野真美
男の子がおばあさんにスマートフォンについて語るシーン。スマホは、メール、写真に加えて、動画やスタンプだって送れると自慢げに説明すると、「じゃあ、そのスマホで、この大根を送ってくれんかのう」と少し勘違いしてしまうおばあさん。「データで送れないものは、まだ世の中にはいっぱいある」と結び、デジタル社会においてもトラック運送が欠かせないことをストレートに訴求した。
優 秀 スクエア アパート・マンション経営の相談/増えた家族?篇(20秒)
山口放送
プロデューサー 黒瀬哲成、ディレクター 谷本啓之、企画 高橋謙司、録音技術 高田知太郎
得意先の男性と社長の会話。男性が社長の息子について話を振ると、「もう1人増えちゃったんだな」と照れくさそうに話す社長。驚く男性に、社長は「長男、次男、経営難…なんちて!」とダジャレでごまかし、冗談にしたいほど不動産経営が深刻な状況なのだと同情を誘う。重くなり過ぎないトーンの会話と明るい雰囲気のBGMで、相談しやすいイメージをしっかりと演出した。
優 秀 味千拉麺 ラーメン/それもまた(20秒)
エフエム熊本
プロデューサー 池上大介、ディレクター 松下和浩(MONOQLO SOUND)、コピー 中澤 弘(フリー)、出演 ふじわらたけひろ(パインズ)
「今日、彼女が誕生日だから、一緒にフレンチを食べに行くんだ」と言う男性に対して、「いいなぁ、俺はひとりで味千拉麺だな」と返す相手の男性。「それもまた、いいよなぁ!」と盛り上がる会話で、フレンチも間違いなくごちそうだが、味千拉麺もまた熊本県ならではのごちそうであることを伝える。結びでは「熊本から世界に広がる、味千拉麺」と、日本国内だけでなく海外展開も強化していることを端的にアピールした。
〔ラジオCM 第2種(21秒以上)〕
最優秀 ライオン グロンサン強力内服液/やるしかない 篇 (120秒)
朝日放送
プロデューサー 野本友恵、クリエイティブディレクター・コピー・キャスティング 森田一成(ビッグフェイス)、ディレクター 村上正道(ビー・ジー・エム・サービス)、プランナー 中内純子
朝、若手社員が出社すると、別室に怒った取引先が。怒りの理由は、若手社員が取引先に誤送信した、ほとんど悪口のようなメール。「先輩の言っていたとおり~」との内容で、先輩まで巻き込まれてしまう。ゆとり世代の若手社員と、少し頼りない先輩の掛け合いが笑いを誘い、謝るのもパワーがいるからグロンサンで乗り切る、という斬新な展開が評価された。商品名の告知の裏で聴こえる二人の表面的な謝罪も含め、最後まで楽しめるCM。
優 秀 北海道索道協会 LOVE SNOW HOKKAIDO キャンペーン/LOVE SNOW HOKKAIDO「雪の音」篇(50秒)
エフエム北海道
プロデューサー・ディレクター 春潮楼哉子、コピー 東井 崇(フリー)、出演 岡田雅夫(フリー)、録音 山田英行
北海道索道協会とエフエム北海道が展開している“LOVE SNOW HOKKAIDO キャンペーン”。「北海道のスキーは、時に静かです。」と、道内のパウダースノーを滑る音と、道外の硬い雪の音を比較した。BGMや効果音に頼らず、ナレーションと雪上を滑る収録音のみという静かな演出は、北海道の貴重な観光資源であるパウダースノーの良さを再認識させ、まるで北海道のスキー場にいるかのような気持ちにさせる。
優 秀 公共キャンペーン・スポット/忘れない3.11キャンペーン 赤沼ヨシさん編(150秒)
IBC岩手放送
プロデューサー 高橋典子、ディレクター 千葉佳史、ナレーション 神山浩樹、取材 瀬谷佳子
東日本大震災発生時、93歳だった岩手県宮古市在住の赤沼ヨシさんは“津波てんでんこ”――津波の時には他人に構わず、てんでバラバラに逃げよ――の教えを守り、生き延びた。赤沼さんは、震災から5年、仮設住居からの引っ越しを目前に他界。生前残した言葉「復興は“てんでんこ”ではできません」には、故郷復興への切なる願いが込められている。被災県の放送局として、被災者の言葉で復興の思いを伝え続ける取り組みが評価された。
優 秀 自社媒体PRスポット/ラジオ大好き篇(60秒)
山梨放送
企画・出演 櫻井和明、出演 ハードキャッスルエリザベス、録音・演出 石川 治、統括 依田智子
ワンポイント英会話レッスン。女性アナウンサーの発音に続いて「ready」「oh」「dice」「key」と脈絡なく4つの単語の発音を練習する男性アナウンサー。女性アナウンサーが、“4つの単語を繋げてより早く発音を”と促すと、現れた言葉は、「レディオダイスキー」。自局の新人アナウンサーと先輩アナウンサーで局の個性をPRしつつ、「ラジオ大好き」「続けて聴けば分かる、YBSラジオ」と明るくストレートにメッセージを伝えている。
優 秀 公共キャンペーン・スポット/@FM 防災キャンペーン To Keep Life「祝辞」篇(60秒)
エフエム愛知
ディレクター 高岸 良、コピーライター・ディレクター 石本香緒理(電通名鉄コミュニケーションズ)、ミキサー 藤田 繁(スタジオ企画)
結婚披露宴での祝辞のシーン。祝辞を述べるはずの新郎の上司が体調不良で欠席。代理に決まりかけた新郎の先輩は、妻の陣痛が始まり、退席。新郎の同期や大学時代からの友人も候補に挙がるが、酔うと脱ぎ癖がある、などと却下される。白羽の矢が立ったのは、新郎のことをほとんど知らない、先週異動してきたばかりの男性。思わぬ事態は突然やってくる、と締め、突然起こる災害への備えの大切さを意外な切り口で訴求した。
優 秀 ライオン 薬用毛髪力/父の心配事 篇(60秒)
朝日放送
プロデューサー 野本友恵、クリエイティブディレクター・コピー 村上正道(ビー・ジー・エム・サービス)、ディレクター・キャスティング 森田一成(ビッグフェイス)、プランナー 中内純子
娘の彼氏が結婚のあいさつにやってくる。応対した父親は、まるで威厳を保つように、なかなか彼氏に対して頭を下げない。ついに頭を下げたのは、彼氏が玄関出ていくとき。そこで娘は、「心配なんだろうなぁ…頭頂部の…薄毛」と頭を下げなかった理由を察し、心中でつぶやく。最後まで分からない切ない父親の胸中と、重々しい空気ながらもどこかコントめいた雰囲気が、聴いていて飽きないエンターテイメント性を演出している。
優 秀 東京海上日動火災保険 企業/再挑戦(40秒)
エフエム沖縄
コピー制作・録音・編集・出演 大田 判
43歳サラリーマンの男性が、結婚15年目の妻に毎日「愛してる」と言う挑戦の記録をそのままCMにした意欲作。言い馴れていないからか、照れくさいからか、途中から半分やけになって妻に「愛してる」と言い続ける男性。「何で急にそんなこと言うの?」と突然の変化にとまどい笑って聞き流す妻。「めんどくさいなあ」などと素直には受け取らないながらも相手をする妻の反応が、逆に夫に対する愛情を感じさせると高評価を獲得した。
〔テレビCM〕
最優秀 紫書苑 企業/古本だらけの紫書苑~“現役最年長”店主のこだわり(60秒)
CBCテレビ
企画・構成・演出・ナレーション 大園康志、撮影 安田耕治(CBCクリエイション)、編集 大谷太一(CBCクリエイション)、音効・MA 今井志のぶ(東海サウンド)
地元の古書店組合で“現役最年長の古書店主”と言われている名古屋の96歳の男性、永津登さんは、古書店「紫書苑」を構えて70年。2万冊の古本を仕入れるも、店に客が現れるのは稀なので、1日のほとんどを店の奥で過ごす。カメラは店の入り口から奥へ、古書をかき分けるようにノーカットで入って行き、まるで店主の人生そのものを表現するような撮影ストロークで印象深い。最後にネット通販も対応していることをさりげなく紹介する構成も見事。
優 秀 自社媒体PRスポット/私CM 平本一郎篇(60秒)
テレビ埼玉
企画 新井千里、出口雅史、CMプランナー 山田慶太(電通)、プロデューサー 小山田昌弘(ピクト)
囲碁好きの平本社長は、辞職すべきか相談する社員の格子柄のシャツを碁盤に見立てて次の一手を熟考。それを真剣な態度と誤解した社員は、仕事を続けることを誓ってしまう。自社のタグライン「あなたにカンケイあるテレビ」を具現化する企画「私CM」は、自分のCMを作りたい人を募り、選ばれた作品をプロが構成・撮影し、自社で放送するもの。この作品は、自社の社長本人が出演するユーモアあふれる企画見本となっている。
優 秀 公共キャンペーン・スポット/堀川、ヤバくない?(330秒)
東海テレビ放送
プロデューサー 繁澤かおる、コピーライター 伊藤健一郎(電通中部支社)、ディレクター 畔柳恵輔(フリー)、撮影 森恒次郎(東海テレビプロダクション)
江戸時代に名古屋城の築城のため掘られた堀川は、高度経済成長期に生活排水などが垂れ流され水質が悪化。浄化に向けた市民運動の盛り上がりもあったが一向に改善しない。この作品では、窒息した大量の魚の死骸やヘドロまみれの水中を映し、女子高校生が堀川を人名と勘違いする街頭インタビュー、対応を怠ってきた政治家の無責任なコメントなどを織り交ぜ、無関心層にも届くよう「ヤバくない?」とあえてストレートに問いかけた。
優 秀 自社媒体PRスポット/喫茶「静香」(150秒)
毎日放送
プロデューサー 赤城賢彦、ディレクター 髙沖秀明、ナレーター 西 靖、撮影 田中慶太郎(シネブレーン)
昭和の初めに京都の先斗町の芸妓である静香が始めたモダンな喫茶「静香」は、来年で80年を迎える。現在の女性店主が3代目となり、外観や内装は当時のままで、昭和初期の雰囲気を色濃く残している。CMならではのテンポの良さや斬新さを排し、あえて番組本編のような緩やかなリズムで構成し、淡々とした視点で「静香」と女性店主を描くことで、変わらぬ日常の姿に寄り添う放送局であることを効果的に表している。
優 秀 公共キャンペーン・スポット/守ろう地球環境~カエルと少女と「シュロの糸」~ (120秒)
山口放送
プロデューサー 竹村昌浩、ディレクター 田村康夫、撮影 山本 透(周南ビデオサービス)、ナレーション 高松綾香
美祢市の藤原結菜さんは、小学校3年生の時、田んぼの側溝で死んだカエルを発見し、どうしたら側溝に落ちたカエルを助けられるかを研究。2年後、シュロで編んだ糸を側溝に入れ、カエルがそれを伝い上がる方法を発案し、中学校2年生になった今も研究を続けている。小さな命を救うことにひたむきに取り組む藤原さんの姿を通して、人の暮らしと自然との調和がいかに大切であるかというメッセージを優しく伝えている。
優 秀 自社媒体PRスポット/ステーションキャンペーン2016「あなたに」篇(15秒)
琉球朝日放送
エグゼクティブプロデューサー 徳元玲雄奈、クリエーティブディレクター 武藤新二(電通)、プランナー・コピーライター 山田 健(電通)、演出 牧野裕二(牧野映像事務所)
車を運転しながら、ロックバンド「MONGOL800」の代表曲『あなたに』のサビを楽しげに口ずさむ初老の男性。そして車内には「スナック 洋子」のマッチ箱(しかも手書きメッセージ入り)が。歌で県民を元気にするというキャンペーンのスポットであるこの作品は、15秒という尺で簡潔にメッセージを伝えることに成功している。沖縄ゆかりのアーティストの楽曲を用いることで、地域性もうまく醸している。
技術部門
最優秀 台風中継、大雨取材に大活躍!「完全防水ハンドマイク」の開発
東海テレビ放送
研究・開発担当者 神辺康弘
防滴マイクの防水性能を改善するのではなく、水中マイクを陸上に引き揚げるという逆転の発想で、放送品質を満たすよう音質を大幅に改善するとともに、電源、重量、形状などを最適化して、これまでにない放送用の完全防水ハンドマイクを開発・実用化した。
これにより、台風中継や大雨取材をはじめマイクの水濡れが懸念されるあらゆる局面において安全・確実な音声伝送が可能となり、番組制作の高度化と中継・取材の利便性向上に大きく貢献した。
優 秀 アンテナシェアリングダイバーシチシステムの開発
TBSテレビ
研究・開発担当者 平林雅之、深澤知巳
1.2GHz帯および2.3GHz帯FPUでの移動中継において、各中継車向けの受信アンテナで別の中継車の電波も受信し、受信制御部でIF信号を共有し合成することにより、ダイバーシチ効果を保ちつつ機材量を増加させない画期的な中継システムを開発・実用化した。
これにより、700MHz帯からの周波数移行に対応した高度なFPU伝送手法を確立し、テレビ中継技術の発展と周波数の有効利用に貢献した。
優 秀 スポーツ生中継用超小型審判目線カメラの開発と現場導入
日本テレビ放送網
研究・開発担当者 高橋一徳
放送に堪える高画質と色再現性を保ちつつ、撮影時の調整機能やHD-SDI出力を有し、野球やラグビーなどの審判員が負担なく装着可能な超小型・軽量のインターレースカメラを開発し、小型低遅延無線伝送装置と組み合わせて審判目線カメラを実用化した。
これにより、アスリートに極限まで密着した臨場感あふれる映像を視聴者に届けることが可能となり、スポーツ番組制作の新たな手法確立に貢献した。
優 秀 ノンリニア編集におけるリアルタイムテロップ機能"iTake"の開発
テレビ朝日
研究・開発担当者 島田了一、大松浩一郎、堀渕惣一郎、磯田健一郎
ニュースなどのテロップ付けに要する時間を大幅に短縮するため、ノンリニア編集において、リニア編集と同様に映像をリアルタイムにプレビューしつつテロップを「流し付け」する機能を開発し、ノンリニア編集ソフトウェアの基本仕様として実用化した。
これにより、ファイルベース化の流れに対応したテロップ付けのワークフローを確立し、テレビ番組制作・編集の効率化に貢献した。
優 秀 現行地上波でHDと4Kのサイマル視聴を提供する番組技術の開発
フジテレビジョン
研究・開発担当者 伊藤正史
ハイブリッドキャスト技術を活用し、地上テレビ放送と同期させた4K映像を受信機でスムーズに切り替えて表示するとともに、緊急報道や緊急地震速報の際は地上テレビへ強制復帰させて視聴者の安心・安全を確保する番組伝送技術を開発・実用化した。
これにより、現行の地上テレビの視聴者へ4K番組を提供する手法を構築するとともに、開発成果を関係業界全体で共有し、地上テレビ放送の高度化に貢献した。
優 秀 タブレット端末を使用したオンエア監視装置の開発~手の平サイズでオンエア品質の常時監視が可能に~
読売テレビ
研究・開発担当者 岩松道夫、谷知紀英、松田慎一郎、久保健太
汎用品のフルセグチューナーとタブレット端末を組み合わせ、送信所からのオンエア映像を常時監視して品質低下時に通報する遠隔監視装置を製作するとともに、この監視装置を放送対象地域内に複数配備し、一元管理するシステムを開発・実用化した。
これにより、実際のオンエア映像を用いた常時監視を安価に実現し、送信ネットワークの安全・信頼性向上に貢献した。
優 秀 ユニット交換型LEDマルチロケーションライトの開発
関西テレビ放送
研究・開発担当者 中村貴志
LEDユニットの交換によって色温度を選択可能とし、十分な光量と高い演色性を有するとともに、軽量、多機能フィッティング、フォーカス・ディマーの操作が可能といった特徴を持つ、マルチロケーションライトを開発・実用化した。
これにより、放送の中継・制作現場において既存のLEDライトを凌ぐ光源特性と使い勝手を両立し、テレビ制作技術の発展に貢献した。
特別表彰部門
〔青少年向け番組〕
最優秀 どーんと鹿児島「ぼくの、メリット」
南日本放送
プロデューサー 住吉大輔、ディレクター・ナレーション・カメラ 武藤 久
様々なテーマで鹿児島の“今”と“人”を描く、1984年に放送を開始した番組。この回は、中学から不登校になった久永航希君(15歳)と、航希君の生活を変えるため、人口70人の離島・悪石島への移住を決断した母・美代さんが主人公。何をするにも共同作業が必要な島での暮らしの中で、徐々に心を開いていく航希君の姿を通じ、人が生きるうえで必要な役割や居場所について考える。
カメラマンと航希君との信頼に基づいた距離感が絶妙で、作り手の力量が表れている。不登校という今日的課題を、多くの人々に考えてもらう一つの道筋を示した意義は大きい。
優 秀 おはよう。いただきます。さようなら。~弁華別小最後の一年~
北海道テレビ放送
企画・プロデューサー 河野暁之、撮影・演出 三戸史雄、ナレーション・取材 森さやか、編集 馬場亮介
2016年3月に124年の歴史に幕を下ろした当別町立弁華別(べんけべつ)小学校の校舎は、北海道開拓期の面影を残す、道内最古の木造二階建て校舎。番組は閉校までの最後の1年間を取材し、夕方ニュースでシリーズ企画として定期的に放送。定点カメラのようなアングル、フィルムのような映像で、学校の何気ない日々を切り取った。
淡々とした映像が、懐かしさ、優しさといった情感を心地よく伝える。子どもの素の表情を捉えた演出が視聴者の共感を誘う点も高く評価される。
優 秀 にいがた偉人伝#17 諸橋轍次 ~世紀の偉業 大漢和辞典~
新潟放送
総合プロデューサー 竹石松次、プロデューサー 南加乃子、ディレクター 丸山 緑、構成 菊池 豊
江戸末期から昭和にかけて活躍した文化人など、新潟ゆかりの偉人を紹介するシリーズ番組。本人の映像や肉声だけでなく、アニメーションも織り交ぜて子どもにも分かりやすい構成としている。この回では、三条市生まれの漢学者・諸橋轍次を取りあげ、病気や戦争などの困難の中で大漢和辞典の編纂に取り組んだ諸橋の生き方を綴った。
15分と短めの放送時間ながら、大人が見ても学べる要素が盛り込まれている。子どもに伝えようとする工夫が凝らされ、地域の宝を知ることができる良質な伝記番組である。
優 秀 フォーカス信州「カルビ~人生が変わる美術室~」
長野放送
プロデューサー 春原晴久、ディレクター 大日方詩織、構成 石井 彰、カメラマン 髙橋 慶
軽井沢高校美術部、略称「カルビ」は、絵画などの創作のみならず、ダンスやパフォーマンスなど、美術部の枠を超えて活発に活動している。顧問の斉藤篤史先生は3年前に美術教師として赴任後、廃部同然だった部を立て直し、不登校などの問題を抱えながらもハードな活動を通じて成長していく部員たちを見守っている。
個性豊かで人間味のある先生や部員が実に魅力的。「こんな表現・活動があっても良いんだ」と示すことで、子どもが生きる道を見つけることを助けてくれる番組である。
優 秀 ytvドキュメント かあさんと呼びたい ~原爆孤児を支えた心の里親運動~
読売テレビ
ディレクター 阿部裕一、プロデューサー 堀川雅子、撮影 稲津 勝、編集 北田雅彦
原爆で親を失った原爆孤児を支えるための里親運動、「精神養子運動」は、孤児たちが18歳になるまで、当時としては高額の、毎月1,000円の仕送りと励ましの手紙を送ることで、物心両面からの支援を行っていた。運動の中心を担った“原爆孤児の母”山口勇子さんの奔走や、活動を受け継ぐ孤児たちの姿を通じ、「再び原爆孤児を作らない」との山口さんの遺志を伝える。
一般にあまり知られていない運動の実態を紹介することで、平和の尊さ、人と人との繋がり、心の触れ合う人間関係の大切さを描いている。
〔放送と公共性〕
最優秀 1枚の企画書から始まった 故郷に元気を!「書道パフォーマンス甲子園」9年の歩み
南海放送
実施責任者 荻山雄一、松下和明
南海放送のディレクターが書いた1枚の企画書から始まった「書道パフォーマンス甲子園」。今年も、日本一の紙の街・愛媛県四国中央市を舞台に、高校生たちが大きな紙の上で音楽に合わせ大筆を振るった。9回目となる今年の大会は全国16都府県21校(予選応募・過去最高の34都道府県96校)が参加し、約5,500人の観客を集めたが、はじめは地元商店街を会場とした参加3校・観客300人の小さなイベントからスタートした。
企画書に込めた作り手の思いが多くの人を動かし、地域の活性化だけでなく若者たちに夢を与え、取材・番組化を継続してきた「書道ガールズ」は全国放送で火がついて映画化されるコンテンツに。放送と地域がタッグを組んだ試みが、全国的なイベントへと成長した成功事例であり、地方局の取り組みにヒントを与える事績として高く評価された。
優 秀 地方テレビ局の若手記者による飲酒運転防止に関するシリーズ特集
北海道放送
実施責任者 山﨑裕侍
北海道放送は、若手記者ら7人からなるプロジェクトチームを立ち上げ、ローカルワイド番組で後を絶たない飲酒運転の問題に向き合った。放送をきっかけに、駐車場管理者が飲酒運転防止の啓発に努める規定が市の条例に盛り込まれ、道庁が全職員に向け二日酔い運転の注意喚起を行うなど、動きが広がった。
若手記者による新鮮な視点からの地道な取材によって、飲酒運転の問題に新たな光をあてたことや、地域の課題を正面から取り組み、放送の可能性を追求する姿勢が評価された。また、飲酒運転のみならず車社会全体をどう考えるのかという展望がみられた。
優 秀 シリーズ「老いるショック」
北海道テレビ放送
実施責任者 坂本英樹
北海道テレビ放送は、昨年の秋から報道情報番組内に、高齢化率が最も高い北海道で高齢世帯が直面する様々な問題を取り上げる、新シリーズ「老いるショック」を立ち上げた。放送だけの一方通行にとどまらず、①高齢者にも見やすいホームページを開設して放送した動画をほぼ全て公開、②新聞折り込みを活用した啓発活動、③一般向け講演会などを展開している。さらに、認知症サポーター養成講座などの社内勉強会を実施した。
番組内で取り上げる人物の実名・顔出しにこだわり、取材対象としっかり向きあい、国や制度に対する問題提起のみで視聴者を不安にさせる番組ではなく、当事者たちが何を求めているのか明確にしている点が評価された。
優 秀 戦争を、考えつづける。
東海テレビ放送
実施責任者 土方宏史
東海テレビ放送は、「戦争を、考えつづける」をコンセプトに、ニュース・CM・ドキュメンタリーと1年間に渡って「戦争」を放送し続けてきた。記録や記憶をテーマとしたシリーズ企画や、戦争を知らない若手女性記者の目を通して描いた戦後70年、さらに女優・樹木希林との「戦争」をめぐる旅など、様々な表現方法で“事実”を提示し、視聴者に考えてもらう手法をとった。
8月の特集だけでなく、年間を通して取材し放送を続け、かつ71年目も変わらず取材を継続している。その根気強い姿勢とともに、戦後70年を多面的な視点から取り上げたことが評価された。
優 秀 熱血テレビ 戦後70年の取り組み
山口放送
実施責任者 渡部雅史
山口放送は、戦後70年を機に県内在住者の引揚げ体験を取材し、ローカルワイド番組で放送するとともに、新たな体験談や手記を募集した。その結果、予想をはるかに上回る手記などが寄せられ、これをもとに取材を進めることで、全国放送のドキュメンタリー番組へとつながった。
戦争体験者への取材は、聞きづらいことをどこまで聞き、言いづらいことをどこまで引き出せるかがポイントになる。取材者の熱意と誠意に加え、丁寧な取材の結果、次の世代に語り継いでいくための貴重な証言を得られたことが評価された。