会長会見
2019.6.14大久保会長会見
【日 時】 2019年6月14日(金) 午後3時30分~4時
【場 所】 ホテルニューオータニ ガーデンコート宴会場階「シリウス」
◆会見の質疑に入る前に、同日公表した「放送の価値向上・未来像に関する民放連の施策」中間報告について、大久保会長から説明があった。
会長就任1年を振り返って
◆記者:民放連会長に就任して1年が経過したが、感想をお聞かせいただきたい。
◆大久保会長:取り組むべき課題が山積していて、あっという間の1年だったように思う。情報通信技術が急速に進展し、放送事業を取り巻く環境も速いスピードで変化している。そうした中で、放送事業者も時代の変化に迅速・的確に対応しなければならないとあらためて痛感した1年だった。
放送法改正について
◆記者:放送法改正案の可決、成立の感想を聞かせてほしい。
◆大久保会長:今般の放送法改正でNHKテレビのインターネット常時同時配信が可能となったが、今後策定される実施基準がどうなるかなど具体的な全体像がはっきりしないとコメントは難しい。ただNHKのインターネット活用業務はあくまで「放送の補完」であり、節度をもって抑制的に運営する必要がある。そのため衆参両院の附帯決議は「公正競争の観点から、適正な規模の下、節度をもって事業を運営すること」「会計上の透明性を確保すること」などをNHKに求めている。実施費用の点では、2.5%という現行の枠はしっかり守ってもらいたいと思っている。上田会長はNHKと民放の「二元体制」を堅持していきたいと繰り返し表明しており、その点について私たちは敬意を持って受けとめている。仮にNHKが2.5%の上限を超えてなし崩し的に経費を増やしていくのだとすれば、NHKの肥大化がますます進み、民業圧迫という懸念も強まりかねないと思う。そういうことにはならないと思うが、私たちとしては当面、NHKが2.5%という上限を守ってくれると信じている。
◆記者:NHKは常時同時配信を今年度中にもスタートさせたいとしており、常時ではないが同時配信は民放でも在京キー局が実証実験を行っている。今後、NHKの流れに民放も引っ張られるかたちで、同時配信をする機会が増えていくことになるのか。
◆大久保会長:民放事業者の多くは、常時同時配信は事業性が見出せないと考えているのではないか。常時でなく同時配信も、どう取り組むかは個社の経営判断だと考えているので、私が全体のことを言うのは控えたい。各社のトライアルは増えていくと思うが、今後どうするかは個社の経営判断であり、私が見通しを述べるのは難しい。
◆記者:同時配信による視聴機会が増えれば、地方局の視聴機会は減少するのではないか、との懸念がある。NHKの常時同時配信の開始は、その引き金になるのではないか。
◆大久保会長:民放各局でもいろいろなトライアルは行っており、災害時の緊急放送やスポーツ中継などで実績を積み重ねていく中で、地方局とキー局の関係が順次整理され、解決されていくのではないかと思う。いずれにしても予断を与えるような発言は控えたい。
◆記者:NHKの上田会長は、今年の紅白歌合戦を常時同時配信したいという意向を示したが、このような視聴率の高い番組が配信されることをどのようにお考えか。
◆大久保会長:NHKが実施することへのコメントは控えたい。
◆記者:昨年の秋、民放連はNHKの常時同時配信の実施に関する考え方(8項目)を公表したが、今後、あらためて何か考え方を表明する意向はあるのか。
◆大久保会長:先のことはわからないが、現時点で用意していることはない。
◆記者:上田会長は2.5%上限について明言を避けているが、これについてどのようにお考えか。
◆大久保会長:上田会長の発言を直接聞いていないので、コメントは控えたい。
◆記者:先ほど「当面、2.5%を堅持してもらいたい」と言われたが、「当面」とはどの程度の期間を考えているのか。
◆大久保会長:未来永劫、ということはないだろう。私たちが理解できるような大きな状況の変化、環境の変化があれば話は別だ、ということだ。
AM放送のFM放送への転換について
◆記者:民放連はAM放送のFM放送への転換に関する制度改正を総務省に求めたが、転換に向けての課題は何か。また、今後はどのような取り組みが必要になると考えるか。
◆大久保会長:民放連は総務省に対し、ラジオ社の経営の選択肢を広げてもらいたいという視点から制度改正を求めてきた。私たちの要望は概ね理解を得られたのではないかと受けとめている。総務省の分科会では、ワイドFMによるエリアカバーや受信機の普及といった課題が指摘され、論点になっていると承知している。一方でラジオ事業者はradikoなどのネット配信を積極的に進めており、複合的な手段でラジオ番組を届けていくことにも取り組んでいる。そのような視点で考えていただくことも必要ではないか。民放連の代表として総務省の分科会のヒアリングに臨んだTBSラジオの入江会長は、「リスナーを粗末にする経営判断はあり得ない」と述べている。この姿勢をベースにしながら、中間取りまとめを見たうえで具体的な取り組みを考えていきたい。
東京オリンピックの放送について
◆記者:東京オリンピックの開催まであと1年と迫ってきたが、現時点での課題について、どのようにお考えか。
◆大久保会長:国内開催であり、ほぼすべての競技に日本人選手が出場すると思われるので、NHKと協力し、総力をあげて視聴者・聴取者に伝えるための準備を鋭意進めているところだ。課題はいろいろあるが、民放とNHKで構成するジャパン・コンソーシアム(JC)で制作体制や放送の実施方法を調整して進めている。開催が近づいてきたので、しっかり準備したい。
◆記者:民放は東京オリンピックを4Kで放送するのか。
◆大久保会長:BSで4K放送が始まっているので放送する方向で進めていくが、対応についてNHKとも相談しながら検討を行っている。
◆記者:4K放送の受信機の普及が進まない現状について、どのようにお考えか。
◆大久保会長:受信機の普及には、魅力的なコンテンツが揃っているかどうかという点も関わっていると思う。放送事業者が努力しなければならない分野が多々あると考えている。
憲法改正国民投票運動CMについて
◆記者:憲法改正国民投票運動CMの規制に関して、これまでの方針から変化はないか。
◆大久保会長:今までの主張や衆院の憲法審査会で説明したこと、これまで決定して公表したことについて変わったことはない。また、現時点で何か新たなことを検討していることはない。
ローカル局の経営について
◆記者:中間報告を公表した民放連の「放送の価値向上・未来像に関する民放連の施策」にはローカル局の経営問題が大きなテーマとして挙げられており、これに取り組んでいこうという意思が感じられる。これはインターネット配信や海外のプラットフォーム事業者の参入などの脅威があり、ローカル局の経営が今後厳しくなるという問題意識が背景にあるのか。
◆大久保会長:ローカル局にもいろいろな局があり、それぞれ置かれた環境も違うので一概には言えないが、時代の変化に合わせた事業の改革や経営の新しいあり方を探ることはどの局も同じだと思う。民放連が個社の経営の参考に資するような、経営の選択肢となり得るような情報を提供していくことが「施策」の趣旨だ。経営の厳しさは局によって濃淡があると思うが、新しい時代の変化に対応していくことはどの局も同じである。その取り組みに資するような、参考となるような情報提供を行って応援していきたいと考えている。
◆記者:昨年公表された自民党「放送法の改正に関する小委員会」の提言には、放送対象地域の見直し、県域免許の見直しにつながるような内容もあったが、そのようなことが今後浮上してくる可能性があるとお考えか。
◆大久保会長:個社の経営判断が最優先されるべきことだと考える。
TVerについて
◆記者:民放連の取り組みではないが、TVerによる視聴が好調で、インターネット配信による視聴習慣が根付いてきたように感じる。この現状や可能性をどのようにお考えか。
◆大久保会長:TVerは在京・在阪の民放各社で運営している事業なので民放連会長の立場でのコメントはできないが、会員社が進めている事業が多くの人に活用され事業として成功し、新しい成長分野となってくれればいいと期待して、見守っている。
(了)