会長会見
大久保会長会見
【日 時】 平成30年11月15日(木) 午後4時~5時5分
【場 所】 ホテルニューオータニ・メイン館アーケード階「おり鶴 悠の間」
NHKの常時同時配信について
◆記者:「NHKの常時同時配信の実施に関する民放連の考え方(8項目)」を公表したが、これについて会長の考えをうかがいたい。
◆大久保会長:次回の総務省・放送を巡る諸課題に関する検討会(諸課題検討会)では、第二次取りまとめで示された前提・諸条件について、NHKがさらに具体的な考え方を示すことと思う。NHKの今後の検討において、民放事業者の意見や要望をぜひ反映してほしいと考え、特に重視している8項目をNHKにお伝えした。民放連はかねてより、公共放送NHKの「業務・受信料・経営のあり方」を三位一体で改革する方針に賛同してきた。第二次取りまとめにはこれまで民放事業者が求めてきた前提・諸条件が盛り込まれており、民放連が要望した8項目に新しいものはない。私たち民放事業者はNHKとの関係において、放送の二元体制を維持するという大きな目標があり、民放事業者との部分的な連携や受信料の値下げといった施策だけでNHK改革全体を先送りせずに、8項目を一体的に実現してほしい。
◆記者:受信料の値下げについて、ある程度インパクトのある金額でないと意味がないということなのか。また、民放大会の「会長あいさつ」の中で、「(NHKとは)これまで以上に互恵の関係を深めていきたい」と述べられたが、これはどのような意味なのか。
◆大久保会長:受信料の値下げの幅をイメージしているものではない。受信料を払っている国民・視聴者の方々が納得できる水準が目安となるのではないか。互恵関係についても、年々、より充実した関係を築いていきたいということであり、それ以上の意味はない。
憲法改正国民投票CMについて
◆記者:憲法改正国民投票のCMについて、野党から「規制すべき」との声があがっているが、どのようにお考えか。
◆大久保会長:表現の自由との関係、すでに14日間の放送禁止期間があること、この10年間のメディア状況の変化を踏まえると、民放側で量的な自主規制をする合理的理由は見出せないと考えている。
◆記者:法律制定当時の国会審議を見ると、CMの影響力は大きく、資金力のあるところが多量のCMを投下する懸念などが示されている。また、民放連の参考人が国会で「CM量を含め、民放連としてルールを作る」という趣旨の発言を行っており、通常の考査とは違う対応が必要だと思うが、これは今後、具体的に考えていくことになるのか。
◆永原専務理事:当時審議されていた国民投票法案では、国民投票運動CMの放送禁止期間は7日間とされており、参考人の発言は、そうした規制は不要であり、放送事業者の日常的な考査の運用の中で自主・自律的に取り組むという趣旨のものであった。参考人は私見として、ガイドラインといった自主規制にも言及したが、民放連としてガイドライン的なルールを作るかどうかも含めて、現在、検討しているところだ。
◆記者:与野党ともにCMの影響力の大きさを懸念しており、CM放送の期間や量の制限を検討することも考えられる。今後、民放連で何らかの方針を示す考えはあるのか。
◆永原専務理事:民放連ではこれまでにも、必要があれば、放送基準とは別に個別テーマについてガイドラインを設けてきた。このようなものを作るかどうかを含め、議論しているところだ。実務において会員各社が混乱しないように、しっかりと対応したい。
新4K8K衛星放送について
◆記者:新4K8K衛星放送が間もなくスタートするが、会長としての所感と、普及などの課題への対応について伺いたい。
◆大久保会長:放送開始までいよいよ半月となり、BS各社は4K放送設備の最後のテストで連日大忙しだと聞いている。受信側についても、各メーカーが4Kテレビの発売をアナウンスしている。視聴者への周知広報については、A-PAB(放送サービス高度化推進協会)が中心となり、精力的に取り組んでいただいていると聞いている。関係者が一丸となって新しい放送メディアを盛りあげていきたいので、活字メディアの皆さんにも、ぜひ積極的に取り上げていただくよう、引き続きご協力をお願いしたい。
会長就任後の所感、民放連の「施策」について
◆記者:会長に就任されて約半年が過ぎたが、この間についてどのようにお考えか。また、7月に公表された民放連の「施策」の進捗状況はどうなっているのか。
◆大久保会長:急速な技術革新が、放送の事業環境を劇的に変化させている。それに効果的に対応できているのか、悩み、取り組んできた半年だったと思う。明るい展望は見出せていないが、民放連のすべての委員会が「放送の未来像は、自分たち自身の手で描いていく」という強い意志を持って、課題に取り組んでいる。全委員長と専務理事で構成する「放送の価値向上・未来像に関する検討推進会議」を設置して検討を進めており、できるだけ早く、中間報告を公表できればと考えている。
以上で民放連会長の会見は終了したが、上記以外に、日本テレビ放送網のバラエティー番組『世界の果てまでイッテQ!』に関する報道について記者から質問があり、これに同社社長の立場から答えた。主な発言は以下のとおり。
大久保社長は、「イッテQの『祭り企画』について、疑念とご心配をおかけする事態となり、視聴者、出演者、現地で制作に協力してくれた方々、報道関係者など、多くの関係者にお詫び申しあげる」と述べた。
引き続き、現時点でわかっていることとして、
・11月8日に公表した「番組から企画したりセットを提供した事実はなく、賞金を出した事実もない」というコメントは、番組ということを日本テレビ放送網のプロデューサーやディレクターなど狭く限定した表現であり、誤りであった。放送責任はすべて日本テレビ放送網が負うものである。
・一連の報道で“やらせ”“でっち上げ”などと指摘されているが、番組制作時にはそのような意図は全くなかった。
・番組の制作陣が「祭り企画」の解釈を拡大し過ぎて、視聴者の皆さんが“祭り”という名前でイメージするには無理があるものまで“祭り”として扱うようになり、その結果、“祭り”という企画に疑念を生じさせてしまったのではないか。
と説明した。
そのうえで、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が2009年に公表した「最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見」を引いて、「バラエティーがある程度、虚構を含むものであったとしても、放送界の感性が一般社会の倫理観と乖離していないかを、きわめて重要な問いとして自らに向ける必要がある」と述べ、同社のバラエティー番組制作にあたるすべての社員、スタッフに対して厳しく問いかけるとの考えを示した。
今後、さらに調査を進め、その結果をしかるべき時期に報告することとし、「イッテQ」の「祭り企画」については、視聴者に自信を持ってお届けできる体制が整うまで休止する、と述べた。
(了)