2026.9.18 早河会長定例会見

【日 時】 2026年9月18日(金) 午後2時30分~2時55分
【場 所】 民放連地下ホール

○最近の大規模自然災害に関する民放各社の報道
◆記者:最近、地震や大雨など全国で大規模な自然災害が多発しているが、民放各社の災害報道について所感を聞かせてほしい。
◆早河会長:まずはこのたびの災害により被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げる。8月は集中豪雨など特異な災害が続いた。台風15号が茨城県に初めて上陸したほか、8月13日、14日には、千葉県を中心に線状降水帯が発生し、千葉市では24時間の降水量が367ミリ、1時間の最大降水量が115ミリとなるなど、観測史上1位を記録し、亡くなった方が13名、行方不明1名、約5,000棟の家屋に被害が発生した。アンダーパスでの自動車の水没で亡くなった方もおり、これまでにないことだった。長期の停電や断水など、台風の被害とは異なる都市型水害だった。8月下旬には石川、富山、福井に大雨特別警報が発表され、記録的な大雨となり、大規模な浸水被害が発生した。内閣府、警察庁、消防庁、気象庁などは「大雨特別警報が発表されたときにとるべき行動・車運転の注意点」を8月下旬に発表した。大雨特別警報が発表された時には、車の運転の注意点として、冠水した道路への進入は命に関わる危険があるなど、細かくまとめられている。
 熊本地震では38名の方が亡くなり、多くの住宅が被害を受けた。各系列とも東京や大阪の放送局がネットワークとして、熊本局の取材・放送の応援に入り、報道にあたった。ビルの爆発や家屋の倒壊など、災害の状況を詳しく伝えるとともに、被災された方々の深刻な訴えなどを丁寧に取材・放送した。真夏の災害でもあり、現地入りにあたっては食料、水など被災地の負担にならないよう、各局とも自前で調達した一方で、取材クルーの安全確保にも留意した。
 個人的な感想だが、全国各地で線状降水帯が発生して、豪雨による河川の氾濫、土砂災害などの大きな被害があり、犠牲者も出た。豪雨被害は台風によるもの、というのが一般的な常識だが、今回のような集中豪雨災害に関する報道では、特に車が安全ではなく命の危険を伴う可能性があるとの注意喚起を報道機関として丁寧に伝えた。アンダーパスは全国の国道に約3,800か所あると聞いている。千葉の豪雨では自動車の浸水によって亡くなった人もおり、無視できない災害だ。
 民放キー局5社などは熊本地震の募金活動も実施した。災害時のメディアの取材活動だけでなく、少しでも被災地の役に立てるような対応も行った。
◆記者:民放各社の取り組みをどのように評価しているのか。
◆早河会長:心配になるくらい、現場にアナウンサーが向かい、昼夜を問わずに取材をしている。被害の実態をどう伝えるかという視点で頑張っているという印象だ。無理しすぎないようにと思いつつ、しっかり取材して被災者に寄り添う報道をお願いしたい。

○同一放送対象地域における複数テレビ局の支配
◆記者:いわゆる「1局2波」が可能となるマス排省令の改正について、電波監理審議会から「適当」とする旨の答申があったが、民放連の受け止めを教えてほしい。
◆早河会長:いわゆる「1局2波」のマス排緩和については、前回6月の会長会見において、「すぐに1局2波を希望するテレビ社があるかどうかはわからないが、経営の選択肢が広がることは望ましい」と述べており、その認識に変わりはない。
 期待するローカル局もあると思うが、具体的な動きは承知していない。民放事業者の経営基盤の強化につながる規制緩和であり、少々時間がかかるかもしれないが、選択肢として検討する動きはいずれ出てくるのではないか。いずれにしても、放送エリアの実情をよく理解し、地域社会に貢献してきた地元テレビ局同士が合意の上で選択することが大原則だ。ネットワークの観点から言えば、キー局の関わりも重要になるだろう。

○放送事業者の資本政策をめぐる議論
◆記者:7月に自民党「情報通信戦略調査会」が総務省に対して、放送事業者の資本政策やガバナンスのあり方を検討するよう要請した。放送局がいわゆるアクティビストから過度な利益追求の圧力を受けると、報道などの公共性の高い事業に影響が出かねないとの懸念が背景にある。総務省への要請に関する受け止めを教えてほしい。
◆早河会長:一般論として、放送事業者は災害放送の義務やあまねく普及の努力義務など、採算を度外視した業務を法令で規定されているため、資本効率を高めることの難しさがある。非常災害時の放送継続や広範囲にわたる取材・報道のためには、収益につながらない投資も必要だ。「ROE8%」は企業評価のひとつの目安ではあるものの、放送事業者に対して一律に求められるものではないとの認識だ。
 自民党でもこのことを確認し、東証や金融庁に正確な情報発信を要請したと聞いている。放送事業者が不動産事業などを手掛けて、利益を得ることもあるが、本業とのバランスをどう捉えるかは我々の課題でもある。一般論として、放送事業の安定的な継続・発展のため、本業とは異なる、利益を上げられる別の軸足を持つこともひとつの大きな選択肢になる可能性がある。いずれにしても各社の事業戦略によるものだ。
 なお、民放キー局5社の親会社は、現段階ではいずれもROE8%を下回っていると思う。放送インフラの維持や整備、災害報道のための設備やヘリコプターの調達などには相当の費用がかかる。放送法第1条に「放送を公共の福祉に適合するように規律し」とあるとおり、災害報道などは放送法で義務付けられている。各社はこれを怠らないように経営にあたっている。
◆記者:公共性の維持と資本効率の向上を両立させることには難しさがあると思うが、今後、どのような議論がなされていくことを望むか。
◆早河会長:我々がどのように経営判断していくかの問題だ。例えば、日本列島を隙間なくカバーできるように、取材ヘリコプターを各ネットワークで配備しているが、これには相当の費用がかかる。南海トラフなどの広域地震や、これまで経験したことのない豪雨などの災害に対して、しっかりと体制を整えるためにはコストがかかる。報道以外の事業で収益を上げて、コストを補うことができるように常に考えながら経営を行っている。ここはSNSとは異なる点だ。

○「ガバナンス指針」の適用状況の公表
◆記者:民放連がまとめた「民間放送ガバナンス指針」に沿って、民放連会員社が同指針の適用状況の公表を始めている。現時点で公表している社数を教えてほしい。
◆早河会長:本年1月に制定した「指針」に基づいて、適用状況を各社が取締役会の決議を経たうえで、自主的に点検して年に1回公表する。今月末までに各社がウェブサイトなどで公表し、10月20日頃には民放連のウェブサイトに各社の公表ページのリンク集を掲載する予定だ。現在、公表している会員社は25社ほどだ。

○NHKの次期中期経営計画
◆記者:NHKは10月に次期中期経営計画案を取りまとめる見込みだが、期待や懸念があれば教えてほしい。
◆早河会長:受信料の獲得が難しくなっている中で、費用と公共的サービスの兼ね合いについて中長期にわたって検討してきたのだと認識している。NHK ONEを含め、チャンネル編成が多様化しており、視聴者ニーズにどう応えていくかを検討しているのだろう。個人的には、NHKのBS「ワイルドライフ」をよく視聴するが、スクープ映像も多く、国際協力も行っている。このような民放ではなかなか見られない特色を失わずに拡充してほしい。

○NHKの「飲酒ガイドライン」策定
◆記者:NHKの井上会長は、飲酒が絡んだ不祥事が続いていることを受け、飲酒に関するガイドラインの策定を指示したようだ。この対応について、会長の見解を聞かせてほしい。
◆早河会長:業務後にスタッフなどが飲酒しながら話し合うことは日常的にあることであり、ガイドラインの策定は難しいと感じる。井上会長の意図や具体的な方法などは承知していないが、業務外の自由な時間までガイドラインで拘束することには違和感がある。飲酒後に不祥事を起こすケースは過去にもあるが、飲酒の制限や禁止は防止策ではない気がする。社員のモラルや自律性によって克服していくのが普通ではないか。詳細が分からないので、これ以上のコメントは控える。

(了)