会長会見
2023.11.22遠藤会長定例会見
【日 時】 2023年11月22日(水) 午後2時~2時30分
【場 所】 民放連地下ホール
○2023年を振り返って
◆記者:2023年を振り返っての所感を聞かせてほしい。
◆遠藤会長:先ごろ発表された在京テレビ5社の上期の決算を見ると、配信などのデジタル収入やイベント、コンテンツ事業については伸びている社もあるが、放送収入、特にスポットは総じて苦戦しているようだ。在京テレビ5社は親会社が上場企業なので、四半期ごとに決算が公表されているが、会員社のほとんどは非上場企業なので、会員社全体の中間決算の状況はまだ把握していない。スポットはローカル局も含めて、おおむね厳しいようだ。1年前の会見では、「テレビとラジオはそれぞれ従来の放送を中心としながらデジタルメディアをも扱う複合的な事業に変貌しており、今年もそれがより一層進んだと思う」とお話ししたと記憶している。放送プラスアルファの取り組みが今年は少なからず進展し、厳しい状況の中で曙光が見えてきたと思う。放送に関する既成概念が変容し続けている。これは来年も一層進むと思う。各社とも経営的には非常に厳しい状況だが、変化の時代をチャンスととらえ、放送人全てが知恵を出し合い、新しい道を切り開きたい。
○NHKについて
◆記者:NHKのネット配信について競争評価の準備会合が始まったが、民放はどのように対応するのか。
◆遠藤会長:今週11月20日に第1回の準備会合が開催され、総務省から全体的な説明があったと聞いている。12月の第2回会合においてNHKからの説明が予定されているので、NHKがネット配信について、何をやり、何をやらないのか、その理由を含めて明確に説明いただくことを期待したい。その結論が出る前に、インターネット業務の必須業務化が先行して行われることのないよう要望する。競争評価の仕組みが有効に機能するには、競争評価の枠組みや、NHKがネット配信について、何をやり、何をやらないのか、出来ることと出来ないことを明確に定める必要がある。公正競争を確保する措置を法定化することが重要だ。準備会合ではNHKの説明に対して、関係者がしっかりと議論し、実効性のある競争評価の体制や基準を整備してほしい。
◆記者:競争評価のどのような点に重点を置いているか。
◆遠藤会長:今の段階では、NHKが何をやり、何をやらないかがしっかり討議され、法定化されることを期待する。
◆記者:NHKのインターネット活用業務に関して金額の上限は維持されるべきとの考えか。
◆遠藤会長:具体的な額は言及を避けるが、コンテンツの内容と予算規模は大きな焦点だ。
○旧ジャニーズ事務所に関する検証番組について
◆記者:旧ジャニーズ事務所に関する各社の検証番組への所感を聞かせてほしい。
◆遠藤会長:本来、民放連会長が各社の個別の番組内容にコメントすることは適切ではないが、大きな問題であるので、全体としての所感をお話しする。検証番組の内容については、評価する声もあれば、厳しい声もあることは承知しているが、私としては、各社とも現時点で出来る限りの調査をして、その結果を真摯にお伝えしていたと思う。今後、さらにどのような取り組みが必要なのか、それぞれの社で自主・自律的に考えていると思う。既に、人権指針を新たに制定する取り組みを進めた社もある。前回の会長会見でもお話ししたが、過去にジャニー喜多川氏が少年たちにおこなった数々の行為が性加害であり、重大な人権侵害であるとの認識を、民放を含むメディアが持てなかったことは事実で、反省しなければならない。検証番組で、各社とも同じ考えを表明していた。いわゆる“忖度”について言及している社もあった。芸能事務所との関係に限らず、取引先との間でいろいろな条件をめぐって交渉を行うことはあるが、行き過ぎたことになり、視聴者や社会から疑念を抱かれることがあってはならない。報道に関しては、所属タレントの不祥事の際に、必要以上に慎重になり、報道が遅れたことがあったと総括している社もあった。今後、しっかりと考え、襟を正していく必要がある。民放連でも、各社の取り組みの精神的な指針となるようなものとして、「人権に関する基本姿勢」を年内に策定する予定だ。人権について改めて理解し、報道活動や事業活動を通じて、あらゆる人権侵害の無い社会の実現を目指すことを確認するものとしたい。会長の私が委員長を務める緊急対策委員会で議論を行い公表する。
◆記者:放送業界で横断的な調査を行うよう求める声をどう受け止めているか。
◆遠藤会長:ハラスメントがあってはならないとの考えは同意見だ。民放連としては、「人権に関する基本姿勢」を策定し、今後に向けた考え方の共有をすべての加盟社間で行うことが大事だと考えており、各社への調査は予定していない。先ほど申しあげたとおり、今後具体的にどのように対応していくかは、各社それぞれが自主・自律的に考えることだと認識している。
◆記者:業界横断的な通報窓口が必要ではないかとの声をどう受け止めているか。
◆遠藤会長:ハラスメントには双方のヒアリングが必要で、外部からヒアリングを行うのが難しいこともある。各社それぞれの通報窓口をはじめ、国や行政機関が持っている窓口も利用しながら解決していくことが望ましい。
◆記者:国連のビジネスと人権に関する作業部会の調査に対し、放送業界の取り組みを伝える考えはあるか。
◆遠藤会長:民放連では概念的な「人権に関する基本姿勢」を策定する。各社でも既にすでに指針を策定している社がある。
◆記者:検証番組で残された課題や今後さらに検証する必要があることを教えてほしい。
◆遠藤会長:芸能事務所との交渉が必要以上のものとなり、プレッシャーにならないように考えていくことが必要だ。
◆記者:各社の検証にばらつきがあったとの声がある。民放連が検証を行うことは難しいのか。
◆遠藤会長:結論にばらつきはなかったと思うが、各社の番組や体験は異なるので、その点での違いはあったと思う。
◆記者:誹謗中傷を苦に「当事者の会」に所属されていた方が自殺したとの報道がある。性暴力を報道で取り上げるうえでの考え方を指針に盛り込む考えはあるか。
◆遠藤会長:被害に遭われた方がお亡くなりになったことは大変痛ましい出来事だ。誹謗中傷が原因のひとつだとすれば、あってはならないことだ。
◆記者:被害者に対する具体的な救済のメカニズムを作る議論はあるか。
◆遠藤会長:窓口や被害者との向き合いなど具体的なことは各社で取り組むものだと思う。
○スポーツコンテンツの放送権料の高騰について
◆記者:昨日開催されたサッカー日本代表戦は放送権料が高騰したことから、日本国内では放送も配信もされなかった。こうした事態についてどう考えているか。
◆遠藤会長:残念だと思う半面、放送権料が上がると権利の獲得が難しい。適正な放送権料が決まる新しい形がないと、このまま高騰が続き、視聴者の皆様にスポーツ中継をお届けできないことが連続して発生するのではと危機感を強めている。
○配信プラットフォームについて
◆記者:民放とNHKが共同で配信プラットフォームを作ってはどうかとの声をどのように受け止めているか。
◆遠藤会長:TVerなど既存のものをどれだけ広げられるかといった考えがある中で、この件に限らず、オールジャパンで取り組むことも模索しないとこれからの放送業界は厳しい状況だ。さまざまな枠組みを模索したい。
(了)