一般社団法人 日本民間放送連盟

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よりよい放送のために

番組制作における新型コロナウイルス感染予防対策の留意事項

2020年5月13日

一般社団法人 日本民間放送連盟

 

番組制作における新型コロナウイルス感染予防対策の留意事項

 

 政府は4月7日、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け7都府県を対象に緊急事態宣言を発出し、4月16日にはすべての都道府県に拡大した。国民の生命を守るため、政府や地方公共団体、医療関係者、専門家、事業者を含む国民がそれぞれの立場で感染症対策をさらに進めることが求められている。

 民放連会員社は感染防止対策に細心の注意を払って取り組みつつ、報道機関としての役割と責任を果たし、家で楽しく過ごして学ぶための番組を国民・視聴者に届けるため、放送事業の継続に全力を挙げてきた。これまでの非常緊急時の番組制作については、いわゆる「3つの密(密閉、密集、密接)」を回避した制作現場の環境改善やリモート出演、スタッフの交代制勤務など、通常と異なる番組制作体制を敷いている。

 緊急事態宣言が解除されたとしても、感染症のまん延防止対策と社会経済活動を両立する取り組みは長丁場になる。広くステークホルダー(国民・視聴者、地域社会、広告主、取引先、従業員など)の理解を得て、通常体制による取材や番組制作を円滑に再開するためには、民放事業特有の感染リスクに応じた、持続的な新型コロナウイルス感染症対策を講じる必要がある。

 どのような感染症対策を講じるかは、地域の感染状況、業態(ラジオ/テレビ、地上放送/衛星放送)、事業規模によって異なる。その取り組みは取材や番組制作のあり方に影響を及ぼすため、民放事業者が自主・自律的に進めるべき事柄である。

 民放連は会員社が自らの経営判断で持続的な新型コロナウイルス感染症対策を検討する際の参考に供するため、現時点における在京テレビ社、ラジオ社などによる先進的な事例を収集し、番組制作上の留意事項を整理した。この中には、①非常緊急時に求められる対策、②持続的に求められる対策の双方が含まれている。その時々の状況に応じて、自社に必要な感染症対策を見極めたうえ、参考とされたい。

 番組制作においては出演者、スタッフのみならずロケ地や取材先の一般の方々の安全確保が重要である。自主的な感染防止の取り組みを進めることが肝心であり、現場において試行錯誤しながら、また創意工夫をしながら、民放事業特有の感染リスクに応じた新型コロナウイルス感染症対策を実践していただきたい。

 今後とも民放連は新型コロナウイルス感染症の状況や会員社の取り組みの深化を注視し、必要な情報共有などを適宜行っていく。

 

 

【会議や打ち合わせでの安全確保や事前準備】

 

  • 会議や打ち合わせは必要最低限の人数と時間で行う。
  • 会議や打ち合わせは可能な限り広い空間で行い、定期的な換気を徹底する。
  • 収録現場は可能な限り広い空間を確保するよう努める。
  • 収録現場だけでなく、移動中の感染リスクも検討する。
  • 収録に際し出演者やスタッフの安全管理ができる体制が整っているか事前に十分検討する。

 

<参考となる先進的な事例>

  • 会議や打ち合わせは原則テレビ会議などリモートで行っている。
  • 会議や打ち合わせでどうしても対面が必要な場合は人数を絞り、「マスク着用」「15分以内」「2メートル以上離れる」などを厳守したうえで行っている。
  • 出演交渉は可能な限り電話やメールで行っている。
  • スタジオは通常の収録場所にこだわらず、極力広い場所を確保できるよう都度検討している。
  • 外部スタジオの利用は通常より多くのスタッフの移動を伴うため慎重に判断している。
  • ロケ車両を使用する際は、間隔をあけて着席できる車両を確保している。
  • ロケ車両を使用する際は、常時窓を開け、会話は避けている。
  • 構内のエレベーターでの移動は極力避けている。
  • 出演者などがやむを得ずエレベーターを使用するときは、人数を制限したりスタッフの同乗は避けたりするほか、会話を禁止している。
  • タクシーを利用する場合は1人1台の使用としている。
  • 宿泊は原則行わず、やむを得ず宿泊を伴う場合は1人1部屋としている。

 

 

【収録における安全確保】

 

  • 収録スタッフはマスクを着用するほか、感染防止に最大限注意する。
  • 収録スタッフは必要最低限の人数とする。
  • 出演者の関係者の帯同や立ち会いは必要最低限の人数とする。
  • 収録前後には使用する機材やマイク、小道具などを消毒する。
  • スタジオでの収録は定期的な換気を徹底する。
  • 収録時間が長時間に及ぶ場合は、体調変化をきたした出演者やスタッフがいないか十分注意する。
  • 出演者や取材対象者とは十分距離を保ち、可能な限り接触を避ける措置を講じたうえで撮影を行う。
  • 屋外で収録する際は周囲の一般の人々との距離に十分配慮する。
  • 撮影用の飲食物はもちろんのこと、出演者やスタッフの水分補給用の飲料や食事の汚染防止にも十分配慮する。

 

<参考となる先進的な事例>

  • スタッフや収録に立ち会う関係者の全員がマスクを着用している。
  • スタッフには手袋の着用を推奨し、特にピンマイクの着脱などで密接する時はゴム手袋やゴーグルを装着している。
  • ピンマイクの使用は避け、スタンドマイクを使用している。
  • 消毒液を携帯するスタッフを決め、常に消毒できる体制を確保している。
  • スタジオにクリアパネルやビニールカーテンなど内部仕切りを設置している。
  • 音声や映像の確認は別室でモニター等を設置して行っている。
  • ロケを行う際のクルーは制作スタッフと技術スタッフを合わせて3人までとし、それ以外のスタッフも必要最低限としている。
  • 各出演者のスタジオ入りのスケジュールは分散させ、クロークなどでの密集や密接に注意している。
  • 出演者の関係者は、本人を除き、マネージャー、ヘアメイク、スタイリストの3人を原則とし、スタジオには立ち会わず別部屋などで待機している。
  • 撮影前後にはカメラやマイクなど共有して使用する機材をはじめ、スタジオやロケ車両なども消毒や清掃を十分に行っている。
  • メイクやスタイリストなどは作業前後に手洗いや消毒を徹底している。メイクやスタイリストなどが作業で密接する時は会話をしないなど留意している。
  • 出演者の衣装はクリーニングや洗濯を徹底している。
  • 収録時は1時間ごとに換気、休憩を行っている。
  • 収録時間が3時間を超える場合は途中で検温を行っている。
  • 屋外での収録スタッフは必要最低限とし、時間も一定に制限している。
  • 屋外ではピンマイクの回し使用は避け、可能な限りガンマイクを使用している。
  • 屋外では周囲の一般の方の中に高齢者や妊婦がいないか最大限注意している。
  • 私有地や店舗などで一般の方が出演する際は、責任者や店員など1人までとしている。
  • インタビュー取材が必要な場合は2メートル程度の間隔をあけている。
  • マスクを着用していない方へのインタビューは避けている。
  • 出演者が一般の方と会話をするシーンなどは必要性を慎重に検討し、双方マスク着用のうえ、ソーシャルディスタンスを可能な限り確保している。
  • いわゆる「街歩き」など公共空間でのロケは緊急事態宣言下では行わないこととした。
  • 飲食を伴うシーンは原則1ショットとするなど必要最低限としている。
  • 飲食を扱うスタッフはマスクだけでなく手袋も着用し、出演者やその他のスタッフとの接触も避けている。
  • 飲食物の手渡しは避け、試食等は調理過程がわかるもののみに限定する。
  • 出演者の弁当、打ち合わせや控室での食事は1回分ずつ分けて配布し、飲料は1回分の容器に入ったボトルや缶で提供している。

 

【ラジオ局のスタジオでの事例】

  • スタジオブース内にアクリルパネルを設置し、出演者の会話に伴う口腔飛沫がお互いや什器にかからないよう配慮している。放送後はふき取り清掃、消毒をしている。
  • ボーカルパフォーマンスを実施する際は、人の高さの透明アクリルパネルを設置している。
  • スタジオブース内に紫外線放射装置を、副調整室にはオゾン発生装置を設置し、殺菌消毒を24時間実施している。
  • 生放送中や収録中でも換気のためにスタジオブースの扉を開けている。
  • スタジオや副調整室への立ち入り人数は出演者やスタッフを除き最大2人までに制限している。
  • 生放送スタジオ内でのメールのプリントアウト、文書作成、インターネットサイトのチェックなどのスタッフを分散させるために、パソコンやプリンタを副調整室の外に移した。
  • ゲスト出演者がスタジオブース内に入らずにすむよう、スタジオブース内と互いに様子が見えるカメラ・モニターなどを設置した特設ブースを用意している。
  • スタジオ内、副調整室内での食事を禁止し、試食を伴う番組企画は行わないこととした。

 

 

【従来の形式にこだわらない番組制作】

 

  • 番組の内容は従来の形式にこだわらず、リモートを組み合わせたり出演者を限定したりするなど柔軟に対応する。
  • セットや美術においても簡素化や空間の確保を検討する。
  • リモート出演であっても、リモート先の感染リスクに十分配慮する。

 

<参考となる先進的な事例>

  • 感染者が一定程度発生している期間は、リモート出演、出演者数の見直し、スタッフの交代勤務制などを検討している。
  • 出演者の数は企画に必要な最少人数かつソーシャルディスタンスが保てる範囲としている。
  • 一般視聴者の番組出演や観覧は、感染拡大期には原則行わない。
  • 美術スタッフの稼働を伴うようなセットの建て込みやバラシは行わない。
  • リモート出演の場所へのスタッフの帯同は原則行わず、マネージャー等も別室で待機している。
  • リモート出演の場所は出演者の自宅などの私有空間のほか、所属事務所の会議室等を検討している。
  • リモート出演の場所の広さも事前に確認している。
  • リモート出演の場所で使用する機材の消毒も徹底している。
  • 公共スペースでのリモート出演は、一般の方が集まり密集する可能性があるので原則行わない。
  • リモート出演の場所での追加の作業は出演者やスタッフへの過剰な負荷がかからないよう配慮している。
  • リモート出演の箇所は編集作業等の負荷を確認し慎重に判断している。

 

 

【編集時の安全確保】

 

  • 編集作業は従来の形式にこだわらず、リモートを組み合わせたり作業スタッフを限定したりするなど柔軟に対応する。
  • 編集作業場所の感染リスクにも十分配慮する。

 

<参考となる先進的な事例>

  • サブ上げや本編のオフラインチェックはVTR送り等で対応し、対面や接触の発生を避けている。
  • 編集に際しやむを得ず対面する場合でもディレクター等の立ち合いを極力短縮している。
  • ナレーションの収録スタッフはディレクターとADの2人を原則とし、演出の立ち合いが必要な場合はADが別場所で待機している。
  • ミキシング作業は最大でも4人(ミキサー、演出担当、ディレクター、AD等)で行っている。それ以外のスタッフが確認したい場合はビデオ会議システム等でリモート参加している。
  • ナレーターが使用するマイクは使用前、使用後に消毒している。
  • 副調整室にクリアパネルやビニールカーテンなど内部仕切りを設置している。

 

 

【衛生の促進や制作体制の維持】

 

  • 手洗いや検温など制作にかかわるスタッフの健康管理を励行する。
  •  スタッフの体調に気を配り、体調変化や異常は早期に発見する。
  •  構内の入構を制限する。
  •  構内で密室空間になりやすい場所や部屋には特段の制限を行う。
  •  構内の衛生を促進する取り組みを進める。
  •  マスクやアルコールなどの備品確保を徹底する。
  • 再度の感染拡大期に備え、必要な措置を講じる。

 

<参考となる先進的な事例>

  • 制作にかかわるスタッフは手洗いや咳エチケット、検温など日常から健康管理や感染防止の行動を励行している。
  • 制作にかかわるスタッフは衣服のこまめな洗濯を励行している。
  • 毎日朝7時に体調確認メールを全スタッフに発出し、未報告者には一定時間ごとに再送している。
  • 構内への入り口規制と入構時の検温を行っている。
  • 構内への入り口にアルコール除菌装置を設置し、入構時に消毒できる体制を整備している。
  • 入構するスタッフ、スタジオや報道フロアに入るスタッフの人数はそれぞれ限定しリスト化している。
  • サーモカメラを導入し、救急救命士を配置して体温をチェックし、一定値以上を検知した場合は検温できる体制を整備している。
  • 空間除菌の噴霧器を各所に配置している。
  • 消毒液を染み込ませたマットを出入りの多い報道フロアなどに敷いている。
  • マスターや副調整室はもちろん、CDルームやCMプレビュー室も入室するスタッフを制限している。
  • 構内の喫煙室を全室封鎖した。
  • 構内のトイレに設置しているエアータオルの稼働を停止した。
  • 検温器の使いまわしは極力避け、やむを得ず共有する場合は消毒を徹底している。
  • 食堂利用の分散化や座席の削減、配置の見直しを行った。
  • 電車での通勤を避け自転車通勤するスタッフのため、構内に臨時駐輪場を設けた。
  • アルコールなど感染防止の備品調達やリモートワークの体制整備を行うなど、再度の感染拡大時に制作体制が維持できるよう備えている。
  • 出演者や制作にかかわるスタッフに感染が疑われる場合は、保健所の聞き取りに協力し、必要な情報提供を行えるよう準備している。
  • 必要に応じて各制作現場の事情に応じた「チェックシート」を作成し、関係者間で共有し運用している。

 

以 上

 

番組制作における新型コロナウイルス感染予防対策の留意事項