一般社団法人 日本民間放送連盟

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トピックス

第65回民間放送全国大会/井上会長あいさつ

 

 日本民間放送連盟会長の井上でございます。

 主催者を代表いたしまして、一言ごあいさつ申しあげます。

 

 本日は、ご多用中にもかかわらず、野田総務大臣、上田NHK会長をはじめ、多数の皆さまにご参加いただき、まことにありがとうございます。

 

メディア環境の変化と放送の役割

 民放事業を取り巻くメディア環境は、激変しております。中でも、インターネット、SNSとスマートフォンの普及・発達により、多数のデバイスが放送とともに、いろいろな情報を伝える時代となりました。しかしながら、どのように環境が移り変わりましても、私たち民放事業者は、何よりも正確な情報と良質な番組をお届けすることが使命であります。

 この1年を振り返りますと、地政学上の脅威である北朝鮮のミサイル・核実験をはじめとして、衆院解散・総選挙や相次ぐ新党の設立、各地で集中豪雨による自然災害が発生するなど、いち早く正確な情報をお伝えしなければならない出来事が頻発しました。そうした際にも、いわゆる「フェイクニュース」や真偽のはっきりしない情報に惑わされることなく、私たち自らがニュースソースを一つ一つ確認し、きちんとした報道を行うことが民放の使命であることを肝に銘じたいと思います。

 昨日、総務省の山田情報流通行政局長から伺った話では、国民が信頼できる情報は放送からとの答えが60%程度を占めるというアンケート結果があり、特に十代の数値が一番高いとのことでした。私たちとしては、もっとニュースの精度を上げ、より信頼されるものとしたいと考えております。

 

国民の生命・財産を守る放送

 とくに、災害時において国民の生命・財産を守るため、私たち放送事業者は、割り当てられた電波を有効に利用し、安定した放送サービスを提供するという極めて公共性の高い役割を果たしていると自負しております。電波割当制度や電波利用料制度が検討されるたびに、時として経済的価値をより重視すべきとの議論がありますが、民放の公共的役割に十分配慮して検討していただきたいと思います。

 

放送倫理・番組向上機構(BPO)

 放送に対する視聴者・聴取者のご期待に応えるためには、当然のことながら、私たちの番組の内容が誰からも信頼されるものでなければなりません。

 しかし、各局の日々の努力にもかかわらず、放送内容に何らかの問題が生じることがあります。そうした事態は各社が自律的に解決することが基本ですが、さらなる対応が必要となった場合に備え、NHKと一緒に放送倫理・番組向上機構(BPO)を設置し、自主的に運用しております。本日ご臨席の皆さまも、BPOの各委員会の意見・提言を真摯に受けとめ、番組作りに反映していただくようお願いいたします。

 

技術革新と民放

 技術革新の動きも進んでおります。来年2018年にはBS4K実用放送が始まります。また、インターネットの放送利用が広く論議されております。いろいろな方法で利用できるとしても、民放にとりましては、良質な番組、地域に密着した情報、面白い娯楽、正確なニュースを伝えていくことが肝要であります。

 そうした信念のもとで、技術の進歩に背を向けることなく、積極的に立ち向かい、新たなデバイスを利用しながら、マネタイズして事業として成立していく、そうした努力をしていかなければならないと存じます。

 

テレビ番組のインターネット配信

 テレビ番組のインターネット配信につきましては、民放事業者も積極的に、TVerなど新しい取り組みを実践してまいりました。今後、さらに積極的に立ち向かっていかなければならないと考えております。しかし、常時同時配信については、著作権問題、ローカル局への影響など、まだ乗り越えなければならないいくつかの課題があると思っております。

 NHKは常時同時配信を2019年に開始したいとのお考えですが、放送法上の位置づけや受信料制度との整合性、NHKがネット空間で果たすべき役割について、国民の皆さまに広く認知していただいて、そのうえで新しいジャンルに挑んでいただきたいと思います。膨大な受信料で運営されるNHKには、スケジュールありきではなく、慎重な事業展開をお願いしたいと思います。

 

NHKとの二元体制

 一方で、NHKと民放の二元体制につきまして、上田会長には大変、心を砕いていただいております。民放との連携を密に取っていただき、NHKによる配信実験の結果を速やかに民放に対して開示していただいております。また、ラジオ活性化に向けても共同でさまざまな作業に手を携えて取り組んでおり、その一つが「ラジコ」での配信実験です。来年開催されるピョンチャン・オリンピックや、2020年東京オリンピックにおいては、ジャパン・コンソーシアム(JC)の力を発揮し、国民の皆さまにより楽しいオリンピック放送をお届けできるのではないかと期待しています。

 

ローカルエリア研究

 本年、民放連では研究所を中心に、全国の地上テレビ・ラジオ会員社をすべて訪問し、地方局の実情と課題を直接ヒアリングする「民放ローカルエリアに関する研究」を実施しております。この場を借りて、ご協力いただいた各社の皆さまに感謝申しあげます。その成果は、いずれまとめて発表するつもりですが、皆さまの経営判断のお役に立てばよいと考えております。

 

働き方改革などの課題

 政府が進める「働き方改革」への対応も、大きな課題の一つです。放送事業は業態として、番組制作や取材報道の現場では天候にも左右され、主体的にハンドリングできない面もございます。私たち自身の意識改革が必要ですので、皆さまで工夫し、研究していただきたいと思います。各局に必要な新しい人材の確保も重要な経営課題であり、特にローカル局の新卒者採用支援事業には民放連として昨年から引き続き取り組んでおります。

 

 このほかにも、好みのラジオ番組を友達に教える「シェアラジオ」や、スマートフォンでFMラジオを受信できる「ハイブリッドラジオ」など、ラジオの将来に向けた取り組みを一生懸命進めております。放送コンテンツのさらなる海外展開など、取り組むべき課題はまだまだ山積しておりますが、日本テレビ放送網のドラマがトルコでリメイクされ、ヒットしているという事例も聞いています。会員社の皆さまのご協力を得て、課題を一つ一つ解決してまいりたいと考えております。

 

 最後になりましたが、本大会の実現のためにご努力いただいた武田・民放大会委員長をはじめ、一丸となって大会の準備を進めてこられた各社の皆さまに、心から感謝を申しあげ、ごあいさつとさせていただきます。

 

 

平成29年11月7日

                   一般社団法人 日本民間放送連盟

会 長  井 上   弘