会長会見
2024.11.22遠藤会長定例会見
【日 時】 2024年11月22日(金) 午後2時~2時30分
【場 所】 民放連地下ホール
○2024年を振り返って
◆記者:2024年を振り返っての所感を聞かせてほしい。
◆遠藤会長:元日に発生した能登半島地震や7月の秋田・山形の豪雨など、今年は大きな被害をもたらした災害が相次いだ。地球温暖化の影響もあり、これからもこうした自然災害は増えていく可能性がある。発災時に私たち放送事業者が地域住民の安心・安全のために何をしなければならないか、例えば、より迅速・確実な避難の呼びかけ方法などをさらに考えていきたい。被災地ではこれから復興への長い道のりが続くと思うが、地域住民の方々を勇気づけ、復興に向けた活動を支援するのも民間放送の大きな役割だと考えている。
夏のパリオリンピックでは、海外大会で最多の20個の金メダルを獲得するなど、日本選手の活躍もあり、大いに盛り上がった。放送を通じてスポーツコンテンツの面白さ、そして感動を視聴者・リスナーに届けることができたのではないか。
放送のネット進出が本格的し、視聴者の選択肢が増える良い面があった一方で、SNS上の偽広告や投資詐欺といった問題が表面化した年でもあった。インターネットには光と影の両面があるが、どちらも放送事業に密接にかかわる課題だ。来年もこうした動きをしっかりと把握し、研究して、放送の未来に向けた対策を練っていきたい。
○民放連賞のグランプリと準グランプリについて
◆記者:11月に今年の民放連賞のグランプリと準グランプリが決定した。会長の所感を聞かせてほしい。
◆遠藤会長:先日の民放大会では、制作者の力の入った番組が多く表彰され、その中から、民放連賞のグランプリ作品が決まった。北海道から沖縄まで、全国の民間放送局が優れた番組を制作し、放送していることを示すことができた。グランプリ、準グランプリの4番組のうち、3番組はローカル局の番組だ。東京からは見つけにくい各地の出来事や文化、歴史などを丁寧に掬い上げた作品だった。各地の制作者が地域の人たちの理解や協力を得ながら取材を制作し、ともに考えた成果だったのではないか。視聴者やリスナーの皆さんに優れた番組の存在を知っていただき、見たり聞いたりしてもらう機会をもっと増やさなくてはならない。放送が社会の役に立っていることや、放送の存在感を社会に向けて積極的に発信し、アピールしていく。来年の民放連賞にも注目してほしい。
○旧ジャニーズ事務所所属タレントの起用再開について
◆記者:NHKは、旧ジャニーズ事務所に所属するタレントの新規起用を再開する方針を示した。今回の対応をどう評価しているか。また、年末の紅白歌合戦に同事務所のタレントは出場しないこととなったが、会長の所感を聞かせてほしい。
◆遠藤会長:NHKの判断についてコメントすることはない。スマイルアップ社には、被害者救済・再発防止を、実効性を伴って見える形で進めていただきたいと申しあげてきた。同社の最新の発表では500人を超える被害者の方と、補償の内容について合意されていると聞いている。全面解決には至っていないと思うが、一定の前進が見られているのではないか。
◆記者:同社の対応は見える形と言うにはほど遠いように思うが、会長の考えを聞かせてほしい。
◆遠藤会長:長い年月にわたって継続的に起きた事件であり、被害者と目される方の人数も大変多い。全て解決することが「見える形」だとすればまだ見えていないことになると思う。ただ、対応自体は進捗しているように思うが、それをどう判断するかは各局によって異なると思う。
○兵庫県知事選挙について
◆記者:先日の兵庫県知事選挙では、SNS上の真偽不明の情報を投票の判断材料とした人が多く、一部ではオールドメディアの敗北だと指摘する声もある。一方で、新聞やテレビは政治的公平性の観点から、選挙期間中に候補者を深掘りする記事やニュースを報じることが難しい面がある。会長の受けとめを聞かせてほしい。
◆遠藤会長:どれほどの有権者がSNS上の情報を見て、判断したのかデータがないのでお答えするのは難しいが、個人的には一定程度、SNSの影響があったのではないかと考えている。この問題は、会員各社の報道現場でもさまざまな議論があると思う。必要に応じて民放連の報道委員会の場などで議論してほしい。
◆記者:報道のあり方をどう改善していくべきかという観点で議論するということか。
◆遠藤会長:周辺環境が変わる中で、これまでどおりの選挙報道でよいのかといった観点で議論していく可能性はあると思う。
○松本人志氏の訴訟取り下げについて
◆記者:松本人志氏が週刊文春に対する訴訟を取り下げた。民放連「人権に関する基本姿勢」と照らして、どのような検討や判断が求められると考えるか。
◆遠藤会長:現時点で、松本氏が芸能活動を再開すると公式に表明していないと理解している。同氏が活動再開の意思を示した場合は、その段階で各局が判断するのではないか。
○NPBによる取材パスの没収について
◆記者:日本シリーズが中継されている際にフジテレビがMLBワールドシリーズのダイジェスト番組を放送したことを受け、NPBが同局から日本シリーズの取材パスを没収したとの報道があった。NPBの対応は、各局の編成の自由を脅かすとの指摘もあるが、会長の考えを聞かせてほしい。
◆遠藤会長:一般論として、取材パスの没収は大きな出来事だ。本来であれば、権利者とメディアの間でそうしたことが起こらないよう、双方による不断の努力が必要だと思う。
○NHKとの中継局の共同利用について
◆記者:NHKとの中継局の共同利用に関する議論の進捗状況を教えてほしい。
◆遠藤会長:全国各地域で、中継局の伝送路などの事情が異なるため、各県ごとに、共同利用する場合の経済合理性の試算が進んでいる。総務省は中継局のブロードバンド代替を可能とするための予算要求を行ったと承知している。民放、NHK、総務省の3者による「中継局共同利用推進全国協議会」を軸に、さまざまな検討を積み重ねている。
○「放送」の概念の再定義について
◆記者:総務省「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」第3次取りまとめ案で、放送概念の再定義が論点として示された。電波特性ではなく、放送の社会的な役割を基礎として放送概念を再定義する方向性について、会長の考えを聞かせてほしい。
◆遠藤会長:前回の会見で申し上げたとおり、議論を行うことには賛成だ。その場合、配信の著作権処理やプロミネンス、視聴データの扱いなども一緒に議論されるべきだ。コンテンツ配信、ひいてはメディアの規律のあり方などは、民放の事業や経営の根幹にかかわることなので、慎重な議論を期待している。
◆記者:(放送由来のコンテンツが)プロミネンスを受ける代わりに規制も受けるという考え方がある一方で、プロミネンスは不要なので規制も受けない、という考え方もあると思う。会長の考えを聞かせてほしい。
◆遠藤会長:総務省の検討会で議論していると思うので、その結論を待ちたい。いずれにしても簡単ではないことは事実だ。
◆記者:取りまとめ案は全体として、民間放送のネット移行を促しているように受け取れるが、会長の意見を聞かせてほしい。
◆遠藤会長:今回は(一部の小規模中継局を)ブロードバンド代替するという限定的なトピックスだと考えている。これを端緒として全体的に波及することは、現時点では想定していない。
(了)