憲法改正国民投票運動の放送対応に関する基本姿勢

2018(平成30)年12月20日

憲法改正国民投票運動の放送対応に関する基本姿勢

日本民間放送連盟

 戦後の民主主義の社会的基盤として誕生した民間放送は、その成り立ちからして、公共の福祉、文化の向上、産業と経済の繁栄に役立ち、平和な社会の実現に寄与することを使命としている。

 憲法改正が発議された場合には、憲法改正という国の骨格を定める重要な問題について、視聴者に対して番組とCMを通じて、正確かつ多角的な情報を提供することが、放送事業者の当然の責務であることを、「基本姿勢」としてここにあらためて確認する。

 民間放送の報道活動は、報道に携わるひとりひとりが批判精神や市民としての良識を持ち、ジャーナリストとしての原点に立って自らを律しつつ、視聴者・国民の知る権利に応えることが基本である。このことは、番組で憲法改正を取り扱うにあたっても変わるものではなく、「放送倫理基本綱領」「民放連 放送基準」「民放連 報道指針」などに基づき、民放ならではの積極的かつ慎重な取り組みが求められる。その際には、民放連 放送基準第11条「政治に関しては公正な立場を守り、一党一派に偏らないように注意する」、同第34条「取材・編集にあたっては、一方に偏るなど、視聴者に誤解を与えないよう留意する」などを踏まえ、適切な情報を視聴者・国民に提供することが必要である。

 さらに、同第47条「社会・公共の問題で意見が対立しているものについては、できるだけ多くの角度から論じなければならない」に特に留意し、憲法改正案に関する多様な意見・情報を提供することで、視聴者・国民のひとりひとりが真意に基づく判断ができる環境整備に努めることとする。

 テレビ・ラジオCMは、その内容・表現が視聴者の利益に適うものであるかどうかを第一に、放送事業者が放送基準などに基づき考査したうえで放送に至っており、商品やサービスに関する情報を消費者に届けるだけではなく、新たなライフスタイルや価値観を提案するなど、生活に欠かすことのできない存在である。

 国民投票運動CMはその内容から、より慎重な対応が求められるものであり、取り扱うにあたっては、放送基準第89条「広告は、真実を伝え、視聴者に利益をもたらすものでなければならない」を前提に、▽広告は、たとえ事実であっても、他をひぼうし、または排斥、中傷してはならない(第101条)、▽番組およびスポットの提供については、公正な自由競争に反する独占的利用を認めない(第97条)――などに特に留意すべきことは当然である。

 国民投票法は、国民投票運動を「憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する行為」と定義しており、主権者である国民のひとりひとりが冷静な判断を行えるための環境整備であるとして、国民投票運動CMは、投票期日前14日から投票日までの間は放送が禁じられている。その一方で、投票を直接勧誘しないものの「憲法改正に賛成です」「反対です」という広告など、国民投票運動を惹起させるCMや憲法改正に関する意見を表明するCMなどには制限がない。投票期日前14日以降、国民投票運動CMは放送されないこととなるなかで、国民投票運動CMに該当しない、このようなCMが放送されることになれば、視聴者に混乱を生じさせる可能性が高い。

 放送事業者からすれば、国民投票法が国民投票運動を原則自由なものとしているなかで、広告主の表現の機会を制約することとなる量の自主規制を行う理由は見出せない。同時に、国民投票法が国民投票運動CMに放送禁止期間を設け、主権者ひとりひとりが冷静な判断を行うための環境整備にも配慮していることからすれば、放送事業者がそうした環境整備に対して責任を果たすことも、また社会的な要請である。

 最終的には民放各社が自律的に判断すべきことではあるが、国民投票運動CM以外の「憲法改正に関する意見を表明するCM」などについても、国民投票運動CMと同様、投票期日前14日から投票日までの間は取り扱わないこととするとの対応は、国民投票法の目的を実現するためにも採りうる選択肢である。

以 上


20181220憲法改正国民投票運動の放送対応に関する基本姿勢.pdf