会長会見
井上会長会見
【日 時】 平成29年1月26日(木) 午後2時~2時35分
【場 所】 民放連3階会議室
年頭にあたって
◆記者:年頭にあたって、1年の抱負・所感をうかがいたい。
◆井上会長:今年はアメリカのトランプ大統領の就任をはじめ、欧州各国で国政選挙が行われるなど、社会情勢が大きく変化する1年になるだろう。報道機関として、視聴者・聴取者に正確な情報を、迅速に、わかり易く伝えていかなければならない。“フェイク・ニュース”などの問題もあることから、ニュースの信頼性を確立し、正しく受け入れられるよう努力したい。また、4K・8K放送やインターネット活用などの技術進歩に伴い、さまざまな問題が山積している。民放としてのスタンスを考える多事多難な1年になるのではないか。
テレビ放送の同時配信について
◆記者:テレビ放送の同時配信について、今後、どのように対応されるのか。
◆井上会長:民放の場合、制度的には現在でも同時配信は実施できるが、権利処理や配信コスト、インフラ構築など、いくつもの課題がある。NHKと協力できることもあるだろうが、民放は広告収入によって成り立っており、マネタイズできるかどうかが重要。慌てて拙速に結論を出すのではなく、慎重な議論が必要だ。総務省・情報通信審議会の下に設置された「放送コンテンツの製作・流通の促進等に関する検討委員会」では、同時配信に必要なインフラの構築とコストの問題、権利処理などの課題を、一つ一つ丁寧に検討を進めると聞いている。この検討に民放連も参加し、民放事業者の考え方をきちんと述べていきたい。
◆記者:ローカル局への影響について、どのようにお考えか。
◆井上会長:何が一番いいのか、ローカル局の意見を聞きながら、この1年をかけて、みんなの知恵を集めて考えていくことに価値がある。これから検討していきたい。
4K・8K放送について
◆記者:このほどBS4K・8K実用放送の認定が行われたが、4K・8K放送について、民放連の検討状況をうかがいたい。
◆井上会長:BS実用放送の業務の認定については、右旋のチャンネルには民放キー局系のBS5社とNHKが、左旋のチャンネルにはWOWOWなど民放4社とNHKが、それぞれ参入することが正式に決まった。開局に向けた準備は参入する各社が鋭意進めることになるが、どのくらいのコンテンツを用意できるのかなど、新しいメディアを立ち上げることは大変なことである。ぜひ応援していただきたい。4K実用放送が成功するためには、放送を受信できるテレビが発売され、視聴者が放送を楽しむ環境が整うことが不可欠だ。総務省および受信機メーカーには、受信機の普及促進にしっかりと取り組んでいただきたい。
◆記者:BS実用放送の開始時期について、民放各社の足並みがそろっていないようだが、何か理由があるのか。
◆井上会長:各社がそれぞれの事情で判断されたことである。
◆記者:当初は受信機もなく、視聴者も限られた中で、民放は4K放送への投資をどう回収するのか。また、4K放送は広告費を高く設定できるのか。
◆井上会長:投資をすぐに回収することは難しいだろう。そのためにも、受信機メーカーの普及への意欲が重要である。普及の進捗状況によって各局の経営計画も変わってくるだろう。広告費についても、受信機の普及によって違ってくるだろう。
NHKについて
◆記者:NHKの上田新会長に期待することや、今後のNHKとの関係について、お聞きしたい。
◆井上会長:平成25年から常勤の経営委員会委員としてNHKの経営に携わってこられており、業務内容も深く理解されていると聞いている。NHK会長は日本の公共放送の「かじ取り」を担う重い役割である。上田会長はこれまでの経験を活かし、指導力を発揮されると期待している。非常に手堅い方だという印象を受けた。引き続き、日本の放送の発展のため、お互いに協力できることは協力していきたい。
◆記者:上田会長は就任会見で、インターネット活用を念頭に置き、放送と通信の融合や国際発信力の強化などについて述べられたが、このような姿勢をどうお考えか。
◆井上会長:NHKが、インターネットの活用に積極的であることは承知している。意見交換を行って、一緒に考えていきたい。
◆記者:上田会長はテレビ番組の同時配信について、「インフラの整備など、民放と一緒にやれることは協力していきたい」との考えを示したが、これをどう考えるのか。
◆井上会長:NHKは受信料を財源としており、それに伴う規律もある。NHKは現在でも多くのチャンネルを持っており、それにインターネットが加わるため、さらに巨大化して民業を圧迫する、との危惧もある。また、NHKによるインターネット配信の場合、放送と同じく、あまねく全国に届けるのか、それとも配信しない地域があるのかなど、独自の問題もある。今後の放送法改正の動きなども見ながら、慎重に検討したい。一方、民放については、マネタイズできないことには投資できないので、まだ議論の前段階、というところではないか。
◆記者:受信料、NHKオンデマンドの収入に加えて、同時配信にも課金する考えが示されているが、これをどう考えるのか。
◆井上会長:NHKは現在でも7000億円を超える収入があり、インターネット分野のビジネスで赤字が出ても支えることができる。同時配信が定着していくのかどうか、しっかり見きわめる必要があるだろう。
◆記者:動画配信事業者が配信した番組をNHKが購入して放送するなど、協力関係が強まっているようだが、民放への影響をどのようにお考えか。
◆井上会長:どんな番組を編成し、放送するかは各放送事業者の判断であり、私が何か申しあげるものではない。ただ、一般論で申しあげれば、NHKには民間にはできないもの、NHKならではのものを放送することが期待されていると思う。
(了)