会長会見
井上会長会見
【日 時】 平成29年11月17日(金) 午後2時~2時35分
【場 所】 民放連3階会議室
今年1年を振り返って
◆記者:今年最後の定例会見にあたり、1年を振り返った感想をうかがいたい。
◆井上会長:今年は国際的にはアメリカのトランプ政権の発足、韓国のパククネ前大統領の逮捕、北朝鮮による度重なるミサイル発射などの大きな動きがあった。国内でも突然の解散総選挙、野党の分裂などの動きがあった。そうした中で、「フェイクニュース」「ファクトチェック」といった言葉が話題にもなった。メディアとして、状況が動いているときこそ、地に足をつけて事実を掘り起こし、国民に提供していくことが改めて求められた年だったと思う。
4K・8Kについて
◆記者:BSでの4K・8K実用放送の開始1年前となったが、準備状況や民放連としての考えをうかがいたい。
◆井上会長:4K放送の実施は民放にとっては事業的には難しいが、政府の方針でもあるので協力していきたい。次世代に新しい技術を繋いでいくという側面もあり、成功させたいと思っている。BSの4K実用放送が普及するためには、受信機能を備えたテレビが発売され、視聴者が放送を楽しむ環境が整うことが不可欠だ。受信機の普及と番組制作は車の両輪であり、総務省および受信機メーカーには、受信機の普及促進にしっかりと取り組んでいただきたい。
◆記者:CM4K化について、どのようにお考えか。
◆井上会長:広告主にとって、4Kの高精細な画像の方がCMのメッセージがより良く伝えられるとなれば、その価値を認めてくれるようになるのではないか。画質の差がはっきりしていれば、営業面でも良い方向に進むと期待している。
ラジコでのNHKラジオの配信について
◆記者:NHK・民放連共同ラジオキャンペーンの一環として、ラジコでNHKラジオが実験的に配信されているが、その感触や効果はどうなのか。
◆井上会長:共同ラジオキャンペーンの一環であっても、NHKが共通のプラットフォームでラジオ番組を配信したことはNHKの英断であり、感謝している。ラジコでのNHKラジオの配信はリスナーから歓迎されており、評判はたいへん良いようだ。NHK側からもリスナーの拡大につながっているのではないか、と聞いている。NHKと共同で実施するラジオキャンペーンは、「若者を中心とするラジオ離れ」への対策として、平成23年度から実施してきたものなので、ラジコでのNHKラジオの配信が有効な対策になることを期待している。
ピョンチャン五輪、ワールドカップ・サッカーについて
◆記者:来年開催されるピョンチャン・オリンピックおよびワールドカップ・サッカーについて、ネット展開を含めて準備状況をうかがいたい。
◆井上会長:ピョンチャン・オリンピックの民放が生中継する注目の種目や、民放共同オリンピックサイト「gorin.jp」の取り組みなどについて、先日、発表したところである。地上波150時間、BS28時間、gorin.jpライブ配信600時間を予定している。カーリングの日本チームの試合日程が決まっていないこともあり、放送日程が未確定なところもある。どの局がどの競技を放送するかの詳細については、1月に発表の予定である。ワールドカップ・サッカーについては、12月1日に対戦国の抽選会(ファイナルドロー)が行われる。そのあとに、NHKと協議してどの試合を民放で放送するかを決める。民放内でどの局が放送するのかは、これまで同様、抽選で決めると聞いている。
NHKについて
◆記者:民放大会の来賓あいさつでNHKの上田会長は、ネット配信における権利処理や配信基盤など共通の課題について、民放から提案があれば肯定的に考えると述べ、協調していく考えを示した。例えばNHKが配信プラットフォームを民放にも開放した場合、そこに民放は参加するのか。
◆井上会長:一般論で考えれば、コストをシェアすることには一定の合理性があると考えるが、NHKによる常時同時配信のあり方について、放送法上の位置づけや受信料制度との整合性、NHKがネット空間で果たすべき役割について、国民的な議論を行うことが先ではないか。NHKが現在実施している試験的提供のデータを踏まえ、何をやるのかを具体的に示さないと、納得を得にくいと思う。
◆記者:試験的提供は費用の上限を定めて実施しているが、この範囲内であれば問題ないとお考えか。
◆井上会長:今回の実験も受信料で行っているので、問題ないとは思わない。国民の納得が得られるような説明が必要ではないか。
◆記者:NHKの受信料が合憲かどうかが争われている訴訟について、どのようにお考えか。
◆井上会長:ワンセグの受信料訴訟について裁判所で異なった判断が示されたこともあり、注目しているが、現時点でのコメントは差し控えたい。
◆記者:NHKのネット配信は放送の補完であるべきと考えるのか。
◆井上会長:放送がメインであり、ネット配信はあくまでも補完だと考えている。
◆記者:NHKの試験的提供は同時配信と一緒に見逃し配信なども行っているが、どうお考えか。
◆井上会長:同時配信と見逃し配信は、サービスとしてはまったく異なる性格のものだと思う。ユーザーにとって便利であるかどうかとは別の問題として、NHKが有料で行っているNHKオンデマンドとの関係をどう整理するかといった課題もある。
◆記者:NHKはテレビ放送の常時同時配信の実施のために放送法の改正を求めているが、民放連としてどのように考えるのか。
◆井上会長:試験的提供のデータを踏まえ、国民的な議論を行ったうえで検討すべきだと考えている。権利処理の問題や費用の上限などの課題も多く、総務省の検討会で議論されている段階だ。現時点で法制化を、ということであれば反対せざるを得ないだろう。
◆記者:経営委員会は受信料の値下げをしない方針を示したが、これをどう考えるのか。
◆井上会長:今後、NHKが大きな投資を必要とすることは民放と同じであるが、経営の効率化を行って、サービス面に加え受信料で国民に還元してほしいと思う。
電波の有効利用に関する検討について
◆記者:政府の規制改革推進会議が電波オークションを含む「電波割当制度の改革」を検討しているが、どうお考えか。
◆井上会長:民放連はかねて、放送用、放送事業用周波数はオークションになじまないと述べてきたし、今回もそのように規制改革推進会議のヒアリングで述べたところだ。放送事業者は特に災害時において国民の生命・財産を守るため、割り当てられた電波を有効に利用し、公正・公平に、安定した放送サービスを提供するという極めて公共性の高い役割を果たしていると自負している。事業者を入札金額の多寡で決めるオークション制度には心配がつきまとうし、放送用、放送事業用周波数はオークションになじまない。オークション制度には反対である。
◆木村専務理事:10月25日と本日の2回にわたって規制改革推進会議「投資等WG」のヒアリングをNHKとともに受け、電波利用に関する民放事業者の考え方を説明したところである。
(了)