一般社団法人 日本民間放送連盟

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会長会見

井上会長会見

【日 時】 平成30年3月15日(木) 午後3時~3時40分

【場 所】 グランドアーク半蔵門3階「光の間」

 

◆会見の質疑に入る前に、本日発表した「NHK経営計画に対する見解」について事務局から説明があった。

 

6年間の任期を振り返って

◆記者:6月に会長を退任されることとなったが、6年間の任期を振り返って、感想をうかがいたい。

◆井上会長:6月8日まで任期があるので、そこまでは会長の職責を果たしたいと思っている。私は会長就任時から、放送の二元体制の維持、そして放送の価値の向上に取り組みたいと申しあげてきた。どこまで成果をあげられたかわからないが、会員各社や民放連事務局のスタッフ、総務省等の政府機関、日本アドバタイザーズ協会、日本広告業協会等の関係団体などの協力に感謝したい。取り組んだことで印象に残っていることのひとつは、ラジオのFM補完中継局の開局だ。災害時などにラジオが公共的な使命を果たすため、有効なものだと思う。もうひとつは、ネットとテレビに関する議論である。見ている画面は同じでも、両者は全く違うメディアだ。ネットは個人との繋がりなので属性を把握しやすいが、テレビは一度に多くの人たちに情報を届けられるという利点がある。放送事業者は、ネットの特性をうまく利用していくことが大切だと思っている。また、録画機の性能が向上し、テレビ局の編成にとらわれない視聴習慣が広がっている。そのような中、テレビと視聴者の結びつきを強くするためにTVerを開始した。テレビが新しいジャンルに取り組むという意気込みを示せたのではないか。現状では、同時配信をマネタイズするのは難しいが、新しい体制で、民放一丸となって放送の価値を維持・向上しつつ、新しいジャンルにも取り組んでほしいと思う。

◆記者:次期会長に引き継ぎたいことは何か。また、どのようなことを期待されるのか。

◆井上会長:大久保氏はジャーナリストとしての経験も豊富で識見もあり、経営者としても大きな実績を残しておられる。会長推薦委員会が大久保氏を推薦したと聞いて、適任者を選んでくれたと思った。私と放送に対する考え方に大きな違いはないし、放送事業を発展させてほしいと願っている。

 

 

冬季オリンピックの放送について

◆記者:ピョンチャン・オリンピックの放送について、総括をお願いしたい。

◆井上会長:厳しい寒さの中、スタッフの方々が苦労して放送を届けてくれたおかげで、これだけの盛り上がりにつながったと思う。gorin.jpでは初めて実況付きの配信を行ったが、テレビを補完する役割を果たせたのではないか。メディア権料の高騰により、収支は赤字となったが、こうしてNHKと一緒にスポーツの中継を実施できることは、日本の放送界の良いところだと思う。今年はワールドカップサッカーが開催されるし、東京オリンピックも控えている。NHKとは、お互いに競争しながら良い関係を構築していきたい。

◆記者:ピョンチャンは時差がなく、放送には適していたと思うが、それでも赤字になった要因は何か。

◆井上会長:一番の要因はメディア権料の高騰だ。IOCやFIFAは日本に比べてCM料金が高いアメリカの金額を基準に交渉してくるので、日本のマーケットの現状とは合わない部分があると思う。

◆記者:gorin.jpで実況付きの同時配信を行ったことは大きな挑戦だったと思うが、手ごたえはどうなのか。

◆井上会長:反応は良かったと聞いており、手ごたえはあったと思っている。

 

 

BPOの決定について

◆記者:放送倫理・番組向上機構(BPO)の各委員会から厳しい決定が出されているが、これをどうお考えか。

◆井上会長:各委員会の決定へのコメントは差し控えたい。そのうえで、ひとつひとつの番組の信頼が大切だと常々申しあげており、会員各社にはそれぞれの決定内容を真摯に受けとめ、今後の番組制作に活かしていただきたいと思う。

 

 

放送の制度改革に関する動きついて

◆記者:政府が放送法4条の撤廃などを含む放送の制度改革を検討しているとの記事が共同通信から配信された。これについてどのようにお考えか。

◆井上会長:共同通信の記事は読んだ。記事にあるような「こういった制度改革が本当に議論されるのだとしたら」という仮定の話としてしかお答えできないが、仮に通信と放送の規制や制度を一本化して、放送のソフト・ハードを完全分離して多様な制作会社の参入を促して、その一方でNHKに関しては放送内容の規律を維持する、となると、これはもう「放送の二元体制」は維持できなくなる。そういう事態が強く懸念されるのではないか。民間放送が普通のコンテンツ制作会社となってしまったら、字幕放送や手話放送、災害放送や、有事の際の放送は、できなくなるのではないかと思う。放送法4条の話にしても、そもそも4条だけを切り出して、そこだけ是非を問うことは適切ではないと思う。字幕や手話、緊急時の放送など、放送法などで私たちが実施を求められていることはさまざまにあって、そうしたものがなくなったり、少なくなったりするかもしれないとなると、国民視聴者の皆さんはそうしたことを本当に望むだろうか。私たち放送事業者は日々の放送を通して、民主的な社会に必要な基本的情報を全国津々浦々にあまねくお伝えしているという責任もあるし、自負もある。そういう活動を通じて、健全な世論の形成や、社会秩序の維持に貢献してきたと思っている。放送は一度に多くの方々に情報を届けることができるが、そのためには大きな設備が必要となる。一方、ネットは簡単に発信できるので、速報性などの利点があるが、まだ日本においては未成熟であり、間違った情報によって問題が起こったりしている。フェイクニュースへの対応が世界的に共通の社会問題になってきた昨今、バランスの取れた情報を無料で送り続ける私たち放送の役割は、これまで以上に重要になり、だからこそ私たちも、これまで以上に真摯に国民視聴者の皆さんの要望や期待と向き合っていかなければならないと思う。規制改革推進会議の方々には、単なる資本の論理、産業論だけで放送を切り分けてほしくないし、バランスの取れた議論をお願いしたい。私は、放送に比べてネットの世界は発展途上だと思っているので、もう少し時間をかけて推移を見守っていったほうが、国民視聴者にとってより有効な、放送とネットの“棲み分け”というものが成立するのではないかと考えている。

◆記者:このような政府などの検討に対応するため、民放連では新たな組織を立ち上げたりするのか。

◆井上会長:本日開催した理事会で、放送の価値を向上させるための検討組織の設置を決定した。

◆木村専務理事:放送の未来像に関しては総務省でも検討が行われているが、民放連においても、私たち自身で未来像を考える必要がある。そこで、緊急対策委員会・幹事会の下に「放送の価値向上に関する検討会」(仮称)を設置し、テレビ放送・ラジオ放送の価値向上策や未来像を検討することとした。詳細はこれからの検討となる。今後、会員各社との情報共有も行っていく。本日の理事会で、この検討会の設置が決まった。

◆記者:その検討会には、どのような役割を期待するのか。

◆井上会長:放送が本来持っている強みや特性を踏まえ、新しい時代の放送について考えたい。そのうえで、もうひとつ上の段階へ進んで、より強力な媒体となってほしいと考えている。

◆記者:検討会の設置時期と、NHKとの連携についてうかがいたい。

◆木村専務理事:本日、設置について決定したものであり、詳細についてはこれから検討するという段階だ。NHKとの連携も、今後検討したい。

 

 

NHKについて

◆記者:NHKの経営計画に対する見解について、「常時同時配信を容認する条件」という文脈でとらえると、総論にある課題についてNHKが考え方を示し、各論にある「受信料収入2.5%の堅持」との要望をクリアすれば、常時同時配信を認めるということなのか。

◆井上会長:民放連としては、NHKが常時同時配信をどのように、どのような規模で実施するのかなど、詳細な計画を説明していただかないと、地方局への影響も不明であり、現状では判断できない。あまりに莫大な経費をかけて実施されると困るので、そこは2.5%という数字を述べたものだ。中身がはっきりしないと検討できない、ということだ。

◆記者:NHKは3月13日に「試験的提供B」の実施結果を発表したが、これをどのように評価するのか。NHKは民放の要望も反映させた実験だと言っているが、常時同時配信に向けて、両者の溝は埋まっているのか。

◆木村専務理事:NHKがさらに詳細な分析を行っている最中と聞いているので、その結果を待って、包括的に考えていきたい。

◆井上会長:NHKとはきちんと会話ができているので、私たちの考えを理解していただけるものと思っている。

 

(了)