一般社団法人 日本民間放送連盟

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会長会見

2022.03.17大久保会長会見

【日 時】 2022年3月17日(木) 午後3時~3時40分

【場 所】 民放連地下ホール

 

○4年間の任期を振り返って

◆記者:6月に会長を退任されることとなったが、4年間の任期を振り返って感想をうかがいたい。遠藤次期会長へのメッセージも聞かせてほしい。

◆大久保会長:民放連では2012年から副会長、放送計画委員長を6年務めた。2018年からは会長を2期4年務め、合計10年の長いかかわりとなった。無事に務めを果たすことができそうでほっとしている。会長に就任する直前の2018年の年明けから4月頃にかけて、当時の安倍政権が放送法を改正し、放送改革をしようという動きがあり、「民放は不要だ」という声が出た時が一番緊張した。民間放送にとって非常に困難な状況が起きると考え、一生懸命この問題に取り組んだことを覚えている。民放の崩壊は民主主義社会の基盤がいたむことになりかねないとの危機感を持ち、安倍総理大臣に直接会って再考を求めた。その後、自分たちの将来は自分たちで描く思いで、「放送の価値向上・未来像に関する検討推進会議」を立ち上げ、4年間活動してきた。当初は6本柱33項目を掲げ、民放連のすべての委員会が関わり民放業界を取り巻く課題を解決しようと取り組んできた。まだ課題は残っているが、任期中に何らかの足跡を残すことができたとしたらうれしいし、取り組んでくれた関係者の皆さんに本当に感謝している。この2年間はコロナの影響で対面の活動はほとんどできなくなり、海外事業の展開も難しくなるなど、コロナ対応は非常に印象深い出来事だった。東京オリンピック・パラリンピック、北京オリンピックも印象深い。コロナの中で非常に難しい対応だったが関係者が十分準備をし、視聴者・リスナーの期待に応えられる放送ができたと思う。ウクライナ情勢は放送事業に携わる者として重い出来事で、いろいろ考えさせられる。ロシアのウクライナ侵略を伝えることに全世界のメディアが取り組んでおり、日本の放送事業者も現地で起きていることを一生懸命伝えようとしている。こうした事態になると改めて放送メディアの責任を痛感し、きちんと責任を果たさなくてはならないと思う。ロシアは情報統制、言論統制を強めている。私たちは事実に誠実なジャーナリズムでありたいし、使命と責任を痛感している。遠藤次期会長とは民放連で一緒に仕事をさせていただいており、非常に信頼できる方だ。会長に適任であるということは私が言うまでもなく、大いに期待している。

 

 

○総務省「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」について

◆記者:総務省の放送制度検討会の「論点整理」が示された。ローカル局の再編につながる可能性があると思うが、どのように受け止めているか。また、複数の放送局の番組の同一化を認める方向が示されている。地域情報が減少する懸念も示されているが、どのように考えているか。

◆大久保会長:民放連は総務省の有識者会議で、「個社の意見を丁寧に汲み取り、経営の選択肢の拡大につながる議論が行われることを期待する」と申しあげた。これを受けて、フジ・メディアHDとテレビ朝日HDにヒアリングが行われ、両社の意見を踏まえた検討が進められていると承知している。議論の進め方は民放連の要望に沿っており、引き続き実りある議論が進められることを期待している。一方で、放送の「地域性」の担保は放送制度にとって欠かすことができない重要な視点だ。ローカル局は放送のほか、ウェブサイトで地域情報を発信したり、地域に根ざした題材でドキュメンタリー映画を製作したり、地域密着のイベントを開催するなど、さまざまな形で地域社会・経済に貢献し、地域住民の知る権利に応えている。ローカル局の「地域性」については、こうした取り組みを総合的に勘案していただく必要があると思う。ヒアリングで要望を述べた2社も、地域情報の充実に努める考えを示している。地域社会に根ざし、地域住民の知る権利に奉仕することがローカル局の生命線だということは、すべての会員社の共通認識だと考えている。

 

○ ウクライナの現地取材について

◆記者:ウクライナ情勢の長期化が懸念されているが、伝える側としてどのようにあるべきと考えているか。

◆大久保会長:できる限り現地で取材し、より深く広く正しい情報を伝えたいと考えるのはどのメディアであっても同じだ。取材方法は各社がそれぞれ判断するものだが、危険な状況が予想される場合は記者を退去させるなど、安全確保は最優先に考えていると思う。

◆記者:紛争地域の現地住民からSNSを介して伝えられる映像や画像が番組で使われることがあるが、ファクトチェックについて民放連で情報共有したり精度を上げようとする試みはあるか。

◆大久保会長:SNSに流れている情報をどのように利用し、ファクトチェックするかは以前から十分注意している。映像が信用できるかどうかは、普段から厳しくそれぞれの社が方策を講じてチェックしている。ファクトチェックの重要性は高まっていくと思う。情報に接するメディアとして避けられない問題であり、あらゆる分野の人たちと協力しながら精度を高めることがこれからの大きな課題と考えている。

 

○ FIFAワールドカップ・カタール大会について

◆記者:3月24日に予定されているFIFAワールドカップ・カタール大会最終予選のオーストラリア戦は、地上波では放送予定がないと聞いている。国民の関心が高いスポーツイベントが放送権料の高騰で放送できないことをどう考えているか。

◆大久保会長:個々の放送権に関する契約を承知していないのでコメントできない。各局の判断で、放送するかしないかが決められている。ただ、我々は民放事業者なのでスポーツイベントを放送する際、一つの要因として事業性を考えざるを得ない事情があると想像している。

◆記者:カタール大会本戦の放送権は、フジテレビ、テレビ朝日、NHK、ABEMAがそれぞれ獲得したが、JCで獲得しようとする議論はあったのか。

◆大久保会長:JCとして対応しないことは確認されている。各局が判断したことである。契約に関わることなのでこれ以上の回答は差し控えたい。

 

○ 放送のインターネット同時配信について

◆記者:キー局の同時配信が本格的に始まることについて、テレビとの共存のあり方などどのように考えているか教えてほしい。

◆大久保会長:視聴者のニーズを見極めながら、各社がそれぞれの判断でサービスに取り組んでいくことは、一つの時代の流れだろうと思っている。会員各社が進めている事業が多くの人に活用され、事業として成功し、新しい成長の芽になってくれれば良いが、基本的には各社の事業判断に基づいて行われることなので、民放連会長としてコメントすることはなじまないと思う。

◆記者:昨日発生した地震のような緊急事態の配信対応は今後議論が行われるのか。

◆大久保会長:今回の同時配信の取り組み以前から、各社は緊急時のニュースはネット配信し、より多くの人に届けようと努力し、実際に行ってきたと思う。各社それぞれ判断することだが、同時配信を始める前からこうした姿勢で臨んでいることを理解していただければと思う。

◆記者:プラットフォームのような取り組みはできないのか。

◆大久保会長:ニュースをどのように扱うかは各社の判断だが、国民の生命・安全を守り、暮らしの安全を守る観点から、必要な情報はあらゆる媒体を通じて国民の皆さんに提供していく基本姿勢はどの社も持っていると思う。

 

○ BPOについて

◆記者:自民党でBPOに関する議論が行われているが、どのように受け止めているか。

◆大久保会長:先日、自民党の情報通信戦略調査会でBPOについてNHKと民放連がヒアリングを受けたが、民放連は「放送局が自主・自律で対応するというのが大原則」としたうえで、放送界は自主・自律的な取り組みと、第三者機関であるBPOによる取り組みの両輪で、「正確で信頼できる放送」「視聴者・リスナーの基本的人権の尊重」「放送における言論、表現の自由」を実現できる仕組みを整えていると説明した。今後もさまざまな声に耳を傾けていきたい。放送倫理の向上に向けて放送界全体で自主・自律を基本姿勢に取り組みたい。

◆記者:BPO委員の人事を国会の同意案件にすべきであるとの声も自民党にはあるようだ。今後1年かけて議論するようだが、どんな議論を期待するか。

◆大久保会長:BPOに対する理解、そしてNHKや民放の自主・自律の取り組みについて理解が深まることを期待したい。

 

○ 憲法改正国民投票CMについて

◆記者:国民投票CMに関する民放連の見解は、今後時代や社会の変化に合わせて見直す考えはあるか。

◆大久保会長:何度も国会や与野党のヒアリング要請に応え、民放連見解もすでに示している。改めて見直す状況にあるとは認識していない。

 

○ NHK改革について

◆記者:NHKの肥大化が指摘されてきたが、前田会長の取り組みで受信料の一部値下げが現実味を帯びてきた。一方NHKはいまだ6,000億円以上の年間予算を持つ巨大メディアであり、ネット活用業務も「放送の補完」としながらも存在感を強めている。今後、民放業界としてNHKに何を求めるか。

◆大久保会長:NHKに関してはさまざまな場面で民放連の要望を伝えている。三位一体の改革をきちんと進め、民業圧迫になるようなことや、無用な肥大化はすべきでないと繰り返し指摘してきた。今後もきちんと指摘することが大事だと思う。

 

(了)