表彰番組・事績
日本民間放送連盟賞/2017年(平成29年)入選・事績
番組部門
〔ラジオ報道番組〕
最優秀 語り部をやめたい~94歳の夏
毎日放送
プロデューサー 森﨑俊雄、ディレクター 亘佐和子、出演 水野晶子、瀧本邦慶
大阪に住む瀧本邦慶さん(94歳)は元日本兵。17歳で真珠湾攻撃に参加し、ミッドウェー海戦、トラック島の戦いを奇跡的に生き残った。「生かされた者の責任」と10年続けてきた語り部をやめようかと悩み、それを乗り越えた「戦後71年目の夏」を追った。
出演者の過酷な体験談と戦争観、国家観が、今の社会状況を見事に射貫いている。ラジオが持つ声の力が強く心に響いてくる。
優 秀 使命 ~未来へ贈る津波甚句
IBC岩手放送
プロデューサー 熊谷充代、堀米道太郎、ディレクター 鹿野真源、ナレーション 河辺邦博
過去の大津波の教訓を都度石碑に刻んできた釜石。二人の女性が「釜石 あの日あの時甚句」を作り、東日本大震災の伝承活動を始めた。相撲甚句の節に乗せ、あの日の奇跡も悲劇も、教訓にして唄いあげる。
詩や唄に胸に迫るリアリティーがあり、ラジオならではの感動を呼ぶ。抑制が効いた番組作りから、被災地の今の状況が伝わってくる。
優 秀 ニッポン放送報道スペシャル「いま、共に~未来をひらく大川小学校」
ニッポン放送
プロデューサー 上村貢聖、ディレクター 森田耕次、ナレーション 上柳昌彦、構成 桜林美佐
東日本大震災から6年が過ぎ、教員遺族の大学生が、児童遺族と共に「大川小学校の悲劇」を伝え、同じ過ちを繰り返さないための様々な教訓を一緒になって訴える姿を追う。
学校での大惨事で、教員と生徒の双方の遺族の声を拾っているところが意義深く、言葉の裏にある心の揺れが伝わってくる。二度とこうした悲劇が起こらないようにと後世に伝えてくれる番組である。
優 秀 YBSラジオスペシャル 報怨以徳 ~リポート 塀の中の高齢化
山梨放送
ナレーター 酒井康宜、録音・構成・編集 内田孝輝、プロデューサー 石川 治
甲府刑務所でも65歳以上の高齢受刑者の割合が全体の18.4%と、7年で2倍になった。 番組では再犯を繰り返す高齢受刑者へのインタビューをはじめ、刑務所内の実態、出所後の支援団体の活動や思いを紹介し、再犯防止と更生へのヒントを探る。
受刑者へのインタビューはラジオならではのもの。音で聞かせることを意識し、細やかな状況音が捉えられている点も高く評価される。
優 秀 最期への覚悟
CBCラジオ
プロデューサー 森合康行、ディレクター 菅野光太郎、ナレーション 榊原忠美、音効 奥野賢治
自分と事務員の二人だけの小さなクリニックを開業する女性医師の在宅医療への取り組みと、末期の乳がんで脳腫瘍を患う独居の患者に密着し、独居の患者を家で看取るための課題や現在の在宅医療の問題を考える。
女性医師のキャラクターを明るく描きながら、今の社会の問題点を突きつけてくる。動き回っている出演者の声や、亡くなった後の現場の音を収録している機動力がすごい。
優 秀 残留日本人妻~日韓の狭間に生きた101歳の母
南海放送
プロデューサー 三谷隆司、ディレクター 荻山雄一、記者・ナレーション 戒田菜美
第二次世界大戦後、韓国残留日本人妻を支援し続けた「芙蓉会」のリーダー、國田房子さんのドキュメント。28歳の女性記者が101歳の日本人女性の人生に触れ、埋もれようとしている日本人妻の苦難に光を当てる。
まさに「歴史の証人」の語りには聴きごたえがある。若い記者が戦争が終わっていないことに気づき、自身の中に残ったものを素直に表現しているところもよい。
優 秀 RBCiラジオスペシャル「同性パートナーシップ制度について考える」
琉球放送
取材・ディレクター・ナレーション 狩俣倫太郎、プロデューサー 大野京子
昨年7月に同性パートナーシップ制度をスタートさせた那覇市では、開始からひと月で8組が登録を済ませた。番組では2組のカップルの実例を紹介し、制度の意義やこれからの課題に迫る。
出演者の声の力から、「パートナーとは何か」「家族とは何か」を突き詰めると、個人の尊厳の問題であることにも気づかされる。
〔ラジオ教養番組〕
最優秀 1/6の群像
CBCラジオ
プロデューサー 森合康行、ディレクター 森理恵子、音効 岡田浩志、ナレーション 石井亮次
舞台は名古屋市北区。「日本では6人に1人の子どもが貧困状態」といわれる中、そうした彼らを支援する「無料塾」がある。歌人の鳥居さんには、子ども時代を児童養護施設やホームレスで過ごした経験があり、やはり同区の図書館で短歌に出会った。
子どもの貧困について真摯に問いかけてくる。無料塾での2年間にわたる緻密な取材と、貧困の中にある子どもの気持ちを素直に表現した鳥居の短歌と自身による朗読が、聴き手の中で重なり合い、感動を生む。
優 秀 GO!GO!らじ丸 なつめ広告代理店
青森放送
ディレクター・出演 夏目浩光、田村啓美、出演 筋野裕子、ゲスト出演 宇佐美翔子
「なつめ広告代理店」は番組の中の架空の広告会社。平成28年4月の開業で、パーソナリティを社長、リスナーを社員に見立て、共に番組を作る意識を高めながら放送している。5月の大型連休に行われたLGBTのパレードに合わせて、その応援企画を2週にわたり放送した。
当事者が「どこの誰だか分かってしまう」地方での性的少数者の問題に、当事者と支援者の双方の取材を通じて見事に光を当てている。
優 秀 ミュージック ドキュメント 井上陽水×ロバート キャンベル「言の葉の海に漕ぎ出して」
エフエム東京
プロデューサー 延江 浩、増山麗央、ディレクター 木村尚志、構成 小林浩子
来日当初の1970年から井上陽水の音楽に親しみ、コンサートにも足を運ぶロバート キャンベルは、2011年の入院生活を機に歌詞の英訳を始めたが、その「あいまいな表現」に悩まされる。そんなキャンベルの疑問を解き明かすべく、異色の対談が実現した。
陽水の歌、歌詞の朗読や時事問題の報道音声を交えながら、ふたりが展開する豊かな対話は、貴重な内容で、聴きごたえがありながらも心地よく楽しめる。
優 秀 つなぐ、あしたへ~リスナーの死を受けてあなたに伝えたいこと~
新潟放送
取材・構成 近藤丈靖、広野 渉、制作 小湊 潤、ナレーション 石塚かおり
ある日、一人の女性から、一通の手紙がBSNラジオに届いた。そこには、ラジオが大好きだった夫が自ら命を絶ったこと、そして自殺を選ぶ人が出ないようラジオで取り組んでほしいことが綴られていた。
全国で4番目に自殺死亡率が高い新潟県にあって、多角的な取材や出演者の声から、ラジオならではの距離感で、「死」と真剣かつ慎重に向き合う姿勢とその意義の大きさが伝わってくる。
優 秀 日本三大秘境の民謡と落人伝説
大阪放送
プロデューサー 大石 徹、アシスタントディレクター 坂田祐介、出演 成世昌平、安井ゆたか
富山県五箇山、宮崎県椎葉、徳島県祖谷は、今も日本の原風景が残る三大秘境。それらの地で歌い継がれてきた民謡には、実は平家の落人伝説と大きな関わりがある。番組では、平家の物語を辿りながら、豊かな民謡の世界を開いていく。
地元の人々の歌唱や、出演者の成世昌平さんがアカペラで歌う民謡の数々は、民謡を知らない聴き手をもラジオならではの迫力で惹きつける。
優 秀 メロディーの向こうに~童謡・唱歌の世界~
山口放送
プロデューサー 黒瀬哲成、ディレクター 大谷陽子、構成 佐々木聰、ナレーション 丹黑香奈子
日本の四季の豊かさやことばの美しさを描いて作られ、明治から昭和にかけて歌い継がれてきた童謡・唱歌が誕生してから、2018年で100年になる。今や音楽の教科書からも減りつつある童謡・唱歌の魅力を伝える。
馴染み深い歌をなつかしく聴けるのと同時に、山口出身の詩人まど・みちおが「ぞうさん」に込めた思いを語った肉声や、子どもたちを戦争へ駆り立てるよう編曲された童謡の紹介は、童謡・唱歌の知られざる一面を教えてくれる。
優 秀 KBCラジオ特別番組「忘れてはいけない、過去からのメッセージ」
九州朝日放送
プロデューサー ・ディレクター 平野繭子、ミキサー 豊増和彦
1945年5月から6月にかけてアメリカ軍の捕虜が犠牲となった「九大生体解剖事件」に、当時、医学生として立ち会った東野利夫さん、90歳。事件から71年が経った今でも、東野さんの頭には凄惨な光景が焼き付いて離れない。
一人称視点からの生々しくも切々とした語りは、戦争を知らない世代の聴き手へのメッセージとして現実味を帯びて迫ってくる。
〔ラジオエンターテインメント番組〕
最優秀 ORIENTAL MUSIC SHOW
J-WAVE
ナビゲーター サラーム海上、プロデューサー 小松祐太、ディレクター 廣木卓也、西谷さなえ
普段あまり馴染みがない「中東・南アジアの最新音楽」を紹介しながら、ナビゲーターを務めるサラーム海上さんが現地に赴いて得た生の社会情勢や人々の暮らしなどを伝える。
リスナーに身近な「音楽」を介して、あまり知る機会がない現地の旬の情報に触れられる上質のエンターテインメント。現地に精通するサラーム海上さんが懸け橋となってリスナーと中東・南アジアが見事につながった作品である。
優 秀 サタデー横丁スペシャル 十日市秀悦と八戸長横町の人びと
青森放送
ディレクター 山本鷹賀春、パーソナリティ 十日市秀悦、ナレーション 秋山博子、アナウンサー 吉﨑ちひろ
かつて東北地方でも有数の繁華街と言われた八戸市長横町。子供時代を過ごした十日市秀悦氏が、今やすっかり寂れてしまった町を訪れ、旧友や町の人々と思い出話に花を咲かせながら、町の将来に儚い期待を寄せる。
日本各地が抱える「過疎」や「街の中心部の空洞化」といった社会問題を、人情の機微とともにエンターテインメントとして仕上げた良作である。十日市さんの語り口や町の人々との会話には気負いがなく、心地よく楽しめる。
優 秀 横濱競馬場物語
横浜エフエム放送
制作プロデューサー 多喜井徹、制作ディレクター 青山鉄兵、出演 倉持明日香、編成担当 筒井 理
横浜市にかつて存在した根岸競馬場。地元出身の倉持明日香が、根岸競馬場でのレースを音だけで再現すべく、関係者の証言を得ながら、その歴史を様々な形で紐解いていく。
「過去に存在した競馬場で今レースが行われたら」という架空の設定のもと、競馬関係者や一般市民など様々な証言を散りばめる構成が秀逸。ストーリー展開もわかりやすく、往年の根岸競馬場の姿が目に浮かぶ。
優 秀 ワントークラジオ「最終列車」1 磯谷貴彦
岐阜放送
プロデューサー 木村公一、企画・構成・編集・ディレクター 竹林良樹、出演 磯谷貴彦
岐阜市柳ケ瀬の映画館グループの総支配人を務める磯谷貴彦さんが、これまでの映画興行にまつわる知られざるエピソードや青春時代の経験などを中心に、一人語り形式でリスナーに語りかける。
磯谷さんの豊富な人生経験とテンポの良い語り口が相まって、思わず話に引き込まれる。自分に語りかけてくる、よりパーソナルな媒体としてのラジオ放送の原点を感じさせる作品である。
優 秀 ラジオドラマ「5拍子の福音」
毎日放送
制作・演出 島 修一、脚本 鎌桐ぼたん、出演 堀部由加里、城土井大智
幼い頃から吃音に苦しんできた女性が友人に誘われて参加したアマチュアジャズバンドでジャズ音楽に出会い、人生に立ち向かう勇気を獲得していく姿を描いたラジオドラマ。
吃音と音楽というラジオならではの要素を活かしたテーマ設定と入念に準備された表現方法が秀逸。吃音者に対する周囲の理解不足や摩擦をわかりやすく理解させる構成になっている。多くのリスナーの共感を呼び、勇気があれば困難を乗り越えて生きていけるという前向きなメッセージを与えてくれる。
優 秀 ASAからZOO!アニマルポン!
広島エフエム放送
プロデューサー 屋形英貴、ディレクター 森岡 亮、森島隆宏、ナレーション 藤井香苗
舞台は広島市安佐動物公園。「動物クイズ」「安佐ZOOニュース」「番組オリジナルソング」など盛りだくさんのコンテンツを通じて、動物たちの知られざる魅力を探っていく。
番組ウェブサイトとも連動し、親子で楽しみながら動物について理解を深められる。ナレーション、クイズの内容、音楽、次の展開を期待させる間の取り方など、リスナーを飽きさせない工夫に満ちている。取り上げる動物の情報も、子供から大人まで幅広い世代が興味を持てるもので、様々な面白さが番組いっぱいに詰まっている。
優 秀 RBCiラジオスペシャル 役者・北島角子~伝え続けた いのちの舞台~
琉球放送
ディレクター 森根尚美、プロデューサー 大野京子、出演 北島角子(故人)、ナレーション 土方 浄
今年4月に85歳で亡くなった北島角子さん。役者やラジオ番組のパーソナリティとして多くの聴衆を魅了した北島さんは、沖縄戦をテーマにした「一人芝居」で戦争の悲劇を伝え続けてきた。生前のインタビューや関係者への取材を通じて、北島さんの思いや魅力にあらためて迫る。
丁寧な取材を通じて、北島さんの人柄や考え方がよく伝わる内容となっている。本人の感情がこもった肉声も散りばめられ、命の尊さや平和の大切さを再認識させられる。
〔ラジオ生ワイド番組〕
優 秀 「歌謡曲ふれあい電話リクエスト」30周年記念二夜連続生放送スペシャル
秋田放送
プロデューサー 福田正樹、ディレクター 石﨑富士子、パーソナリティ あべ十全、藤原美幸
30周年を記念し、二夜連続計5時間40分にわたり生放送。ローカルタレント&アーティストのあべ十全と、全国の舞台を飛び回る人気民謡歌手の藤原美幸がパーソナリティを担当。秋田弁丸出しのあべのトークに、コンビ当初は10代だった藤原も、今では「オバちゃんノリ」全開で絡んでいく。
方言、民謡、リスナーの電話と、文字どおり地方色が満載である。
優 秀 荻上チキ・Session-22
TBSラジオ
プロデューサー 長谷川裕、ディレクター 澤田大樹、坂野友紀
月~金/22時~23時55分の放送。荻上チキと南部広美のオープニングトークから企画説明、当日の注目ニュースをセレクトした「デイリーニュースセッション」と運んでいく。それに続いての特集コーナー「メインセッション」では、国会の珍発言をメドレー紹介した後、憲法学者の木村草太さんとともに、国会審議の注目場面を振り返った。
言葉に対するアプローチが極めて洗練されており、番組スタッフを含めて、ラジオによるジャーナリズムに対する意識をきちんと持った番組である。
優 秀 近藤丈靖の独占ごきげんアワー ~特殊詐欺 許せない!スペシャル~
新潟放送
ディレクター 佐藤智也、プロデューサー 五十嵐滋章、パーソナリティ 近藤丈靖、制作統括 小湊 潤
月~木/9時~11時50分の放送。今回は、大きな社会問題となっている特殊詐欺の防止を呼びかける企画として展開。新潟県警監修のもと、詐欺の手口をよりわかりやすく知ってもらうため、パーソナリティの近藤とアシスタントの表佳世が特殊詐欺電話を再現。実際に騙されかけたという人の話も聞き、「どんな人でも騙されてしまう」危険性を伝えた。
非常に重要な社会問題を取り上げ、地元の人たちに注意喚起を促した企画の意義は大きい。
優 秀 心にポッカリあいた穴 ~みんなでロスを語りましょう!~
北日本放送
プロデューサー 守護真一、ディレクター 宮腰昌隆、アナウンサー 陸田陽子、木下一哉
月~金/9時~12時の放送。「とれたてワイド朝生!」は放送15年目、今回はリスナーからの反響が多かった「心に穴が空いた体験」を「○○ロス」として特集した。子供の進学や結婚による独立、ペットや大切な人との死別など、多くの体験談や意見が寄せられ、スタジオとラジオの向こうのリスナーがラジオを通じて一緒になって語り合った。
学識者の意見も交え、対処法などを共有し、解決の糸口を探ることで、リスナーの「○○ロス」への理解を深めている。最後のオチがセンスよく、構成力にも優れている。
優 秀 つボからボイン
京都放送
プロデューサー・ディレクター 田中雅子
土曜日/16時30分~18時の放送。ラジオ界のカリスマ、つボイノリオがパーソナリティをつとめ、深夜ラジオ全盛期に活躍したハガキ職人たちが、ペンをキーボードに変えて寄せる爆笑メッセージの紹介や、下ネタ全開のおしゃべりで、いい大人たちが思春期のような無邪気さではしゃぐ王道のトークラジオ。
かつて青春時代に深夜放送を聴いていた人が、今のラジオに求めているもの、懐かしさを感じるものが、ふんだんに詰まっている。
優 秀 一文字弥太郎の週末ナチュラリスト朝ナマ~被爆71年あなたがヒロシマを忘れるとき~
中国放送
プロデューサー 増井威司、ディレクター 猪野竜平、板倉由布子、村山太一
土曜日/7時~10時55分の放送。8月6日の放送は広島原爆ドーム前の中継からスタート。その後、原爆資料館を訪ねて展示品から伝わるものを語り合う。
広島にある放送局として8月6日は原爆を伝えなければならない、という思いが伝わってくる。資料館をテーマとしていることも、現存する体験者が減り、形あるものが永久不滅でない以上、資料館の存在はこれからますます重要になってくる、ということを明確に示している。
優 秀 KBC長浜横丁 居酒屋清子
九州朝日放送
ディレクター 米嵜竜司、ミキサー 栗原由起、AD 西口明里
月曜日/19時~21時25分の放送。福岡市中央区長浜1丁目のどこかにあるという「居酒屋 清子」で、女将の清子と常連客の杉山39によって繰り広げられるトークバラエティ番組。居酒屋という設定の中、世間話や身の上話、思い出や打ち明け話、笑い話に色話、悩み相談、ストレス解消等の話題について、リスナーからのメッセージにも答えたりもする。
脱力感溢れるキャラクターに加え、ルーズなようで緻密に計算された演出が大いに光る。
〔テレビ報道番組〕
最優秀 記憶の澱
山口放送
プロデューサー 渡部雅史、ディレクター 佐々木聰、撮影 山本健二、山本宏幸
第2次大戦後、満州や朝鮮半島からの引揚者で、ソ連兵から性暴力被害を受けた女性は「特殊婦人」と呼ばれた。一方、日中戦争に従軍した兵士は、中国人女性への性暴力や捕虜、民間人の殺害の実態を語り、ある開拓団では、窮地を脱するために身内の女性を差し出す性接待が行われた。そうした当事者には、被害と加害の両方の意識が存在していた。
これまで語られることのなかった事実が、当事者の証言によって強い訴求力を持つ。過去の素材を織り交ぜた証言録として、アーカイブとしても高い価値を持つ作品である。
優 秀 ミヤギテレビ報道特別番組 震災2000日 被災地医療の今
宮城テレビ放送
プロデューサー 庄子繁樹、ディレクター 橋本 遼、構成 千野克彦、撮影 加藤典保
2011年3月11日、海から程近い石巻市立病院は津波の被害を受け、全てのライフラインが途絶。患者と医師、看護師ら450人が孤立した。それから2,000日。番組は、復活した病院で、地域医療の再生を模索する医師や看護師らの姿を追った。
被災地の医療施設が、待つ医療から届ける医療への転換が求められていることなど、大切なメッセージを伝えている。
優 秀 ザ・スクープスペシャル「緑十字機 決死の飛行~誰も知らない“空白の7日間”~」
テレビ朝日
チーフプロデューサー・演出 原 一郎、プロデューサー 峰島孝斉、ディレクター 堀江真平、ナビゲーター 山口 豊
1945年8月15日。天皇の玉音放送によって国民にポツダム宣言の受諾を伝え、連合国との戦争は終結した。こうした考え方とは異なり、実際は各地で戦闘が継続、国内には徹底抗戦を叫ぶ航空部隊があった。日本は連合国軍の占領受け入れに向け、指定どおり塗装した緑十字機が交渉団を乗せ妨害工作の中を飛び立つが、その帰路には謎の不時着を遂げた。
一般的には知られていない戦争終結時の秘話を掘り起こし、光を当てた。燃料切れの真相が謎として残るミステリー仕立てのラストも秀逸である。
優 秀 雷鳥を守るんだ ‟神の鳥”その声を聴く男
長野朝日放送
プロデューサー 倉島崇志、ディレクター 山口哲顧、撮影 沖山穂貴、企画 近藤幸夫
国の特別天然記念物であるライチョウは、自然環境の変化でニホンザルまでが天敵として高山地帯に侵入し、絶滅の危機に瀕している。番組は、長期にわたり研究と保護に取り組んできた信州大学の中村浩志・名誉教授に密着し、問題点と保護活動の実態を伝える。
自然環境が変化するなかでの保護活動の困難さとともに、日本の伝統文化や研究者の師弟関係なども伝わる秀逸な作品である。
優 秀 はりぼて~腐敗議会と記者たちの攻防~
チューリップテレビ
制作統括 服部寿人、プロデューサー 中村成寿、番組デスク 宮城克文、ディレクター 五百旗頭幸男
2016年4月、富山市議会が議員報酬を増額する方針を打ち出したことに疑問を抱き取材を開始。議員40人の政務活動費3年分の資料を情報公開請求して分析した結果、引き上げを主導した自民党の大物市議が政務活動費を不正取得していた事実を突き止めるスクープとなった。ここから市議13人の辞職ドミノが起こり、腐敗議会の実態が明らかとなる。
情報公開制度の重要性を示すとともに、ジャーナリズムの役割を再認識させ、テレビの可能性を拡げた報道として意義がある。
優 秀 映像’17 沖縄 さまよう木霊~基地反対運動の素顔
毎日放送
ディレクター 斉加尚代、カメラマン 島田昌彦、プロデューサー 澤田隆三、編集 田中 健
2016年10月、沖縄県北部の東村・高江地区で新しい米軍施設の建設が進められ、現地で座り込みの反対運動を続ける人たちを「暴力集団」と非難中傷する言説がインターネット上に溢れ、それを既存メディアが拡散させた。番組では、沖縄に漂うさまざまな事実を追うため現地で直接取材し、真実は何かを追求した。
当事者たちの声を伝え、ネット上のデマやフェイクニュースを検証したことは、ジャーナリズムの自浄能力を高めるものである。
優 秀 Born Again ~画家 正子・R・サマーズの人生~
琉球放送
取材・構成 原 義和、編集 津堅厚一、プロデューサー 與那覇博明
米国アリゾナ州で画家として生きた正子・R・サマーズさん(1928年生まれ)の一代記。4歳で遊郭に売られ、「ジュリ」(遊女)となったこと、沖縄戦では軍幹部と行動を共にしたこと。戦後、沖縄駐留の米軍人と結婚して渡米した後、絵筆との出合いが新たに生き直す原動力となったことが自身の言葉で語られる。
時代に翻弄された主人公の数奇な人生とともに、その人物像が大きな魅力を放ち、見る者に強い印象を残す。
〔テレビ教養番組〕
最優秀 NNNドキュメント’16 知られざる被爆米兵~ヒロシマの墓標は語る
広島テレビ放送
プロデューサー 岡田純一郎、ディレクター 加藤紗千子、構成 佐藤伊佐雄、ナレーター 馬場のぶえ
アメリカのオバマ前大統領の広島訪問でその象徴となった、被爆者・森重昭さんとの抱擁。森さんは、日本でもアメリカでも知られていない「被爆米兵」の事実を、40年以上にわたり丹念に調べてきた。
アメリカでも森さんと被爆米兵に関するドキュメンタリーが制作されるなど、光が当たり始めていることを紹介する一方で、遺族が「戦勝国民」と「被害者」の狭間で複雑な思いを抱えることに迫っている。戦争や原爆の苦悩を改めて描き出した秀作である。
優 秀 シリーズ輝石の詩file11 KAMAITACHI~ハサの記憶~
秋田朝日放送
プロデューサー 山崎宗雄、ディレクター 藤原 峰
秋田市出身で暗黒舞踏の創始者と呼ばれている舞踏家・土方巽。その土方を秋田県羽後町田代地区で撮影した写真を収めたのが、写真家・細江英公の代表作の一つの「鎌鼬(かまいたち)」である。撮影から50年、土方が亡くなって30年の時を経て、細江が再び田代を訪れ、その地の人々との交流が始まる。
美しい写真や映像から、これらの芸術が生まれた背景が浮かび上がってくる。地域の文化や芸術を大切に継承することで地域を再興させようとする取り組みの貴重な記録である。
優 秀 ヨーロッパ財宝ミステリー 消えた黄金列車の謎×西島秀俊
BS-TBS
制作プロデューサー 大川修司、プロデューサー 本木敦子、ディレクター 五十嵐久美子、撮影 山崎 裕
近年、第二次世界大戦中にナチスが各国から簒奪した財宝が、ヨーロッパ各地から発見されている。戦後70年を経て、歴史を知る当事者やその遺族が重い口を開き始めている。
宝探しやミステリーというエンターテインメントの要素が盛り込まれていて、物語に引き込まれる。人間の飽くなき欲望がナチスの戦争犯罪を生み出したことや、それに未だに縛られて生きる人々の思いを見事に伝えている。
優 秀 BSNスペシャル 俺は工場の鉄学者
新潟放送
プロデューサー 吉井一善、ディレクター 高橋紘子、ディレクター 内藤亜沙美、カメラ 小林伸登
新潟県の燕三条地域が生み出す金属加工品は、海外でも名の知れた世界ブランド。不況や海外製品の攻勢をその都度乗り越えてきたのは、職人の品質向上への探求心であった。鍛冶職人と鋳鉄メーカー社長にスポットを当てて、その姿を追った。
独学や試行錯誤など、あらゆる方法で鉄と向き合う職人たちの愚直なまでの姿を映し切っている。その仕事への姿勢と人生哲学は、「妥協をせず突き詰めれば世界にも負けない」という、働く人すべてへの応援歌にもなっている。
優 秀 異見~米国から見た富山大空襲~
チューリップテレビ
制作統括 服部寿人、プロデューサー 中村成寿、ディレクター 五百旗頭幸男、撮影・編集 西田豊和
富山市が、昭和20年8月1日から2日にかけての空襲で、市街地破壊率99.5%という国内で最も甚大な被害を受けたことは、全国的にはあまり知られていない。当時の資料や日米双方の関係者の証言で空襲に対する米国側の意味や背景を明らかにし、それらの取材をもとに制作した番組を米国の戦友会で上映し、当事者や関係者と率直に意見を交わす。
意見交換では日本側の考えとは相容れない意見が出てくるが、制作者が真摯に応えている。番組を通じた対話で相互の理解を図るというスタイルを提示した意欲作である。
優 秀 ザ・ドキュメント 夢への扉「課題研究」 ~先生を越えて進め~
関西テレビ放送
ディレクター 宮田輝美、プロデューサー 兼井孝之、撮影 平田周次、編集 片野正徳
人権教育が進んだ大阪府立松原高校の取り組みを通じて、児童虐待やいじめ、貧困などの教育問題を取り上げた。大人でも真正面から向き合うことが難しいこれらの問題を、生徒たちは自らテーマを設定する「課題研究」を通じて顧みることとなる。
教育の在り方を考えさせる様々なテーマを提示している。生徒たちが自らの傷をもさらけ出すような取り組みにもがく中、情熱的な青年教師が一緒に悩みつつ、弱さと向き合い、それを受け入れる姿は胸を打つものがある。
優 秀 命の記録~写真家・桑原史成の水俣~
熊本放送
プロデューサー 梶原 勉、ディレクター 中村レン、撮影・編集 松本 寛、ナレーション 宮脇利充
水俣病が公式に確認されてから60年。カメラマンの桑原史成は、56年間、患者たちと誠実に向き合い、記録し続けてきた。節目の年を迎え、水俣病患者やその家族の集合写真を撮影するべく奔走する桑原を通して、水俣のこれまでと今を伝える。
集合写真の撮影シーンが60年の歳月の重みを強く訴えてくる。その一方で、症状の悪化や訴訟を巡る対立で撮影に参加しなかった患者や家族がいることが、公害が地域に残した悲劇や断絶が今なお続いていることを、改めて世に問うている。
〔テレビエンターテインメント番組〕
最優秀 KNBふるさとスペシャル エジソンは夢の途中~93歳 カネコ式ライフ~
北日本放送
制作統括 桐谷真吾、プロデューサー 守護真一、ディレクター 橋目千秋、ナレーター 屋良有作
富山市で畳屋を営む金子信義さん(93歳)は、50年以上にわたってユニークな発明を続けてきた“富山のエジソン”だ。過酷な戦争体験、自身の工場の焼失、家族の病死といった悲しい体験を抱えながらも、常に明るく元気に、自作の歌も交えながら発明品の開発・普及に取り組む、その日常に密着した。
自身だけでなく、周りの人々をも笑顔にさせる金子さんのキャラクターが際立っている。視聴者に、「どんなことでも乗り越えられる」との希望を伝えてくれる作品である。
優 秀 「熱烈!ホットサンド!」スペシャル 墨×筆×半紙=青春~私たち、北広島高校書道部イレブン~
札幌テレビ放送
プロデューサー 山谷 博、ディレクター・撮影・構成 畑野正視、編集 沼田哲治、ナレーター 急式裕美
2016年春に24人もの新入生を迎え、44人の大所帯となった北広島高校書道部をまとめる池田楓部長と10人の3年生、計11人=“書道部イレブン”を主人公に、高校生活最後のパフォーマンスに向けた書道部員たちの半年間を追った。
一つのことに没頭する姿勢や、運動部並みにエネルギーを注ぐ部員のファイトが、頑張る気持ちを与えてくれる。北国の短い夏のような青春の輝きを描き切っている。
優 秀 古舘トーキングヒストリー ~忠臣蔵、吉良邸討ち入り完全実況~
テレビ朝日
企画 奥川晃弘、ゼネラルプロデューサー 樋口圭介、プロデューサー 菅原悠平、演出 木津 優
大石内蔵助率いる四十七士による主君の仇討ちを描いた「忠臣蔵」。長年にわたって物語の題材とされてきたこの歴史的事件を、新事実を盛り込んだリアルなドラマで再現。加えて、スタジオでの歴史学者による解説、さらには古舘伊知郎による舌鋒鋭い討ち入りの実況中継も交え、その実像に迫った。
ドラマ、スタジオ、実況中継のメリハリが小気味良く、史実を飽きさせずに紹介してくれる。作り手の情熱や隙のなさ、古舘の話芸が見事である。
優 秀 追跡!極上マグロ ~嵐の北大西洋 38日間 完全密着~
静岡朝日テレビ
制作統括 小野田光利、プロデューサー 峰島孝斉、総合演出 鳥居瑞穂、ディレクター 吉田尚弘
北大西洋に出漁する遠洋マグロ漁船にリポーターとカメラマンが同乗し、38日間の密着取材を敢行。荒波、荒天に翻弄されながらも、合計40トン以上のマグロを捕えていく海の男たちの過酷な船上生活を捉えた。静岡市の造船所やマイナス60度の冷凍庫、老舗寿司店なども取り上げ、マグロ漁を立体的に伝える。
1か月以上にわたる船上取材を実現させたことや、水中カメラも駆使した迫力ある漁の映像が高く評価される。地上の取材シーンとの対比も巧みな構成である。
優 秀 失敗人間ドキュメント Doしてこうなった!?
読売テレビ放送
チーフプロデューサー 太田匡隆、プロデューサー・ディレクター 上野正樹、ディレクター 出原照久、中埜勝之
“失敗”した人々を観察することで、その悲哀や愛らしさをドキュメントとして描くのがコンセプト。京セラドーム(大阪)に行くつもりが京セラ前駅(滋賀)に来てしまった人、人気店で行列の末に目当ての品が目の前で売り切れてしまった人…。様々な失敗を通して、人の生きた表情や愛すべき本性を、軽妙なMCも交えて面白おかしく切り取る。
テレビから消えてはいけない“ハプニング性”が文句なしに笑いを誘う。作り手の強いこだわりが、それらの場面を捉えるための粘り強い取材から感じられる。
優 秀 50センチの温もり~メダリスト・美里 伴走者と歩んだ9年間~
山口放送
プロデューサー 佐々木聰、ディレクター 青木伸憲、ナレーション 丹黑香奈子、カメラマン 本村 治
2016年のリオパラリンピック女子マラソンで銀メダルを獲得した道下美里さんは、子どもの頃からの病気が原因で、現在はほとんど視力がない。多くの困難を乗り越え、家族や伴走者たちとも互いに支え合いながら走り続けてきた9年間を記録した。
「50センチの温もり」とのタイトルが、50㎝のロープ越しに伴走者のサポートを得ながらの道下さんのマラソン人生をよく表している。地域の取材対象者に長期にわたって密着した、ローカル局ならではの作品である。
優 秀 WORLD FUKUOKA NEWS
テレビ西日本
プロデューサー 鵜木 健、ディレクター 森園勝彦、編集 山下亮一、音効 下田貴徳
「福岡のあらゆる情報を世界に発信する架空のテレビ局」による、ニュース番組仕立ての“フェイクリアリティ番組”。福岡のローカルネタを外国人キャスターが一見真面目に、しかしユーモアたっぷりに紹介する。
新しい形のバラエティに果敢に挑戦している。外国人の目線を採り入れることで、単なる“地域の名物紹介”を超えた面白さを生んだアイデアが光る。
〔テレビドラマ番組〕
最優秀 火曜ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」
TBSテレビ
プロデューサー 那須田淳、演出 金子文紀、脚本 野木亜紀子、出演 新垣結衣、星野 源
突然の派遣切りにあい、職なし・彼氏なし・居場所なしになってしまった、森山みくり。そんな折、家事代行のバイト先で知り合った、独身サラリーマンの津崎平匡に「就職という意味で結婚するのはどうですか?」と提案。周囲に秘密で、雇用主=夫、従業員=妻という“仕事としての契約結婚”を始めるのだった。
どんな生き方も否定しない、作り手の温かい眼差しが画面から伝わってくる。あらゆる世代が楽しむことができ、社会現象をも巻き起こした、今期を代表するドラマである。
優 秀 タチアオイの咲く頃に 会津の結婚
福島中央テレビ
プロデューサー 斎藤裕樹、監督 タナダユキ、脚本 西田直子、出演 石橋杏奈、中村 蒼
高橋美緒は、シェフである吉武雄太との結婚を報告するため、会津の実家に向かう。頑固者の父・茂夫は、雄太が戊辰戦争の遺恨のある長州・山口の出身であることに不満を隠せない。友人にも以前のようには打ち解けられず、雄太とも感情的にすれ違ってしまう。
見慣れた通学路に咲く会津の花・タチアオイに目をとめ、素直な気持ちを伝えることを決心する美緒の心の動きが丁寧に描かれている。
優 秀 ゆとりですがなにか(最終回)
日本テレビ放送網
演出 水田伸生、脚本 宮藤官九郎、出演 岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥
食品会社に勤める坂間正和、小学校教師の山路一豊、元客引きの道上まりぶは、昭和62(1987)年生まれで、世間から“ゆとり第一世代”と呼ばれている。ひょんなことから出会った3人が、優勝劣敗の競争社会の中で、仕事・家庭・友情に悩みながらも、自分たちなりに懸命に立ち向かっていくさまを、笑いと涙を交えて描く。
登場人物が抱えるそれぞれの問題がラストに向かってつながる構成が秀逸である。「他人の間違いを許せる大人になる」という難しいテーマを楽しく伝えている。
優 秀 山田太一ドラマスペシャル「五年目のひとり」
テレビ朝日
監督 堀川とんこう、脚本 山田太一、チーフプロデューサー 五十嵐文郎、近藤 晋、ゼネラルプロデューサー 内山聖子
平成27(2015)年5月の東京。中学生の松永亜美は突然、見知らぬ男・木崎秀次から声を掛けられる。秀次は、亜美が東日本大震災の津波で亡くした娘の礼子と瓜二つだという。亜美の周囲の心配をよそに、2人は心の触れ合いを深めていく。亜美との交流が、再び生きてゆく勇気を木崎に与えていく。
「忘れらんねぇ」「忘れねぇと生きていけねぇ」という主人公の独白が、視聴者の心に直接訴えかける。映像の美しさも番組の魅力となっている。
優 秀 連続ドラマW 沈まぬ太陽[第2部]第9話
W O W O W
プロデューサー 青木泰憲、徳田雄久、椿 宜和、稲葉尚人、脚本 前川洋一
昭和60(1985)年、ホテルの大広間で国民航空の創立35周年記念パーティーが盛大に行われていた。堂本社長、行天取締役らが政財界の大物を出迎える中、生存者4名・520名の尊い命が奪われた未曽有の航空機墜落事故が発生する。約10年の僻地勤務から日本に帰任した恩地元は、乗客の家族のお世話係となり、遺族の深い悲しみに真摯に向き合っていく。
難しい題材に勇気を持って取り組み、完成度の高いドラマを作り上げた。二度と同じ事故を起こしてはならない、という制作者の志が伝わってくる力作である。
優 秀 山本周五郎時代劇 武士の魂 第一話 大将首
BSジャパン
プロデューサー 瀧川治水、山本和夫、監督 皆元洋之助、脚本 大前智里、出演 石黒 賢
浪人の池藤六郎兵衛は剣の優れた使い手ではあるが、泰平の世では働く場所がない。妻の文江が自分の髪を切って、客をもてなす酒代にしたことに気づいた六郎兵衛は、足軽として働くことを決意する。足軽の仕事にも慣れてきたころ、藩の剣の指南役である大横田が足軽仲間を切りつけたことから、六郎兵衛は大横田たちを切り捨ててしまう。
山本周五郎の原作の魅力をみごとに映像化している。実は逃亡中の身だった大横田を倒したことで、仕官の道が拓かれるという結末も、視聴者に安心感を与えている。
優 秀 スペシャルドラマ 愛を乞うひと
読売テレビ放送
プロデューサー 田中雅博、黒沢 淳、演出 谷口正晃、脚本 後藤法子、出演 篠原涼子
山岡照恵は早くに夫を亡くし、娘の深草と二人で暮らしている。ある日、照恵の生き別れた弟の武則が逮捕されたとの連絡が入る。弟との面会をきっかけに、記憶の底に押し込めていた“母からの虐待”という凄惨な幼少時代の出来事を、娘に語り始める。過去と向き合う覚悟を決めた照恵は、母の豊子に会いに行くのだった。
俳優陣の熱演が光る。特に照恵の少女時代(鈴木梨央)の演技と、それを引き出した演出は出色である。衣装や小道具など、時代背景を丁寧に再現している点も好感が持てる。
CM部門
※各作品のタイトルは、「広告主名(非商業スポットは省略) 商品名/作品名(秒数)」の形で掲載。
〔ラジオCM 第1種(20秒以内)〕
最優秀 小学館 「やせるおかず作りおき」シリーズ/店員さん(20秒)
文化放送
ディレクター 見目幸伸、プロデューサー 南 理子、ミキサー 上原裕司、アカウントプランナー 上野耕平
衣類を買う際、レジでサイズの確認をしてくれるのはよくある光景。しかしこの店員さんは「Sサイズのパンツでお間違いありませんね」と何度も聞いてくる。お客の女性もそのたびに「はい」とやるせない返事。すかさず「確認されるデブになったら」と身も蓋もないナレーションが入り、ソフトな物言いながら聴く者の胸にグサリと刺さる。実は書籍のCMだった、という意外性も相まって、商品への興味を否応なくかき立てる展開が絶妙。
優 秀 京樽 京樽のお寿司/寒い夜(20秒)
文化放送
ディレクター 見目幸伸、プロデューサー 南 理子、ミキサー 上原裕司、アカウントプランナー 岡崎 歩
木枯らしの夜。来店した一人の男性を、板前が温かく迎えてカウンターに座らせる。「何握りやしょ?」との問いに「手を、握ってくれ」という驚きの返事が。「お客さん……」という反応に、人情に厚い板前の人柄がにじみ出る。中年男性が手を握り合うという意外な設定で笑いを誘いつつ、「寿司は人を幸せにする」というCMのコンセプトをしっかりと表現。目の前で握ってくれるカウンター付き店舗の存在もねらい通り訴求している。
優 秀 メガネの愛眼 補聴器/ねえあなた(20秒)
文化放送
ディレクター 見目幸伸、プロデューサー 南 理子、ミキサー 上原裕司、アカウントプランナー 菊地俊介
高齢の夫婦のやりとり。「ねえあなた」という妻の呼びかけに反応しない夫。耳が遠くなったのかしら、と再三呼びかけると、「もう何回も返事してるぞ」という夫の言葉に妻ががくぜんとする。耳が遠くなったのは実は妻の方だった。映像のないラジオならではの“どんでん返し”が秀逸。「まさか自分が」と聴こえに疑問を感じ始める年代に向けて強烈な印象を与えるとともに、メガネ店で補聴器を扱っていることも端的に示した。
優 秀 セメダイン セメダインスーパーX/日曜大工(20秒)
エフエム東京
コピー 関 俊洋(電通)、演出 林屋創一、出演 根岸薫子(大沢事務所)、杉山ひこひこ(バウムアンドクーヘン)
金づちの音を聞きつけて、思春期らしき娘が父に「何してるの」と話しかける。父は「日曜大工だよ」と明るく答えるが、娘は戸惑うように「今日、月曜だよ」「早く仕事見つかるといいね」と言い残し走り去ってしまう。父娘の愛情、気まずさといった独特の空気感がリアルに表現され、「月曜大工」という設定で「日曜以外も大活躍」というコピーを際立たせることに成功している。
優 秀 静岡県温室農業協同組合/「お見舞い」篇(20秒)
静岡放送
プロデューサー 牧野真美、ディレクター 富山裕之、コピーライター 松吉 亨(フリー)
入院中のおじいちゃんを見舞うと、かなり落ち込んだ様子。孫娘は「すぐ退院できるわよ」などと優しく励ますが、ぼそっと「わし、メロン期待しとった」と気落ちの理由が明かされ、拍子抜けする。「お見舞いにメロン」を心から期待しているおじいちゃんの愛らしさが微笑ましく描かれ、今も昔も変わらない「メロンは贈り物の王様」「大切な人と一緒に食べたい」というイメージがストレートに伝わってくる。
優 秀 淀川製鋼所 ヨド物置 エスモ/オープン 篇(20秒)
朝日放送
プロデューサー 野本友恵、クリエイティブディレクター・コピーライター・キャスティング 森田一成(ビッグフェイス)、ディレクター 村上正道(ビー・ジー・エム・サービス)、プランナー 高尾亮洋
先輩社員が新人に「もっと心を開け」と諭す。「これでも開いている方だ」という新人に、どれくらいかと問うと「3分の2」と答える。それを聞いた先輩は「おぉ…けっこう開いてんなぁ」と感心する。「全開」ではないが微妙な開き加減の良さが、抑えたトーンの会話を通じてじわじわと伝わる。「3分の2」開けば物置としてはかなり便利、という商品の特長にうまく結びつけ、通常は半分しか開かない物置との違いをさりげなくアピールした。
優 秀 長谷川工業 脚軽/無人島 篇(20秒)
朝日放送
プロデューサー 野本友恵、クリエイティブディレクター・コピーライター・キャスティング 森田一成(ビッグフェイス)、ディレクター 村上正道(ビー・ジー・エム・サービス)、プランナー 高尾亮洋
「無人島に何か一つだけ持って行くとしたら」をめぐり会話する二人の女性。「結構な非常時やと思うねん」「好きなものを一つだけ持って行く余裕なんて絶対ないで」と真剣に考える女性に、もう一方が「くそまじめか!」とオチが付いたところで、なぜか「脚立」のお薦めコメントが入る。「高い木になっているフルーツが取りやすい」という突拍子もない説明も、冷静な語り口で「確かに便利かも」と思わせる妙な説得力がある作品である。
〔ラジオCM 第2種(21秒以上)〕
最優秀 キリンビール 一番搾り 大阪づくり/度合い 篇(100秒)
朝日放送
プロデューサー 野本友恵、クリエイティブディレクター・コピーライター・キャスティング 森田一成(ビッグフェイス)、ディレクター 村上正道(ビー・ジー・エム・サービス)、プランナー 初瀬史文
大阪で日常的に使われる「めっちゃ」や「むっちゃ」といった強調言葉。女性が男性にそれぞれの強調度合いを尋ねる。男性は、大阪は言葉そのものより「っ」の数で感情を表現する文化なのだと説き、「むっちゃ」は「めっっちゃ」、「あほみたいに」は「めっっっちゃ」と、「めっちゃ」を基準に説明する。締めのナレーションまで「っ」を多用する徹底ぶり。「っ」という視覚情報を音声で巧みに表現しながら、大阪らしく商品をアピールした。
優 秀 公共キャンペーン・スポット/一緒に歩こ YBC 頑張るフラワー長井線(70秒)
山形放送
プロデューサー 伊藤清隆、ディレクター 佐伯敏光、アナウンサー 松下香織、録音 門田和弘
1913(大正2)年に地域住民の足として開業した長井線は、利用者数の減少で赤字に苦しみながらも、今もなお地元のお年寄りや学生の生活を支えている。利用活性化策の一つとして取り組んでいるのが、車掌さんの方言での車内ガイド。「おしょうしな~」(山形の方言で「ありがとう」の意)など、実際の車内アナウンスを使用した演出は、山形ののどかな田園風景を走るローカル線を想像させ、和やかな気持ちになると評価された。
優 秀 TOTO ベッドサイド水洗トイレ/トイレが流してくれたもの(60秒)
エフエム東京
コピー 井田万樹子(ペープロ)、演出 山口景子、音響効果 佐々木聖子(音ランド)、エンジニア 太田友基(音響ハウス)
ベッドサイド水洗トイレを設置した家族。すると、「部屋にこもった匂い~~」「妻の介護疲れ~~」「息子夫婦への気兼ね~~」など、介護をする側・受ける側それぞれの悩みの声が「ジャーッ」という流水音とともに流れていく。高齢化の進む日本において、自宅介護で1番の負担とされている排泄の悩みをユーモラスに表現しつつ、設置工事の手軽さに至るまで商品の機能性を十分に訴求している。
優 秀 自社媒体PRスポット/これからも あなたとともに(120秒)
福井放送
プロデューサー 稲木 聡、ディレクター・企画・構成・録音・編集 岩本和弘、ナレーション(私・おばあちゃん) 塚本絹子(福井劇の会)
ラジオから流れた思い出の曲をきっかけに過去に思いを巡らせる女性。ラジオを「魔法の箱」と呼んで大事にしていた幼少期。同級生と番組を話題に盛り上がった中学時代。想いを寄せていた彼との結婚、子育て、娘の嫁入り、よみがえる思い出にはいつもラジオの存在が。1人の女性を年代別に5人で演じ、年を重ねていく様子を分かりやすく表現した。ラジオがリスナーの人生とともに歩んでいるというストーリーが心に響く。
優 秀 公共キャンペーン・スポット/@FMラジオCM叫べワカモノプロジェクト「青春」篇(40秒)
エフエム愛知
ディレクター 宮下まゆ、コピーライター 石本香緒理(電通名鉄コミュニケーションズ)、ミキサー 藤田 繁(スタジオ企画)
若い世代を応援するプロジェクト「叫べワカモノプロジェクト」のキャンペーンのイメージCM。「席替えしたのに同じ席~」「すぐ終わると言う先生の話は長い~」とテンポ良く次々に繰り出される若者の「青春あるあるネタ」。左から右に音声が駆け抜けていくような演出で「青春は、あっという間に通り過ぎる」というメッセージを見事に表現した。若者のパワーや勢いを感じるCMとなっている。
優 秀 自社媒体PRスポット/MBSラジオには浜村淳がいる(60秒)
毎日放送
プロデューサー・ディレクター 藤井謙一、音楽プロデューサー 中島光一(中島音楽室)、CMプランナー・コピーライター 正樂地咲(電通)、録音 小池佑治(放送映画製作所)
「MBSラジオには○○がいる」キャンペーンでは、MBSを代表するパーソナリティをインタビュー形式で紹介する。浜村淳さんは、放送開始から44年目を迎えた生ワイド番組を担当。リスナーから「まだやっているのか」「まだ生きているのか」とメッセージがくることもあると自虐的に語る。ベテランパーソナリティへのインタビューから、余裕や貫禄、ひいてはラジオ自体の魅力があらためて感じられると評価された。
優 秀 自社媒体PRスポット/ラジコプレミアムPRよしこ編(40秒)
宮崎放送
ナレーション・構成 川野武文、出演 坂井淳子(フリー)、川越真奈美(フリー)、演出・編集 小倉 哲
上京した娘からの電話。それはラジオに勝手に自分のことをネタに投稿しないでという苦情の電話だった。地元でしか聴けない番組なのになぜばれたのかと焦る母親と、今やラジオはスマホがあればどこでも聴けると文句を言う娘。母娘のやり取りにはリアリティがあり、radikoのプレミアムサービスを知らないリスナーにも、分かりやすく「エリアフリー機能」を伝えている。
〔テレビCM〕
最優秀 自社媒体PRスポット/私CM 中島千裕篇(60秒)
テレビ埼玉
クリエイティブディレクター・プランナー・コピーライター 山田慶太(電通)、プロデューサー 小山田昌弘(ピクト)、小島大輔(ピクト)、飯田裕子
川で一艘のドラゴンボートが練習を行う。遠くから見物する二人の男性は、白いサンバイザーの漕ぎ手(中島千裕さん)が男性なのか女性なのか気になってしまう。会話が聞こえない距離と分かりつつも声をかけてみる男性二人と、「お姉さん」「美人」など特定のワードが出るとなぜかカメラ目線になる中島さんという設定はコミカルで、笑いを誘う。CMを通じて視聴者個人の思いをPRする「私CM」は、「あなたにカンケイあるテレビ」という自社のタグラインをユニークに表現している。
優 秀 珈琲家ロビン/4世代がお待ちしています。(120秒)
CBCテレビ
プロデューサー 藤井 稔、ディレクター 尾田真一、撮影 安楽敦史(キュー)、音効 水口雄貴(東海サウンド)
名古屋市中村区にある珈琲家ロビンは、60年以上続く老舗の喫茶店。お店を切り盛りするのは83歳の幸子さん。そして娘の満理子さん、孫娘の祐美さん、ひ孫の桜ちゃんもお店を手伝う。長く続いたこの喫茶店を継ぎたい桜ちゃんだが、大きな悩みは開店時間が朝早すぎてその時間に起きられないこと。最後に明かされる朝4時という開店時間はインパクトがあり、4世代で守り続ける空間の心地よさとともに印象に残るCMとなっている。
優 秀 公共キャンペーン・スポット/この性を生きる。(300秒)
東海テレビ放送
プロデューサー 繁澤かおる、コピーライター 伊藤健一郎(電通)、ディレクター 畔柳恵輔(フリー)、撮影 森恒次郎(東海テレビプロダクション)
近年認知が高まっている、性的少数者を指す「LGBT」。そうしたセクシュアル・マイノリティの人々への顔出しインタビューをCMとした意欲作。ゲイ、レズビアン、トランスジェンダー、そしてその家族にスポットを当て、当事者を取り巻く現実を映し出す。セクシュアリティの説明や理屈だけでなく、当事者の悩みや直面する困難、家族の葛藤にまで踏み込んだ内容は、LGBTの問題だけでなく、「普通」とは何かとまで考えさせられる。
優 秀 小笠原製粉 キリンラーメン/こちらキリンでございます(30秒)
東海テレビ放送
プロデューサー 伊藤芳人、監督 見取保孝(RAIZO)、撮影 杉山隆彦(BeansWorks)、効果 久保田吉根(東海サウンド)
動物園のキリンのゾーン。「こちらキリンでございます」とどこかから女性のアナウンスが流れる。キリンを紹介するかのようにズームアップされた先には、どんぶりに入ったキリンラーメンが。レトロなパッケージと素朴でやさしい味の商品にマッチした、どこかなつかしい雰囲気の漂うCM。最後に紹介される「アザラシ」や「イルカ」など、他の動物ラーメンにも興味をそそられる。
優 秀 公共キャンペーン・スポット/青木さんの日課(300秒)
中京テレビ放送
プロデューサー 村井清隆、ディレクター 笠井知己、構成 塩沢 航(N35)、カメラ 石井邦彦(EAT)
高知県仁淀川(によどがわ)町で理容室を営む80歳の男性、青木幸雄さんは、1日に数回、店の裏を流れる仁淀川のゴミを拾う。70歳を越えて見つけたこの日課は、真面目な青木さんの性分にはまり、10年毎日かかさず行っているという。川上から流れ続けるゴミを拾うなんて終わりがない、と家族にも呆れられている。それでも、綺麗な川を見たい、とゴミを拾い続ける青木さんの姿は、自分の心には素直に、とシンプルな生き方のヒントを伝えている。
優 秀 コニシ 裁ほう上手/コニシ×す・またん!インフォマ「ガチドッキリ石川敏男」篇(30秒)
読売テレビ放送
プロデューサー 佐藤 学、ディレクター 伊藤知佳(カンパニオ)、出演 石川敏男(オフィスBIN)、撮影 篠原祐典(MABU)
プールサイドで河童に扮した、芸能リポーター・石川敏男さん。商品を紹介していた石川さんは、水中から背後に近づいてきた水着姿の男性たちにプールに落とされてしまう。「誰でも簡単に使える」「水に濡れても大丈夫」とドッキリを通じて布用接着剤の訴求点をしっかりと伝えている点や、昔ながらの体を張ったエンターテインメント性が評価された。ドッキリをかけられながらも、まんざらでもない様子の石川さんにも注目が集まった。
優 秀 自社媒体PRスポット/勝ちグセ。(30秒)
広島ホームテレビ
プロデューサー 小林 充(エンジンフイルム)、斉藤訓司、クリエイティブディレクター 筧 章男(電通西日本)
「勝ちグセ。」をキャッチコピーに、10年前から続く地元スポーツ応援キャンペーン。2016年、ついに25年ぶりのリーグ優勝を果たし、連覇を狙うカープ。球場で、自宅やお好み焼き店のテレビの前で、ファンが一体となり熱烈に応援する姿は圧巻。成績が低迷していた頃にキャンペーンを立ち上げ、ファンと共に応援してきた地元放送局のカープへの情熱と期待が伝わるCM。
技術部門
最優秀 超高速データ伝送装置「SDI-Hyper」の開発
フジテレビジョン
研究・開発担当者 岩尾洋英、金森健彦、吉村理希
HD-SDIフォーマットへの信号変換を行うことにより、SNG1トラポン分のRF信号のリアルタイム伝送と、IP信号の片方向/双方向伝送をそれぞれ実現する装置を開発・実用化した。
これにより、遠隔地のSNGアンテナを利用したSNG送受信の冗長化を達成したほか、4K圧縮信号の高品質・低遅延伝送やファイルの高速伝送を実現し、テレビ回線技術の高度化に大きく貢献した。
優 秀 Swimmer Tracking System の開発
テレビ朝日
研究・開発担当者 小野真介、加藤 喬
定点カメラによって撮影された映像をもとに、水しぶきや水面反射、泳法などの影響を適切に除去して競泳選手をトラッキングすると同時に、取得した位置情報を用いて、選手の泳速などをバーチャルカメラでCG合成して中継映像に表示するシステムを開発・実用化した。
これにより、競泳の生中継において新たな演出手法を確立し、テレビ制作技術の高度化に貢献した。
優 秀 IP音声伝送ソフトウェアの開発
エフエム東京
研究・開発担当者 秋山拓也
ラジオ番組の中継において高音質なステレオ音声伝送を行うため、独自のパケット損失対策、パケット遅延・ゆらぎ対策、マルチストリーム化技術を実装したIP音声伝送ソフトウェアを開発・実用化した。
これにより、中継先のタブレットやノートPCを、Wi-FiやLTEなどの公衆無線回線に接続する簡易な運用のもと、比較的低遅延で安定した素材伝送を実現し、ラジオ中継技術の高度化と効率化に貢献した。
優 秀 FPUだけでなくSNGやIP回線にも対応 マルチルートTSスプライサーの開発
毎日放送
研究・開発担当者 山本一義、岩本和也
FPU、SNG、IPなどで伝送されたTS信号を、従来のTSスイッチャーのようにストリームごと切り替えるのではなく、パケット単位で繋ぎ合わせて安定して伝送するマルチルートTSスプライサーを開発・実用化した。
これにより、異種回線を併用した自由度の高い回線構築が可能となり、複数TSの多重化による運用の効率化も実現するなど、テレビ回線技術の高度化に貢献した。
優 秀 ライブ動画配信用制作・送出システムの開発
朝日放送
研究・開発担当者 小南英司
シンプルで直感的な画面から複数の放送機器の一括制御を可能とし、かつ充実した異常検知・通知機能を備えた、高い安定性と機動性を有するライブ動画配信用制作・送出システムを開発・実用化した。
これにより、マルチアングル配信やマルチチャンネル配信に対応しながら、運用負荷の軽減と信頼性の向上を実現し、放送局のインターネット活用の推進に貢献した。
優 秀 IP統合監視装置の開発
読売テレビ放送
研究・開発担当者 松田慎一郎、谷知紀英、湯川洋輔
IPネットワーク上に構築された多数の映像伝送機器の状態を、SNMPによって自動的に確認するとともに、収録映像のプレビュー機能やエンコーダ再起動の遠隔制御機能を有するIP統合監視装置を開発・実用化した。
これにより、安価なIP公衆回線による映像伝送において監視と品質評価を可能とし、回線運用の高度化と効率化に貢献した。
優 秀 スマートフォンを利用した移動中継サポートシステムの開発
南海放送
研究・開発担当者 毛利文昭、吉川大貴、乗松義弘
スマートフォンを利用したGPS位置情報システムに、GPS自動追尾装置、可変指向性アンテナ、FPUアライメントナビゲータを組み合わせた移動中継サポートシステムを開発・実用化した。
これにより、ロードレース中継における自動追尾受信の安定化と大幅な省人化を達成し、中継技術の高度化と効率化に貢献した。
特別表彰部門
〔青少年向け番組〕
最優秀 どーんと鹿児島 響け!大隅から~高校生ミュージカル「ヒメとヒコ」~
南日本放送
プロデューサー 諏訪園真人、ディレクター 石井健人、撮影 木場洋道、音声 江平みゆき
1984年の放送開始以来、様々なテーマで鹿児島の“今”と“人”を描いてきた番組。今回は、鹿屋市で2007年から毎年上演されている高校生ミュージカルに焦点を当てる。公募で集まった地元大隅半島の高校生の多くが演劇未経験者。厳しい練習を通じて仲間との絆を深め、故郷への思いも芽生えていく。高校生が奮闘しながら成長していく姿や、それをサポートする地域の人々の思いを伝える。
等身大の高校生が様々な苦労や喜びを分かち合いながら成長していく姿を丹念に捉えている。困難を乗り越えていく同世代の姿は、子どもたちにも大きな刺激となる。
優 秀 パラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM エリー・コール(オーストラリア/水泳)
WOWOW
ナビゲーター・ナレーター 西島秀俊、音楽 梁 邦彦、チーフプロデューサー 太田慎也、プロデューサー 松居宏知
WOWOWと国際パラリンピック委員会(IPC)が共同で立ち上げた大型ドキュメンタリーシリーズの一つ。今回は、幼少時に腫瘍により右足を切断したオーストラリアの競泳選手に焦点を当てる。2008年北京大会、2012年ロンドン大会で連続してメダルを獲得後、深刻な肩の怪我により復帰不可能と診断されるが、競技への復帰を目指して努力を続け、2016年リオデジャネイロ大会に出場を果たす。
競技と真摯に向き合う姿勢や、キャリアを脅かす深刻な怪我を負っても決して諦めない精神力は圧巻。幾多の困難を乗り越えてきた本人の言葉には深い重みが感じられる。
優 秀 ウッティ発!アンニョンハセヨ!ワタシ桑ノ集落再生人 2011-2017
テレビ山梨
プロデューサー兼チーフディレクター 岩﨑 亮、ディレクター 中嶋 一、撮影 長田和也、浅川 豪
山梨県市川三郷町山保は、かつて養蚕で栄えた限界集落。この地に移住し、養蚕に使われなくなった桑の葉でお茶を作る会社を興した韓国人、ハンソンミンさんは、お茶作りで集落を活性化したいと汗を流す。ハンさんの7年と、日本での経験を活かし、フィリピンの農業を発展させるという新たな夢に挑戦する姿を追った。
夢と希望を信じて前に突き進む姿は、青少年に夢を持つことや諦めないことの重要性を教えてくれる。
優 秀 ドイツが愛した日本人~佐々木蔵之介が巡る、ある医師の物語~
読売テレビ放送
チーフプロデューサー 岩尾安治、プロデューサー 田中寿一、演出・プロデューサー 小林計洋、ディレクター 瀬戸 優
第二次世界大戦時のドイツで自らの命と引き換えに多くの人々を伝染病から救った医師、肥沼信次氏。死後70年が過ぎた今もなお現地で名誉市民として敬愛され、地元の教科書にも紹介されている。佐々木蔵之介がドイツを訪ね、現地の歴史や文化にも触れながら肥沼氏の足跡を辿る。
時代に翻弄されながらも人々の命を救い続ける壮絶な生き様は、現代を生きる視聴者に誇りと感動を与える。親子で「生きるとは何か」を考えるきっかけにもなる。
優 秀 KRYニュースライブスペシャル 1200ページの願い~カエルと結菜の7年間~
山口放送
プロデューサー 佐々木聰、ディレクター 田村康夫、撮影 山本 透、上田 翼
山口県美祢市で生まれ育った藤原結菜さんは、小学校2年生のときにカエルの研究を始めて7年。これまでにまとめた資料は1200ページ以上にのぼり、膨大なデータと緻密な分析は大人も顔負けである。あるとき田んぼの側溝に落ちたカエルを目にして、「助ける方法はないか」と試行錯誤の末、シュロの木の繊維を束ねた命綱を考案。「カエルの命を救いたい」という思いから、命綱を地域に広げる取り組みもはじめ、やがて自然保護団体や企業を動かし、広く普及し始める。
目標を実現するために一途に努力することの大切さを教えてくれる良作である。結菜さんの頑張りが同世代の子どもたちに大きな刺激を与えてくれる。
〔放送と公共性〕
最優秀 伝える、つなぐ~名張毒ぶどう酒事件報道の40年~
東海テレビ放送
実施責任者 斉藤潤一
東海テレビ放送は、昭和53年から約40年間、名張毒ぶどう酒事件の報道を続けてきた。きっかけは、同社のカメラマンが死刑判決に疑問を持ち、取材を始めたことだった。これまでに6本のドキュメンタリーと2本の映画を制作。特集番組やストレートニュースの放送回数は130回を超え、これまでの取材をまとめた書籍も出版した。奥西死刑囚が獄中死した今も、新作のドキュメンタリーを制作している。
冤罪の可能性が高いとの信念は後継のディレクターに受け継がれ、質の高い番組を制作し続けたこととともに、権力に臆することなく、覚悟をもって司法の問題点を明らかにしようと真正面から取材に取り組んでいる姿勢が高く評価された。
優 秀 患者からの“いのち”のメッセージの発信
日経ラジオ社
実施責任者 宮崎裕一
日経ラジオ社は、がんなどの患者が番組企画に参画し、自らの体験や学び得たことを語り合う番組を7年間放送してきた。活動は放送にとどまらず、番組内容をそのまままとめた書籍の出版や、患者や家族、中学・高校・大学の学生が集う公開シンポジウム等の開催など、多岐にわたった。
制作者が厳しい状況にある患者たちに寄り添い、思いを率直に語ってもらうことで、それぞれの病に向き合う姿が見えてくる。放送という枠を超え、多くの患者の声を広く社会に伝え続けたことが評価された。
優 秀 放送の継続とニュースの検証活動「シリーズ あれから」
テレビ金沢
実施責任者 北尾美和
テレビ金沢は、過去のニュース現場に時を経てあらためて赴き、今はどうなっているのかを検証するシリーズを放送している。当時の出来事を知らない若手記者が先輩から話を聞き、取材テーマを決める。新たな視点で過去の大事件や災害のその後を取材することで、当時は見えなかったことを再発見したり、現代に必要な教訓を得たりすることができる。
報道を一過性で終わらせることなく、再度取材することにより過去のニュースを検証しようとする取り組みと、あえて若手に取材させることで伝え手に必要とされるものを伝承しようとする姿勢が評価された。
優 秀 ふたりの桃源郷 25年にわたる「双方向」の放送活動
山口放送
実施責任者 佐々木聰
山口放送は、山奥で地に足をつけ、まっすぐに生きようとする老夫婦と2人を支える家族の姿を25年間にわたり記録し続け、そのドキュメンタリーシリーズを映画というかたちで結実させた。視聴者から寄せられる多くの反響を糧に、丹念に取材と放送を繰り返し、昨年、より多くの人に見てもらいたいという思いから映画化した。
視聴者の声に後押しされ、情報番組のコーナーなどで扱った素材を蓄積して取材対象者の人生を自然にとらえた良質な作品を制作し、多角的な展開へと結びつけたことが評価された。
優 秀 フロンティア精神を子供たちに! 和田重次郎を今に伝える 南海放送21年の記録
南海放送
実施責任者 田中和彦、戒田節子、伊東英朗
南海放送は、アラスカ開拓に大きな足跡を残した愛媛県出身の和田重次郎の生き様を描いたラジオドラマの制作を機に、県内でもほとんど知られていなかった地元の偉人の発掘を始めた。テレビのほか、市民ミュージカル、出前授業やシンポジウムなど、21年間にわたる多彩な活動を通じて彼の持つフロンティア精神を県内の子どもたちに伝え続けている。
ラジオが端緒となり、放送のみならず多彩なイベント、さらにはアラスカとの文化交流にまで活動を広げており、メディアの特性を生かしたスケールの大きな展開を継続した点が評価された。