会長会見
2020.09.17大久保会長会見
【日 時】 2020年9月17日(木) 午後2時~2時25分
【場 所】 民放連地下ホール
NHKについて
◆記者:NHKが公表したインターネット活用業務実施基準(素案)において、これまで受信料収入の2.5%以内としてきた業務費用の上限に関する記述が削除された。また前田会長は記者会見で、放送の補完としてきたインターネット活用業務について「本来業務との位置付けの方が今の実態にあっている」といった発言をされた。新しい方針とも言えるが、これについての受け止めを教えてほしい。
◆大久保会長:インターネット活用業務実施基準(素案)において、インターネット活用業務の受信料収入2.5%以内とする記述が削除され、オリンピック・パラリンピック東京大会の費用を別枠で管理するとの記述もなくなった。NHKのインターネット活用業務は現行の放送法において放送の補完であり任意業務と位置付けられており、過大な費用を要するものではないことが求められている。テレビ受信機に紐づいている受信料を放送以外の事業に使うにあたっては、一定の制約があるのは当然である。したがってインターネット活用業務は抑制的に行われるべきである。昨年放送法が改正された際、国会の付帯決議にもそうした主旨が盛り込まれた。こうした観点からNHKはインターネット活用業務の費用を抑制する指標として自ら2.5%という上限を定めた。にもかかわらずわずか1年で撤廃するならば、昨年の放送法改正をめぐる論議は何だったのか。当時NHKが表明した考えは、放送法を改正して同時配信の道を開く方便だったのかと疑問に思わざるを得ない。NHKは次期経営計画案において費用の抑制的管理に努めると表明しているが、それだけではインターネット活用業務の費用が過大にならないのかどうか不明確である。受信料収入の変動やインターネット活用業務の事業内容が変化することもあるのでパーセントで示すことがよいのかは分からないが、自ら定めた上限を撤廃するのであれば、国民の理解を得られる新たな数値目標を定めて、本当に抑制的な管理が確保されることを示す必要がある。それがないまま2.5%上限を撤廃するならば、我々は同意できない。
またインターネットの活用を本来業務に位置付けたいとの発言については、そうであるならば、これまでの議論の経緯をもう一度整理していただくと同時に、受信料制度との整合性を取っていただきたい。NHKの業務のあり方に関する新しい全体像を示して、国民的な合意形成を進めてほしい。きちんとした手順を踏んで提案されることを期待したい。
◆記者:これについて民放連としてNHK側に申し入れる予定はあるのか。
◆大久保会長:今の段階では考えていない。
◆記者:インターネット活用業務実施基準(素案)においてNHKがローカル番組の見逃し配信を始めるとの記載がある。民放連では同時配信をめぐる議論において地方局に配慮して欲しいと要望しているが、これについてどのように考えるか。
◆大久保会長:NHKがローカル番組の見逃し配信をどのようなかたちで行うのか全体像を承知していないが、民放ローカル局の受け止め方をしっかり聞いてから民放連の考えをまとめていく。
◆記者:2021~2023年度のインターネット活用業務にかかる費用について約190億円台との見通しが示されているが、数字の印象としてどう捉えているか。
◆大久保会長: 2021年度はオリンピック・パラリンピック東京大会の費用を含んでいるはずだが、その費用が計上されないはずの2022年度、23年度もほとんど減額されておらず、抑制的な管理を実行する意思があるのか首をかしげざるを得ない。具体的な積算根拠は分からないが、そのような印象を持っている。
◆記者:民放とNHKがインターネットネット業務で協力していくうえでの具体的な見通しはあるのか。
◆大久保会長:放送の二元体制の枠組みのなかで日本の放送文化の発展に努めていくという大きな目標がある。そうした考え方は前田会長とも一致していると思う。どのような協力ができるかについては、いろいろな場面で話し合いが持たれていくものと思う。
内閣の交代について
◆記者:安倍政権においてはメディアとの付き合い方が注目されたが、7年8カ月におよぶ政権を振り返りどのように考えるか。
◆大久保会長:8年近くにわたる長期政権で様々な政策を進めて来られた。メディアとの付き合い方は色々なメディアがあるので一般論として答えるのは適切ではないと考えている。
◆記者:菅総理大臣にはどのようなことを期待しているか。
◆大久保会長:国民の立場から申しあげても、新政権には新型コロナウイルス終息にむけた対応と経済の再建を進めていただきたい。菅総理大臣はふるさと納税の発案や農林水産分野の環境整備など、地方の活力を向上させる政策を積極的に推進してこられた。地方を元気にしたい思いは民放ローカル局も同じであり、地方経済を活性化させる政策に期待している。総務大臣を務めた経験もあり、放送行政には明るい方だと思う。放送業界の発展につながる政策を展開していただきたいと考えている。
◆記者:武田新総務大臣に期待することを伺いたい。
◆大久保会長:放送業界の発展につながるような様々な施策の実行に手腕を発揮していただくことを期待している。
民放連の役員構成について
◆記者:民放連の役員は男性のみで構成されている。放送業界におけるジェンダーの問題についてどう考えているか。
◆大久保会長:民放連の役員は各社の代表者の中からお願いしており、かつては女性理事がいた時期もある。取材や番組制作だけでなく人事・総務系の部門においても女性が登用され活躍している姿は当然の光景となっており、経営層で活躍する女性も増えている。性別に関係なく共に活躍できる職場を作っていくことは、放送業界でも進められていることである。民放連においても女性役員が増えてくることを期待している。
(了)