会長会見
2019.11.14大久保会長会見
【日 時】 2019年11月14日(木) 午後2時~2時20分
【場 所】 グランドアーク半蔵門 4階「富士東の間」
NHKのインターネット活用業務実施基準案の認可申請について
◆記者:総務省がNHKのインターネット活用業務実施基準案の認可申請に対して「基本的考え方」を示し、再検討を求めたことをどう考えるか。
◆大久保会長:総務省が示した「基本的考え方」は、放送法改正にあたっての国会の附帯決議を踏まえ、またNHKが認可申請に先立って実施した意見募集において国民や視聴者、関係事業者から寄せられた意見や懸念も踏まえて整理されたものだと聞いている。民放連も意見を提出したが、今回の「基本的考え方」は民放連の従来の意見と重なる点が多く、私たちの意見にご理解をいただけたものと受け止めている。これが包括的な印象だ。NHKのテレビ放送の常時同時配信は、総務省が繰り返し指摘しているNHKの「業務、受信料、ガバナンス」の三位一体改革の実行が前提、との考えを民放連もかねて支持してきた。常時同時配信はこれまでのNHKの業務とは一線を画す新たな事業領域で、総務省がそれだけを切り出して実施基準案の認可の可否を検討するのではなく、その前提として三位一体の改革が必要だと改めてNHKに求めたことは従来からの民放連の考えと同じで違和感はない。NHKは受信料収入で運営される公共放送なので、常時同時配信も公共放送の目的や使命、視聴者ニーズに照らして、本当に必要な業務なのかよく精査し、民間事業と競合しないよう、NHKの業務の過度な肥大化が進まないよう、節度を持って抑制的に、段階的に運営していただきたいと従来から繰り返し要望しており、先日(11月6日)の民放大会のあいさつでも申しあげた。一方で、民放事業者とNHKとの関係は、日本の放送事業の根幹である「放送の二元体制」を維持し発展させていくためにも、連携と協力を深めることが重要だとの考えに変わりはない。特に巨大な外資系のプラットフォーマーや動画配信事業者が強力な競争相手として登場している今、NHK、民放を問わず、放送事業者全体の連携と協力が欠かせない。その点で先日多くの民間放送事業者が出資している配信インフラのJOCDNにNHKが出資を決めたことは協力と連携の証として高く評価し、感謝する。総務省の「基本的考え方」には同時配信に関し、テレビの受信契約を確認するメッセージの表示のあり方や、費用の上限は東京オリンピック・パラリンピック関連を除いて受信料収入の2.5%を維持するといった具体的な内容が盛り込まれており、総務省が意見募集を行っている。民放連は放送計画委員会がこれに応じるべく審議している。締め切りまでに意見をまとめ、総務省に提出するので、民放連の正式な見解はそれまでお待ちいただきたい。
◆記者:総務省はNHKの自主的な取り組みに任せるべきという有識者の声もある。個別の放送局への口出しにも見え、所管官庁といえどもこうしたことが続くのは望ましくないという印象があるがどう考えるか。
◆大久保会長:総務省が所管官庁としての行政責任および権限にもとづいて行っているのだと思う。
東京オリンピック・パラリンピックについて
◆記者:東京オリンピックのマラソンと競歩が札幌で開催されることになったが、放送への影響はあるか。
◆大久保会長:東京開催を前提に進めているので準備面では何らかの影響はあると思うが、視聴者にお届けする放送番組は、どこで開催されようと、ジャパンコンソーシアムとしても担当放送局としても、与えられた条件下で最良のものを制作することを心掛けることに変わりはない。
BPOの審議・審理入り案件について
◆記者:最近放送倫理・番組向上機構[BPO]で審議・審理入りする案件が多くなっている。これをどうお考えか。
◆大久保会長:放送への信頼に関わる事案が続いていることは重く受け止める必要があると考えている。民放大会の前日に開催された、会員各社の代表者が一堂に会する「会員協議会」の席上、放送基準審議会の小孫議長が出席者に、放送倫理の遵守・徹底を呼びかけた。私も民放大会のあいさつの中で、国民の信頼を失うことのないよう、日々、自らを律し、自らを磨いていくことをお願いした。放送の内容について国民の信頼を維持し確保し高めていくことは放送事業者にとって一番大事なことであるので、会員各社と問題意識を共有していきたい。
この1年を振り返って
◆記者:この1年を振り返った感想を伺いたい。
◆大久保会長:まだ11月の半ばではあるが、個人的にはあわただしい日々だったと思っている。新天皇が即位され令和の時代が始まり、一連の行事を放送事業者も放送してきた。民放事業者としてはスポット収入の落ち込みが顕在化してきており、民放連の研究所では営業収入の見通しを下方修正している。個々の放送事業者に頑張ってもらいたいが、民放連としても、各社の経営判断に役立つ有益な情報を収集し、加盟社に提供していくことがますます重要になってくると思う。
協調領域について
◆記者:民放連がかねてから指摘していた「協調領域」について、番組の配信プラットフォームではNHKがTVerに参加し、インフラ面でもJOCDNに参加する。このほか、視聴データ面ではYourCastが新たに設立された。それぞれの分野で一応の形ができたように思えるが、今後何が必要になってくると考えているか。
◆大久保会長:それぞれまだ事業として固まっていないし、結果が出ているわけでもない。まずはしっかりと進めていただければと思っている。これらは民放連の事業ではなく、キー局を中心に放送事業者の各社の経営判断の中で考えていくものだ。
(了)