一般社団法人 日本民間放送連盟

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会長会見

2023.01.25遠藤会長会見

【日 時】 2023年1月25日(水) 午後2時~2時25分

【場 所】 民放連地下ホール

 

○年頭にあたっ

◆記者:年頭にあたって、1年の抱負を伺いたい。

◆遠藤会長:従来、放送に参加する事業者は限定的だったが、近年、ネット配信の台頭により外資を中心とするコンペティターが増えた印象を強く持っている。放送も大きな自由化の波にさらされているのだと思う。GAFAをはじめとするネット企業は我々にとって脅威の一つだが、昨年後半以降これらの企業もリストラや従来事業の廃止、ビジネスモデルの変更を行い、曲がり角に差し掛かっていると思う。SVODを中心にプレイヤーの数が市場規模に対して多すぎる状態だ。昨年放送業界ではPUTの低下が指摘されたが、強かったはずのネット企業もこうしたことが起き、過当競争での消耗戦が起きている。さまざまな企業の歴史を見てもこうした状態が長く続くとは思えず、すでに始まっている淘汰が今年以降さらに加速すると思う。生き残るのは放送であって欲しいし、幸いにして放送局には従来から育んできた強いコンテンツ制作能力がある。これを最大限発揮して、広くあまねく多くの方に認知してもらい、この過酷な競争を乗り越えなくてはならない。民放連はそのための最大限のお手伝いをしたい。そういう一年にしたいと思う。

 

○NHKについて

◆記者:きょうNHK新会長に稲葉延雄氏が就任した。稲葉新会長にどのようなことを期待するか。

◆遠藤会長:昨年12月に就任が決まった際の会見で「日銀法の改正作業のときに、放送法第1条に『民主主義の健全な発展に資する』と書かれていたことを見つけて、感銘を受けた」と仰っていた。放送法の理念という共通の基盤が持てそうだと思い心強く感じた。また、「強靭な財務体質を作り、質の高いコンテンツを制作し続けるようにしたい」とのコメントにも共感を覚えた。前田前会長が手掛けた受信料値下げなどの改革路線を引き継ぎ、新たなリーダーシップのもとで、NHK改革を不断に進めてほしい。前田前会長の改革方針での「若干のほころびやマイナスポイント」を手直ししたいとも仰っていた。これがどういったものを指しているのか、早い機会にお話を伺いたい。

◆記者:民放との協力関係について新会長にどのようなことを期待するか。

◆遠藤会長:この数年で民放とNHKの間でさまざまなプランが出た。稲葉会長の考えを伺いながら、今後さらにやりとりすることが増えると思う。

◆記者:前田前会長の三年間の改革をどう評価しているか。

◆遠藤会長:コロナ禍の3年間であり、ロシアのウクライナへの侵攻という予期せぬ事態も起きた時代に、公共放送の経営の舵取りをされた。昨年の民放大会にご出席いただいた際、前田前会長は「スリムで強靭な新しいNHKに生まれ変わるという目標を掲げ、あらゆる分野での改革に積極的に取り組んだ」「三位一体改革の成果として、過去にない規模の受信料の値下げを実現したため、今後、NHKが肥大化することは決してない」と仰っていた。こうしたリーダーシップのもとで、NHK改革は着実に進んだと思う。その旗振りをされた前田前会長に最大限の敬意を表したい。

 

○TVerについて

◆記者:TVerは最近、独自コンテンツの配信やオリジナルドラマの制作を始め、民放コンテンツの見られ方にも変化を与えているように見える。TVerは民放各局にとってどのような可能性を秘めていると考えているか。

◆遠藤会長:TVerの黎明期は地上波の番組に戻ってきてもらうための見逃し配信の機能が強かったと思うし、もちろん今でもそうした機能がある。これまでは放送コンテンツの社会からの評価は視聴率だけだったが、今はTVerの再生数も放送コンテンツの価値を形成するひとつになった。キャッチアップだけでなくさまざまな進化を遂げることで立ち位置も変わっていくのではないか。

 

○世帯視聴率について

◆記者:テレビ局が重視する視聴率が世帯から個人へと変化した背景をどう捉えているか。番組制作にどう影響しているか。

◆遠藤会長:これだけテレビ視聴のパーソナルユースが進むと、どのくらいの世帯が番組を見たかは必ずしも正確な指標ではなくなりつつあり、個人視聴率に移行したのだと思う。見逃し視聴やSNSでの反響などさまざまな指標が複合的に放送コンテンツの価値を決める難しい時代になったと思う。

 

○ネットフリックスの広告付きサービスについて

◆記者:前回の会見でネットフリックスの広告付きプランに関し、「唐突で進め方が非常に強引」と発言していた。その後民放連とネットフリックスの間で話し合いを持つようなことはあったか。

◆遠藤会長:ネットフリックスと直接向き合っているのは各局なので、民放連がこの件でネットフリックスと向き合うことは考えにくい。コンテンツの提供も各局が判断している。

 

○ウクライナ報道について

◆記者:来月ウクライナ侵攻から1年となる。この間の報道やファクトチェックの取り組みについてどのように受け止めているか。

◆遠藤会長:ウクライナ侵攻の前からフェイクニュースは放送にとって大きな課題になっていた。フェイクの見分け方が非常に難しくなり、プロパガンダの要素も加わった。我々は複数のニュースソースから情報を取り、正確を期すことに尽きると思う。これをさらに推し進めていかなくてはならない。

 (了)